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細胞と多様性の
生物学
第3回 転写と翻訳
和田 勝
東京医科歯科大学教養部
前回の復習
核(nucleus)
核膜
●核小体
●染色質
●
染色体-染色質-DNA
染色体
ヌクレ
オソーム
●
●
凝縮し
た染色
質
●
●
染色質
●
DNA
遺伝情報
染色体-染色質-DNA
染色体
染色質
(chromatin)
細胞分裂
のとき
DNA
遺伝情報の読
み出しのとき
遺伝情報の流れ
設計図(遺伝情報、DNA)
転写(transcription)
遺伝情報とタンパク質の仲立ちとなるRNA
翻訳(translation)
タンパク質が構造と機能を実現
(セントラル・ドグマ)
生体高分子
細胞を構成する分子は、巨大分
子(macromolecule)である。
いずれも単位となるモノマーの重
合体(ポリマー)である。
DNA
タンパク質
多糖類
ヌクレオチド
アミノ酸
単糖
(グルコース、ガラクトースなど)
DNAが遺伝情報
DNAはポリヌクレオチドである。
ヌクレオチド=ヌクレオシド+リン酸
ヌクレオシド
ヌクレオシド=デオキシリボース+塩基
(五炭糖)
5’
4’
3’
1’
2’
塩基
アデニン(A)
プリン塩基
グアニン(G)
ピリミジン塩基
シトシン(C)
チミン (T)
(ウラシル(U))
ヌクレオチドの伸長
5’
フォスフォ
ジエステル
結合
3’
伸長は
5’→ 3’
方向に
起こる
DNAの一本鎖
DNAの片方の鎖骨格部分
(5’)P-S-P-S-P-S-P-S-P-S-P-S(3’)
(Pはリン酸、Sは糖)
糖の部分から塩基が突き出てい
る形となる。
DNAの一本鎖
塩基は4種で、シトシン(C)、チミン(T)
アデニン(A)、グアニン(G)。
糖とリン酸の骨格部分はどの部分で
も共通、違いは塩基の配列の順序。
省略すると、DNAの片方の鎖は
CTAGTCGTA.......
のように、5’側から3’に向かって書く
ことができる。
DNAは二本鎖
=O:
二本鎖の向
かい合った
2つの塩基
の間に水素
結合ができ
る
H-N-
このような
2つの基が
近づくと
=O---H-N水素結合が
できる
DNAは二本鎖
AとT
(2本)
GとC
(3本)
DNAは二重ラセン
DNA分子
DNAの性質
二本の鎖は逆平行(anti-parallel)
AとT、GとCが、それぞれ二本と三
本の水素結合で結合
多数の水素結合のため強い結合と
なるが、共有結合ではないので必要
なときには少ないエネルギーで切れ
る
片方の鎖の塩基配列が決まれば、
もう片方は一意に決まる
DNAからRNAへ
設計図(遺伝情報、DNA)
転写(transcription)
遺伝情報とタンパク質の仲立ちとなるRNA
翻訳(translation)
タンパク質が構造と機能を実現
(セントラル・ドグマ)
転写の過程
5’→3’に書かれた遺伝情報は、
これに相補的な鎖を鋳型にして、
RNAへ転写される
DNAからRNAへ
コード鎖、センス鎖、有効鎖、sense strandと言う
DNA二本鎖
5' ATGGAATTCTCGCTC…….. 3'
3' TACCTTAAGAGCGAG……. 5'
読み取り方向
鋳型鎖、アンチセンス鎖、antisense strandと言う
転写されたmRNA
5' AUGGAAUUCUCGCUC 3'
mRNA
このRNA転写物を伝令RNA
(messenger RNA, mRNA)という。
mRNAにタンパク質を作る秘密が
隠されているはずである。
合成した短いRNA(たとえば
UUUUUUUUU..….)がどんなポリ
ペプチドを作るか調べた。
mRNA→アミノ酸の配列
UUUUUUUUU..….はPhe-PhePhe-….だった。
3つの塩基が1つのアミノ酸を
指定することが確かめられた。
3つの塩基(コドンという)の64
の組み合わせに対応するアミノ酸
の暗号表が明らかになった。
Second Position of Codon
T
T
C
A
G
TTT
Phe
[F]
