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第12章 宇宙論パラメータ決定の歴史
12.1 ビッグバン宇宙論とインフレーション
復習 (11.1)
宇宙の進化図
10-34 秒
137億年
宇宙
起源論
現在
観測的宇宙論
(2006年WMAPのプレスリリースより改変)
現代宇宙論のパラダイム
復習 (1.5)
観測的宇宙論
宇宙起源論
量子論的ゆらぎによる「無」からの宇宙創生
真空のエネルギー(P=-ρ)に満ちた宇宙
インフレーションによる急激な膨張期
真空のエネルギーの相転移による潜熱の解放
量子ゆらぎを引き伸ばし、構造の種を形成
フリードマンモデルで表される減速膨張期
熱いビッグバン、軽元素の合成
宇宙の晴れ上がり
第一世代の星の誕生
宇宙の再電離(銀河からなる宇宙)
ダークエネルギーによる加速膨張期
超新星が示す加速膨張
ビッグバン宇宙論の観測的基礎
(1) 宇宙は現在膨張している(ハッブルの法則)
昔は宇宙は小さかった
(2) 宇宙には黒体放射(宇宙背景放射)が満ちている
現在は2.7Kだが昔は熱かった(物質と
放射が熱平衡状態にあった)
(3) 軽元素(H, He, Liなど)の存在率が理論予測と合致
約140億年前、熱い宇宙で(最初の
3分間に)軽元素が作られた
観測的宇宙論(ビッグバン宇宙論)の二つの側面
枠組み(万物の入れ物)としての
膨張する(一様等方な)時空
整合性
こちらは(長い道のりを
経て)かなりの精度で
分かってきた
宇宙論パラメータ
枠組みの中で起こる
天体とそれらが織りなす構造
の形成と進化
現在の研究はこちらに
重点が置かれている
(10章、11章)
銀河と大規模構造は、どのようにし
てでき、どのような進化の結果、
現在の姿になったのか?
ビッグバン宇宙論の問題点
(i) 宇宙はなぜ熱い火の玉から始まったのか
(ii) なぜ宇宙マイクロ波背景放射は全天で極めて一様
に近い温度分布を示すのか(地平線問題)
(iii) 現在宇宙に見られる大規模構造はどのようにして
できたのか(地平線問題と同種の問題)
(iv) なぜ現在の宇宙は平坦(曲率がゼロ)に見える
のか(平坦性問題)
(v) なぜ、宇宙には物質だけが存在して反物質が存在
しないのか(バリオン数生成)
インフレーション
復習 (1.5)
量子論的に見た真空
(~10-33cm)は何もない
静かな空間ではない
素粒子が生成消滅を
繰り返している(真空の
量子ゆらぎ)
真空の相転移
真空のエネルギーの解放
インフレーション理論
の詳細は未完成
(統一理論が未完のため、インフレーションを起
こす場が不明。インフラトン場とよばれている。)
指数関数的な膨張と
物質エネルギーの増大
熱い火の玉宇宙の誕生
地平線問題
地平線: その時刻までに因果関係を持てる領域の限界
宇宙背景放射(z~1100) のゆらぎ~10-5
A
B
rH(t)~ c/H(t) ~ c t
宇宙膨張 a(t) ~ t2/3
地平線
z~1100時点での地平線は天球上で約2度
ある時刻で地平線外 (r>ct) であった2点も、時間が経てば(r~t2/3なので)地平線
内に入ってくる。現在地平線内にある2点も、過去に遡れば地平線外に出る。
地平線サイズ
インフレーション前
極めて
短時間
インフレーション終了
