Transcript MOSIRプロジェクト
MOSIR プロジェクト - 科学の受け手から担い手へ スポンサー代表 倉本 圭 MOSIR プロジェクト インターネット上での動画配信技術を活用し、 研究現場の様子や研究成果を, 映像を通じて分かりやすく伝える ことを目的とした活動 • 技術習得とノウハウの公開 • 研究現場にふさわしい活用方法の模索, 実践的技術検証 • 研究現場の最先端を生き生きと公開 MOSIR ? • 「モシリ」と発音する • アイヌ語で「 (それぞれの)大地・世界」 • 語感が良いのと地球や惑星好きな人 がやっているので良いと考えた • 当て字は未定 • 正式には小文字を使う (?) 黎明 2000 出典2005年 EPnetFaN 第11回 (07/22) 『mosir~動画配信プロジェクト~』(樋山克明) 黎明 • ストリーミングによるレクチャー公開を目指 した – WIDEプロジェクトのSOIから技術移転 • WIDE:日本のインターネットを支える中核グルー プ.村井純慶大教授が主宰.林・神大教授は彼と 日本初の日米回線を引き回した. • SOI: School On Internet – 慶応SFCキャンパスを実地見学 • 双方向授業を体験受講した 初の公開作品 • 第一回森羅万象学校 – 2001年3月5日~9日 北海道奈井江町 • オンデマンド型ストリーミング – この後2007年まで毎年数10のオンデマン ドストリーミングコンテンツがアーカイブさ れた. 双方向ネット授業 • 第一回実験 – 2002年10月24,25,30,31日 – 岡山県立鴨方高校 双方向ネット授業 • 目的 – 地球惑星科学の最先端について高校生に講義 – 技術実証、高大連携のモデル提示 • 特徴 – 高画質、高音質、リアルタイム完全双方向 – 高校と共同で教材作成(Web, mail) – 情報学/教育学専門家以外による実施 • 準備・作業日数 – 約3ヶ月→いまはもっと短縮. DVTS技術 • 慶応大学/WIDE 小川晃通氏作成 – 各種OS上で動作、free (1st release 98年頃) • デジタルビデオ(DV)画像音声を伝送 – 片道35Mbps (フル画音質の場合) • dvsend, dvrecv から構成 dvsend:DV/IEEE1394 データをIPパケット化して 送出 dvrecv:受信IPパケットをDV/IEEE1394データに 再構成 バックボーン 技術協力 - 北大大計センター - (株)ネクステック - 倉敷芸科大学 - 笠岡放送(CATV) 使用プロトコル - IPv6 JGN(日本ギガビットネットワーク) 授業システム システム風景 授業の評価 • 水曜日 10/23 月の起源 – 講師 倉本 – 対象 宇宙の科学① 18名+見学者数名 • 木曜日 10/24 惑星気象学 – 講師小高 – 対象 宇宙の科学② 27名 コメントから • • • • • • • 今度、鴨方に来て直に教えてください。 ほんとに授業をうけているみたいだった。 研究室の様子や雰囲気が良く感じられた。 生の研究に触れられた。 ホワイトボードでの授業がリアルでした。 画像・音声が安定すれば、すばらしい(記者) 質問しあったりして、最先端の科学が生べる点 は生徒のやる気を引き出すのに大変良い(記 者) ■遠隔授業について質問します。 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) 音声は聞きやすかった。 (12345) 映像は見やすかった。――――スライドは? (12345) 月形成のビデオは? (12345) ボードに書かれた字は? (12345) カメラワークは適切だった。 (12345) 講師とのコミュニケーションは,スクリーン越しにスムーズにできる。 (12345) 先週と比べて,臨場感がさら良くなった。 (12345) 「遠隔授業だからこそよかった!」と思うことがあれば書いてください。 これから遠隔授業をさらに良くするためには,何が改善されると良いでしょうか。 ■次に授業全体について質問です。 (8) この授業はおもしろかった。 (9) この授業はわかりやすかった。 (10) 次に月を見上げるとき,今までより身近に感じられそうだ。 (11) 今回の授業で新しく知ったことがあれば,書いてください。 (12) もっと知りたいこと・自分で調べてみたいことはありましたか? (12345) (12345) (12345) ■授業内容についてさらに具体的に質問します。 (13) 月に関する今回の授業で興味をひかれたところはどこですか。(複数回答可。丸をつけてください) ・月と他の衛星との違い ・海と陸 ・岩石 ・内部構造 ・捕獲説 ・共成説 ・分裂説 ・巨大衝突説 ・CGビデオ ・月探査 ・その他( ) (14) よくわからなかったところはどこですか?(複数回答可。丸をつけてください) ・月と他の衛星との違い ・海と陸 ・岩石 ・内部構造 ・捕獲説 ・共成説 ・分裂説 ・巨大衝突説 ・CGビデオ ・月探査 ・その他( ) ■遠隔授業全体を通して… (15) 遠隔授業には満足できましたか? (期待以上に, まあ期待よりは, 期待通り, 期待ほどには, 期待以下) (16) 今後定期的に遠隔授業があるとすると,どのぐらいの回数あるといいですか? (月1回位, 学期に1回位, 年1回位, 校中に一回位, なくてよい) (17) 遠隔授業は,1時限だけよりも2時限続きのほうがよい。 (12345) (18) 遠隔授業形式の授業は好きだ。 (12345) (19) 最後に,授業の感想・意見・メッセージをどうぞ。 在 社会の反応 • • • • • • • 岡山放送 朝日新聞岡山版 山陽新聞 中国新聞 笠岡放送(CATV) テレビ北海道 朝日新聞札幌版 双方向ネット授業 • 専用線が不要の市販テレビ会議システムを使っ た双方向遠隔授業実験 – 岐阜県立大垣東高等学校 2004,`05,`06,`07,`08 – 同・羽島北高校`07 • 普通のブローバンド回線でも結構いけることを確 認 – その後仲間内でも広く使われることに • 鴨方プロジェクトは論文になった – 中神・大島・杉山他 (2003),日本惑星科学会誌「遊・ 星・人」12 , 80—88. – 中神 (2003) 北大地球惑星科学専攻修士論文 – 学会・研究会発表多数 真の問題意識 知の爆発時代にふさわしい 科学のありかたの模索 科学の世紀 • 20世紀:物理学を核とした科学の大 発展期 00 Planck 熱輻射の理論、作用量子 05 Einstein 特殊相対性理論 (一般相対論15) 27 Heisenberg 不確定性原理 27 Heitler, London 化学結合の量子論 http://www.kek.jp/kids/class/cos 29 Hubble 宇宙膨張 mos/bigbang.html 42 Fermi 核分裂連鎖反応の制御 http://www.solarviews.com/raw/ moon/moonflag.gif 45 Gamov ビッグバン理論 52 福井 フロンティア電子軌道 53 Watson, Crick DNA構造決定 64 Gell-Mann クオーク理論 65 Penzias, Wilson 宇宙背景放射 http://www.blc.arizona.e du/marty/411/Modules/h 67 Weinberg, Salam 統一理論 elix.html 物理帝国主義の時代 • 科学=物理である – 根源法則の探求かその応用 • 理由 – 国力をもたらした • 産業、軍事 – 根源的法則の解明が主流フロンティアだった • 自然哲学の基盤として認知 • 何でも説明、予言できると素朴に信じられていた 科学のしばらく前のイ メージ • 根源的な法則の理解こそ科学 20世紀物理学の成功の強い影響 理論物理学者 =なんでもわかる偉い人、賢人 http://homepage2.nifty.com/einstein/contents/ relativity/contents/relativity1.html http://www.city.kyoto.jp/sogo/hisyo/h onor_02.html 物理帝国主義のつぎは? • 多様性、複雑性の解明 • 国力増進を兼ね備えた分野 – バイオ、ナノ、情報、環境… • 自然哲学にフィードバックできるかは 課題 科学の最近のイメージ • 役に立つ物を作ったり、すごいことをやっ てみせる ⇔基礎法則は概ね分かってしまった • 科学者=スペシャリスト 「とんでもな」人も多そう… http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/doc/sk/photo/pmthttp://www.shimadzuhttp://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2002/nobel/gallery/index3.html