社会経済学2 第3講 商品経済としての社会的生産

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社会経済学2
第3講 商品経済としての社会的生産
「経済学の研究題目は富である。経済学の
著述家たちは、富の性質、その生産および
分配の法則を教えること、または研究するこ
とを職とする。これは人類またはどの人間社
会かが、人間の欲望の普遍的対象であるこ
の富においていかなる原因によって栄えたり
衰えたりするか、直接間接にそのすべての
原因を研究することを含んでいる。」J・S・ミル
『経済学原理』(1848)
1.社会と自然における経済の位置
人間という種の自然環境との代謝過程では、
直接的な生理過程をこえて社会的な範囲・性
質を有した経済過程が広がっている。
ニーズの充足法(一方的/交換的、親密的
/社会的)⇒共同体・組織と市場
経済活動の基礎になる資産 自然資本・文
化資本・社会資本
営利的市場経済は拡大的性質をもっている
が、経済のすべてを覆うものではない。
2.市場による調整と社会的調整
ニーズの社会的充足は、分業(division of
labor)を前提とする。
経済的な交換においては、財は商品となり、
「使用価値」と「交換価値」が分離する。
経済的な交換によって分業が維持されるなら
ば、生産物の交換比率はそれぞれの労働投
下に比例したものになる。例:スミスのビー
バーと鹿。
3.市場経済のダイナミズム
「分業は市場の広さによって制限される」(ス
ミス) これは分業の進展が市場の拡大をも
たらすことと併せて考えると発展的な命題。
市場は、生産物(フロー)だけでなく、生産の
基礎になる資本・労働・土地のようなストック
にまで拡大する⇒資本主義的な市場経済。
再生産と同時に不均衡を発生させる
独占の形成と解体
4.スミス『国富論』における
富の源泉としての労働
「国民の年々の労働は、その国民が年々消
費する生活の必需品や便益品のすべてを本
来的に供給する源泉であって、この必需品と
便益品は、つねに労働の直接の生産物であ
るか、またはその生産物によって他の国民か
ら購入したものである。」(A・スミス『国富論』)
⇒国民の豊かさを決定するのは、労働の生
産性と生産的労働者の割合の2つである。
5.マルクス:商品の物神的性質
「資本家的生産様式が支配的におこなわれる諸社会
の富は、一つの『膨大な商品集積』としてあらわれる。
個々の商品は、その原基形態である。だから、われ
われの研究は、商品の分析をもってはじまる。」(マル
クス『資本論』)
「使用対象が商品となるのは、総じてそれが相互に独
立して営まれる私的労働の生産物だからである。こ
れらの私的労働の複合体が社会的総労働を形成す
る。生産者たちは、彼等の労働生産物の交換によっ
てはじめて社会的接触を結ぶのであるから、彼等の
私的労働の独自的・社会的な性格もまた、この交換
の内部ではじめて現れる。」同第1篇第1章第4節
6.市場経済の制度的基礎
「交換性向」は市場経済の原因(スミス)か結
果(マルクス)か? 「自愛心」は?
市場経済の発展を阻害する要因:ー共同体
的・直接的なニーズ充足が支配的 -財産と
契約を保護する法制度の不備 -情報の不
確実性 -過去の行動様式の「慣性」 -投
機経済化
再生産的合理性の確保
補論 価値体系と数量体系
生産が物量で示されるかぎりは、横の方向には加減できるが、縦方向に
加減することはできない。価値になればそれができる。
Q.この表を投入係数aij=Xij/Xj 労働係数 lj=Lj/Xj を用いて書き直せ。
fro m /to
第 1 産業
第 2 産業
純生産
総生産
第 1 産業
X 11
X 12
X 1n
X1
第 2 産業
X 21
X 22
X 2n
X2
労働投入
L1
L2
価値方程式
「交換価値」の実体としての「抽象的人間的労働」
連立方程式体系 t1=a11t1+a21t2+l1
t2=a12t1+a22t2+l2
 このような式の場合には、投入係数と労働係数が
所与とすれば、労働単位での価値tが求められる。
しかし、労働にも価格(時間賃金率)があるとすれば、
付加価値(生産物価値-投入財の価値)が賃金と
利潤に分かれる可能性が生まれ,商品の価格も賃
金および利潤の決定のされ方によって変わってくる。
産業連関の基本方程式
価値概念なしの「社会的必要労働」
X1=a11X1+a12X2+x1n X2=a21X1+a22X2+X2n
投入係数が一定なら、純生産量を与えて、各
産業の生産規模を決定できる。
したがって、X1n=1, X2n=0 に対応した生産
規模X1’,X2’に対応した必要労働 l1X1’+l2X2’が
第1産業生産物1単位を得るための「社会的必
要労働」である。
 Q.これが価値方程式より求めた価値t1と等しくなることを確認
せよ。