晴れ上がり
現在
観測者
平坦性問題
- 宇宙の曲率は誕生後137億年たった
現在でも極めて平坦である(Ω0=1)
- もし宇宙初期にΩ=1から僅かにず
れていたなら、宇宙はあっという間
に潰れたか、急速に膨張して星も
銀河もない宇宙になっていたはず
宇宙初期には
Ωp=(1.0 +/- 1x10-60)
であることが必要
http://abyss.uoregon.edu/~js/ast223/lectures/lec18.html
元々の宇宙がどんな曲率を持っていても、インフレーションの過程
で、大きく引き伸ばされて、その一部だけ見ると平坦に見える。
ビッグバン宇宙論の問題点
インフレーション理論が問題点を解決
(i) 宇宙はなぜ熱い火の玉から始まったのか(真空のエネルギー
が解放されて熱になった)
(ii) なぜ宇宙マイクロ波背景放射は全天で極めて一様に近い
温度分布を示すのか(実はインフレーションの前には
地平線内にあったのだ)
(iii) 現在宇宙に見られる大規模構造はどのようにして
できたのか(ii と同じ)
(iv) なぜ現在の宇宙は平坦(曲率がゼロ)に見えるのか(大きく引
き伸ばされた宇宙の一部を見ると平坦に見える)
(v) なぜ、宇宙には物質だけが存在して反物質が存在
しないのか(バリオン数生成:未解決の問題)
(2008年 ノーベル物理学賞 南部、小林、益川先生)
12.2 宇宙論パラメータとは
(厳密な定義があるわけではない)
一様等方な時空(フリードマンモデル)のパラメータ (1)
(1)
(2)
状態方程式
(3)
a(t): スケールファクタ
a(t=T0)=1 とする
K: 空間の曲率(定数)
K=0は平坦な空間
Λ: 宇宙定数
ρ: 宇宙のエネルギー密度
P: 圧力
wの値を観測的に
決めるのが現在の
重要課題
一様等方な時空(フリードマンモデ)のパラメータ (2)
H0, ΩM , ΩΛ ( Ω0 = ΩM + ΩΛ )
現在の宇宙の膨張率
添字 0 は現在の値で
あることを示す
宇宙の枠組みに関
するパラメータ
一様等方な時空(フリードマンモデ)のパラメータ (3)
( = Ω0 )
( = Ω0 )
宇宙年齢(T0)や宇宙晴れ上がり時点の赤方偏移(zdec)、再電離の時期なども重
要な宇宙論パラメータ。
H0, ΩM, ΩΛ, T0, ….
( Ω0 = ΩM + ΩΛ = 1)
( ΩM = Ωb + ΩDM )
密度パラメータの表現
方法は必ずしも厳密に
統一されていないので
注意が必要
構造形成に関するパラメータ
(n, σ8, b)
宇宙膨張の様子
ΩΛ=0 の場合
復習 (1.4, 1.5)
ΩΛ=0 の場合も含む
宇宙膨張の振る
舞い
ΩM=0
ΩM=1
ΩM=4
現在
パリティ2003年12月号
(Physics Today, 56, No.4, 2003)
12.3 ハッブル定数を巡る大論争
H0 ~ 50 or 100?
ハッブル定数の決定法
bulk motion(揃った運動)
例: Virgo Infall (第4章)
ハッブル速度(後退速度)
vobs = vH +
Peculiar velocity (特異速度)
vpec
= H0 r + vbulk + vrand
多数の銀河を観測すれば
統計的にキャンセルされる
~500km/s?
