「食」と向き合うか

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Transcript 「食」と向き合うか

第5 4 回農業実験実習講習会 2010年8月11日
食品衛生の現状と課題
ーー どのように「食」と向き合うか --
鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教授 岡本嘉六
食育(Education)
生命倫理の向上=命をいただく感謝
堅
実
な
積
み
重
ね
品質(Quality)
栄養価・風味・食感
安全性(Safety)
健康障害を起さない
防犯(Defense)
犯罪やテロによる意図的汚染の防止
食料安全保障(Security)
食料不足による健康障害の防止: 自給率の向上
騒
動
に
よ
る
生
産
破
壊
食料安全保障(Security)
国連食糧農業機関(FAO)主催 「世界食料安全保障サミット」 2009年11月
宣言: 世界における食料供給の不安定状態:経済危機の衝撃と学んだこと
FAO 2009: The State of Food Insecurity in the World
■ 食糧危機と経済恐慌の前においてさえ、飢餓は増加した。
■ FAOは、2009年において世界中で10億2000万人が栄養不良に陥っていると
推定している。
■ 連続した食糧危機と経済恐慌の負担に対処しようとする際に、貧しい人々は、
食費を切り詰め、教育や医療などの不可欠の事項に回す。
■ 健全な農業部門は、危機の期間に経済と雇用の緩衝装置となることができ、と
りわけ貧しい国々ではそうである。
■ 安全保障制度(safety net)による介入策は、根本的問題の持続的な解決を
図りながら現在の脆弱性を直ちに改善する取組みでなければならない。
■ 食糧危機と経済恐慌の前にさえ飢餓が増加していたという事実は、現在の解
決策が不十分であり、「食の権利(The right to food)」の取組み方が食料供給の
不安定状態を根絶する際に果たす重要な役割を持っていることを示唆している。
食料問題: 環境に優しい自給率向上
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 0 10 15 20 25 30 35 40 45 50
世界人口の推移(億人)
2009年の地域別にみた栄養不良人口
世界における栄養不良人口(100万人)
1950年約25億だった世界人口は、
2000年に約61億になり、2045年には
90億に達すると予測されている。国際
的食料問題は深刻化の速度を速めて
おり、自給率4割の日本の食料安全保
障は不安定きわまりない。飽食を謳歌
できるのは残りわずかであり、子供達
の将来は真っ暗である。
食の権利: 実践のための自発的指針の概要
指針 1 民主主義、良好な統治、
人権および法の支配
指針 2 経済発展方針
指針 3 戦略
指針 4 市場システム
指針 5 組織
指針 6 利害関係者
指針 7 法的枠組み
指針 8 資源と資産の利用
指針 9 食品の安全性と消費者保護
指針 10 栄養
指針 11 教育と認識の改善
指針 12 国の財源
指針 13 社会的弱者の支援
指針 14 安全保障体制(Safety nets)
指針 15 国際的食料援助
指針 16 自然災害と人災
指針 17 定期調査、指標および
ベンチマーク(benchmark)
指針 18 国の人権機関
指針 19 国際局面
指針 11 持続可能な発展を支えるために、と
くに少女と女性に対する教育と訓練の機会を強
化することに焦点が当てられる。人権教育は学
校カリキュラムに組み入れ、職員と市民社会の
構成員は食の権利の積極的な実現に参加する
よう訓練されなければならない。
11.1 各国は、農業、漁業、林業および地方
の開発を含めて持続可能な開発に不可欠な健
康、教育、読み書きの能力およびその他の技能
訓練などの人的資源開発への投資を支援しな
ければならない。・・・・・・・・
11.6 各国は、食品の安全性と係わっている
自らの住宅事情と食事の準備のための手段を
人々が改善するための措置を講じなければなら
ない。そのような措置は、とくに地方の家庭にお
いて教育および設備基盤の分野で実施されな
ければならない。・・・・・・・・
11.8 各国は、適切な食の権利の積極的実
現を含め、人権の重要性の認識を高めることを
督励される。
防犯(Defense)
「グリコ・森永事件(1984~1985)」、「和歌山毒物カレー事件(1998)」、「中国産
餃子事件(2008)」など世間を騒がせた事件の陰で、ポットの湯などにアジ化ナトリ
ウム等の毒物を混入させる事件が日本で多発してきた。動機は様々だが、己の目
的を達成するために飲食物に毒を混入させる行為は今後もなくならないだろう。 戦国
時代に敵地の消耗を図る「刈田」が行われたが、収穫前の農産物窃盗事件が現在
でも全国的に横行している。
2010年の米国同時多発テロ事件以降、あらゆる物が攻撃手段に使われる可能
性が懸念されるようになった。農業テロの最大の武器と考えられたのが口蹄疫であ
