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FibroScan 502による
肝線維化の評価
杉岡陽介1 建石良介2 増崎亮太2
1) 東京大学医学部附属病院検査部
2) 東京大学医学部附属病院消化器内科
<はじめに>
慢性肝疾患患者の肝線維化の程度を知ることは
発癌リスクを予測する上で重要であり、インターフェロンの
可否など今後の治療方針にも影響してくる。現在、
線維化の評価は肝生検に頼らざるを得ないが侵
襲的な検査であり、負担も大きく頻回な検査は困難
である。近年非侵襲的な肝線維化定量法として
transient elastographyを用いたFibro Scan502が開
発された。今回Fibro Scan502を用い肝の線維化に
ついて検討したので報告する。
寸法 135×68×61cm
重量 46Kg
プローブ
ボタン
振動子
超音波トランス
デューサー
青色ダイオード
<測定原理>
プローブから発生される可聴振動の肝臓
内における伝播速度は線維化が進んでい
ると速く、進んでいない場合には遅く伝播さ
れる。この原理を用い肝内における伝播速
度を超音波により追跡し速度の変化を解
析する事により線維化の程度を定量的に
測定する。この硬さは(kPa)で表される。測
定は10回行いその中央値で表した。測定
に要する時間は約5分ほどである。
<測定原理>
 振動子を使用して振動波を送る。
 振動波を超音波で追跡し速度を解析する。
波 形
時 間
超音波信号取り込み
<肝内伝播速度解析図>
5
深さ (mm)
10
10
40
20
30
0
30
0
40
50
F0
VS = 1.0 m/s
E = 3.0 kPa
-5
60
0
F1
0
40
50
20 40 60 %
時間 (ms)
5
深さ (mm)
30
60
0
10
20
深さ (mm)
20
5
50
20 40 60 %
時間 (ms)
F2
VS = 1.6 m/s
E = 7.7 kPa
-5
60
0
F3
20 40 60 %
時間 (ms)
F4
VS = 3.0 m/s
E = 27.0 kPa
-5
<検査実施法>
呼気で息止めをし測定。
肋間から肝右葉で測定。
プローブは皮膚に対して垂直に当てる。
<測定に影響を与える因子>
1 腹水
2 高度の萎縮
3 脂肪
4 肋間が狭すぎる
<対象及び方法>
• 2004年9月から2004年12月までに当院
消化器内科にてFibroscanにて肝弾性
値を測定しえた137人
男性74人 女性63人
平均年齢 61.2±11.8歳
<方法>
1. Fibroscanによって測定した肝弾性値と各
種検査値(血小板数、アルブミン値、総ビリ
ルビン値)との関連を散布図にて解析した。
2. 前後3ヶ月以内の肝生検が評価可能で
あった54人について、新犬山分類による
線維化ステージ(F1-4)と肝弾性値を含む
各種検査値との相関をSpearmanの順位
相関係数にて、感度特異度をROC曲線を
用いて解析した。
<結果>
1. 対象患者の背景肝疾患は、C型慢性肝
炎・肝硬変84人、B型慢性肝炎・肝硬変14
人、非B非C肝障害39人(正常コントロー
ル10人を含む)であった。
2. 血小板の中央値は、16.4万/mm3 、アルブ
ミンの中央値は、4.0 mg/dl、総ビリルビン
の中央値は、0.8mg/dl、ALTの中央値は、
40 KIU/mlであった。
結果ー血小板値と弾性値
血小板値( x 104・μl)
40
P < 0.001
30
20
10
0
0
10
2
3
4
5
6
7
8 9
1
10
弾性値(KPa)
2
3
4
5
6
7
8
結果ーアルブミン値と弾性値
アルブミン値( g/dL)
4.7
4.2
3.7
3.2
P < 0.001
2.7
0
10
2
3
4
5
6
7
8 9
1
10
弾性値(KPa)
2
3
4
5
6
7
8
結果ービリルビン値と弾性値
6
5
P < 0.001
総ビリルビン値( mg/dL)
4
3
2
0.0
9
8
7
10
6
5
4
3
0
10
2
3
4
5
6
7 8 9
1
10
弾性値(KPa)
2
3
4
5
6
7 8
アルブミン値
100
Albumin Concentration
(gdL)
Liver Stiffness (kPa)
Fibroscanによる弾性値
4.5
10
4
3.5
0
F1
F2
F3
F4
3
2.5
F1
10
F3
F4
新犬山分類
Platelet Cell Count (µL1)
Bilirubin Concentration (mgdL)
新犬山分類
F2
ビリルビン値
50
血小板値
40
30
1
20
10
0
F1
F2
F3
新犬山分類
F4
0
F1
F2
F3
新犬山分類
F4
ROC曲線 F1-3 vs. F4
血小板値
1.0
1.0
0.8
0.8
sensitivity
sensitivity
肝弾性値
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
0.6
0.0
0.2
0.4
0.6
1-specificity
AUC = 0.909
0.8
1.0
0.0
0.2
0.4
0.6
1-specificity
AUC = 0.751
0.8
1.0
ROC曲線 F1-2 vs. F3-4
血小板値
1.0
1.0
0.8
0.8
sensitivity
sensitivity
肝弾性値
0.6
0.4
0.6
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
1-specificity
AUC = 0.846
0.8
1.0
0.0
0.2
0.4
0.6
1-specificity
AUC = 0.825
0.8
1.0
Spearmanの順位相関係数
相関係数
P値
肝弾性値
0.688
<0.0001
血小板値
-0.464
0.0007
アルブミン
-0.500
0.0003
総ビリルビン
0.488
0.0004
<比較>
侵襲性
報告までの時間
肝全体の把握
定量性
入院
人員
頻回な検査
肝生検
有
約一週間
刺針部位のみ
半定量(F0-F4)
必要
医師3名、技師1名
不可能
Fibro
無
約5分
全体で可能
定量(kPa)
不必要
技師1人
可能
<考察>
Fibro Scanによる肝弾性値は、肝生検による肝
線維化ステージと良い相関を持ち、他の臨床検
査データと比較して、より広いダイナミックレンジ
を持っていた。短時間で非侵襲的に検査を行える
事から、外来で定期的に繰り返し行うことが可能
である。今後は時系列的に線維化の程度を検査
し肝癌発症との関連の長期的な検討を行いたい。
また、ピンポイントでの硬さの評価を可能とするなど
の機器的な改善も必要と思われた。