bias in small volume
vobs ~ H0 r
for Vobs>>1000 km/s
vobs
[ km s-1 Mpc-1]
H0 = <
>
r
galaxy distance
H0 =50 or 100? (km/s/Mpc)
ハッブル定数への道のり
SZE
GL
宇宙の距離はしご
EP
primary distance
indicator
DIR: distance
Indicator Relation
HIPPARCOS
Jacoby et al. 1992,’A Critical Review of Selected
Techniques for Measuring Extragalactic Distances’,
PASP, 104, 599-662 の図をもとに改訂
new method
(1989 - )
PNLF: Planetary Nebulae Luminosity Function
SBF: Surface Brightness Fluctuation
GCLF: Globular Cluster Luminosity Function
EPM: Expanding Photoshere Method
SZE: Sunyaev-Zel’dovich Effect
GL: Gravitaional Lensing
宇宙の距離はしご
(Cosmological Distance Ladder)
通常の測距法
標準光源法(天文特有)
ハッブル定数をめぐる論争 (~1975 - ~2000)
Short distance scale
(de Vaucouleurs)
H0~100 km/s/Mpc
Long distance Scale
(Sandage and Tammann)
H0~50 km/s/Mpc
天文学の歴史に残る大論争
Long distance Scale
(Sandage and Tammann)
H0~50
km/s/Mpc
‘Steps Toward the Hubble Constant’
I. ApJ, 190, 525, 1974
II. ApJ, 191, 603, 1974
III. ApJ, 194, 223, 1974
IV. ApJ, 194, 559, 1974
V. ApJ, 196, 313, 1975
VI. ApJ, 197, 265, 1975
VII. ApJ, 210, 7, 1976
Short distance scale
(de Vaucouleurs)
H0~100
km/s/Mpc
‘The Extragalactic Distance Scale’
I.
II.
III.
IV.
V.
VI.
VII.
ApJ, 223, 351, 1978
ApJ, 223, 730, 1978
ApJ, 224, 14, 1978
ApJ, 224, 710, 1978
ApJ, 227, 380, 1979
ApJ, 227, 729, 1979
ApJ, 233, 433, 1979
VIII. ApJ, 256, 339, 1982
IX. ApJ, 365, 1, 1990
X. ApJ, 446, 1, 1995
Allan Sandage passed away
on November 13, 2010 (1926-2010)
G. de Vaucouleurs passed away
on October 7th, 1995 (1918-1995)
PASP, 104, 599-662, 1992
他8名
さまざまな距離決定法
のチームリーダー
H0=80±11 or 73±11 km/s/Mpc
Virgo Clusterの距離の不定性
(距離測定の原点の不定性)
基研研究会「H0=80をどう考えるか」
素粒子論研究93(2)
H0の比較は非生産的。個々の銀河
の距離の精度を確認せよ。
d (PNLF)
d (Dn-σ)
d (GCLF)
d (SBF)
d (SBF)
d (SN Ia)
d (SBF)
d (SBF)
12.4 銀河の距離決定法の概観
銀河の距離決定法(標準光源法)
・一次距離指標(セファイドとRRライリ)
・惑星状星雲の光度関数 (PNLF)
・面輝度ゆらぎ(SBF)
・距離指標関係
- タリー・フィッシャー関係
- フェイバー・ジャクソン関係
・ Dn - σ 関係(フェイバー・ジャクソン関係の改訂版)
・ Ia型超新星 (SN Ia)
・ II型超新星の膨張光球法 (EPM)
・ スニアエフ・ゼルドビッチ効果
・ クエーサーの重力レンズ像の変光の時間差
・ 活動銀河核の変光の時間差(MAGNUMプロジェクト)
一次距離指標:セファイドとRR Lyr
周期
変光幅(mag) 種族
Ⅰ, Ⅱ
Ⅱ
絶対等級 (MV)
セファイド 1 - 50日 0.3 - 2
RR Lyr 2時間-1日 0.3 - 1.5
セファイドの光度曲線
周期 – 光度関係
(可視光では、のこぎりの
(波長が長くなるほど
歯状の光度曲線が特徴的。 タイトになる)
波長が長くなると変光幅
が小さくなる)
LMC/SMC中の
セファイド
(D~0.05 Mpc)
可視光
近赤外
色指数 (B-V)
斎尾英行 「星の進化」 培風館
New COSMOS Series 1992 より
検出は青いバンドが有利だ
が測光精度は近赤外が高い
Madore and Freedman 1991, PASP, 81, 707
ハッブルによるM31のセファイドの観測
Freedman et al. 1994, Nature, 371, 757
(r~15 Mpc; 1-hour exp.)
