MRSA - 新しい創傷治療

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Transcript MRSA - 新しい創傷治療

新しい創傷治療
-「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して-
石岡第一病院
傷の治療センター
夏井 睦
11月10日
11月12日
傷を消毒する医者
傷をガーゼで覆う医者
傷を乾かす医者
あんたは19世紀の医者か?
皮膚欠損創の治り方
表皮
真皮
表皮細胞の移動,分裂
毛孔
浅い皮膚欠損創
肉芽
深い皮膚欠損創
毛孔・汗管が創面に
残っているか?
No
Yes
毛孔・汗管から
皮膚が再生
肉芽が
創面を覆う
周辺から
皮膚再生
熱傷で皮膚が欠損
毛孔の皮膚細胞を
増殖して皮膚を再生
5日後
細胞培養の原理と同じ
培養には
培養液が
必要
細胞は
乾燥すると
死滅する
傷が治るためには
培養液が必要
創面は乾かしてはいけない
傷を乾かすと治らない!
傷のジュクジュクは何?
細胞成長因子(Growth Factor, サイトカイン)
さまざまな細胞が
産生している
種々の細胞の
分裂を促進し,
活性化する。
最強の組織培養液!
人体実験!
ガムテープの[貼付
⇒剥離]を40回繰り
返して皮膚を破壊。
これを二分し,それ
ぞれ乾燥,湿潤状
態にする
健常な皮膚(60倍)
皮膚破壊後
乾燥7日後
湿潤7日後
湿潤療法の意味
創面を閉鎖
湿潤環境
創面
細胞成長因子
閉鎖すれば細胞培養が進み,
創はすぐに治る
創面を乾燥させない
創面に固着しない
傷を速やかに治す
創面を乾燥させる
創面に固着する
傷の治癒を妨害する
ガーゼとは何か?
1870年頃,細菌は乾燥状態では増
殖しないことがわかる。
それなら,傷表面を乾かせば細菌が
増えず,感染しなくなるのでは?
・
・
・
・
と考えた19世紀の医者がいた
ガーゼは「創面を乾燥させる」
創面を乾燥させ,
創上皮化を
ストップさせる
・乾くと創面に固着
・剥がす時に痛い
・剥がすと血が出る
ガーゼを張って剥がすと
傷が深くなる
自分の傷は痛い
患者(他人)の痛みは
医者は痛くない!
患者のガーゼを剥がしても医者は痛くない
ガーゼを張る医者は
19世紀のサディスト医者!
創傷被覆材の種類
-外傷治療に有用なもの-
ハイドロコロイド ドレッシング
(デュオアクティブ®,カラヤヘッシブ® など )
創面を覆う部分が
溶けてゲル状にな
る。固着しない。
防水性に優れてい
る。
皮膚色が透けるの
で目立たない。
アルギン酸塩 ドレッシング
(カルトスタット® ,ソーブサン® ,アルゴダーム®など)
コンブから抽出され
たアルギン酸塩を不
織布にしたもの。
浸出液を吸収してゲ
ル化。
表面はフィルムドレッ
シングで密封する。
強力な止血作用
創傷被覆材:使用のTips
皮膚欠損創,褥瘡の病名があれば医療材
料として使用分を保険請求できる。処置料
も請求できる。
挫創,擦過創,熱傷では通らない。
連続2週間しか使用できない。
デュオアクティブは1枚分請求し,処置で残
ったものを患者さんに渡して,毎日自分で
交換して貰う。
創傷被覆材の短所
連続2週間しか使えない。
10×10cmで1,000~1,500円と高
価。
5枚以上使用すると査定されるこ
とが多い(県によって異なる)。
創傷被覆材に必要な機能
創面に固着しないこと
創面を乾かさないこと
ある程度,吸水力があること
創傷被覆材の代用品
プラスモイスト
穴あきポリ袋+紙オムツ
ガーゼに透明フィルムを貼付
食品包装用ラップ
白色ワセリンの頻回塗布
®
プラスモイスト (瑞光メディカル)
プラスモイストの特徴
被覆材と同等の治療効果がある
 創に固着しない
 創を乾燥させない
 吸収力があり,周囲の皮膚の浸軟が起
こりにくい
保険請求はできない
安価 (A4大で\1,000)
プラスモイストが有効な症例
擦過創,皮膚損傷,熱傷
挫滅を伴う縫合創
膿痂疹(とびひ)
乳児湿疹,湿疹
帯状疱疹の水疱
PEG入口部,気管切開部
創外固定器ピン刺入部
プラスモイストP
 調剤薬局・院内薬局で販売。
 処方箋なしで購入できる。
 安価!