り、持ち運びに便利であり、警戒網を潜って農場に近づき、ポケットにしのばせたウ
イルス入り封筒を取り出す・・・・。これに対して、米国や欧州では早期発見と迅速処
理の訓練を重ねてきた。
テロリズム: 731部隊とオウムの日本
WHO: テロリストの食への脅威
防止と対処のシステムを確立強化するための手引き(2008年5月改定)
2002年12月、食の安全確保に係る責任が主として中央政府の政策立案者にあり、
彼等が食へのテロ問題を既存の食の安全システムの中に組み込むのを手助けす
ることを意図した「テロリストの食への脅威(Terrorist Threats to Food)」をWHO
は発行した。この文書は、政府、食産業および消費者から好評を得、食の安全分野
で最も多く購入されたWHO文書の1つとなった。
責任のある政府と民間企業は、テロリスト、犯罪者、およびその他の反社会的集
団が食料供給の安全性を標的とする可能性を無視できない。20年以上前に、世界
保健機関の加盟国は、生物や物理化学物質あるいは放射性物質が市民を害する
ために意図的に悪用される可能性について懸念を表明した。近年、数カ国の健康
省は、そのような危害物質の意図的な悪用と空気、水あるいは食料を介した伝播に
対する警戒状態を増強してきた。
WHOは、21世紀における世界の公衆衛生上の主要な脅威として、自然、事故
ならびに故意による食料汚染1に起因するものを含めて、食料媒介性疾患の大発生
や事件を認識している。それらの脅威は、緊急の行動を必要としており、世界的な
公衆衛生学的安全性は確固とした透明性のある連携を基礎としているとWHOは認
識する。・・・・
この文書において、食へのテロは次のように定義する。
市民を害して殺す目的で、あるいは、社会的、経済的、政治的安定性を撹乱す
る目的で、生物や物理化学物質あるいは放射性物質によって人が食べるための食
料を意図的に汚染させる行為または脅威
ここで言う生物学的危害物質は、ウイルス、バクテリア、および寄生虫を含む伝
染性または非感染性の病原微生物である。問題となる有害化学物質は、人が作っ
たか、または、自然毒である。物理的な危害物質は、ガラス、針、および金属断片な
どの様々な物を含む。本書における放射性物質は、許容濃度を超えて存在する時
に障害を与え得る放射性化学物質と定義される。
米国食品医薬品局(FDA): 食料部門の脆弱性査定のためのCARVER+Shock法の概要
CARVER+Shock法は、食料部門における使用に適した目標を絞る積極的な
優先順位付け手法である。この手法は、システムや設備基盤の攻撃に対する脆弱
性を評価するために使用できる。攻撃のため最も魅力的な目標を特定することに
よって、あなたは攻撃者のように考えることができる。そして、そのような脆弱性査
定を行い、あなたの設備基盤で最も脆弱な箇所を決定することによって、あなたの
最も脆弱な箇所を防護するために資源を集中することができる。
CARVERは攻撃目標の魅力を評価するために使用される以下の6つの特性の頭
文字語である。
● 重大性(Criticality): 公衆衛生と経済に対する攻撃の影響の物指し。
● 接近可能性(Accessibility): 目標に接近し逃走する上での容易さ。
● 回復力(Recuperability): 攻撃から回復するためのシステムの能力
● 脆弱性(Vulnerability): 攻撃を達成する容易さ。
● 効果(Effect): 生産の損失を物指しとした攻撃による直接損失量。
● 識別性(Recognizability): 目標を特定する容易さ。
これらに加えて、修正CARVER手法は7番目の特性、健康、経済および心理学的
な影響を総合した攻撃の衝撃、すなわち衝撃(Shock)を追加した。
重大性(Criticality): この場所での脅威となる危害物質の食料への混入が大
きな健康上または経済上の衝撃を与える場合、その目標は重大性をもつ。下表
に判定基準の例を示す。
重大性の基準
政府
会社の総経済価値
1万名以上の死亡または1000億ドル以上の損失
1,000~1万名の死亡または100~1000億ドルの損失
100~1000名の死亡または10~100億ドルの損失
100名未満の死亡または1~10億ドルの損失
死亡例がないまたは1億ドル未満の損失
90%以上の損失
61~90%の損失
31~60%の損失
10~30%の損失
10%未満の損失
階級
9~10
7~8
5~6
3~4
1~2
重大性を計算するための計算表
A
B
C
D
E
F
・・・
バッチの大きさ
給仕数
バッチ当り給仕数
給仕当りに必要な用量
バッチ当り必要な総量
配送単位
・・・・・
A÷B
C×D
所定の食料生産過程の特
定箇所に特別な混入物が加え
られたことによる推定の死亡数
と患者数を計算するために使
用できる。この計算表で算出さ
れた数は、所定の攻撃がどの
階級の重大性をもたらすかを
判定する手助けとなるだろう。
化学物質による事件の例
発生年月日
1998. 8.10
原因物質
都道府県
アジ化ナトリウム 新潟
(出典: 東京衛研年報、2001)
事件の状況
会社の電気ポットに混入、社員10人が入院
1998. 8.15
パラコート
