金属の腐食と摩擦磨耗

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第6章 金属の腐食と摩擦摩耗
腐食の発生しやすい場所の例
腐食の事例写真
ステンレス鋼の腐食
鉄筋コンクリート構造物を
貫通する鋼管の腐食
摩擦摩耗の事例
クルマのブレーキ・パッド
摩擦後
新品
6.1 材料表面の性質
原子間力が残る
⇒ 過剰なエネルギが存在
表面エネルギ
(材料固有値)
(金属内部)
<
(金属表面)
エネルギ
表面の物理的性質に影響
(空孔、微小き裂、介在物)
金属
数百Å(酸化被膜)
数Å(気体吸着層)
良 … 低い摩擦係数を与える
悪 … よごれ、汚染物質
6.2.1 化学的腐食Ⅰ(腐食)
液体金属による脆化
固体金属
結晶粒界
エネルギ値が高い
粒界き裂 ⇒ 粒界割れ
液体金属
脱成分腐食
① 15%以上のZnを含む黄銅 ⇒ 脱亜鉛
腐食
② 黄銅の内部の多孔質状態
環境との反応が材料に
損傷を引き起こすこと
③ ねずみ鋳鉄の黒鉛腐食
6.2.2 電気化学的腐食Ⅰ(卑な金属、貴な金属)
金属と溶液の界面における金属イオンの挙動
l
l
電子
M+nH2O
陽イオン
-+
-+
金属イオンとして
溶解
(a)卑な金属の場合
金
属
(陽イオンの吸着)
過剰な陰イオンを
引きつける
溶
液
-+
-+
溶
液
-+
-+
-+
-+
金
属
陰イオン
(b)貴な金属の場合
図6.1 金属/溶液界面での金属イオンの挙動
6.2.2 電気化学的腐食Ⅱ(腐食電池①)
還元反応
酸化反応
M  M  e
M+  e  M
eー
2H+  2e  H2
H2
e-
e-
e-
M
e-
電解質溶液
H+
H+
M+
陽極
M+
陰極
電流
(アノード)
Zn , Fe , Mg
(電気めっき)
(カソード)
Pt , Ag , Au
図6.2 腐食電池
金属箔
6.2.2 電気化学的腐食Ⅲ(腐食電池②)
水素発生型の腐食
酸素消費型の腐食
電解質溶液 …
電解質溶液 …
酸素を含まない塩酸、硫酸のとき
M+
H + e-
H2
酸素を含む硫酸、塩酸のとき
M+
H + e-
陽極
(アノード)
陰極
(カソード)
陰極での反応
2H   2e  H2
陽極
(アノード)
H + e-
O2 + -
H e
H2O
陰極
(カソード)
陰極での反応
O2  4H   4e  2H2O
O2  2H2O  4e  4OH 
6.2.3 腐食の原因(1)
(回路オープン)
ECu
R
d
電位 減少
A
V
電位 E
e
Ecorr
(腐食電位)
c
Imax÷Re
CuSO4
b
EZn
(回路オープン)
Zn
Cu
ZnSO4
電位 増加
a
分極の大きさ
Ii
Imax (腐食電流)
電流 I
図6.3 ダニエル電池の分極線図
d と e の差
a と b の差
6.2.3 腐食の原因(2)
金属の腐食原因
H+ H+
Fe2+
鉄表面
水溶液
H
Fe
(アノード)
H
2e-
不純物
(カソード)
図6.4 金属表面の局部電池
ファラディの法則
陽極に相当する領域の腐食速度
w
ItM
nF
… (式 6.1)
w ; 腐食速度 [g/s]
I ; 腐食電流 [A]
M ; 金属の原子量
,
,
n ; 金属イオンの活量
,
t ; 時間 [s]
F ; ファラディ定数(=96500C)
6.3 腐食の種類Ⅰ
腐食
・ 全面腐食 ~ 金属全面がほぼ一様に腐食
・ 局部腐食 ~ 集中して部分的に腐食
金属表面における
局部電池の影響