TCT
Ser [S]
TAT
Tyr
[Y]
TGT
Cys
[C]
T
TTC
Phe
[F]
TCC
Ser [S]
TAC
Tyr
[Y]
TGC
Cys
[C]
C
TTA
Leu [L]
TCA
Ser [S]
TAA
Ter
[end]
TGA
Ter
[end]
A
[L]
TCG
Ser [S]
TAG
Ter
[end]
TGG
[L]
CCT
Pro [P]
CAT
His
[H]
CGT
[L]
CCC
Pro [P]
CAC
His
[H]
CGC
[L]
CCA
Pro [P]
CAA
Gln [Q]
CGA
G T
h
Arg [R] T
i
Arg [R] C
r
d
Arg [R] A
Leu [L]
CCG
Pro [P]
CAG
Gln [Q]
CGG
Arg [R] G
F
TTG Leu
i
CTT Leu
r
CTC Leu
s
C
t
CTA Leu
CTG
P
o
ATT
s
i A ATC
t
ATA
i
ATG
o
GTT
n
GTC
G
GTA
GTG
Trp
[W]
Ile
[I]
ACT
Thr [T]
AAT
Asn [N]
AGT
Ser
[S]
T
Ile
[I]
ACC
Thr [T]
AAC
Asn [N]
AGC
Ser
[S] C
Ile
[I]
ACA
Thr [T]
AAA
Lys
[K]
AGA
Arg [R] A
Met
[M]
ACG
Thr [T]
AAG
Lys
[K]
AGG
Arg [R] G
Val
[V]
GCT
Ala [A]
GAT
Asp [D]
GGT
Gly [G] T
Val
[V]
GCC
Ala [A]
GAC
Asp [D]
GGC
Gly [G] C
Val
[V]
GCA
Ala [A]
GAA
Glu
[E]
GGA
Gly [G] A
Val
[V]
GCG
Ala [A]
GAG
Glu
[E]
GGG
Gly [G] G
P
o
s
i
t
i
o
n
DNAは文字列である
DNAはATCG(あるいはコドン)と
いう文字でアミノ酸の並び方を記
録した文字列のようなものである。
染色体はDNAの文字列で書か
れた1冊の本で、ヒトは23冊の本を
2セット持っていることになる。
必要に応じて本を開いて、必要
な部分をmRNAに書き写して、核の
外へ送り出す。
DNAは文字列である
DNA分子としてはATCGが切れ
目なく続くので、読み初めと、終わ
りを明示する必要がある。
読み初めは、Metを指定するコド
ンと同じATG。終わり(終止コドン)
はTAA, TAG, TGAである。
DNAの複製
体細胞分裂の過程で必ずDNAの
複製(DNA replication)がおこる。
DNAの塩基は、AとT、GとCが相
補的に結合するので、片方のDNA
鎖に対しては一意にもう片方の
DNA鎖が決まってしまう。
DNAの複製
このような複製方法は、「半保存
的な」複製と呼ばれている。
DNAの複製の過程
複製開始点で二本鎖がほどける
「複製装置」が形成される
DNAポリメラーゼがヌクレオチドを
伸長していく
DNAの5’→3’伸長
リーディング鎖とラギング鎖
校正と修復
複製の過程で誤りの起こる確立
は非常に低く抑えられているが、こ
れはDNAポリメラーゼに校正機能
が備わっているからで、誤りがある
とそれを正している。
さまざまの誤りや変異を修復する
機構が備わっている(DNA修復、
DNA repair)。
核小体
核小体では、rRNA遺伝子の転写
ががおこり、細胞質でつくられたタ
ンパク質といっしょになり、次に登場
するリボソームが作られている。
核小体
途中のまとめ
すべて細胞には核があり、核
の中にはDNAがある。DNAは
コドンという文字で、タンパク質
の設計図を書いた本である。
次に、DNAの文字がどのよう
にタンパク質に翻訳されるか、
見ていこう。
タンパク質の合成
設計図(遺伝情報、DNA)
転写(transcription)
遺伝情報とタンパク質の仲立ちとなるRNA
翻訳(translation)
タンパク質が構造と機能を実現
(セントラル・ドグマ)
お話の舞台