鹿児島
簡易水道施設に混合除草剤を混入
1998. 8.31
青酸カリ
長野
スーパーで購入したウーロン茶缶を飲み1名死亡
1998. 9. 2
DDVP
奈良
自動販売機取出口のドリンク剤を飲み入院
1998. 9.18
カドミウム
京都
京大農学部の研究室で玄米茶を飲み6名
1998.10.12
パラコート
茨城
自動販売機取出し口の缶コーヒーを飲み入院
1998.10.15
アジ化ナトリウム 三重
大学研究室の電気ポットに混入、教員・学生6名
1998.10.27
アジ化ナトリウム 愛知
研究所の電気ポットに混入、助教授ら4名入院
1998.10.28
アジ化ナトリウム 京都
国立療養所の電気ポットに混入、医師8名
1998.11. 5
1999. 6.18
有機リン剤
山口
アジ化ナトリウム 埼玉
県立高校校務員室内湯沸かし室のやかんから
研究所の電気ポットに混入、研究員1名
1999. 7.19
有機リン剤
福島
コンビニのペットボトル入り清涼飲料水,1名
1999.10. 8
亜ヒ酸
鹿児島
設計事務所で電気ポットに混入、従業員5名
1999.12.10 水酸化ナトリウム 奈良
2000. 5.20
有機塩素剤
茨城
小学校で給食のカレーを食べた児童4人入院
社員寮食堂の缶ジュースに混入、一時意識不明
安全性(Safety)
「危害とは、ヒトに障害を起す可能性のある食品の、生物学的、化学的、あるいは物理学
的因子、もしくは状態をいう。他方、リスクとは、食品中の危害の結果として起こる、暴露集団
の健康に対する悪影響の発生確率と重篤度の推定値である。」「危害を減らすこととリスクを
減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要で
ある。 不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何につ
いても言えることだが)。」
FAO 1998:: 食品の品質と安全性システム( Food Quality and Safety Systems )
閾値がない
化学物質
▲
栄養素
閾値がある
化学物質
▲
健
康
へ
の
悪
影
響
▲
●
●
●
NOAEL
●
無有害作用
濃度
●
●
●
●
●
●
●
化学物質の用量・反応関係
WHO 2000:人間と環境の衛生に係る科学的危害物質
(Hazardous chemicals in human and environmental health)
LOAEL
最小有害作用
濃度
用量(摂取量)
分かりやすい
安全性の考え方
無有害作用濃度
一日摂取許容量(ADI )=
100
●
健
康
へ
の
悪
影
響
ADI
一日摂取許容量
●
NOAEL
無有害作用
濃度
安全係数
(10倍)
致死量
不確実係数
(10倍)
●
●
中毒量
●
薬効
●
用量(摂取量)
閾値がある化学物質の安全基準
一日摂取許容量(ADI )
許容残留量(MRL)
食品A
食品B
食品C
動物の生涯に亘る投与試験から求め
られた一日摂取許容量(ADI)は、ヒト
が生涯に亘って摂取しても健康に影
響しない量である。
食品D
食品E
食品F
当該の有害物質が含まれる全ての食
品について、摂取量を加味しながら、
それぞれの食品について許容残留量
(MRL)が設定される。
実際の残留量
食品A
一過性の超過は健康に影響せず
食品D
食品A
食品D
食品B
食品B
食品E
食品C
食品F
それぞれの食品の実際の残留分析値
はMRLを大幅に下回っている。
分かりやすい安全性の考え方
(リンク)
一日摂取許容量と許容残留量
(リンク)
食品E
食品C
食品F
仮に、特定食品Bの残留値がMRLを超
えても、総体としてはADIの範囲内にある。
しかも、一過性のことであり、一生涯を通
しての摂取を想定したADIであるから、短
期間の暴露は健康に全く影響しない。
(μg/ Kg/ day)
1
ニトロソアミン
1O
STRC
(魚の二級アミン + 野菜の硝酸塩)
4NQO
BP
1O 2
BNU
DMBA
MNU
DBNA
3MCA
魚の焼け焦げ
1O 3
Trp-P2
TOX
DBA
Trp-P1
1O 4
AF2
1O
DAN
5
1O 6~
TCE
~
~
~
癌
原
性
の
強
さ
(
動
物
に
癌
を
作
る
用
量
)
カビ毒
AFB1
アフラトキシン
-3
10
-2
-1
2
3
4
5
10
10
1
10
10
10
10
10
Ames法による突然変異原性の強さ(変異コロニー数/μg)
生活環境中物質の発癌性と突然変異原性
10
6
日常的に暴露されているリスク、避けることのできないリスクより
十分に低いことをもって安全とする。
一生の間に100万人に1人以下でしか起きない確率
発
癌
率
閾値がない
化学物質
10-6
低濃度直線性
実質的安全量
用量
DNA 障害性物質の安全性基準
食品衛生法
第一条 この法律は、食品の安全性の確保のために
公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講
第一章 総則
ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生