瑞光メディカル(株)
ネットで個人向け販売開始
http://www.allergy-biz.com/
OpWT(穴あきポリ袋+紙オムツ)
紙オムツ(平オムツ)
を三等分したもの
台所三角コーナー用
穴あきポリ袋
紙オムツをポリ袋に
入れ,口を閉じる。
穴あきポリ袋
この面を創に直接当てる
オムツの
背面疎水性シート
オムツの吸水層
創に固着しない
背面シートがあり創面が乾燥しない
周囲の皮膚が過湿潤になりにくい
黄色期褥創でも使える
OpWT(穴あきポリ袋+紙オムツ)
慢性創 (褥創,慢性下腿潰瘍,糖尿
病潰瘍など)
面積の大きな皮膚欠損創(術後創離
開など)
在宅での褥創治療
高齢者施設での外傷治療
ガーゼに透明フィルムを貼付
ガーゼ
フィルム
傷よりやや大きなフィルムをガーゼに貼付
フィルム側を直接傷に当てる。
創は乾燥せず,滲出液はガーゼが吸収
食品包装用ラップ
広範な擦過創,熱傷,日焼けに最適。貼
付直後から痛みが軽くなる。
滲出液が多い場合は,ラップの上にガー
ゼをあてて包帯を巻く。
ラップに白色ワセリンを塗布すると,鎮痛
効果がより強くなる。
柔らかくて薄いラップほど痛くない。
ポリエチレンは人体無害。
白色ワセリン頻回塗布
乾燥するのを防ぐために何度でも
繰り返し塗布する。
頭部挫創,口唇挫創,眼瞼挫創,
肛門周囲の潰瘍治療に最適。
「口唇挫創⇒口内炎軟膏」
「眼瞼挫創⇒眼軟膏」で代用可能
白色ワセリンとは?
原油を精製して得られる鎖状飽和炭
化水素(CnH2n+2)で,n=16~20の混
合物
分子量280前後
常温では反応性に乏しく安定している
抗原性を有しない。
黄色ワセリンと白色ワセリン
不純物が多いものが黄色ワセリン,少ない
ものが白色ワセリン,さらに純度が高いも
のがプロペト(眼軟膏の基剤)
「鉱物油は皮膚によくない」というのは不純
物の多い黄色ワセリンを使っていた時代
の話。
高純度のものは人体に無害で,眼軟膏,
口内炎軟膏の基剤に使われる。
傷に塗ってもよい塗り薬は?
クリーム:界面活性剤を含み,傷にも皮膚
にも使ってはいけない。
油性基剤:創面や皮膚に塗布しても無害。
クリームは不透明。
油性基剤(ワセリン)は
半透明。
被覆材・治療材料の使い分け
受傷直後?
Yes
No
顔面,指尖部?
アルギン酸塩被覆材
Yes
No
ハイドロコロイド被覆材
慢性創? 広範?
Yes
OpWT(もっとも安価)
No
プラスモイスト
治療の実際
擦過創・挫創の治療
土砂汚染?
NO
YES
アルギン酸を貼付し
フィルム材で密封
局所麻酔下に
ブラッシング
翌日全て除去し
創部と皮膚を洗浄
顔面?
YES
NO
デュオアクティブ
プラスモイスト
受傷時の状態
受傷翌日の状態
受傷5日後
9日目
5日目
受傷時
アルギン酸塩
で被覆
受傷5日目
フィルム材で覆っていない
フィルム材で覆っている
異物が付着している創の局麻
小児?
NO
YES
キシロカインゼリーを
塗布しフィルム・
ラップで密封
面積広範?
