Transcript 環境熱流体工学
エネルギー利用・流体物性論 Energy Utilization and Fluid Properties 空間・環境デザイン工学専修 佐藤 春樹 http://www.sato.sd.keio.ac.jp/ 講義内容 1.概論 2.地球の熱収支と地球温暖化 3.熱力学サイクルと効率の定義 4.エクセルギーとヒートポンプ 5.流体の熱力学状態曲面 6.飽和蒸気圧力および気相域のモデリング 7.分子間ポテンシャルモデル 8.液相域と臨界域のモデリング 9.混合流体の熱力学性質 10.気液平衡・熱力学サイクルの計算 実在流体物性 流体力学はCFDなど何でもできるように感じられるかもしれ ないが、物質に固有な熱物性を取り込んだ計算は,まだ十 分とは言えず,今後の課題である。 発電,ガス,石油,エンジン,ヒートポンプ(冷蔵庫,空調 機,給湯機)・・・などなど,エネルギー変換システムの多 くは流体によって機能している。 一方で,ほんの僅かな物性の違いで現象が大きく異なっ てくることがある。(宇宙:湯沸かし;自然の仕組み:積乱 雲;自然対流;蒸散;小温度差エネルギーの利用:太陽 熱利用;海洋温度差発電) Experiments of decompression boiling Delicate phenomena for natural-energy utilization 20 15 15 (T -T cool) / K (T -T cool) / K 20 10 Heater 10 5 Evaporator 5 Condenser 0 0 0 1 time/ h 2 0 1 time / h 2 エネルギー利用と流体物性 地球環境 地球温暖化(グローバル気象:空気、二酸化炭素、海水、水、・・・) ヒートアイランド(ローカル気象) 水資源の確保(砂漠などで水がない;水はあっても飲めない) エネルギー資源 化学工学 石油化学(石油精製):化学平衡 化石燃料の輸送(LNGパイプライン) エネルギー利用 エネルギー供給(動力) 燃焼(水素、空気および炭化水素系物質) 蒸気タービン(水) 燃料電池(天然ガス、アルコール、水素) 有機ランキンサイクル、海水温度差発電(有機流体, NH3+H2O ) エネルギー消費(ヒートポンプ) 空調(圧縮式:フロン;吸収式:LiBr+H2O, NH3+H2O) 給湯(二酸化炭素、フロン) 冷蔵・冷凍(フロン、炭化水素) 作動流体 1990年頃までの熱エネルギー利用は、基本的に水を用 いた発電やフロンによるエアコンなど純粋流体を作動流体 として用いていた。今も純粋流体に近い流体を用いること が多い。 一方で、混合物も利用することで応用の幅が広がってきて いる。 火力・原子力発電所:水、水蒸気H2O+NH3 空調:R22R410A(R32+R125) ? 冷蔵庫:R12R134aisobutane カーエアコン:R12R134aCO2? 給湯器:ガス電気ヒートポンプ(CO2, R410A) 以上の応用分野は気液平衡 最近はメタンハイドレートなど固体との相平衡も視野に入ってきて いる。 実在流体物性の最先端 熱エネルギー利用の高度化が地球環境問題を解決する 上で最も重要な対策のひとつである。 熱力学の体系は素晴らしいが、いざ使おうとするとエンタ ルピーやエントロピーなどの熱物性値が計算できないなど 現実的でない面がある。 熱力学を使えるようにすること =熱流体物性を使えるようにすることと言っても過言 ではない。 実在流体の物性を数式で表現することは自然現象をモデ リングすることでもある。 分子からの理論アプローチ、実測データからのアプローチ 両面から最新の情報を解説したい。 熱流体物性の物理的アプローチ 熱流体物性 熱力学性質(平衡性質) 輸送性質(非平衡性質) 分子の振る舞いが、どのようにマクロな物 性となって現れるのか? 分子動力学 分子間ポテンシャルモデルと統計物理 創発的アプローチ(複雑系) 実在流体物性のモデリング 熱力学状態方程式の紹介 気相 液相 飽和状態(気液平衡) 臨界点と超臨界域 混合流体 熱流体物性データベース http://physics.nist.gov/cuu/index.html http://webbook.nist.gov/chemistry/fluid/