RNA
RNA(ribonucleic acid)とDNAの
違いは
1)糖がデオキシリボースではなく
リボースであること(五員環の2’
に水酸基がつく)
2)塩基としてチミンのかわりにウ
ラシルが使われること
3)二本鎖ではなく一本鎖であること
RNA
RNAには3種類ある
1)mRNA(messenger RNA)
DNAの情報をコピーしてリボソーム
へもってくる
2)rRNA(ribosomal RNA)
リボソームの構成要素
3)tRNA(transfer RNA)
特定のアミノ酸を合成の場へ運搬
tRNAの構造
特定のアミノ酸を3’に結合
一本鎖内に水素結合
アミノ酸に対応したアンチコドン
リボソームの構造
リボソームの構造
翻訳の過程
翻訳の過程
翻訳の開始
メチオニンを結合した開始tRNAが
開始因子とともにリボソーム小単
位と結合する。
ついでこれらがmRNAと5’末端に
結合し、3’に沿って読み始めの
AUGを探す。
開始tRNAはP部位に結合し、開始
因子が離れ、大単位が結合する。
翻訳の終了
リボソームのA部位に終止コドン
が来ると、終結因子が結合する。
アミノ酸の代わりに水が付加され、
完成したペプチド鎖はリボソーム
から離脱する。
リボソームとmRNAは解離する。
塩基の配列→アミノ酸の配列
読み初めのMetを指定するコドン
(AUG)から、終止コドン(UAA,
UAG, UGA)まで、順番にアミノ酸
をつないでいく。
塩基の配列がアミノ酸の配列に
翻訳される。
アミノ酸
R
NH2-C-COOH
H
H R O
H-N+-C-C
H H O
アミノ酸の構造式 アミノ酸の構造式
(中性水溶液中)
Rを側鎖という。生体には20種類のア
ミノ酸があり、側鎖部分が異なる。
アミノ酸の種類
アスパラギン酸
Asp
D
負電荷
アラニン
Ala A
非極性
グルタミン酸
Glu
Arg
Lys
His
Asn
Gln
Ser
Thr
Tyr
E
R
K
H
N
Q
S
T
Y
負電荷
グリシン
非極性
正電荷
バリン
正電荷
ロイシン
正電荷
イソロイシン
極性
プロリン
極性
フェニルアラニン
極性
メチオニン
極性
トリプトファン
極性
システイン
Gly
Val
Leu
Ile
Pro
Phe
Met
Trp
Cys
アルギニン
リシン
ヒスチジン
アスパラギン
グルタミン
セリン
トレオニン
チロシン
G
V
L
I
P
F
M
W
C
非極性
非極性
非極性
非極性
非極性
非極性
非極性
非極性
ペプチド結合
H R1 O
H R2 O
+ H-N+-C-C
H-N+-C-C
H H O
H H O
H2O
H R1 O
R2 O
H-N+-C- C-N- C-C
H H
H
O
ペプチド結合
ポリペプチド
アミノ末端(N末端)
カルボキシル末端
(C末端)
タンパク質の一次構造
アミノ酸の配列が決まると、タンパク
質の性質はおのずと決まる。
アミノ酸の配列のことを、タンパク質の
一次構造(primary structure)という。
アミノ末端側を左にして順番に書き、
番号を付ける。
タンパク質の一次構造
たとえば卵白リゾチームの一次構造
は次のとおりである。
1
16
31
46
61
76
91
106
121
1
Lys
Gly
Ala
Asn
Arg
Cys
Ser
Asn
Gln
2
Val
Leu
Ala
Thr
Trp
Asn
Val
Ala
Ala
3
Phe
Asp
Lys
Asp
Trp
Ile
Asn
Trp
Trp
4
Gly
Asn
Phe
Gly
Cys
Pro
Cys
Val
Ile
5
Arg
Tyr
Glu
Ser
Asn
Cys
Ala
Ala
Arg
6
Cys
Arg
Ser
Thr
Asp
Ser
Lys
Trp
Gly
7
Glu
Gly
Asn
Asp
Gly
Ala
Lys
Arg
Cys
8
Leu
Tyr
Phe
Tyr
Arg
Leu
Ile
Asn
Arg
9
Ala
Ser
Asn
Gly
Thr
Leu
Val
Arg
Leu
10 11 12
Ala Ala Met
Leu Gly Asn
