システム開発計画 - 教職員・研究者のためのコンピュータ利用案内
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第2章 システム化の全体をつかむ
2-1 システム化のプロセス全般
株式会社ディー・アート
上野淳三・広田直俊・白井伸児[著]
「システム設計の考え方」
全社情報化中長期計画
会社の情報化計画は、経営計画とリンクさ
れていなければならない。
事業部門の経営計画の中から情報化ニー
ズを吸い上げる必要がある。
経営計画と情報化計画
規模の大小を問わず、いかなる企業も中
長期経営計画を作成する。
計画には、人、物、金の他に情報も重要な
経営資源であるという認識の下に、情報化
計画が含まれるのが一般的である。
経営計画と情報化計画2
情報は人、物、金と同列の概念ではなく、
それらを効率的に活用するための手段で
ある。
会社の情報化計画は、会社の事業計画を
にらんで作成される。
情報化はそれ自体に意味があるわけでなく、
あくまで経営を支援する手段ということである。
全社情報化中長期計画
立案はシステム部門が担当する。
各事業部門からの事業計画の中にすでに含まれている。
システム部門から見て、情報化が必要と思われるにもかかわらず、計画さ
れていない場合
システム化の働きかけを行い、各部門の情報化計画を全社的にとりまとめ
る。
全社情報化中長期計画2
全社情報化中長期計画3
各事業部門で共通に利用できると思われる
ハードやソフトは、どのようなものであり、どれ
くらいの投資額になるかを大まかに見積もる。
全社情報化中長期計画4
全社情報化中長期計画の要点
各事業部門のシステム化計画の適否や優先順位を決定
それらをまとめて全社共通インフラ(ハード、ソフト)計画を作
成
全社的な投資計画や推進方針などを立案すること
全社情報化中長期計画5
全社情報化中長期計画6
情報化の案件は専門的な検討が必要にな
る。
例:案件はシステム開発の優先順位や全社共通のインフラや情報技
術
事項など
ある程度以上の規模の企業では、経営会
議の事前審議を行なう専門委員会を設置
している場合が多い。
全社情報化中長期計画7
経営会議での審議の二つの要点
提出された情報化計画が中長期的に経営に
どう寄与するかということ。
投資額として会社の実情に見合っているかど
うかということ。
全社情報化中長期計画8
情報化投資は省力化の効果のあるものは、
ほぼ実現している企業が多いこともあり、効
果が定量的にわかりにくい。
全社情報化中長期計画9
費用の年度計画
一般に、各事業部門及びシステム部門は、
年度計画(上期、下期)を立案する。
上期末には当初の下期計画を見直す。
各部門にとって活動計画の全般にわたる
費用の予算・実績をトレースする作業であ
る。
費用の年度計画2
投資額は、ハード関係は固定資産として、
またソフト外注費は無形固定資産として償
却され、各期に費用として計上される。
償却期間は、ハードは取得金額や機器構
成によって異なるが、ソフト外注費は5年間
に固定されている。
ハードはリースする企業も多く見られる。
費用の年度計画3
費用の年度計画4
費用の年度計画の数値が今後の投資計画
すなわちシステム計画に影響を及ぼすことが
あるということを知っておかなければならない。
費用の年度計画5
今日、すべての企業が情報化の重要性を
認識しているが、情報化の効果は短期的
な利益の向上につながることは少ない。
長期的な企業の体質向上などが主目的に
なることが多いので、経費削減の対象にな
りがちである。
費用の年度計画6
各事業部門に情報化のコスト意識を持ってもらうた
めに、
システム部門の費用は、各事業部門に直接付け替えられる
または予算立案時に費用配賦するという制度をとっている企
業が多い。
システム開発計画
システム開発計画の作成は、一般に次の
ような手順で進む。
1.システム開発の手順を明らかにした上で、現
状の調査分析を行う。
2.業務設計、システム機能の検討へと進み、シ
ステム構想を作成する。
3.システム構想を実現させる手順を検討し、シ
ステム開発計画を立案する。
システム開発計画
投資案件として、その企業で想定された決済
基準に従い、委員会、経営会議の承認を
受ける。
承認が得られれば、次のステップであるシス
テム開発を進めることができる。
システム開発計画
経営会議の承認を得るためには?
