危険中立的投資家は、予想収益率のみで両者の選択を決める。

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貨幣の機能と貨幣需要
金融経済論(小川英治)
1
貨幣の機能



計算単位(価値尺度)
交換される商品の価値をある貨幣の数量で一
元的に表示する機能
交換手段
貨幣がすべての商品と交換され、すべての商品
の交換の媒介となる機能
価値貯蔵手段
貨幣が一定の価値を少なくとも一時的に蓄える
機能
金融経済論(小川英治)
2
物々交換
米
A
欲求の二重の一致
B
本
欲求の二重の一致:お互いに手に入れたい物と手放したい物
とが一致しなければ、物々交換が成立しない。
金融経済論(小川英治)
3
貨幣を媒介とした交換
米
A
B
おかね
おかね
おかね
自動車
本
C
貨幣が交換の媒介手段となることによって、交換が円滑化される。
金融経済論(小川英治)
4
交換のタイミング
物々交換
本
米
売り
買い
貨幣を媒介とした交換
おかね
本
売り
買い
米
「売り」と「買い」が分離可能⇒・交換が容易となる
・交換手段の価値貯蔵が重要
金融経済論(小川英治)
5
ヒックスの三角形図
計算単位としての機能
取引動機
投機的動機
交換手段
としての機能
価値貯蔵手段
としての機能
予備的動機
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6
貨幣需要
取引需要
①所得動機:所得の受取と支出の時間的ズレをつ
なぐため貨幣保有動機
②営業動機:日々の営業費用の受取と支払の時間
的ズレをつなぐための貨幣保有動機
 予備的需要
不意の支出を要する偶発的事故に備えるための
貨幣保有動機
 投機的需要
貨幣以外の金融資産価格が下落するという予想
(思惑)に基つく貨幣保有動機
7
金融経済論(小川英治)

貨幣の取引需要
想定
①年初に1回、T円の所得を受け取る。毎日の支出
額は同額である。
②年初に受け取った所得の全額を短期金融資産
に運用する。利子率はr%。
③必要に応じて、毎回C円ずつ現金化する。(平均
貨幣保有残高MはC/2となる。)現金化の回数は、
1年間でT/C回。1回当たりの現金化費用はb円/
回。
④貨幣保有に関連する費用を最小化するように、
貨幣保有残高を決める。

金融経済論(小川英治)
8
貨幣保有の費用
貨幣保有の費用
①換金費用(現金化費用):短期金融資産を
貨幣に換えることの費用
②機会費用:短期金融資産ではなく、利子の
付かない貨幣を保有することによって、失
う利子収入の機会


総費用=換金費用(現金化費用)+機会費用
K 
bT
C
r
C
2

bT
 rM
2M
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9
K
総費用K 
bT
 rM
2M
機 会 費 用 rM
現金化費用
bT
2M
M
*
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M
10
費用最小化の貨幣保有残高

総費用(K)を最小化するような平均貨幣残
高(M)を見つける。
K  
bT
2M

2
M  rM  0
総費用を最小化する平均貨幣残高(M)
M
d
T

bT
2r
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11
貨幣の取引需要の決定要因

所得あるいは支出(T)↑⇒取引需要↑
d
dM T
d
MT
dT
T
d

dM T
dT
T
M
d
T
1



2
1
bT
b
 


 


2  2r  2r 



T
bT

1
2
2r
⇒取引需要の所得弾力性=1/2(規模の経済)
 1回当たりの現金化費用(b)↑⇒取引需要↑
 利子率(r)↑⇒取引需要↓
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12
貨幣の投機的需要



金融資産の1つとして貨幣を需要する際に、
貨幣以外の金融資産を保有するよりも貨
幣を保有する方が収益率が高いという予
想(思惑)に基づいて、貨幣を需要する。
(想定)金融資産=貨幣と債券
投資家は、予想収益率の高い金融資産を
選択する。
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13
貨幣と債券の選択
貨 幣
収益率=0
債 券
予想収益率

配当
購入時市場価格

売 却 時 市 場 価 格 -購 入 時 市 場 価 格
購入時市場価格
危険中立的投資家は、予想収益率のみで両者の選択を決める。
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14
貨幣と債券の予想収益率
貨幣
収益率=0
 債券

予想収益率

配当
購入時市場価格

売 却 時 市 場 価 格 -購 入 時 市 場 価 格
購入時市場価格
 イ ン カ ム ゲ イ ン +キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン ( ロ ス )
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債券の予想収益率(1):市場価
格

債券価格A(償還期限n年、配当R、市場利
子率r)=将来の受取配当の現在割引価値
A
R
(1  r )

R
(1  r )
2

R
(1  r )
3
  
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R
(1  r )
n
(1)
16
債券の予想収益率(2):市場価
格

(1)式の両辺に(1+r)を掛ける
(1  r ) A  R 
R
(1  r )

R
(1  r )
2
  
R
(1  r )
n 1
(2)
(2)  (1)
rA  R 
A
R
r


R
(1  r )
n
R
r (1  r )
n
市場価格(償還期限=無限( n   ))
R
⇒市場価格は金利と反比例関係
A
r
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債券の予想収益率(3)

インカムゲイン
R
r
A

キャピタルゲイン(ロス)
R
R
  
r
2
A
r
r
 
r



R
R
A
r
r
r
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18
債券の予想収益率(4)

債券の予想収益率
r
E (r )
: 利 子 率 +利 子 率 の 予 想 変 化 率
r

利子率と債券価格は反比例関係にあるの
で、キャピタルゲイン(ロス)、すなわち、債
券価格の予想上昇(下落)率は利子率の
予想下落(上昇)率と等しい。
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19
貨幣と債券の予想収益率比較

(1)
危険中立的投資家は、予想収益率の高い
ほうを選択。
r 
E (r )
r
イ ン カ ム ゲ イ ン >キ ャ ピ タ ルロ ス  債券を 選択
(2)
r 
E (r )
r
イ ン カ ム ゲ イ ン =キ ャ ピ タ ルロ ス  債券と 貨幣が無差別
(3)
r 
E (r )
r
イ ン カ ム ゲ イ ン <キ ャ ピ タ ルロ ス  貨幣を 選択
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利子率 r
個人の貨幣の投機的需要
E (r )
r
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Ws
貨幣の投機的需要
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経済全体の貨幣の投機的需要
利子率 r
貨幣の投機的需要
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流動性のわな
流動性のわな:利子率の変化に対して貨幣需要
が無限に反応する。
だれもが債券ではなく貨幣しか選択しようとしない
状況。
↑
債券保有によるキャピタルロスがインカムゲイン
より大きいと予想されるときに、流動性のわなの
状態となる。
 流動性のわなにおいて、金融緩和政策(貨幣供
給の増大)は利子率を低下させられない。利子
率を通じた金融政策は無効となる。

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経済全体の貨幣の投機的需要
利子率 r
流動性のわな
貨幣の投機的需要
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