全面腐食
電気化学的な活性点
金属表面
(時間と共に変化)
① 組成が不均一
② 結晶粒の異方性
③ 局所的なひずみ
電気化学的に不均一
(局部電池の発生)
連続的に移動 ⇒ 表面を均一に腐食
局部腐食
(カルバニック電池)
金属表面
陽極となる部分を固定
⇒ 集中的に腐食
6.3 腐食の種類Ⅱ(粒界腐食)
結晶粒C
M+
e-
e-
粒界
析出粒子
M+
粒界にある金属が溶ける
析出粒子
粒界腐食
結晶粒B
結晶粒A
金属表面
熱処理の不適当な
オーステナイト系ステンレス鋼
図6.5 粒界腐食の進行形態
アルミニウム合金 など
6.3 腐食の種類Ⅲ(異なる局所的応力場における腐食)
応力腐食割れ
高残留応力領域
e-
e-
Fe2+
Fe2+
=
Fe2+
引張応力(残留応力、外部応力)
+
腐食環境
(どちらか一方では起きない)
高残留応力領域
Fe2+
低残留応力領域
低残留応力領域
図6.6 異なる局所応力場における腐食
応力腐食割れ
6.3 腐食の種類(すき間腐食)
水溶液
すき間
高酸素濃度域 (陰極)
低酸素濃度域 (陽極)
腐食
すき間腐食
応力腐食割れ
腐食疲労のき裂の起点
溶接
図6.7 すき間腐食
材料強度 低下
6.4 腐食の防止法
(1)金属構造物の最適な設計
(4)電気化学的防食法
・異種金属や非金属との接触を避ける
・すき間や凹部をできるだけ作らない
・表面の凸凹少なくする
・陰極防食法(cathodic
protection)
・表面に異物をつけない
・陽極防食法(anodic protection)
(2)被膜
・亜鉛やすずの膜を電気メッキ
・塗装や防錆油を塗る
(3)環境処理
(5)材料の選択
6.5 摩耗
摩耗とは …
2つの固体が互いに接触しながら
水平あるいは回転運動する時に金属表面に起こる損傷のこと
① 凝着摩耗
2つの物体が接触することで融着、さらにせん断力により破壊する
② アブレシブ摩耗
表面が粗く硬い物体が軟らかい相手面を引っかく
③ 腐食摩耗
腐食環境中における摩耗
6.5.1 凝着摩耗Ⅰ
荷重
被摩耗材
すべり方向
融着
摩耗材
荷重
すべり方向
融着部の破壊
荷重
すべり方向
摩耗粉の形成
摩耗粉
図6.8 凝着摩耗の進行形態
6.5.1 凝着摩耗Ⅱ
基板材料 ; 超硬40% + 鉄60%
0.5
0.4
摩擦係数 μ
最大粗さ = 8.5s
膜厚
0.7μm
1.5μm
負荷荷重 = 10N
すべり速度 = 0.05m/s
0.3
膜の剥離が起きない場合
膜の剥離
0.2
摩擦係数 μは
すべり距離によらず
あまり変化しない
0.1
0
500
1000
1500
2000
すべり距離 [m]
図6.9 摩擦係数に及ぼすDLC膜の剥離の影響
剥離は摩耗に大きな影響を持つ
6.5.2 アブレシブ摩耗
アブレシブ摩耗とは …
表面が粗く硬い物体が軟らかい相手面を引っかき、表面を損傷する摩耗形態
(やすり、エメリー紙で擦る)
荷重
被摩耗材
移動方向
摩耗粉
アブレシブ粒の移動
突起部
アブレシブ粒
摩耗材
図6.10 アブレシブ摩耗の進行形態
6.5.3 腐食摩耗
フレッティング摩耗(fretting wear)
・互いに接触する二つの固体の微小な振動によって金属粉が形成さ
れ、それが酸化されてコーヒー色の腐食生成物を作りながら摩耗する
現象
発生例
・鉄道車軸等に用いられる圧入軸
・ワイヤロープの素線
・ボルト・リベット結合部付近の板
まとめ
※ 第六章のキーワード
ファラディの法則、凝着摩耗、アブレシブ摩耗、フレッティング摩耗