・ユーザー部門、システム部門、事務者、SEと共
に、システム構想やシステム化に伴う業務の見
直し、ソフトハウス等の利用などについて検討す
る。
システム開発計画に盛り込むべき必要事項
システム開発計画に盛り込むべき必要事項
経営者の関心
・費用対効果がどうなるか
つまり・・・
→経営者に該当条件の定性効果をわかりや
すく説明し、了承してもらうことが大切。
システム開発計画に盛り込むべき必要事項
コツ
→効果を体言止めで表現せずに、「動詞形」で表現す
る。
例)
「在庫の縮小」→「3ヶ月分の在庫を1ヶ月分に減らす」
「納期の短縮」→「納期を1ヶ月から20日に短縮する」
「決算日程の短縮」→「財務諸表の出力を月初10日から
月初3日に早める」
システム化に伴う業務の見直し
SLCP-JCF98委員会が作成した「共通フ
レーム98(SLCP-JCF98)」では、業務の視
点から見たソフトウェアのライフサイクルを、
企画プロセス→開発プロセス→運用プロセ
ス→保守プロセス
といった4つのプロセスでとらえている。
システム化に伴う業務の見直し
企画プロセスと開発プロセスの関係を業務の視点から下の
図のように概観している。
システム化に伴う業務の見直し
企画プロセスを業務層・利用層に位置づけ、
開発プロセスの開発層とは別の層に区分
している。
業務層・利用層では、企画プロセスのみを
行なうだけでなく、開発プロセスに入ってか
らも、開発層の開発業務と並行して、業務
詳細設計を行なう。
システム化に伴う業務の見直し
システム化で効果を上げるには?
→業務そのものを見直し、コンピュータ化す
るべき。
しかし、業務ルートを変えることで効率化で
ることも多くあり、コンピュータ化するまでも
ないという結論に達することもある。
システム化に伴う業務の見直し
・人権上の問題や権限などの問題より、現状
業務を変えることは難しい。
→どうすればよいか?
・ユーザ部門をコンピュータ化以前の問題と
批判するだけなく、システム部門から業務
自体を改善するように助言すべき。
システム化に伴う業務の見直し
ユーザを無視して突っ走っても、本当に
ユーザに役立つものにはならないので、あ
くまでもユーザが真剣に考えるように、うま
く関わってゆくことが大切である。
「やりすぎてもいけないが、無関心もいけな
い」というさじ加減がユーザ部門との係わり
の難しさであり、工夫が必要な点である。
外部SEなどのシステム開発計画への参画
企画プロセスは顧客の中でもユーザ部門
の仕事だが、これをコンサルティング会社
やベンダーやソフトハウスが中心的役割を
担う場合がある。
これをソリューションと呼ぶ。
外部SEなどのシステム開発計画への参画
外部SEなどのシステム開発計画への参画
図2-5のようなケースでは、顧客(ユーザ部
門・システム部門)とコンサルティング会社や
ソフトハウスのSEとでプロジェクトチームを編
成して、調査分析やシステムの仕様検討と
いった作業を進める。
外部SEなどのシステム開発計画への参画
システム開発計画が完了し、開発を外部
委託するとなれば、プロジェクトチームが
検討したシステムの要求仕様書が開発者
に対する指示になる。
外部SEなどのシステム開発計画への参画
つまり・・・
開発者が行う開発作業は、ユーザ側から提示さ
れた要求仕様書を確認する要件定義からスター
トし、開発プロセスは、以下のようになる。
要求定義→システム設計→プログラム開発
システム開発プロセス(1)
システムの開発過程
・必要に応じて進めていると、システムが
完成している
・人間的な要素が大きく、常に意味を考慮に入れ
て作業を行う
開発効率の上昇および品質改良のために、
様々な開発プロセスモデルが誕生
システム開発プロセス(2)
具体的にはどのようなモデルが開発された
の
か??
