10 - 環日本海域環境研究センター 生体機能計測研究部門

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A-10 超磁歪アクチュエータ駆動による
キャビテーション発生を利用した
ウイルスの不活性化
環日本海域環境研究センター
生体機能計測研究部門
鈴木 峻
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
はじめに(キャビテーションとは)
研究背景
研究目的
キャビテーション発生装置
ウイルス不活性化評価
まとめ・今後の課題
1.はじめに(キャビテーションとは)


液体の圧力が飽和蒸気圧を下回ることにより,溶存気体
の蒸発が起こる現象
船舶のスクリューやポンプなど流体機器の性能劣化・損傷
などの悪影響を及ぼす
圧
力
液体
沸騰
P
固体
気体
Pv
キャビテーション
温
度
キャビテーションによって損傷した水車
キャビテーションの有効利用

無数に発生したキャビテーション気泡が崩壊すると1GPaを
超える圧力衝撃波が生じ,温度は10000Kに達する
超音波洗浄・金属の切断などに有効利用

二酸化チタンを水媒質に添加し,キャビテーションを発生・崩壊
させると強い酸化力を示すヒドロキシルラジカルが発生
キャビテーション崩壊エネルギーによってチタンが励起され
高濃度のヒドロキシルラジカルが発生したと考えられる
2.研究背景
湖水や河川などが汚濁にさらされている場合
従来の技術では汚水量が多くなるほど処理能力が劣化
磁気応用分野から超磁歪アクチュエータを用いた機構を提案し
多量の汚濁水に対する水質浄化を視野に入れた
環境浄化への応用を考える
3.研究目的
超磁歪アクチュエータを用いて
二酸化チタンを添加した水媒質へ
キャビテーションを機械的に発生させ
キャビテーション崩壊による圧力衝撃波・熱分解作用
ヒドロキシルラジカルの酸化分解力
水質汚濁の原因となるウイルスを不活性化
4.キャビテーション発生装置
超磁歪アクチュエータと
ピストン・シリンダー機構
によって構成
アクチュエータの振動
を水槽内部に伝え,
加圧・減圧を行う
交流磁界による超磁歪素子の
寸法変化でピストン・シリンダー
が上下振動する
キャビテーション発生装置の減圧能

交流励磁電流5A駆動で 発生推力
振動振幅120mm,
最大発生推力8300Nを
出力 キャビテーション発生条件を満たす
水槽内の減圧はピストン
の断面積に反比例
158 mm

減圧能P=F/S=4290 [hPa]
F:発生推力,S:ピストン断面積
ウイルスの不活性化
ウイルスは核酸とキャプシド
キャビテーション崩壊時に生じる圧力衝撃波・熱分解作用と
(タンパク質の外殻)から
ヒドロキシルラジカルの酸化分解力によって
構成される キャプシドに損傷を与える
感染
核酸
 ウイルスは他生物に
破壊

キャプシドを介して感染
細菌
キャプシドを破壊すれば
ウイルスは感染
することができない
キャプシド
キャビテーション発生装置による
ウイルスの不活性化

キャビテーション発生装置によってウイルスに振動印加を
与える際には透析膜を用いる
水分子大きさ < 透析膜孔径 < ウイルス粒子
(0.3nm)
(5nm)
(27nm)
透析膜を用いる理由は
①ウイルスに与える条件を
保ったまま実験を遂行できる
②実験ごとに水槽部の滅菌操作を
行わなくてもよい
③他のウイルスや細菌が透析膜内に
入り込まない

透析膜
ウイルス
水分子
5.ウイルス不活性化評価
実験方法
1.透析膜へウイルスを入れる
2.水槽部へE1,E2の透析膜を入れ,アクチュエータを
駆動させる
3.取り出したウイルスを大腸菌へと感染させ,
プラークアッセイ法によりウイルスの存在数を計測
TiO2(2mmf,10粒)
キャビテーション
C1
添加しない
振動印加しない
C2
添加する
振動印加しない
E1
添加しない
振動印加する
E2
添加する
振動印加する
プラークアッセイ法による影響評価
1.大腸菌とウイルスを混合し
感染させる
2.寒天培地上に1.を均一に
まき,32℃下で12時間おく
3.大腸菌が増殖し表面が白く
なる
4.ウイルスが感染した大腸菌
は増殖できずプラークを形成
する
5.プラーク数=ウイルスの数
なのでプラークの数を計測
する
プラーク
検証結果1 振動周波数依存性
(交流励磁電流5A,駆動時間20分)


周波数が大きくなるにつれ
ウイルスがより不活性化
どの周波数下でもE1とE2
に大きな差異は見られな
かった
C1
水中で暗所保管
C2
TiO2添加+水中で暗所保管
E1
振動印加
E2
TiO2添加+振動印加
検証結果2 駆動時間依存性
(交流励磁電流5A, 振動周波数120Hz)


駆動時間が長くなると
ウイルスがより不活性化
60分間の駆動で99%の
ウイルスを不活性化させる
ことができた
C1
水中で暗所保管
C2
TiO2添加+水中で暗所保管
E1
振動印加
E2
TiO2添加+振動印加
6.まとめ・今後の課題
キャビテーション崩壊時に生じた圧力衝撃波および
熱分解作用によるウイルス不活性化影響が見られた
 60分間のアクチュエータ駆動により二酸化チタンを
添加せずともウイルスをほぼ完全に不活性化させる
ことができた

今後の課題
他の影響評価方法を考え,キャビテーション崩壊による
ウイルスの不活性化をより確証づける
水質汚濁の原因となる他の生物にも検証を行う