第二章 食品及び添加物
を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的
第三章 器具及び容器包装
とする。
第四章 表示及び広告
第二条 国、都道府県、政令で定める市及び特別区
第五章 食品添加物公定書
は、教育活動及び広報活動を通じた食品衛生に関す
第六章 監視指導指針及び計画
る正しい知識の普及、食品衛生に関する情報の収集、
第七章 検査
整理、分析及び提供、食品衛生に関する研究の推進、
第八章 登録検査機関
食品衛生に関する検査の能力の向上並びに食品衛
第九章 営業
生の向上にかかわる人材の養成及び資質の向上を
第十章 雑則
第十一章 罰則
図るために必要な措置を講じなければならない。
第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する
販売以外の場合を含む)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、
使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
一 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なう
おそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
二 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。
ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、
この限りでない。
三 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるも
の。
四 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
細菌
40,000
35,000
厚生労働省: 食中毒に関する情報
細菌
600
30,000
25,000
自然毒
化学物質
自然毒
500
20,000
400
15,000
300
化学物質
200
100
0
食中毒患者数の推移
20
:総数
:細菌
:自然毒
化学物質による死亡者はいない
18
16
14
年 12
間
死 10
亡
数 8
6
4
2
0
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
25
20
累
積 15
死
亡
者 10
数
5
飲食店でフグ料理を提供するために
は、調理師免許の外に、フグ調理師免
許が必要である。素人には毒フグの見
分けがつかない!
0
原因食品別にみた食中毒死亡者数
(1996~2002)
てっぽう
その毒に「当たる」ことがあることから、昔からさまざまな言い伝え
がある。このため関西では「滅多に当たらないが、当たれば命が危な
い」という意味で「てっぽう」という。「てっさ」、「てっちり」という料理名
はここから来ている。
がんば
長崎県島原地方でフグを指す方言「がんば」は、「がんば置いてで
ん食わんば(棺桶を置いてでも食べなくちゃ)」の略とされている。
町人出の俳人一茶
フグ食わぬ 奴には見せな 不二の山
出自が侍の芭蕉
あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚汁(フクトシル)
八代目 坂東 三津五郎
1975年(昭和50年)1月16日、京都南座の初春公演に出演、滞在中
てっさ
に食したトラフグの肝4人前によるフグ中毒により急逝。享年68歳。
(フグ刺し)
自然毒の脅威との戦いが人類史の一側面
ボツリヌス毒
破傷風毒
ジフテリア毒
パリトキシン
テトロドトキシン
サキシトキシン
青酸カリ
50%致死量
μg/kg mouse
産生・保有
0.00003
0.0001
0.3
0.6
8.7
10
細菌
細菌
細菌
イソギンチャク類
フグ、ヒョウモンダコ
二枚貝
10,000
ボツリヌス毒の1億倍食べないと死なない
青酸配糖体:アミグダリン(ウメ、アンズ、モモ)、ドーリン(イネ科)
ファゼオルナチン(アオイマメ)、リナマリン(キャサバ)
青酸配糖体を含む生薬: キョウニン(杏仁)、トウニン、ショウキョウ
40
30
累
積
死 20
亡
者
数 10
7年間で67名の死亡者が発生したが、
その中の36名が家庭の食事を原因とし
ており、自分で取ってきたフグ、キノコを
自分で調理して起きた事故である。
0
食事場所別にみた食中毒死亡者数
(1996~2002)
死亡者の大半は家庭の食事 (2003~2008)
年
2003
2004
2005
2006
2007
2008
死亡数
6
内家庭
4
その他 販売店
仕出屋
5
3
販売店
不明
7
6
飲食店
5
4
仕出屋
7
6
その他
4
3
販売店
植物性
1
キノコ
4
キノコ3
3
4
キノコ2 キノコ2
トリカブト
グロリオサ グロリオサ
2
キノコ
イヌサフラン
動物性
3
フグ3
1
2
フグ2
2
34名中26名が家庭の食事で死亡!