大きく大別すると
・ウォーターフォールモデル
・ノンウォーターフォールモデル
システム開発プロセス(3)
システム開発プロセスの大まかな流れ
要件定義
システム設計
プログラム開発
システム開発プロセス(3)
ウォーターフォールモデル(1)
ウォーターフォールモデルとは
・開発プロセスをウォーターフォール(滝)の
ように、順次実行していくやり方。
・大規模システムに有効であるが、バリエー
ションが豊富なことから、原則的にどんな
システムにも対応可能。
ウォーターフォールモデル(2)
ウォーターフォールモデル(3)
同じウォーターフォールモデルでも、図2-8
のようなV字型モデルと呼ばれるものも存在
ウォーターフォールモデル(4)
V字型モデル
・要件定義を起点に下り、プログラミング
を
境に上っていく
・前半部は開発そのもので、品質の作成
・後半部は完成して品質のテストの実行
ウォーターフォールモデル(5)
ウォーターフォールモデルの問題点
・開発期間が長い場合に、要件定義に存
在
する欠陥の発見が遅れる(特にV字型モ
デル)
この欠点を改善したのが、「ノンウォーター
フォールモデル」
ノンウォーターフォールモデル
基となっている開発手法:プロトタイピング法
初期段階でシステムのプロトタイプをユーザー
部門がチェック
現実的には、サブシステム単位で作成し、部
分的に更新してユーザー部門がチェックし、
プログラムの改善を行う。
スパイラルモデル
ユーザーの反応を見ながら、スパイラル的に
行うことから、スパイラルモデル とも呼ばれ
る。
システム保守の重要性
システムライフサイクルは、開発、運用(保
守)、再開発
現実にはシステム保守が重要な意味を持
ち、長期的にみるとコストもかかってくる。
開発期間は平均2~3年程度に対し、保守
期間は一般的に10年間程度。
システム保守の重要性
システム保守は大きく分類すると、「修正のた
めの保守」と「改訂のための保守」の2種類
システム開発後、地道なシステム保守こそが
システムを使いやすくし、業務の効率アップに
つながるといっても過言ではない。
システム保守の重要性
システム保守から学ぶこと
システム保守から学ぶことは少なくない。そ
の理由としては以下の2つがある。
1.システム効果の確認
次の開発へのフィードバック
2.優れたシステムの学習及び業務知識の吸
収
次の開発への準備
2-2 システム化における各種手
法
システム化における各種方法
(1)
システム開発状況の視覚化=
「文書化」
システム化における各種方法(2)
システム化における各種方法
(3)
DFD:フローとストックを記述
するもの。
ER図:DFDに既述された
データストック(データスト
ア)を正規化し作成するも
の。
システム化における各種方法
(4)
・文書化の留意事項
1、DFDやED図以外の記述は一般技術文章に従う。
2、仕様書には目的を必ず記述する。
3、文章を構造化する。や主旨
4、次の工程の担当者にわかりやすいように、フォーマットを
統一する。
システム化における各種方法(5)
見積手法
ソフトウェア の見積もりは非常
に難しい。
上流工程ほど見積と実績の差
が大きくなる。
システム化における各種方法(6)
・2・4・2・3の法則
システム化における各種方法
(7)
概算・積算見積法
・概算法は過去のソフトウェアの経験に基づいて見積も
る方法。
・積算法は作業を洗い出しその工数を過去の経験に
よって積み上げる方法。
システム化における各種方法
(8)
見積モデル
プログラムのステップ数から工数を見積方法。
Dotyモデル、COCOMO、Putnamモデルなど。
工数=F(ステップ数、開発環境係数、開発要員係
数・・・)
システム化における各種方法
(9)
ファンクションポイント
法(FP法)
・見積方法のひとつ。
・良く使われる手法の一つ。
スケジューリング手法
第1次作業計画
システム稼動時期を確定し、システム開
発の承認を得ること。
第2次作業計画
稼動時期を遵守するため、より詳細で実
行可能なマスタースケジュールやワーキン
グスケジュールを作成する。
スケジューリング手法の詳細
WBSについて
WBSとは…
要件定義から外部設計、内部設計等へ
の過程における作業を洗い出し構造的に
表現したもの。
システム開発のWBS
ネットワークダイアグラム
ネットワークダイアグラムとは…