HSTによるM100のセファイドの観測
ハッブルの観測: 18 – 19.5等
HSTによる観測: 25 - 26.5等
約1/1000の明るさまで(距離に
して20倍以上遠方まで)到達
Tanvir et al. 1995, Nature, 377, 27
(r~10 Mpc; 40-min. exp.)
セファイドによって距離が測られている銀河
「銀河系と銀河宇宙」
(岡村 1999)より
G: ground-based
telescope
H: Hubble Space
Telescope
ハッブル宇宙望遠鏡
キープロジェクト(後
述)の成果
惑星状星雲の光度関数
(Planetary Nebulae Luminosity Function: PNLF)
Jacoby et al. 1989, ApJ, 344, 704
Jacoby et al. 1989, ApJ, 344, 704
データベースに関しては Ferrarese et al. 2000, ApJS, 128, 431 を参照
最新の論文 Feldmeier et al. 2007, ApJ, 657, 76
面輝度ゆらぎ
(Surface Brightness Fluctuation: SBF)
単位面積中
の星の数
2倍遠くか
ら見る
Tonry & Schneider 1998, AJ, 96, 807.
星の平
均光度
(a) 元画像
(d) (c)を平滑化
(b) 滑らかなモデル画像
(e) =(c)-(d)
(c) ゆらぎ= (a)-(b)
実際にはフーリエ変換した
周波数空間でパワースペク
トルによる解析を行う
(f) = (e)2/(b)
Jacoby et al. 1992, PASP, 104, 599
シリーズ論文
Tonry et al. 2001, ApJ, 546, 681.
(g) 明るい星
などのマスク
(h) (f)に(g)を
適用
(i) データはリング
に分けて解析
Pahre and Mould 1994, ApJ, 433, 567
関連する最近の論文
Cantiello et al. 2007, ApJ, 660, 942
Mould and Sakai 2009, ApJ, 694,1338
Blakeslee et al. 2010, ApJ, 724,657
Cantiello et al. 2011, A&A, 532, 154
距離指標関係
タリー - フィッシャー関係
復習 (5.4)
‘A new method of determining distances to galaxies’,
Tully and Fisher 1977, A&Ap, 54, 661
渦巻銀河の円盤の回転速度
と絶対等級の間の相関関係
Local calibrators
実際には、single-dishの電波望遠鏡
で銀河のHI 21cm輝線を観測した時の
速度幅(に傾斜角の補正をしたもの)を
回転速度の指標として用いた。
電波望遠鏡の
ビームサイズ
明るさ
(等級)
速度幅
復習 (5.4)
フェイバー - ジャクソン関係
Dn - σ 関係
楕円銀河の特定の面輝度(n mag
arcsec-2)における直径と絶対等級の関
係(フェイバー・ジャクソン関係の改訂版)
楕円銀河の中心の速度分散と
絶対等級の関係
‘Velocity dispersions and mass-to-light
ratios for elliptical galaxies’, Faber and
Jackson 1976, ApJ, 204, 668
‘Spectroscopy and photometry of elliptical
galaxies. I - A new distance estimator’,
Dressler et al. 1987,, ApJ, 313, 42
Dn – σ
log σ
log σ
Faber-Jackson
等級(BT)
log Dn
Ia型超新星
標準光源
復習 (1.5)
見かけの明るさから距離がわかる
NGC 4526
SN 1994D
銀河全体の明る
さに匹敵する
http://apod.nasa.gov/apod/ap981230.html
Ia型超新星 (SNe Ia)
スペクトルに水素の
吸収線が見られない
スペクトルにケイ素
の吸収線が見られる
差し替え
SN Ⅰa
Wheeler 1990, in ‘Supernovae’, eds. Wheeler et al.
