Transcript スライド 1
PEACE
Palliative care Emphasis program on
symptom management and Assessment
for Continuous medical Education
Module6 : 嘔気・嘔吐
嘔気・嘔吐
シナリオ
67歳男性 膵頭部がん・多発骨転移の患
者
嘔気・嘔吐がつらいと訴えている
腹膜播種に伴う腹痛に対して、MSコン
チン内服中
腹部X線では、明らかな消化管閉塞を認
めない
臨床疑問
評価
嘔気・嘔吐はどうやって評価するか?
嘔気・嘔吐の原因には何があるか?
治療
嘔気・嘔吐の薬物療法には何を使うか?
ケア・説明
嘔気・嘔吐に対するケアは何を行うか?
嘔気・嘔吐についてどのように説明するか?
FAQ
眠気が強い場合、どうすれば良いですか?
メッセージ
嘔気・嘔吐は、患者・家族にと
って非常に苦痛である
患者のQOLを低下させる
胃酸による苦味が生じる
嘔吐に伴う不快な匂いが生じる
目的
この項目を学習した後、以下の
ことができるようになる
嘔気・嘔吐の評価
嘔気・嘔吐の薬物療法
嘔気・嘔吐に対するケアと説明
背景
~定義~
嘔気とは、
「吐きたくなるような不快な自覚
症状である」
嘔吐とは、
「胃内容物を反射的に口から出す
ことである」
背景
~病態生理~
嘔気・嘔吐の病態生理で重要な臓器は、脳
と消化管である
化学受容体トリガーゾーン(CTZ)や胃
腸におこる刺激は、嘔吐中枢を経由して、
嘔気・嘔吐を引き起こす
刺激は、神経伝達物質であるドパミン・ヒ
スタ ミン・アセチルコリン・セロトニン
によって仲介される
背景
~病態生理~
化学受容体トリガー
ゾーン(CTZ)
嘔吐中枢
神経伝達物質
ドパミン
ヒスタミン
アセチルコリン
セロトニン
脳皮質
前庭器
消化管
嘔気・嘔吐の評価 1
生活にどのような支障があるか
、 強さを評価する
嘔気・嘔吐の原因を探索する
嘔気・嘔吐の評価 2
現在の嘔気・嘔吐は、どの程度、日常
生活の支障になっていますか?
現在の方法で満足している
それほどひどくないが、方法があるなら考えて欲
しい
我慢できないことがあり、対応してもらいたい
我慢できない症状がずっと続いている
嘔気・嘔吐の症状をNRS(0-10)で評
価 する
嘔気・嘔吐の評価3
嘔気・嘔吐の原因を検索
薬剤を見直す:
NSAIDs、オピオイド、SSRI、抗うつ薬、ジ
キタリス
血液検査:
高カルシウム血症、腎障害
身体所見、胸部X線:
消化管閉塞、便秘、胃潰瘍
頭部CT、MRI:
脳転移、がん性髄膜炎
嘔気・嘔吐の治療ステップ
制吐薬の変更
or 他の作用機序
の制吐薬・ステロ
イドを追加
病態にあわせた制吐薬の定期投与
抗ヒスタミン薬
ドーパミン受容体拮抗薬
抗コリン薬
複数の受容体の拮抗薬
原因の治療
制吐薬の頓用
STEP1
STEP2
STEP3
嘔気・嘔吐の治療ステップ
STEP1:
他の原因の治療、制吐薬の
頓用
制吐薬を頓用しながら、原因の治療
STEP2:
病態に合わせた制吐薬の定
期投与
制吐薬の効果がない場合は、1~2日ごとに30~50
%ずつ、副作用のない範囲で最大投与量まで増量
STEP3:
序の
制吐薬の変更、他の作用機
制吐薬・ステロイドの追加
具体例 ~STEP1~
STEP1 原因の治療、制吐薬の頓用
制吐薬を頓用で使用しながら、原因の
治療を行う
治療可能な原因
オピオイド→オピオイドローテーション
高カルシウム血症→ビスホスホネート製剤
便秘→排便コントロール
脳転移→MRIにて評価し、治療適応を検討
具体例 ~STEP2~
STEP2 病態に合わせた制吐薬の定
期
投与
最も関与していると思われる病態を同
定 し、病態に合わせた制吐薬を1つ選
択する
効果がなければ、1~2日ごとに30~
50%ずつ副作用のない範囲で最大投与
量まで増量する
病態に合わせた制吐薬 1
臨床症状
考えられる病態
作用機序
・動くと悪化する
・めまいを伴う
脳転移・癌性髄膜炎、
前庭神経の刺激 抗ヒスタミン薬
オピオイド
・持続的な嘔気・嘔吐 オピオイドなどの薬剤、
化学受容体
・オピオイド血中濃度 高カルシウム血症、
(CTZ)の刺激
腎障害
に合わせて増悪
消化管蠕動の
低下
薬剤の種類
ドパミン受容体
拮抗薬
・食後に増悪
