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補遺:質問への解答(1)
 順序対と非順序対(1回目の授業)
 「二つのものを対(ペア)にする」
非順序対で順序対を定義できる
<a, b>=def{{a}, {a,b}}
 そのまま同じになる訳ではありません
A={u,v}, B={1,2} の例題で考えます
直積 A×B の要素と
集合 { {{a},{a,b}} }の要素を比べます
2
続:質問への解答(1)
 A={u,v},
B={1,2} の例題で考えます
直積 A×B =
{<u,1>,<u,2>,<v,1>,<v,2>}
集合 { {{a},{a,b}} | a∈A, b∈B}=
{ {{u},{u,1}}, {{u},{u,2}},
{{v},{v,1}}, {{v},{v,2}} }
 上の二つの集合は対等
(equipollent)です
Wikipedia: 「自然数」が参考になる
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補遺:質問への解答(2)
 自然数と集合(2回目の授業)「配列と関数」
 集合論では自然数を
n={0,1,…,n-1}と定義
 定義:
0={ } (空集合)
1={0}={{ }}
2={0,1}={{ },{{ }}}
3={0,1,2}
 5回目の授業に出てくる後者関数 S,
successor function, S(n)=n∪{n} (和集合)
Ver.2
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このように “,” で区切って書くとき
には「かつ」(and)の意味になる。
関係 (relation)
集合Aの要素aとBの要素bとが、ある条件Rを満た
すとき「Rの関係にある」といい、aRb と書く。
 Rの関係にある要素の対<a,b>の全体は 直積AXB
の部分集合  a , b a  A , b  B , aRb と同一視できる。
 例:二つの実数の関係  は,集合
 x , y x  R , y  R , x  y  のことである。

y
別の例:
グー
x
パー
チョキ
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n項関係

x と y が関係 R を満たす、つまり x , y  R のとき、
良く x R y と書く (infix notation)。これは二項関係。
集合AからBへの関数 f (写像) のグラフは、直積
A  B の部分集合であり、一つの二項関係である。
Aの要素aの関数 f による像 f(a)は f ( a )  1,  a  A .
 A と A の間の関係を A 上の関係ともいう。
 前出の例題「ジャンケンの関係」
 3 項以上の関係もある。
 例: a氏がb氏にcというメールを出した <a,b,c>
 例: 夫aと妻bには子供cがいる<a,b,c>

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二項関係の性質

∀x すべてのx
二項関係 R  A  A においては、次の性質が基本的
 反射律  x  A ( x R x )
 推移律  x  A  y  A  z  A ( x R y  y R z  x R z )
 対称律  x  A  y  A ( x R y  y R x )
 反対称律  x  A  y  A ( x R y  y R x  x  y )

関係Rが反射律を満たすとき、Rは反射的という。

例: N上の大小関係  は反射的、推移的、反対称的
平面上の二直線の平行関係は反射的、推移的、対称的
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同値関係 (equivalence relation)
反射的、推移的、対称的な関係を同値関係という
 例:平面上の直線の間の「平行関係」
二つの三角形が「合同である」「相似である」
 例:自然数 m, 整数 x, y に対して

def
x m y  m | (x  y)

x と y は m を法として合同
例:関数 f : A  B が与えられた時 a , b  A に対
def
して a ~ b  f ( a )  f ( b )
 例:自然数の上の等号(=)
*直和分割: 集合A を、互いに交わらない(空で
ない)集合の和集合として表すことができる意味。
同値類

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集合 A 上の同値関係 R とxが与えられたとき

R[ x ]   y x R y
def
(x の属する同値類)
x と R の関係にある y の集合
 x を代表元という

集合 A の任意の同値関係 R に対して、
R の定める同値類の全体の集合は A の直和分割*。
逆に A の任意の直和分割は A のある同値関係の
定める同値類の全体の集合に一致する。
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商集合

A/R
A の R による分割,商集合
A / R   R[ x ]
def
x  A
例: 3を法として合同な整数
の集合 Z の商集合 Z /  3
は {[ 0 ], [1], [ 2 ]}

集合Aから、AのRによる商集合 A / R への写像f
を
f (a )  R [a ]
により定義すると、この f は全射。
AからA / R への標準的な(canonicalな)全射という.。
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関係の合成

集合 A 上の関係の合成(積ともいう)
R1  R 2  { x , z

|
 y  A ( x , y  R1  y , z  R 2 )}
合成の繰返しをベキ乗として定義する
 R 0  { x, x
 R n 1  R  R n
x  A} (idA : A上の恒等関係)
(n  N )
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関係の閉包

推移的閉包 (reflexive closure)

R 

R
n
n 1

反射推移的閉包 (reflexive transitive closure)

R 
*
R
n
,
R
0
R


n0

推移的閉包は推移的である。
反射推移的閉包は反射的かつ推移的である。

性質:Rが推移的であれば、R+=Rである。
このa, b, c, dは
注釈であり、行列
の一部ではない
関係と隣接行列
有向グラフ (directed graph)
a
b
c
d

a
b
c
d
a0
1
0
0
1
1
0
0
0
0

b 0
R  
c0

d0

0
1

0
( { 0 ,1}
A A
関係の合成は行列の積の0でない成分に対応
0

0
0

0
1
0
1
1
0
0
0
0
0
0
 
0
0


0
1
 
0
0
1
0
1
1
0
0
0
0
0
0
 
0 0

1 0
 
0 0
1
1
1
1
0
0
0
0
0
12

1
2
 R
0

0
)
次回の予告
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
基本的な仕組は数学的
グラフの行列による表現
W
隣接行列(推移行列、遷移行列)
固有値と固有ベクトル
S
C
G
S学部
W大学
C学科
G研究室
WEBページのリンクの関係
1
a ij  
0
W
0