連星系をなす白色矮星に伴星から物質が
降り積もり、Chandrasekhar limit を越えた
時点でcollapseし核反応が暴走して爆発
最大光度がほぼ一定である
(しかも銀河と同じくらい明るい)
全てのタイプの銀河で出現する
一昔前までは、SNe Ia は、
個々の銀河の距離を決めるの
ではなく、ハッブル定数を決め
る手段として用いられた
B バンド
最大光度時の明るさは一定ではない
さまざまな補正法
V バンド
+
オンデマンドの SNe Ia 探査
(超遠方の超新星)
H0の決定法ではなくなった
宇宙の加速膨張
Tammann and Sandage 1995, ApJ, 452, 16
2011年度ノーベル物理学賞
演習: Ia型超新星の真の最大光度が一定とすると、その見かけ
の明るさ(等級)mを横軸にとり、その超新星の出現した銀河の
ハッブル速度(後退速度)の対数(log v)を縦軸にとったグラフを作
ると、log v= 0.2m+C(定数)のように、傾き0.2の直線になることを
示せ。また、定数Cの値からハッブル定数H0が求まることを示せ。
このグラフはHubble Diagramと呼ばれる。
ヒント:ハッブルの法則(v=H0r)と距離指数の式 m-M = 5log r - 5
を利用する。
撮像観測1
超新星
撮像観測2
オンデマンドの SNe Ia
多数の視野で深い撮像観測を約
1月おいて2回行い、両者を比較
することで、分光観測するSN Ia
候補を必ず見つけられる
大口径望遠鏡にプロ
ポーザルを出せる
二つの国際チームの競い合い
Supernovae Cosmology Project
Saul Perlmutter et al.
http://supernova.lbl.gov/
High-z Supernova Search
Brian Schmidt et al.
http://www.cfa.harvard.edu/supernova/home.html
パリティ 2003年12月号
2011年度ノーベル物理学賞
II型超新星の膨張光球法
(Exppanding Photosphere Method: EPM)
爆発して膨張するSN IIの大気
の「視差」を測る
視差
Distance Ladderを
使わない直接法
しかし、大気モデルに
不定性が残る
Schmidt et al. 1994, ApJ, 432, 42
Brian Schmidt
スニアエフ-ゼルドビッチ効果
基礎となる物理
過程が良く理解
されている
Distance Ladder
を使わない直接法
銀河団形状の球対称から
のずれや温度分布の非
一様性などが不定要素
cf. Kobayashi et al. 1996, PASJ,
48, L107.
多数の論文あり
e.g., Marriage et al.
2011, ApJ, 737, 61
重力レンズ像の変光時間差
Young et al. 1980, ApJ, 241, 507
時間差のオーダー
は「年」であるので、
時間差そのものの
決定が観測的には
極めて難しい
具合の良い対象
天体は多くない
レンズモデルにも
不定性あり
e.g., Kundic et al. 1997, AJ, 114, 507
活動銀河核(AGN)の変光時間差
Dust Reverberation (ダスト反響法)
可視バンドと近赤外バンド
の間の時間差(Δt)
ダストトーラスの内径(cΔt)
ダストの溶ける温度は
約1500K (一定)
UV光度が分かる
MAGNUM望遠鏡(2000-2008)
(ハワイ、ハレアカラ観測所)
Suganuma et al. 2006, ApJ, 639, 46
12.5 HSTキープロジェクト
Extragalactic Distance Scale
HSTの3つのキープロジェクトの一つ
1. Extragalactic distance scale
2. Quasar absorption-line study
3. Medium deep survey (parallel observation)
1999年頃のハッブル定数の決定状況
岡村 1999 「銀河系と銀河宇宙」
HST Key Project
Extragalactic Distance Scale
PI: Wendy Freedman
Bob Kirshner
Jeremy Mould
多数の近傍銀河(local calibrators)の距離をセファイドで決
めて、さまさまな距離決定法の calibration を確立する
Paper I.
