集団給食を脅かす衛生的要因

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集団給食を脅かす衛生的要因
(社)日本食品衛生協会認定食品衛生管理士
殿元正徳
(前 (社)大阪食品衛生協会専務理事)
集団給食を脅かす現在の衛生的要因
• 食中毒
細菌性
ノロウイルス
その他
・ 感染症
新型インフルエンザ
(豚インフルエンザ)
その他ウイルス
衛
生
対
策
の
確
立
と
実
施
完全実施
楽しい・おいしい・安全安心
未実施・不完全
給食存続支障
2
食中毒の発生状況
(平成20年厚生労働省統計より)
病因物質別発生状況
発生件数
自然毒
152件
11.1%
その他
17件
1.2%
化学物質
27件
2.0%
患者数
不明
91件
6.6%
ウイルス
304件
22.2%
・カンピロバクタージェジュニ/コリ
509件, 37.2%
・サルモネラ属菌 99件、7.2%
・ぶどう球菌
58件、4.2%
・ウエルシュ菌 34件、 2.5%
・セレウス菌
21件、 1.5%
・腸炎ビブリオ 17件、1.2%
細菌 ・腸管出血性大腸菌(VT産生)
17件 1.2%
778件・その他の病原大腸菌
56.8%
12件、0.9%
・コレラ菌
3件 0.2%
・赤痢菌
3件 0.2%
・ナグビブリオ
1件 0.1%
・その他の細菌 4件 0.3%
この内
ノロウイルス
303件
22.1%
自然毒
387人,1.6%
発生件数:1,369件
不明
1,289人,5.3%
化学物質
619人,2.5%
細菌
10,331人
42.5%
ウイルス
11,630人
47.9%
この内
病因物質別発生状況
その他47人
o.2%
ノロウイルス
11,618人
47.8%
菌
・カンピロバクタージェジュニ/コリ
3,071人, 12.6%
・サルモネラ属菌
2,551人, 10.5%
・ウエルシュ菌 2.088人, 8.6%
・ぶどう球菌 1,424人、 5.9%
・その他の病原大腸菌
501人, 2.1%
・セレウス菌
230人, 0.9%
・腸炎ビブリオ 168人, 0.7%
・赤痢菌
131人, 0.5%
・腸管出血性大腸菌(VT産生)
115人, 0.5%
・コレラ菌
37人, 0.2%
・ナグビブリオ
5人, ー
・その他の細菌 10人, ー
病因物質別発生状況
患者数:24,303人
3
食中毒の月別発生状況
(平成20年厚生労働省統計より)
発生件数:1,369件
患者数:24,303人
患者数
事件数
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
(2)
(1)
(1)
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
事件数
患者数
*(数値)は
死者
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
4
食中毒の発生に異変が起きているのではないか?
• 食品衛生関係者の間で平成21年の食中毒発生件
数・患者数共に極めて少ないとの推定評価がある。
• 理由は不明 ⇒食中毒も景気に影響されたか?
⇒地球温暖化の影響か?
・世の中うまく埋め合わせ出きるようになっている。
・新型インフルエンザで衛生的に用心?
