強度因子である土壌

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Transcript 強度因子である土壌

土壌の酸性化:
「強度因子である土壌pHの低下、あるいは容量因子で
ある酸中和量(Acid Neutralization Capacity)ある
いは緩衝能の減少」として定義される.
土壌のpH緩衝能
Step1 炭酸塩の溶解
遊離炭酸塩が多量に存在する場合、例えば石灰
施肥などを行った土壌では
CaCO3 + H+ → Ca2+ + HCO3この反応は炭酸カルシウムが存在する限り継続
し、土壌pHの変化はない。
Step2 造岩鉱物の風化・陽イオン交換
造岩鉱物に作用して金属イオンあるいはアルカリ土金属イオン
を溶脱させ、粘土鉱物を風化させる。
曹長石
2NaAlSi3O8+9H2O+2H+→2Na+4H4SiO
灰長石
カオリナイト
+Al2Si2O5(OH)4
2CaAlSi3O8+H2O+2H++NO3-→2Ca2+2NO3- +Al2Si2O5(OH)4
Step3 アルミニウム・ケイ酸塩の溶解
カオリナイト
Al2Si2O5(OH)4 + 6H+
※
→ Al3+ +3H4SiO4 + H2O
この場合はアルミニウムの可溶化・・・・生育障害
さらに土壌に「強酸」を添加すると・・・
1.
溶液中のH+が増加する
ANCが低下
2.
H+の一部が土壌交換基へ移動する。=溶液のANCは増加、
固相のANCが低下
=土壌溶液のpH低下、溶液の
3. その際、二次鉱物(層状ケイ酸塩)に保持されたH+は、
その骨格と反応して破壊(風化)させるので、交換性H+
は減少してアルミニウムイオンが溶出する。=固相の
ANCは変化なし
強酸の添加=固相ANCの低下
4.
Al3+ +
H2O
⇔
AlOH2+ +
H+
1.へもどる
二酸化硫黄、硫酸
火山活動、石炭・石油の燃焼により生成(工場、自動車)
水と反応。
SO2・H2O
=
SO32-
+
2H+
(プロトンの放出)
マンガンや鉄イオンの触媒反応。
SO2・H2O + O2
=
2H2SO4
(硫酸に酸化、湿性沈着)
オゾンや過酸化水素水ともに微細な雲粒に取り込まれる。
SO2・H2O + O3 = H2SO4 + O2
SO2・H2O2 = 2H2SO4 (硫酸に酸化、酸性霧、酸性雨)
アンモニュウム塩
由来:家畜などの排泄物から揮散、アルカリ土壌で有機物の
分解にともない生成したアンモニアの揮発、化成肥料からの
揮散
硫酸、硝酸が溶解した雨や霧の粒子に捕捉されると硫酸アン
モニュウムや硝酸アンモニュウムとなり乾性沈着する。
2NH3 + H2SO4 = (NH4)2SO4
これが乾性沈着として主に土壌中において硝化されると
NH4+ + 2O2 = NO3- + H2O + 2H+
となり土壌酸性化に寄与する。
森林に対する影響
・酸性降下物(とくにSO2)は樹木に沈着しやすい。
↓
降雨にともない溶脱される。(樹幹流、林内雨の計測結果
図①参照)
樹幹流の年平均pHはコジイ林,スギ林,ヒノキ林でそれぞれ4.5,3.8,3.9で,
スギ林,ヒノキ林で低く,コジイ林で高い値を示した。
・コジイ林の樹幹流のpHは傾き1の直線を中心にばらつき,年平均pHは林外雨
と同じ。
・スギ林,ヒノキ林では,1点を除きすべての樹幹流が林外雨より低い値。
スギ,ヒノキ林で雨水が樹幹を流下する過程で酸性化が起こる?
アンモニュウム塩の問題
実際の日本の降雨では、酸性雨に寄与する物質の10~20%が中
国大陸から黄砂により飛来するとも言われている。
富山県での降水中の溶存イオンの年間負荷(表②参照)
・アンモニュウムイオンが水素イオンよりも多い。
(世界中でこの傾向がある。)
・土壌中で硝化されれば、アンモニュウムイオン1モルあたり
2モルの水素イオンを放出する。
NH4+ + 2O2 = NO3- + H2O + 2H+
・単純に降雨のpH値だけで酸性雨の強弱を評価できない!
玉野市出崎半島における雨水中のカチオン
雨水にともなう養分供給量 (kg/ha・7ヶ月)
Na NH4-N K Mg Ca
NO3-N
林外雨 (a) 18.26 4.31
5.41
1.18
1.01
3.12
樹冠通過水 (b) 26.91 3.35
溶脱 (c= b-a) 8.65 -0.96
35.35
29.93
3.67
2.49
4.55
3.53
5.79
2.67
84.7
67.8
77.7
46.2
溶脱の占める
割合 (%)
32.2
(c/b×100)
-
-土壌の塩類化のメカニズム-
P/PET<0.50の地域(乾燥、半乾燥地域)
土壌中の水分が下方から上層へ移行するフラックスに
人為的な潅水が加わると・・・・・・・・
1)大量の灌漑水の供給は地下水位の上昇をもたらす。
2)土壌の浅い場所に一次地下水位が形成。
(乾燥地では比較的浅い場所に不透水層がある場合が多いので・・)
3)表層土壌との間に容易に毛管水の連絡が起こる。
4)上向きフラックスにより水分の表層移行が起こる。
5)土壌中の水溶性塩類が表土へ移行して集積する。
土壌中の水溶性塩類が表土へ移行して集積したら、表層土壌では・・・
1)土壌の交換基の大部分を水溶性塩類が占めてしまう場合(塩類土壌)
EC>4dS/m & ESP<15% pH<8.5
2)交換基に結合している塩基は加水分解をして水酸イオンを生じる(土壌
のアルカリ化)
EC<4dS/m &
ESP >15% pH>8.5
H2O
Na+
Na+
H+
OH-
さらに炭酸塩を含む土壌では・・・・・(pH10ぐらいになる。)
Na2CO3 +
H2O
Na2HCO3 +OH- +Na+
Na+
NaOHが多量に生成され強アルカリになってしまう
注:ESP=Exch.Na/CEC