ApJ, 427, 628, 1994
Paper XXVIII ApJ, 529, 786, 2000
Final paper ApJ, 553, 47, 2001
H0=72±4(r)±7 (s) km/s/Mpc
H0=72±8 km/s/Mpc
さまざまな距離決定手法の結果の誤差を考慮した
12.6 密度パラメータの決定と宇宙年齢の矛盾
この節の内容は、宇宙の加速膨張(ダーク
エネルギー)が知られていなかった頃の話
で、いまではどちらかというと回顧話になり
つつある。
密度パラメータ(Ω0)の決定法
(1)
(2)
このスライドは、ダーク
エネルギーの存在が知
られる前に作ったもの
Ω0 = ΩM = Ωb + ΩDM
(3)
(1) 幾何学テスト(Geometrical Test)
物質による空間の曲がりを観測するので、遠くを見な
いとわからない。そのため銀河の進化の影響を受ける。
・ 体積ー赤方偏移関係 (V - z relation; Loh-Spillar test)
・ 等級ー赤方偏移関係 (m - z relation; ハッブルダイアグラム)
standard candle (brightest cluster galaxies, SN Ia)
・ サイズー赤方偏移関係 (θ - z relation)
standard rod (compact radio source)
・ 銀河計数法 (galaxy count: N(m))
いろいろやったが、結局、銀河の進化の効果と空間の曲
がりの効果を分離できないことが明らかとなった。
m-z relation (Hubble Diagram)
「銀河が進化する」としても
その進化の程度は未知
Brightest cluster galaxy を
standard candle として利用
「銀河が進化しない」とする
とパラメータの如何によらず
観測と合わない
結局この方法ではΩ0は
決まらない
Sandage 1988, Ann. Rev. Astr. Ap., 26, 561
θ - z relation
Compact radio sources を standard rod として使った
電波源の見かけのサイズ
Kaphai 1987, IAU Symp., 124, 251
Kellerman 1993, Nature, 361,
低周波数の観測
高周波数の観測
q0=1/2
q0=1
q0=0
q0=1/2
全く異なる結論
ユークリッド空間
q0=0
ユークリッド空間
赤方偏移 z
低周波の観測は進化効果の影響があると考えられるが、高周
波では影響がないかどうかは不明
結局この方法ではΩ は
決まらない
0
銀河計数(Galaxy Count): N(m)
N(m)
パラメータは一意
に決まらない
結局この方法ではΩ0は
決まらない
(mag)
Djorgovski et al. 1995, ApJL, 438, L13
(2) 構造形成に基づくテスト
z=18.3
z=5.7
z=1.4
Yoshikawa, Jin, Suto 2000, ApJ, 535, 593
観測データがまだ不十分
z=0.0
SDSSなどの可視光大規模サーベイ、X線の
広域サーベイなどのデータが充実しつつある
http://www.virgo.dur.ac.uk/new/index.php
(3) 力学テスト
復習 (4.6)
銀河の特異速度と密度分布の関係
Ω0 を観測から決める手法
の一つ(力学テスト)
観測が困難(距離を知る必要あり)
ダークマターの影響は分からない
バイアス b
多数の銀河の距離を正確に測る必要がある。
Vp = Vobs - VH = Vobs - H0 r
復習 (4.6)
Strauss & Willick 1995, Physics Report, 261, 271-434
(Peculiar Velocity Field 研究の 膨大な review: 164 pages)
Coma Cluster
Great Attractor
Virgo Cluster
Pices-Perseus
Cluster
Sculptor Void
Cetus wall
超銀河団赤道面でのIRAS銀河の密度
Ω0 は決まったか?
β = Ω00.6/b = 0.6 ± 0.1
(b=1/σ8)
CMB静止系での特異速度場
今一つ精度が出ない
(バイアスの不定性)
0.2 < Ω0 < 0.8
12.7 宇宙年齢の矛盾
宇宙年齢の矛盾(The Age Problem)
第11回西宮湯川記念シンポジウム (1996)
7-8 November 1996
宇宙年齢の矛盾
現在の観測値とその誤差を考えると、球状
星団の年齢よりも長い宇宙年齢になるため
に許されるH0とΩ0の範囲はきわめて狭い
(左図の斜線部分のみ)
球状星団の年齢はこれを支持
許容領域はここだけ
May 7-10, 1996