5
年次別食中毒発生状況
厚生労働省資料より
発生件数
患者数
2500
45000
40000
2000
35000
30000
1500
25000
20000
1000
15000
全発生件数
カンピロバクター事件数
ノロウイルス事件数
全患者数
カンピロバクター患者数
ノロウイルス患者数
10000
500
5000
0
0
H13
H14
H15
H16
H17
※平成20年
発生件数
1,369件
患 者 数 24,303人
H18
H19
H20
H21
平成21年(10月23日現在)
520件
11,299人
6
ノロウイルスの感染集団発生の月別推移
(Genogroup別)
IASR資料より抜粋
7
ノロウイルスの感染集団発生の月別推移
(推定感染経路別)
IASR資料より抜粋
8
インフルエンザの発生状況
H21.11.19付大阪府健康医療部保健医療室報道提供資料より抜粋
警報発令(定点当たり30人以上になったため、10人以下で解除)
9
ノロウイルスとインフルエンザ
ノロウイルス
インフルエンザウイルス
構造
・大きさ330~38nm。
・球に近い正20面体
・エンベロープ持たない。周囲はカップ状の窪
みを持つヌクレオカプシドで構成される層で核
酸を被っている。
・RNAウイルス
・大きさ80~120nm
・球形
・脂質とタンパク層の2層からなるエンベロープを持つ。
エンベロープから宿主細胞侵入に必要なヘモアグルチニン
と細胞内でウイルス複製後、放出に必要なノイラミニダー
ゼの多数の突起を持つ。層の内部はヌクレオカプシドで構
成される層が核酸を被っている。
・RNAウイルス
種類
遺伝子型によりGⅠ(1~!5)
GⅡ(!~!8)
ウイルス粒子内部の核タンパク性質により、ABCの3型。
AはH16種、N9種の組み合わせ
感染動物
人特異性
A⇒鳥、豚、馬、人等、
伝播力
数10コピーのウイルスで感染
強い
毒
比較的軽い
季節性インフルエンザより強い。
人工培養系
なし(人間の小腸上皮細胞でのみ増殖)
有(受精卵等で培養可能)
ワクチン
出来ない
出来る
治療薬
なし
可能
消毒薬
効果低い
アルコール等効果あり。
性
感染方式
・食中毒
二枚貝の生食、不十分な加熱
人⇒食品⇒ひと
・接触感染・飛沫感染
BC⇒人
・飛沫感染(患者⇒人)
・接触感染(患者⇒接触物⇒人)
10
ノロウイルスとインフルエンザウイルスの模式構造
球形で2層からなるエンベロープ。エンベロープ上には感染突
起が無数に存在する。エンベロープの内部全面をカプシドから
なる層がおおっている。その中心部に遺伝子がある。
球形に近い正20面体
で全面をカプシドから
なる層が被いその中
心部に遺伝子がある。
へモアグリチニン
ノイラミ二ダーぜ
カプシド
遺伝子
エンヴェロープ
ノロウイルス
脂質層
タンパク質層
インフルエンザウイルス
文献:
・ノロウイルスQ&A 西尾治「食と健康10.2009」
・ノロウイルスQ&A 厚生労働省インターネット
・国立感染症研究所 インターネット
・「鳥インフルエンザに学ぶ」鹿児島大学 岡本嘉六
大分県獣医師会主催市民公開講座(2004・10.)インターネットより
11
給食従事者のインフルエンザ対策
厨房内に持ち込んだら(従事者相互に感染)給食に支障をきたす。
○従事者の対策
○発病したら
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
健全な日常生活
マスクをする(飛沫感染防止)
可能な限り頻回の手洗い
うがいを行う。
ワクチンの接種を積極的に受ける
極力手指で口・鼻・目等に触れない
咳エチケットの実施
人ごみの多いところは極力避ける
咳をしている人から離れる
金銭を扱う人、下げ膳担当者は特に①~⑥に注意
症状:38℃以上の高熱・倦怠感・咳・咽頭痛と消化器症状(少ない)
潜伏期間:数日
感染機関;発熱前半日から5~8日
発病注意期間:7日
①事前に病院に連絡、診断治療を受ける。
②事業所に連絡・指示を受ける。
③医師の治癒診断があるまで出勤など外出はしない。
○客席の入り口には、手洗いステッカー、アルコール消毒剤等を設置する。
12
集団給食 食中毒の予防対策
ありがたや!
