GEMを使った検出器 - SAGA-HEP

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GEMを使った検出器
高エネルギー研究室
山本 たくや
2006年2月21日(火)晴れ
いんとろ
微細加工技術の進歩によって
Micro Pattern Gas Detector (MPGD)が発達
新しいガス検出器への採用
- リニアコライダー計画のTime Projection Chamber
にMPGDを用いることで位置分解能を向上
- レントゲン撮影での医療廃棄物の削減
- MeV領域γ線探査でのγ線カメラ → 天文学分野の発展
- 物質の構造解析や中性子検出器 → 低コストで大型化
現在開発途中
研究目的と内容
MPGDを使った検出器の実用化に向けて
検出器の理解、詳細な研究が必要
MPGDを使うことで与える効果とは?
GEMを使った飛跡検出器を使って
ガス増幅部分などが起こす電荷の広がり、
位置分解能への寄与などを調べる
Gas Electron Multiplier
70μm
Copper(5μm)
Polyimide(50μm)
10cm×10cm
Copper(5μm)
CERNで開発された電子増幅器
(1996
Fabio Sauli)
140μm
渕上ミクロ社製のGEMを用いた
ホールはプラズマエッチングによって
円柱状に作られている
ガス増幅
両電極間に電位差を生じさせ
ホールの高電場によって
電子を雪崩式に増幅させる。
ΔVGEM=320Vでホール内は約50kV/cm
電子の増幅率は約10~15倍
ΔVGEMを上げ過ぎると放電する
GEMを複数枚使って増幅率を稼ぐ
GEMチェンバー概要
カソード
電場
+
+
イオン対が生成
+
両極に引き寄せられる(ドリフト)
電子は衝突を繰り返し拡散する
荷電粒子
-
-
-
(拡散定数はガスの性質、電場によって異なる)
電場を高くすれば拡散定数は小さくなる
アノード
トリプルGEM
拡散が小さいと位置分解能が向上
電子のドリフト距離ごとに拡散の値を求めていくことで
増幅部分が寄与する電荷の広がり、位置分解能を調べた
ビームテストセットアップ
KEK-PS 東カウンターホールπ2ビームラインにて(2005年6月)
トリガーカウンター(高さ5cm 横幅1cm)を前後に2本設置
トリガーカウンター2
チェンバー
トリガーカウンター1
ビームはπオン
±4GeV
34cm
21cm
4cm
チェンバー内セットアップ
内部はP10ガス(Ar 90% 、CH4 10%の混合ガス)で満たす
(カソード)
電場形成用にアルミの板を設置
電場
GEMは3枚インストール
BEAM
×
ドリフト領域(距離≒23mm
電場≒0.23kV/cm )
トランスファー領域(GEMとGEMの間の領域)
( 距離(Lt)≒1.5
1.0mm
電場≒1~4kV/cm )
インダクション領域
GND (アノード)
読み出しパッド
( ギャップ ≒ 1.0mm 電場 ≒ 3kV/cm )
合計7箇所に電圧をかけて電場を形成ΔVGEM=320V
トリプルGEMでの増幅率は約2000倍
読み出しパッドとエレキ
読み出しパッドは1.17mm幅のものを使用
6.0mm
0.3mm
①
②
10cm
③
④
0.1mm
位置分解能の評価
⑤
⑥
1.17mm
読み出しエレキ
Belle CDCのpreAMP:300mV/pc
postAMP:10倍
ADC(LeCroy 2249W)0.25pC/count
(Analog-to-Digital-Converter)
横8枚を1レイヤーとして
6レイヤーを読み出し
TDC(Repic RPC-061)0.24nsec/count
(Time-to-Digital-Converter)
飛跡の再構成と位置分解能
各レイヤーでのヒット点を電荷量を重みとして重心法(C.O.G.)で求めた
対象レイヤーを除く残りのヒット点より最小二乗法でトラッキング
入射位置とヒット点の差分より標準偏差σを位置分解能とする
トラッキングの誤差を考慮して
位置分解能を求める
σ≒238μm
σresolution≒210μm
入射位置‐ヒット点(mm)
Lt=1.5mm
トランスファー電場=2kV/cm
電荷の広がり分布
横軸:飛跡の入射位置からパッドまでの距離
電荷量(割合)
縦軸:そのパッドが受け取った電荷量の割合
電子の拡散はガウス分布に従う
σcharge≒751μm
ドリフト領域全ての情報を含んでいる
エリア分けをして評価する必要がある
入射位置 - パッド座標(mm)
Lt=1.5mm
トランスファー電場=2kV/cm
電荷の広がりのドリフト距離依存
ドリフト距離に依存する値と
ドリフト距離以外が寄与する定数値との足し合わせ
e 
 C z
2
g
2
D
CD:拡散定数
577μm/√cm (文献値580μm/√cm と同じ)
(Z=0の時σe=σg)
σg:増幅部分と読み出し部分が寄与する
電荷の広がり
BEAM
485μm
X
Z=0
ドリフト距離 z
Lt=1.5mm
トランスファー電場=2kV/cm
σgのLt・電場依存
トランスファー電場を高くする
↓
緩やかに小さくなる
高電場では拡散定数の変化が小
Ltを小さくする
↓
広がりは抑えられた
BEAM
X
トランスファー領域
それぞれの距離 Lt
位置分解能のドリフト距離依存
位置分解能をドリフト距離ごとに求めた
CD  z
2

reso

 02 
N eff
Neff:位置分解能に寄与する
プライマリーイオンの統計数
21個
σ0 :増幅部分と読み出し部分が
寄与する位置分解能
91μm
Lt=1.5mm
トランスファー電場=2kV/cm
σ0のLt・電場依存
σ0に大きな変化が見られない
電荷の広がりが影響
シミュレーションによる検証
増幅部分、読み出しパッドなどの効果を詳細に調べた
使用ソフト
Maxwell 3D:複雑なジオメトリーを再現し、有限要素法を用いての電場計算を行う
Garfield:検出器内のガス増幅やドリフトをモンテカルロ法を用いて再現する
46kV/cm
75kV/cm
増幅部での電荷の広がり
電子の位置情報から
電荷の広がりを求める
e 
Lt
CDA
Lt
CDA
LB
CDB
各領域の距離と拡散定数を用いて
電荷の広がりを見積もる
C
2
DA
 Lt  C
2
DA
 Lt  C
2
DB
 LB
増幅部分の電荷の広がり比較
Ltと電場を変化させて比較
両方の結果に違いが無い
増幅部分での電荷の広がりは
電場とLtで決定
読み出しパッドと
ノイズの効果が影響
計算
計算
パッドとノイズによる効果
実験で求めたノイズとシグナルの比
パッドのサイズを含めた再現
N
S

ノイズ
全電荷量の平均値
様々な効果を正しく再現することが出来た
さまり
・GEM検出器での増幅部分等の効果を定量的に求めれた
・実験によって求めた値 増幅部分と読み出し部分による
電荷の広がり:485μm
位置分解能:91μm
Lt=1.5mm
電場=2kV/cm
cm
・拡散定数:577μm/√(文献値と同値)
・Garfield等を使ってのシミュレーション
- 増幅部分の電荷の広がりはLtと電場で決まる
- パッドやノイズの効果も含め、実験を正しく再現できた
・検出器に起こる様々な効果をシミュレーションによって
再現し、見積もる事が可能である。
・増幅部分の電荷の広がりを抑えるにはLtを短くする
2枚以下のGEMで増幅させれば良い
→ポリイミドを厚くしたHIGH GAIN GEMも開発中
おしまい