Thr Gln Ala
Ile Leu Gln
Pro Gly Ser
Ser Ser Asp
Ser Asp Gly
Cys Lys Gly
13
Lys
Trp
Thr
Ile
Arg
Ile
Asn
Thr
14 15
Arg His 15
Val Cys 30
Asn Arg 45
Asn Ser 60
Asn Leu 75
Thr Ala 90
Gly Met 105
Asp Val 120
タンパク質の二次構造
二次構造(secondary structure)には、2
種類ある
αヘリックス(α-helix)
βシート(β-sheet)
逆平行βシート
平行βシート
αへリックス
Ball and stick
模型
αへリックス
リボン模型
βシート
Ball and stick
模型
βシート
リボン模型
チャイム
Chimeを使った図を見せます。Chimeは下記のサイトから
ダウンロードして、インストールすることができます(無料)。
http://www.mdlchime.com/chime/
あるいは講談社ブルーバックス「パソコンで見る動く分子
事典」B1266の付録CD-ROMから同上のプラグインをイン
ストールしてください。
Chimeはブラウザーのプラグインで、分子の構造式を表
示し、マウスによって回転して、いろいろな角度から分子を
見たり、さまざまな表現方法を選んだりと、いろいろな使い
道があります。
タンパク質のドメイン
αヘリックスやβシートなどの二次構
造が組み合わせって、球状となっ
た構造単位があることがわかって
きた。
大きなタンパク質を構築するモジュ
ール単位で、これをドメインと呼ぶ。
タンパク質の三次構造
サイトゾール中では、側鎖の性質のために
決まった立体構造(conformation)をとる。
タンパク質の四次構造
一本のポリペプチド鎖を一つの単
位として、これが複数組み合わさっ
たタンパク質がある。これを四次構
造という。
たとえばヘモグロビンはα鎖2本とβ
鎖2本の四量体である。
α2β2
二つの合成経路
分泌性タンパク質の合成
先頭にシグナルペプチドが付加している。
膜タンパク質の場合も同じ。
分泌タンパク質の一次構造
翻訳直後の、卵白リゾチームの一次
構造は次のとおり
1
16
31
46
61
76
91
106
121
136
1
Met
Ala
Lys
Trp
Thr
Ile
Arg
Ile
Asn
Thr
2
Arg
Leu
Arg
Val
Asn
Asn
Asn
Thr
Gly
Asp
3
Ser
Gly
His
Cys
Arg
Ser
Leu
Ala
Met
Val
4
Leu
Lys
Gly
Ala
Asn
Arg
Cys
Ser
Asn
Gln
5
Leu
Val
Leu
Ala
Thr
Trp
Asn
Val
Ala
Ala
6
Ile
Phe
Asp
Lys
Asp
Trp
Ile
Asn
Trp
Trp
7
Leu
Gly
Asn
Phe
Gly
Cys
Pro
Cys
Val
Ile
8
Val
Arg
Tyr
Glu
Ser
Asn
Cys
Ala
Ala
Arg
9
Leu
Cys
Arg
Ser
Thr
Asp
Ser
Lys
Trp
Gly
10
Cys
Glu
Gly
Asn
Asp
Gly
Ala
Lys
Arg
Cys
11
Phe
Leu
Tyr
Phe
Tyr
Arg
Leu
Ile
Asn
Arg
12
Leu
Ala
Ser
Asn
Gly
Thr
Leu
Val
Arg
Leu
13
Pro
Ala
Leu
Thr
Ile
Pro
Ser
Ser
Cys
14
Leu
Ala
Gly
Gln
Leu
Gly
Ser
Asp
Lys
オレンジ色がシグナルペプチド
15
Ala 15
Met 30
Asn 45
Ala 60
Gln 75
Ser 90
Asp 105
Gly 120
Gly 135
まとめと次回
今回はタンパク質の生合成と構造
を理解し、機能分子であるタンパク
質について学んだ。
次回は、細胞が生きていくために
必要なエネルギーをどのように得て
いるかなどを見ていこう。