原則・法律・マニュアル
冬場の
食中毒対策として
必要なこと
遵 守
会社繁栄
食中毒予防の3原則
食中毒菌を
①つけない
②増やさない
③殺
す
マニュアル遵守
・大量調理施設衛生管理
マニュアル
・学校給食衛生管理基準
衛生管理組織・
体制の整備
(職員間の衛生管理に
対する意思の疎通を図る)
13
集団給食施設における食中毒発生状況
(平成20年厚生労働省統計資料より)
施設
病因物質
事業所
事件数
細菌
(件)
学校
患者数
事件数
(人)
病院
患者数
(件)
事件数
(人)
(件)
総計
患者数
事件数
(人)
(件)
患者数
(人)
サルモネラ属菌
5
234
2
40
1
11
8
285
ぶどう球菌
4
65
3
99
ー
ー
7
164
その他の大腸菌
1
15
ー
ー
ー
ー
1
15
ウエルシュ菌
6
204
ー
ー
1
41
7
245
カンピロバクター ジェジュニ/コリ
2
42
7
175
ー
ー
9
217
ノロウイルス
18
921
5
157
ー
ー
23
1,078
自然毒
5
25
1
5
ー
ー
6
30
化学毒
7
126
2
121
ー
ー
9
247
不明
ー
ー
1
19
ー
ー
1
19
合計
48
1,632
21
616
2
52
71
2,300
ウイルス
14
食中毒事件例
ノロウイルス
(厚生労働省資料より)
•
•
•
・
・
・
・
発生月日
発生場所
施設
原因食
喫食者
患 者
調製年月日
平成20年2月26日及び27日
愛媛県
事業所給食
昼食弁当
655人
101人
不明
○疑問点
①調理従事者の中にノロウイルスの健康保有者がいたのでは?
②食材に海産魚介類が使用していなかったか。
○教訓
①日常職員の健康状態を把握する。
②従業員の手洗い指導は十分に行う。手洗いがもっとも大事
③海産魚介類は85℃1分間以上加熱 輸入海産魚介類も要注意
④症状のある者は便中ノロウイルス消失まで職場復帰しない。復帰後も手洗いの
励行、使い捨て手袋の使用。
⑤ノロウイルスシーズンには検便の実施
⑥下痢、吐物の処理は適切に行う。下痢、吐物は乾燥させない。窓など開放して処置、自分自
身が感染しないよう細心の注意要。塩素系消毒薬で消毒(1,000~5,000ppm)
15
輸入生鮮魚介類のノロウイルス汚染状況
平成19年度 厚生労働科学研究(食品の安心・安全確保推進研究)
「輸入食品中のウイルス汚染の実態調査とその対策」
国立感染症研究所 感染症情報センター 西尾 治
秋山美穂
(食品衛生研究Vol28 2008年10月号掲載)
調査鮮魚介類
検出件数
シジミ
タイラギ
ハマグリ
アカガイ
加熱用カキ
エビ類
生食用カキ
1,327件
213件(16%)
(汚染率)
40%
16~19%
17%
2%
16
ノロウイルス手洗対策
大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省)による方法
①水で手をぬらし石鹸を付ける。
②指、腕を洗う。特に指の間、指先をよく洗う(30秒程度)
③石鹸をよく洗い流す。(20秒程度)
④使い捨てペーパタオル等でふく。(タオル共用はだめ)
⑤消毒用アルコールをかけて手指によくすりこむ。
(①~③までの手順は2回以上実施)
ノロウイルスは、38nmであり、爪の間や生命線にもぐりこまれる排除できない。
※生命線の深さ0.1mmと仮定すれば
0.1÷38/1,000,000=2600
危険
約2.6mの深さにもぐりこんでいることになる
危険
裾は肘までの調理作業着
*クリップアートには適当な手の図案がないのでお許しをいただきたい。
17
食中毒事件例
•
•
•
•
•
•
•
•
サルモネラ属菌
発生年月: 平成21年11月4日
発生場所: 大阪府
施
設 :保育所給食
原 因 食 :フレンチトースト
喫食者
:喫食者不明
患者数
:17名
調製月日 ;11月29日
喫食年月日:11月29日
食品は中心部75℃1分間以上の
加熱をしよう!