WBSで洗い出された作業順序を決定し、作
業計画を立てる際に用いる表記法。
プレジデンスダイアグラム法
アローダイアグラム法
の2種類がある。
プレジデンスダイアグラム法
作業を表現するのにノード、作業順序を表現す
るのにアローを用いる表記法。
アローダイアグラム法
作業を表現するのにアロー、作業順序を表現す
るのにノードを用いる表記法。
クリティカルパス
クリティカルパスとは…
計画全体の完了期日に影響を与える工程「ク
リティカル」の経路のこと。
ガントチャート
作業の開始日、終了日、期間などを簡単にし
て図に表したもの。
2-3
プロジェクト管理
プロジェクトという仕事の特徴
プロジェクトの特徴
活動期限が限られている
システムはプロジェクトごとに異なる
仕事の進め方が定型的でない
プロジェクト管理の体系
「当たり前のことをキッチリやる」ことが最重要
プロジェクトの計画と管理
目標の計画と管理
コストの計画と管理
期限の計画と管理
目標の設定
予算立案
作業の洗い出し
変更管理
予算・実績管理
スケジュールの作成
欠陥管理
スケジュールの管理
プロジェクト計画
目標の計画
コストの計画
目標とは経営課題や企業の抱える問題点をシス
テム的な観点から解決すること
コストは人件費、ハード、パッケージソフトから構
成される
期限(スケジュール)の計画
クリティカルパスを明確にし、クリティカルな工程
を重点的に管理することが重要
プロジェクト管理
目標の管理
予算の管理
作業の適当な時点での「ウォークスルー」が大
切
作業実態はどうなっているのかを把握すること
(進捗管理)が重要
期限(スケジュール)の管理
予算管理と同じく進捗管理が重要
プロジェクトチームの編成
メンバー編成のプロセス
プロジェクトを強力に推進するリーダーを選ぶ
決定権限者を参画させる
仕事のできる実務担当者を参画させる
理想とされるプロジェクトリー
ダー
自社のあるべき姿を認識している
課題や問題点を客観的に把握している
妥協点を探る調整能力がある
社内の各部門に対する説得能力がある
使命感があり、経営陣の信頼が厚い
オープンな議論ができる
開発要員の変動
プロジェクトチームは開発プロセスに応じ
て変化する
質的な仕事から、量的な仕事に移行してい
く
無計画な要因の増加は失敗の元
プロジェクトチームの形態
全社的か、部門的か
これによりチームの形態やメン
バーが変わってくる。
プロジェクトチーム
ユーザ
開発
一般的なプロジェクトチーム形態(1)
図1 大規模システムのプロジェクトチームの形態
プロジェクトリーダー
事務局・スタッフ
Aサブシステム
Bサブシステム
チームリーダー
チームリーダー
・・・
メ
ン
バ
ー
・・・
メ
ン
バ
ー
メ
ン
バ
ー
・・・
メ
ン
バ
ー
一般的なプロジェクトチーム形態(2)
プロジェクトリーダー
・・・顧客のシステムを利用する部門
の実力管理者なることが大切。
プロジェクトチーム形態の別の見
方
システム部門要員とソフトハウス要員
が
区別されてない。
自社開発
一括外注化
ユーザ部門による開発
プロジェクト管理の要点
(リーダーの役
割)
プロジェクト管理
・・・ルーチンワークよりも一層高
い
管理スキルが求められる。
管理者にはEQの高さが、IQや専門スキ
ル
よりも重要。
リーダーシップを発揮すること(1)
リーダーシップ
・・・目標を達成するために、メンバー
に
その目的や方針を理解させ、自ら
行
動を起こす影響を与える力。
リーダーシップを発揮すること(2)
リカートによると・・・
リーダーは民主的であることを基本に、
ときには専制的であることも必要。
リーダーたる者はプロジェクトに対する
「情熱」を持たなければならない。
リーダーシップを発揮すること
(3)
目的・構想、戦略・方針をメンバーに熱く伝えること
メンバーに対して意識付けをすること
メンバーのモチベーションを向上させること
コミュニケーションをうまく図ること
科学的にアプローチすること
(1)
ものごとを総合的に見ること
「部分の総和は必ずしも一致しない」
リーダーは全体を見渡して問題
を解決することが必要。
科学的にアプローチすること
(2)
QCサイクルの実践
P-D-C-Aサイクル・・・仕事を論理的に推進
していく。
進行状況は目には見えないので、事実を正確に
把握することは非常に難しい。