0
0

1

S
1
0
0
1
C G
0 0

1 0
0 1

1 0 
頂点 i から頂点
j に辺がある
頂点 i から頂点
j に辺がない
行列の上と左のW, S, C, Gは注釈
であり行列に含まれない
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隣接行列と閉包

隣接行列の定義

1 if a i Ra j
rij  
0
if
a
R

a

i
j


Rを否定している斜線
隣接行列の性質
 行列Rnの(i,j)成分は、aiからajに至る長さnの相異
なる道の数。(道のことを経路ともいう)
 行列R*の(i,j)成分が0でないとき、 aiからajに至
る道がある。到達可能。(長さ0の道もあり)
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二項関係と順序 ()
次の三つの性質を満たす二項関係  を半順序
(partial order) という。半順序集合を posetという。
x ( x  x)
 反射律
 x y z ( x  y  y  z  x  z )
 推移律
 x y ( x  y  y  x  x  y )
 反対称律
 さらに次の性質も満たすとき全順序 (total order) と
いう。全順序を線形順序 (linear order) ともいう。

  x y ( x  y  y  x )
論理記号 or

単に順序という場合には半順序のことを指す。
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順序集合
 A,  
N, Z, R:数の大小関係  これは自明な順序。
 複素数の集合 C:ここには自明な順序がない。
 文字 (a~z, A~Z)の集合:それほど自明でない。
 単語(文字列):自明でない。
 学校の成績:いろいろな計算法があり自明でない。
 {red, green, blue} : 関係の定義が必要。
 部分集合の間の順序:包含関係⊂は順序である。
 {{ }, {red}, {green}, {blue}, {red,green}, {red,blue},
{green,blue}, {red,green,blue}}
 C や学校の成績にも特定の要素間には順序あり。

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順序集合(部分集合、直積)

集合 A とその上の半順序  の組 < A,  > のこと。
 A の上の順序  が明示されていたり、自明な
場合には、単に A と書く。

例:集合 A に対して (2A, ) は順序集合。

例:順序集合の直積を順序集合にする方法は複数
通り考えられる
 直積順序: x , x '   *  y , y '   x  A y  x '  B y '
 辞書式順序:lexicographic order
 x, x'   l  y, y ' 

x A y 
( x  A y  x' B y')
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順序集合(N, 関数)

N の自明な順序ではない順序がある。
 例:m | n (m は n の約数という二項関係)
これは順序である。ただし全順序ではない
[演習のヒント]反射的、推移的、反対称的。

Bが順序集合のとき、関数 f , g  A  B の間の順序
を B 上の順序を使って定義できる。
f  g   x ( f ( x )  B g ( x ))
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狭義の順序

狭義の順序を、以下の二つの性質を満たす関係と
して定義する。
 推移的:  x  y  z ( x  y  y  z  x  z )
 非反射的:  x (  ( x  x ))
否定 not

演習:Rを狭義の順序とする。二項関係R*を次のよ
うに定義すると、R*は順序になる。
xR * y  xRy  x  y
(詳しい説明は省略)
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ハッセ (Hasse) の図式
 Aの各要素a,
bに対して平面上の点Pa , Pb
をとる。a<b の時、PbをPaよりもY座標
を大きな位置に描く。
が a の直後の要素であるとき、PaとPb
とを線分で結ぶ。この線分上にはPa , Pb
以外の点は描かない。
b
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直前の要素、直後の要素
順序集合 (A, ) において xA が aA の直後の要素
(successor) であるとは、次の性質を満たすこと。
a  x  (a  z  x  z  x)
 同様に、直前の要素 (predecessor) を定義できる。
x  a  ( x  z  a  z  x)

 例:n ( N, n  0) の直前の要素は n  1
 例 : a (Q) の 直 前 の 要 素 は 存 在 し な い 。
順序集合(A, )が稠密(ちゅうみつ)であるとは、
任意のa, bAに対してa<bならば必ずa<c<bとな
る c が存在することである。Qは稠密。
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ハッセ (Hasse) の図式の例
全順序
比較不能
{red,green,blue}
{red,green}
{red}
{green,blue}
{green}
{}
{red,blue}
{blue}
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擬順序 (quasi-order, preorder)
Jane(100)
Smith(92)
Mary(85)
Tom(85)
Pat(80)
別の例:
 x, y    u , v 

x  y
2
2

u v
2
Bob(77)

反射律と推移律を満たす関係(反対称律は満たさ
なくてよい)を擬順序という。
x~ y  x y y x
で定義される関係 ~ は同
値関係になる。商集合 A/~ の上の二項関係  *
[ a ]  *[ b ]  a  b は順序になる。

2
24
最大と極大
順序集合 (A, ) と、その部分集合Bがある。Bの要
素 b が次の性質を満たすとき、bをBの最大元とい
う。 ∀x∈B ( x  b )
maximum
 Bの要素 b が次の性質を満たすとき、bをBの極大
元という。 ∀x∈B ( b  x ⇒ x=b )
maximal

x
z
y
極大元(2つある)
w
u 最小元=極小元
最大元が存在すれば、それが極大元。最大元は存在すれば一つ。
極大元は複数個が存在することがある。