lowresolution/75pmt01.jpeg biotech.jp/products/tofms/qit.html 科学知見の 指数関数的増大 • 論文数推移 米国情報科学研究所データ • 5年間あたり16%増 (日本=18%) – 世界人口の増加率 約10% • 2010年には年100万篇突破 (国際誌のみで) – 1篇平均10ページとして年1000万ページ – 広辞苑3400冊分 (積み上げたら600m) http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/shisaku/2000data/na12.htm 科学知見の 指数関数的増大 • NASA ADSに登録されている発表論文数 – – – – – – – – – – 2005年 247,249 2000年 180,214 1995年 131,676 1990年 109,117 1980年 78,320 1975年 67,206 1985年 86,926 1970年 30,731 1965年 18,641 1960年 11,773 300000 250000 200000 150000 年間論文数 100000 50000 0 1960 75 90 2005 知の爆発の問題点 • 共有性の欠落 – 広く知られているべき成果、知見でも、狭い 専門分野の人にしか(にすら)伝わらない。 • 全体を把握する意志の喪失 –情報があまりにも細切れすぎ 科学の本質 • 自然界を理解すること – ここはどこ?, 今はいつ?, 私は誰?, これからどうな る? – 最初は基礎法則(しくみの根幹)を追求 – 次は自然界の構造、構造間の関係、多様性 • 基礎法則からの演繹は不可能 • 基礎法則は記述する言語 • 必然的に知見は増加する • 社会的使命 – 理解したこと、自然観を社会還元 母との会話 母:「地球とか火星とか研究してなんの役にた つのさ?」 三年前の私:「うまく言えんわ」 最近の私:「お経みたいなもんだな」 母:結構納得 (していたように見えた) 自然観を構築してそれを提供 人と社会の智慧 知の爆発と インターネット基盤 • 膨張し続ける莫大な知見データの保管と利用 – 統合と分散のシステム – 検索システム:欲しい情報をストレスなく – 知識の構造化:データへの意味記述子の埋め込 み, … • 知の細分化、先鋭化への対応 – 媒介システム:一般人と専門家/異分野間を結ぶ – 先端知見に裏打ちされた常識の再構築 インターネット • 爆発的発展 誰でもアクセス可能に 69: UNIX、ARPAnet 88: WIDE 89: TISN (東大国際理学ネットワーク→IM) 92: SINET 95: Windows 95登場 (商用化加速) 00~: ブロードバンド化 03~: 学校インターネット、高校科目「情報」 インターネットの特徴 • 分散管理システム – 中心のない構造 • 相互扶助精神 – お互いに資源、技術、知識を提供 – 基盤技術の多くが無償 • Linux 文化 われわれの実践 • 地球流体力学電脳倶楽部 http://www.gfd-dennou.org/ – 研究用各種ドキュメント、ソフトウェア群、データ フォーマット等を製作開発しWEB上で無償公開 – 研究者どうしの交流,入門者へのガイド • MOSIR プロジェクト http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~mosir – 異分野の研究者あるいは一般向けの新しい研 究公開システムの模索 参加・協力者 • 教員 – 倉本・林・渡部・小高 • 大学院生・学生 – 惑星物理・地球流体力学研究室が中心 • 基本的にオープンなのでやりたい人はウェ ルカム • 基本的にボランタリー 普通の研究公開 • 学会・研究発表会 – 関連する一部の研究者が対象 – 場所・時間に制約 • 論文・Web (活字媒体・文字情報) – 研究のエッセンス(冗長性排除) – 背景を把握している専門家が対象 インターネット上の 動画音声配信技術の可能性 • 開放性・平等性 – 時間・場所を選ばない – 人を選ばない (発信側も受手側も) • 拡張性 – 動画像、音声、文字、静止画を融合可 • 双方向性 – 対話的環境の提供 プロジェクトの狙い • 自らを発信者に – 軽装備、低人数、短時間でも可能 • 親和性の高い情報の伝達 – ニュアンス、背景、場の雰囲気 – 時間変化する対象・フィールドの表現 • 研究成果の共有化 – 異分野間・一般社会 昔のシステム構成 • OS - エンコーダ/編集 機 :Windows98 - サーバ : Linux • 編集ソフトウエア - Adobe Premiere 6.0 • 作業手順 ① 画像・音声収録 ② ライブエンコーディング ③ 編集・エンコード ④ サーバに保管,配信 ※ この他にDVカメラ1台 (Panasonic) 今のシステム構成 • 皆さんの周りにありますね – ちゃんと動くか試験中 • 音が重要 – 経験則 セミナー公開 議論の過程をそのまま公開 • 特徴 – 研究現場の価値観,知見を ダイレクトに提供可. • 作業時間 – 即日 森羅万象セミナー 2002/04 研究会アーカイブ • 研究会をそっくり記録 • 作戦 – ビデオと講演スライドを同 期 (最初) – htmlと組み合わせて頭だし と検索が容易にできるスタ イルへ – そのままオンデマンド講義 コンテンツになっている. • 作業時間 – 3日間の研究会で約1週間 GFDセミナー2001/12 研究紹介番組 科学的に興味ある対象をWeb とビデオを組み合わせて公 開 • 特徴 「有珠山」 2001年度 – 現場での解説を重視 – 知識と現象の融合を追求 – 中高生にも配慮 • 作業日数 – 企画から公開まで約半年 ※ 2002年度のテーマは「流氷」 反応 • CD-ROMを被災地の 小中学校、図書館に寄贈. 防災教育,郷土学習の教材 として活用. • 一般社会との新たな接点 室蘭民報 2002/05/15 世界同時日食ネット中継 ブロードバンド中継講 演 • 北大理5号館大講堂と理6号館沢田 ラボ間で双方向中継 –2003年1月「未来潮流」 MOSIRの展開 • 理学の予算でスタジオ・システム導入 – 2006年度概算要求 ○千万円 – 理学部8号館201 コスモスタジオ – 講義アーカイブシステム • 据え置き型・可搬型 – 簡易テレビ会議システム • Flashサーバ – コンテンツアーカイブシステム • Real, Windows Mediaサーバ MOSIRの展開 • インターユニバーシティ活動 – TV会議セミナーなど – 神戸大・琉球大… – グローバルCOE:全国ネットワークへ • 研究現場動画コンテンツの製作・配信 – 名寄天文台 – ロケット花火実験 発信者にする・なる • インターネット上の情報技術の習得 NPO的活動:北大epnetfan, 神戸大itpass http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~epnetfan http://epa.scitec.kobe-u.ac.jp/~itpass/ カリキュラム:北大「情報実習」 http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~inex 地球科学科2年開講 • 乗っける内容をつくって広める 各人の工夫(場=GCOE, mosir, gfd-dennou,…) 初心者歓迎! みなさまの参加をお待ちしています まとめ 科学のこれから • 新しい知識の探求を継続 –多様性、複雑性の追及 –しかし単に各論の砂山に陥るリスクが 大きい • 生産性の追及には問題を絞るのが近道 その上での課題 • 知識の構造化、総合化が不可欠 – 知識に意義・哲学を吹き込む – 本来の科学(理学)の社会的使命を遂行 • 自然観の構築と提供 – マルチリンガル化 • 内向けの言語:専門家どうし • 外向けの言語:分野横断・自然哲学 • インターネット/MOSIRはそのための有効な 道具 おわりに MOSIR解題 (案) • Multimedia こんなのは いかが? • Operated • Scientific • Internet (Inter-university) • Resources 謝辞 • 歴代MOSIRメンバーの皆さん – 特にプロジェクトリーダーの方々 • 技術協力をいただいた皆様 • 接続に協力してくれた関係各方面の皆様 • (実験台になってくださった) 話題提供者・接 続先・視聴者の皆様 • 有形無形のご支援を下さった皆様