Transcript CP 対称性の破れ
宇 宙 の 謎 を 探 る | どうして宇宙は 物質で満ちているのだろう。。。 宇宙がビックバンで生まれた直後は物質 と反物質は同数あった。しかし我々が生き ている現在の宇宙には反物質がほとんど ないことがわかっている。宇宙が現在まで 進化する過程で、反物質はどこに消えてし まったのか。 その秘密を解く鍵 - CP 対称性の破れ (CP violation) 素粒子の対称性 • この自然界では、電荷 C (Charge) 、空間 P(Parity) 、 時間 T (Time) という三つの基本的な離散対称性が存在 する。 – C対称性とは電荷共役に対する対称性で、C変換することによって粒 子(反粒子)は反粒子(粒子)へと変換される。 – P対称性とは空間を左右ひっくりかえす変換に対して世界は不変であ ることを意味する。 – T対称性とは時間反転に対して世界は不変であることを意味する。 • CP対称性不変とはC変換とP変換を同時に施された世界が 元の世界と同一であることである。 • 素粒子の世界では、実はCとP、さらにはその積であるCPに ついても弱い相互作用では破られていることが発見された。 • しかし、CP対称性が何故破れているのか、その起源がどこ にあるのかは未だ謎である。 CP非保存と関係する 素粒子物理学上重要な発見の歴史 1931 反粒子の存在の予言(Dirac ) 1932 陽電子の発見(Anderson) 1957 Pの破れの発見(Lee, Yang, Wu) 1964 弱い相互作用でのCPの破れ発見(Cronin, Fitch 他) 1973 三世代のクォークによるCP対称性の破れの予言(小林、益 川) 1974 J/y (cc) の発見(Ting, Richter 他) 1977 1981 1987 1995 1999 (bb) の発見(Lederman 他) B中間子系における大きなCPの破れの予言(三田、Bigi ) B中間子系における混合の発見(ARGUS) t quark の発見(CDF, D0) K中間子計における直接的CPの破れの観測(KTeV, NA48) クォークと レプトン u W+ d b u B0 d B0 g p+p崩壊事象 p+ p- d W+ d p+ b g B0 u u, t, c u d d p- 上の図を Tree diagram と呼び、下の図を Penguin diagram という。 二つの図の違いを ペンギン効果と呼び、 強い相互作用による 不確実性はまだ解明 されていない。 小林益川理論 クォークが三世代あると、世代混合によりCPの対称性の破れ を自然に曖昧なく導入することができる。 まだ up, down, strange という3つの quarkしか見つかっ ていない時代に 小林と益川は三世代目のquark の存在を 予言し、その後bottom, top, charm が発見された。 世代混合は、 数学的にCKM matrix により可能になる。 二世代混合を提唱した Cabibbo Vud Vus Vub の名も含め、三人の名前の頭文字 Vcd Vcs Vcb より成る。 Vtd Vts Vtb Belle 実験 目的: B中間子を用いた 小林益川理論の検証。 bクォークが uやdクォークとくっついた状態であるB中間子 の崩壊を観測し、小林益川理論が予言するB中間子の崩壊 時に起きるCP対称性の非保存を検証する。 bottom クォークのまたの名を beauty というがBelle は B 中間子のBと beautyという意味の フランス語を合わせて 名付けられた。 次のポスターからB中間子を大量につくりだす装置と その崩 壊を測定する装置の説明をする。 • KEKB加速器 (Bファクトリー) • Belle測定器 KEKB加速器 (Bファクトリー) 高エネルギー加速器研究機構 茨城県つくば市 2リング 電子、陽電子加速器 一周 約3km 直径 約1km KEKB 非対称エネルギー 電子、陽電子衝突型加速器 8GeVの電子と 3.5GeVの陽電子を衝突させると、ボトム クォークと反ボトムクォークの共鳴状態(4S)を通して、B中 間子と反B中間子ができる。 CP対称性の非保存を観測するには、Bと反B中間子の崩壊時 間の差をみる。違うエネルギーの電子と陽電子を衝突させる ことにより、 (4S)をローレンツブーストさせ、B中間子の崩 壊時間を伸ばす。崩壊時間の差はそれぞれのB中間子の崩 壊位置の差を時間に焼きなおすことで測定する。 現在、世界にこのタイプの加速器は二台存在し、ひとつは Belle実験が行われてるKEKBで、もうひとつはKEKBのラ イバルで、BaBar実験が行われているPEP-II(米国)である。 CP非対称性を観測するにはB中間子がある特定のモードに崩 壊しなくてはならない。B中間子を大量に作らなければなら いので、KEKB, PEP-IIはBファクトリーと呼ばれている。な お、現在1秒につき約8個のB中間子対が生成されている。 KEKB 世界記録を更新中 加速器における粒子の生産性を表す単位に ルミノシティーがある。 単位は barn1を使う。(b = 10-28m2) KEKBと PEP-II加速器のB中間子生産競争においては KEKは先に始まった PEP-IIの積分ルミノシティーを抜き、世界記録を更新中である。 Belle ルミノシティー 2003年2月10日現在, 積分ルミノシティーは Belle 107.79/fb Babar 100.84/fb Belle Detector Aerogel Cherenkov cnt. n=1.015~1.030 SC solenoid 1.5T 3.5GeV e+ CsI(Tl) 16X0 TOF counter 8GeV eTracking + dE/dx small cell + He/C2H5 Si vtx. det. 3 lyr. DSSD m / KL detection 14/15 lyr. RPC+Fe 各測定器の概要 (内側から 外側へ) SVD silicon vertex detector CDC central drift chamber ACC aerogel cherenkov counter TOF time-of-flight counter Bの崩壊位置の精密測定。 ECL CsI 結晶 calorimeter KLM muon KL 検出器 光子と電子の検出とエネ ルギー測定。 ミューオン、KLの検出。 荷電粒子の運動量の精 密測定。 1.2~3.5GeV/cの運動 量範囲での粒子の識別。 <1.2GeV/c 粒子識別。 trigger timing を作る。 観測された B0 g p+p- 崩壊事象 CP対称性の破れ p中間子への崩壊過程でも観測 2003年1月23日、Belle実験グループはCP対称性の破れがB中間 子が2つの中間子に崩壊する過程でも観測されたと発表。 Belleで観測された、π中間子対の事象のひとつが前の図である。 次の図は Belleで観測された B0 → π+π- と反B0 → π+π- の崩 壊時間分布を表す。 2つの点でCP対称性の破れが観測されたと 言える。 崩壊時間分布が B0と反B0で違う。 観測された反 B0 → π+π-の数はB0 → π+π-の数より多い。 CP対称性が保存されていれば、B0と反B0は同数でしかも同じ崩 壊時間をもっていなければならない。 実線と点線は、 CP対称性の破れをパラメターにした理論の予想値で、 データに合うようにパラメターの値が決められている。なお、この解 析に使われたπ中間子対の数は 163個。B中間子対の総数は 8 500万個にのぼる。 BelleにおけるCP対称性の破れの観測 B0 → π+π-(△)と反 B0 → π+π-(○)事象の崩壊時間分布。 時間の単位はピコ秒(1兆分の1秒)。