2
フグ2
1
0
3
3
1
フグ3
フグ3
フグ
細菌性
0
1
2
フグ14名、キノコ9名、グロリオサ2名、トリカブト1名、細菌7名
主な毒成分はアルカロイドの一種、アコ
ニチンで、全草(特に根)に含まれる。食べ
ると嘔吐・呼吸困難などから、摂取後数十
分で死亡する。即効性で、解毒剤はない。
トリカブトによる死因は、心室細動ないし心
停止である。
1986年には「トリカブト保険金殺人事件」
が起きている。
トリカブト
グロリオサ
きれいな花には棘(毒)がある。
美人には手を出すな!
英語でGlory Lily(栄光のユリ)、Flame
Lily(炎のユリ)。和名で、ユリグルマ、キツ
ネユリとも言い、観賞用栽培が広がっている。
球根はヤマノイモやナガイモに似ているが、
コルヒチンやグロリオシンという毒がある。
4
2
0
0~4
累
積
死
亡
者
数
12
10
8
6
4
5~9
:動物性自然毒
:植物性自然毒
:大腸菌
:サルモネラ
:ぶどう球菌
:腸炎ビブリオ
10~14
15~19
20~29
年少者・高齢者への特別対策
中高年への衛生教育
2
0
30~39
40~49
50~59
60~69
70~
年齢
年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数
(1996~2002)
品質(Quality)
品質は、安全性とは別のもので、栄養素や食感(味、香り、色調など)に関わる事
象である。市場価格を決める要素となっており、偽装表示により低品質の商品を高
額で買わされた消費者の怒りの爆発を招いてきた。
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律( JAS法)
この法律は、適正かつ合理的な農林物資の規格を制定し、これを普及させること
によつて、農林物資の品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又
は消費の合理化を図るとともに、農林物資の品質に関する適正な表示を行なわせ
ることによつて一般消費者の選択に資し、もつて農林物資の生産及び流通の円滑
化、消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護に寄与
することを目的とする。
日本農林規格の制定
日本農林規格による格付
登録認定機関
品質表示等の適正化
罰則
JAS規格と食品表示
JAS規格一覧
生産情報公表JAS: 牛肉、豚肉、農産物、加工食
品(豆腐、こんにゃく)及び養殖魚について制定。
特定JAS: 特別な生産や製造方法についての規格
を満たす食品や、同種の標準的な製品に比べ品質
等に特色がある。
日本の品質保証マーク
世界の品質保証マーク
品質の重要要素である食感(味、香り、色調など)
は各地方の風土と文化に依存しており、画一的規格
に本来馴染まないものである。「●◯さんが美味いと
いったから、多少高くても買おう」といった味オンチを
育てたのは誰か? 自分の味覚を信じれば、偽装表
示など関係ない。氾濫する認証マークもいらない。
食品表示の法規制
JAS法
健康増進法
食品衛生法
生鮮食品
名称、原産地(輸入品の場合は原産国)
加工食品
名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造業者又
は販売業者(輸入品の場合は輸入業者)等の氏名または名称
及び住所
遺伝子組換え食品、有機食品に関する事項 、その他食品分
類ごとに品質表示基準が定められている場合は、その項目
特別用
途食品
商品名、原材料、認可を受けた理由、認可を受けた表示の内
容、成分分析表及び熱量、認可証票、採取方法等
容器入り
加工食品、
鶏卵
名称、使用添加物、保存方法、消費期限、製造業者氏名、製
造所所在地等
遺伝子組換え食品、アレルギー食品、保健機能食品に関する
事項
食育(Education)
BSE問題に関する調査検討委員会報告
(2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会)
5)重要な個別の課題
④ 食に関する教育いわゆる「食育」の必要性
今日の食品の安全性をめぐる事態に照らし、学校教育における食品の安全性
や公衆衛生及びリスク分析などに係わる基礎的知識の習得・教育を強化する必
要がある。農業や食品産業など、フードチェーン全般にわたる基礎的な知識およ
び栄養や健康に関する教育も充実させる必要がある。
食品に、ゼロ・リスクはあり得ないこと、情報をもとに一人一人が選択していく能
力を身に付けていくことの大切さの認識の普及が必要である。
「食品安全基本法」 (2003年)
国民の食生活をめぐる環境の変化
栄養の偏り、
不規則な食事、
肥満や生活習慣病の増加、
過度の痩身志向
食の安全や海外依存の問題
農林水産省: なぜ食育?