・便秘
オピオイド、肝腫大・
腹水による消化管
蠕動の低下
・蠕動痛がある
消化管閉塞
消化管蠕動の
亢進
抗コリン薬
・原因が複数、もしくは同定できない
複数の受容体
複数の受容体
拮抗薬
消化管蠕動
亢進薬
病態に合わせた制吐薬 2
前庭神経の刺激
経口:トラベルミン 3錠 分3
静脈・皮下:抗ヒスタミン薬(クロールトリメトン,ア
タラックスP 1A/日から開始。眠気のない範囲で、
4A/日まで増量)
化学受容体(CTZ)の刺激
経口:セレネース(0.75mg) 1錠 眠前で開始
1~3日ごとに1.5mg 眠前まで増量
静脈・皮下:セレネース(5mg/A)持続静注・皮下注
0.5A/日から開始眠気、錐体外路症状のない範囲で、
1A/日まで増量
病態に合わせた制吐薬 3
消化管蠕動の低下
経口:ナウゼリン(10mg) 3~6錠 分3 食前
坐薬 ナウゼリン坐薬(60mg) 2個/日 分2
静脈・皮下プリンペラン(10mg/A)持続静注・
皮下注2A/日から開始。蠕動痛、錐体外路症状の
ない範囲で、6A/日まで増量
消化管蠕動の亢進
ブスコパン(20mg/A)持続静注・皮下注 2A/日
から開始。頻脈・腸管麻痺・口渇のない範囲で、
6A/日まで増量
病態に合わせた制吐薬 4
複数の受容体の拮抗薬
経口 :
ノ
バミン(5mg) 3錠 分3
静脈 :
ノ
バミン(5mg/A)持続静注
1A/日から開始。眠気、錐体外
路症状のない範囲で、2A/日ま
で
増量
この他にコントミン、ジプレキサなどを使用する
具体例 ~STEP3~
STEP3 制吐薬の変更、他の作用機序の
制吐薬・ステロイドの追加
例:ノバミン→トラベルミン
リンデロン
漸減法:4~8mg/日を3~5日間投与し、効果
がある場合には、効果の維持できる最小量に
漸減 (0.5~4mg/日)。効果がない場合は
中止
漸増法:0.5mg/日から開始し、0.5mgずつ
4mg/日まで増量
薬剤の副作用対策
制吐薬の副作用とその対策
眠気
「眠気はうとうとして、ちょうどいいぐらい
ですか?それとも、不快な感じですか?」
→ 不快なら①制吐薬の減量、②眠気の少ない制
吐 薬へ変更
錐体外路症状
ドパミン受容体拮抗薬:パーキンソン症候群
、
アカシジア(静坐不能症)を生じる
→ 減量・中止する
効果判定とコンサルテーション
効果判定
NRSで評価し、3~7日で効果判定
治療目標の設定
嘔気・嘔吐の消失
達成できない場合:嘔吐を1日数回以下、持続する嘔気がな
い
コンサルテーションのタイミング
原因が不明の時
ドパミン拮抗薬、抗ヒスタミン薬を併用しても、嘔気・嘔
吐が緩和されない場合
使用した経験のない制吐薬を投与する場合
制吐薬の副作用(錐体外路症状)が疑われた時
嘔気・嘔吐のケアと説明
嘔気・嘔吐についての説明
環境調整
嘔気・嘔吐を誘発するような
、 においへの配慮を行う
•
•
•
吐物の臭気を部屋にとどめな
い
食事のにおい、香水のにおい
を避ける
温かい食物はにおいが強くな
るので注意
衣類による締め付けがないか
も確認
嘔気・嘔吐のケアと説明
嘔気・嘔吐についての説明
環境調整
消化を助けるために右を下にし、少し頭を高くして横にな
ると、嘔気が起こりにくいことがある
嘔気・嘔吐のケアと説明
食事の工夫
嘔気・嘔吐が強い場合は、食事を控えるよう指導する
症状が緩和されてから、症状を悪化させない食事を、患者
・家族と検討
口腔のケア
毎日、口腔内を観察して、口内炎、口腔内汚染の有無を確
認し、さらに、水分や氷片を用意し、口渇への対処を行う
便秘対策
嘔気・嘔吐が便秘による場合は、積極的に排便管理を行う
もともと、患者の生活習慣にある便秘対策を確認し、それ
を活かしながら薬剤によるマネジメントの必要性も伝えて
いく
リラックス・気分転換
シナリオに戻ると・・・
67歳男性 膵頭部がん・多発骨転移の患者
嘔気・嘔吐がつらいと訴えている
腹膜播種に伴う腹痛に対してMSコンチン内
服中
MRIにて、脳転移ないがことが確認された
腹部X線では明らかな消化管閉塞を認めない
便秘もひどかったため、排便コントロール行い、
オピオイドローテーションしたところ、症状は改善
した
まとめ
嘔気・嘔吐の原因を探索し、治療
可能な原因を治療する
病態に応じた中枢性の制吐薬を使
う
看護ケアとコミュニケーションが
重要