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日本と東アジアの環境と貿易 アジア研究所 小山 直則 1 今日学ぶこと 第11章 地球環境問題を考える 日本の環境政策とその効果 2 Ⅱ.1. 公害防止先進国への道 ●図11-6(教科書490頁) ⇒製造業の設備投資動向と公害防止投資比率 ⇒企業に対する環境規制が強化された70年以降、企 業の公害防止投資が拡大した。 ⇒74年から76年の3年間についてみると、公害防止投 資比率は20%近くまで上昇している。金額ベースで は毎年1兆円近くの公害防止投資が実施されている。 *公害防止投資比率 =公害防止投資額/総設備投資額×100 3 Ⅱ.1. 公害防止先進国への道 ●公害防止投資の動機 は? (1) 環境税 (2) 環境補助金 (3) 直接規制 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 4 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒政府がNOx(窒素酸化 物)の排出一単位に対 してt円の環境税を課 税した場合を考える。 *NOx:自動車などから 排出され人の呼吸器 などに悪影響を与え る。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 5 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒企業はガソリンなどを 燃やすとNOxが排出 される。例えば、e2の 量のNOxが排出され ると、 ⇒水色の領域の額だけ環 境税を支払う必要が ある。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 6 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒企業が排出量をe2から e*に減少させると、 ⇒黄色の領域だけ環境税 の負担が減少する。 ⇒限界排出削減便益の 下側の面積は、排出 削減の企業の便益(黄 色の領域)を表す。 ⇒e*のときの環境税の負 担は水色の領域の分 である。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 7 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒企業が排出量を削減す るためには公害防止 投資が必要である。 ⇒限界排出削減費用曲 線の下側の面積は、 公害防止投資の費用 を表す。 ⇒排出量をe2からe*に減 少する場合、紫の領 域の投資費用が掛か る。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 8 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒企業が排出量をe2から e*に削減した場合の 純便益はいくらです か? *純便益(桃色の領域) =排出削減便益(黄色の 領域)ー排出削減費用 (紫の領域) *環境税(水色の領域)が あることに注意してく ださい。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 9 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒問題. 企業がe2からe1 まで排出量を削減し た場合の排出削減便 益、排出削減費用、純 便益はどの領域で表 されますか? ⇒問題. e*まで削減した 場合とどちらが純便益 が大きいですか? 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 10 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒最適条件 企業の最適な排出削減 量は、 限界排出削減便益(環境 税率) =限界排出削減費用 となるような排出量まで削 減することである。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 11 公害防止投資の動機は? (1) 環境税 ⇒環境税が存在しない場 合は、e2から排出量 を削減する動機は存 在しない。 ⇒なぜなら、公害防止投 資の費用を負担する よりも排出をして生産 を続けた方が得だか らである。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 12 公害防止投資の動機は? (2) 環境補助金 ⇒排出量を1単位削減し た場合、企業にs円の 環境補助金が支払わ れる場合を考える。 ⇒排出量をe2からe*まで 削減した場合の 環境補助金 =s円×(e2-e*) 限界排出削減費用 限界排出削減便益 s e1 e* e2 排出量 13 公害防止投資の動機は? (2) 環境補助金 ⇒企業が排出量を削減す るためには公害防止 投資が必要である。 ⇒限界排出削減費用曲 線の下側の面積は、 公害防止投資の費用 を表す。 ⇒排出量をe2からe*に減 少する場合、紫の領 域の投資費用が掛か る。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 14 公害防止投資の動機は? (2) 環境補助金 ⇒環境補助金の下で排出 量をe2からe*まで削 減した場合の企業の 純便益は、桃色の領 域で表される。 ⇒したがって、環境補助 金の場合もe*の排出 量を実現できる。 ⇒環境補助金の場合は 環境税の水色の領域 の負担がない。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 15 公害防止投資の動機は? (2) 環境補助金 ⇒問題. 環境補助金の下 でe2からe*まで排出 量を削減する場合と e1まで削減する場合 とではどちらが純便益 が大きいですか? ⇒問題.環境補助金の下 での最適な排出削減 量に関する条件は何 ですか? 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 16 公害防止投資の動機は? (3) 直接規制 ⇒政府が排出量の基準を e*に設定した場合を 考える。 ⇒企業は紫の領域の公 害防止投資を負担す る必要がある。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 17 公害防止投資の動機は? (3) 直接規制(e*) ⇒企業は紫の領域の公 害防止投資を負担す る必要がある。 ⇒環境補助金の場合の 負担も紫の領域であ る。 ⇒環境税の場合の負担 は、紫の領域+水色 の領域である。 ⇒直接規制よりも環境税 の方が負担が重い。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 18 公害防止投資の動機は? (3) 直接規制(e*) ⇒直接規制よりも環境税 の方が負担が重い。 ⇒したがって、直接規制 の方が公害防止に対 する技術開発を促す 動機が強くなると考え られる。 限界排出削減費用 限界排出削減便益 t e1 e* e2 排出量 19 11.5. 循環型社会へ動き出す 缶ビールの需要曲線 ●デポジット制度 (Deposit System) ⇒空き缶や空き瓶が一定 の場所に返却されると 預け金が返却される制 P+T 度。 T ⇒缶ビールの価格がP円、 P 空き缶のデポジット価 格がT円である。 空き缶の 限界回収費用 20 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 (Deposit System) ⇒デポジット制度がない 空き缶の 場合、缶ビールの価格 限界回収費用 はP円であるから、消費 者はD0だけ需要する。 P+T ⇒すると、D0だけの廃棄 T 物(空き缶)が発生する。 P D1 D0 21 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 (Deposit System) ⇒デポジット制度が導入さ 空き缶の れると、缶ビールの価 限界回収費用 格はP+T円に上昇する。 ⇒すると、需要量はD1に P+T 減少する。 T ⇒空き缶もD0からD1に減 P 少する。 D1 D0 22 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 ⇒空き缶の限界回収費用 は、消費者が空き缶を 空き缶の 追加的に一個回収する 限界回収費用 のに掛かる費用である。 ⇒したがって、D1個すべ P+T てを回収した場合、消 T 費者には水色の回収 P 費用が掛かる。 0 A D1 D0 23 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 ⇒空き缶を回収した場合、 消費者には一個当たり T円が返金されるとする。 空き缶の ⇒D1個すべてを回収した 限界回収費用 場合、桃色の領域の返 金額を受け取ることが P+T できる。 T ⇒D1個すべてを回収する P 場合は、返金額よりも 回収費用の方が多い。 0 A D1 D0 24 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 ⇒D1個すべてを回収する 場合は、返金額よりも 空き缶の 回収費用の方が多い。 限界回収費用 ⇒したがって、消費者に はD1すべてを回収する P+T 動機が存在しない。 T ⇒問題. 消費者はいくつま P で回収するでしょうか? 0 A D1 D0 25 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 ⇒問題. 消費者はいくつま で回収するでしょうか? 空き缶の ⇒回収する場合の純便益 限界回収費用 を考える。 *純便益=返金額ー回 P+T 収費用 T P 0 A D1 D0 26 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 ⇒問題. 消費者はいくつま で回収するでしょうか? 空き缶の ⇒A個まで回収すれば、 限界回収費用 回収費用は水色の領 域である。 P+T T P 0 A D1 D0 27 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 缶ビールの需要曲線 ⇒問題. 消費者はいくつま で回収するでしょうか? 空き缶の ⇒A個まで回収すれば、 限界回収費用 返金額は桃色の領域 である。 P+T T P 0 A D1 D0 28 11.5. 循環型社会へ動き出す 缶ビールの需要曲線 ●デポジット制度 ⇒したがって、A個まで回 収した場合の消費者の 純便益は、黄色の領域 である。 P+T ⇒回収の最適条件は、 T 缶ビールの価格 P (Tを含む) =空き缶の限界回収費用 0 ⇒最適な回収量はA個。 空き缶の 限界回収費用 A D1 D0 29 11.5. 循環型社会へ動き出す ●デポジット制度 ⇒問題. 消費者がB個ま で回収しないことを示し てください。 缶ビールの需要曲線 空き缶の 限界回収費用 P+T T P 0 A B D1 D0 30