食育基本法
2004~5年
食育基本法
国民が生涯にわたって健
全な心身を培い、豊かな
人間性をはぐくむための
食育を推進する。
食生活情報サービスセンター
主要死因別死亡率の長期推移
時代とともに死因が変遷してきた。1955年頃から感染症が激減して癌、心筋梗塞、脳溢
血が三大死因となったが、寿命が延びたことがその背景にある。最近になって、高血圧・糖
代謝異常・脂質代謝異常が代謝症候群(メタボ)を生み出し、様々な疾病の予備軍を作り出
しているという考え方が主流となり、生活習慣病の克服が叫ばれている。その中心にある
のが食生活の改善である。
癌による死亡率
日本人には胃癌が多
く、肉食民族には大腸癌
が多いとされてきた。そ
の理由の一つは、野菜
の硝酸塩が亜硝酸に代
謝されて唾液中に分泌
され、魚の二級アミンと
胃で反応して発がん物
質ニトロソアミンが生成
することにある。
胃癌が減少傾向にある一
方で、大腸癌が増加しており、
女性では最多の癌となって
いる。食生活の変化は癌の
発生傾向をも変えてしまうの
だが、「栄養バランス」といっ
ても難しく、「好き嫌いなく、腹
八分」という昔からの格言が
大事なのだろう。
日本の食料自給率
摂取カロリーは、1960
年の2291kcalから2008
年には2473kcalへと増加
した。食事内容はご飯が
減り、肉と油が増加してい
る。カロリーは欧米より少
ないが、運動量や代謝能
力に民族的差があり、メタ
ボの深刻度は変わらない。
摂取カロリーの国際比較
1993年 37
平成の米騒動
カロリーベース自給率
は1993年の冷夏による不
作のために初めて40%を
切った。緊急輸入によって
タイの米価が高騰し、国
際マーケットを混乱させた
責任から日本政府は段階
的に米の輸入を解禁せざ
るを得ず、1995年のウル
グアイ・ラウンド合意へと
向かった。
朝食や夕食を家族と一緒に食べる頻度
内閣府「食育の現状と意識に関する調査」(平成21 年12 月)
「豊かな人間性をはぐくむための食育」とは裏腹に、育児放棄によ
り2人の幼児が餓死したニュースが流れている。幼児虐待はどれを
とっても痛ましいが、どうしてこのような事件が頻発するのか? 家族
で食卓を囲むことがほとんどない時代になっていることが、精神の発
達を大きく左右しているような気がする。家族との会話の中で、思い
遣りや生きる喜びを感じた時代は遠い昔か・・・。
「食卓の雰囲気は明るい」と「私の日常生活は、喜びと満足を与えてくれる」との関
係 内閣府「食育の現状と意識に関する調査」(平成21 年12 月)
「びっくり水を買いたいが売っていない」、「落としぶたというのはど
のような豚肉か」など、まるで笑い話のような、食に関する誤った知識
を持つ人が増えたという(全国農業新聞)。外食とは別の「中食」とい
う造語ができるほど、家庭で調理することが減っている。こうした状況
で、「命をいただいている」という感覚は育ちようがない。
微生物の菌類・細菌類
などが中心。生産者や
消費者の遺体や排出物
の有機物を無機物に分
解し、もとの環境に返す。
菌界
太陽
一次消費者を食べる生物
肉食動物
二次消費者
動物界
分解者
一次消費者
植物界
生産者を直接食べる生物
草食動物
生産者
大地・大気・水
エネルギー(生態)ピラミッド
自分で栄養素を作る
光合成植物
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