(以下は演者が推定した者)
○推定原因 ①卵の割り置き放置
②加熱不足
③フレンチトーストの喫食までの常温長時間放置
○疑問点
○教訓
割卵後長時間放置しない。
(特に厨房内で)
①原因菌は卵を使用していることからサルモネラ エンテリティ
ディスと推定される。
②原因菌は卵からきたか、調理従事者由来か?
③納入時検収をしたか? 保管は?
①割卵は、調理前に行う
②充分加熱する
③調理後は迅速に喫食に供する。
18
食中毒事件例 カンピロバクター
•
•
•
•
•
•
•
•
発生年月日:平成21年6月4日
発生場所 :群馬県
施設
:事業所給食
原因食
:不明(給食)
喫食者数 :2,300名
患者数
:228名(その後の情報ではさらに増加の見込み)
喫食年月日:5月27、26日の食事
発症年月日:5月27日以降
カンピロバクターの特徴
○嫌気条件や大気中では発育しない
○発育至適温度34℃~43℃
○25℃前後では増殖しがたい.
○4℃程度の冷蔵や水中では長時間生存
(以下は演者推定)
○疑問点と原因推定
①食事メニューに食肉(特に鶏肉)を使っていなかったか?
②生肉扱った調理器具を加熱済みの食品に共用した。
③生肉あつかった従業員が手指を十分洗わずに盛り付け等に従事した。
④冷蔵保管の不備、鶏肉のドリップが提供用加熱済み食品を汚染した。
○教訓
①食品の中心部を75℃1分間以上加熱
②生肉は専用のふたつきの保管容器に保管
③生肉扱った場合、手指の十分な洗浄消毒
④生肉の調理器具は専用とする。使用後はよく洗浄消毒
⑤生肉の取扱う場所と他の食品の調理場所は距離を置く。
19
食中毒事件例
•
•
•
•
•
•
•
•
発生年月日
発生場所
原因施設
原因食
喫食者数
患者数
喫食年月日
発症年月日
:平成19年7月31日
:広島県
:その他(刑務所)
:給食
:1,559名
524名
:記載なし
:記載なし
ウエルシュ菌
ウエルシュ菌の特徴
○嫌気性有芽胞菌
○動物、鳥類の腸管に棲息
○芽胞は100℃4時間加熱しないと死滅しない。
○腸管内でエンテロトキシンという毒素を産生
ウェルシュ菌食中毒は給食病と呼ばれる
○疑問点と原因推定
①給食メニュウを翌日のため作業終了後大量調理しそのまま放置
○教訓
①大量調理した場合は、迅速に中心部まで放冷、10℃以下の冷蔵庫に保存
②ウエルシュ菌は嫌気性有芽胞菌。芽胞は100℃4時間以上加熱しないと死滅しない。
③10度以下に冷却してやると、空気が食品中に戻ってくる。芽胞は発芽できないし、菌も増
殖できない
20
終わりにあたって
•
平成21年は食中毒発生件数及び患者数が少ないと推定.
•
その代わり新型インフルエンザが猛威をふるい、今後とも流行の拡大が危惧される。
•
食中毒発生あるいはインフルエンザが従事者に拡大した場合、給食事業の遂行に支障が生じる。
•
衛生管理という点では両者は共通点もあり、各種マニュアル、ガイドラインをよく熟知し、整理し実施する
必要がある。
○食中毒関係:
大量調理施設衛生管理マニュアル
各種食中毒に関するQ&A
○インフルエンザ関係:
新型インフルエンザ対策行動計画
事業者・職場における新型インフルエンザガイドライン
新型インフルエンザA/H1N1に関する事業者・職場のQ&A
等
・常に発生状況等について政府,地方自治体からの情報把握に努めること。
・事業継続を行うための危機管理体制マニュアルを作成し、日常訓練をしておく必要がある。
21