YES
NO
キシロカインEで局麻
5分間放置する
ブラッシングなど
受傷2日後の状態
14日後の状態
受傷直後の状態
翌日の状態
膝蓋部挫創
キシロカインゼリーを塗布
フィルム材で密封
ブラッシング中
この後,アルギン酸貼付
翌日の状態
翌日よりプラスモイストに
頭皮内擦過創・挫創の治療
白色ワセリンの頻回塗布が有効。
塗布回数は創の状態に応じて,適宜
変える。
出血がある場合は圧迫止血し,その
後にワセリン塗布。
口唇挫創・眼瞼挫創の治療
口唇の場合は口内炎軟膏,眼瞼の場
合は眼軟膏を頻回に塗布させる。
口内炎軟膏,眼軟膏の基剤は高純度
のワセリン。
塗布回数は創部が乾燥しないように,
季節・気候によって決める。
肛門部,外陰部の潰瘍
白色ワセリンの頻回塗布。
紙オムツ(生理用ナプキン)の患部が
当たる部分にフィルム材を貼付。患部
にワセリンを塗布して,このオムツを
当てる。
排便などで汚れたら取り替える。
裂創の治療
1. 創周囲の汚れを拭き取る。創内洗浄は
2.
3.
4.
5.
不要。
創内が汚染されている場合は,局所麻酔
下に洗浄,ブラッシング,デブリードマン。
創内も創周囲も消毒は不要。
局所麻酔は創面から針を刺入。
縫合の手袋は未滅菌でよい。
局所麻酔のコツ
キシロカインは血管拡張薬。指の麻酔以
外はエピネフリン入りを使用してよい。
痛みの少ない局所麻酔
細い針でゆっくりと麻酔。
 創面から注射し,皮膚を刺さない

裂創の治療 2
創が深い場合は開放式ドレーンを創
口より挿入して留置。
血腫予防のために圧迫。
手指の場合は,患肢挙上するように説
明。
翌日は必ず診察。
圧痛,発赤などがあったら迷わずに抜
糸して開放する。
裂創の治療 3
縫合糸:
顔面では5-0か6-0,その他の部位は5-0か
4-0のモノフィラメント・ナイロン糸
抜糸時期:
顔面:4,5日頃,それ以外は6,7日目頃
抜糸後:
瘢痕の開大を防ぐために傷に直角に絆創
膏を貼る。毎日張り替え,3ヶ月続ける。
顔面裂傷の治療
マットレス縫合は絶対にしない。
深い裂創でも表面を細かく合わせ,圧迫す
るだけできれいに治る。
縫合の技術がなければ無理に縫合を行わ
ない。テーピングと圧迫だけでも裂創は治
療できる。
2週間後
5日後
小児の顔面裂創はテーピングで
血腫予防のために
必ず圧迫する
圧迫止血する
翌日からの処置
圧迫した絆創膏,ガーゼを除去し,傷を寄
せた絆創膏を傷が開かないように丁寧に
剥がす。
きれいに洗う。
圧痛,出血がなければほぼ大丈夫。
再度テーピングと圧迫。
これを2~3日続ける。
4日後の状態
外科医でなくて
も治療できる。
治療が痛くない。
親の評判が良
い。
処置の時に押え
つける必要がな
い。
小児の頭皮裂傷
裂傷
毛髪
上下の毛髪を交
差させて創縁を閉
じる
毛髪を
まとめる
上下(左右)の
毛髪を交差して
創を閉じる
ノベクタンスプレー
(瞬間接着剤)を
毛髪に噴霧(塗布)
ヘアドライヤーを
数分間接着剤に
あてて乾燥
噴霧⇒乾燥を
3~5回繰り返し
強固に固定する
その後の処置
出血がなければドレッシングは不要。
翌日診察し,異常がなければその日
の夜から洗髪可能。
以後は通院不要。
指の麻酔
MP関節掌側の手掌指節
皮線正中。
キシロカイン(エピネフリ
ンなし):1.5~2.0ml
深さは皮下脂肪層。
注射後,3分以上待つ。
掌側全体,背側遠位部
が麻酔される。
縫合前の止血
小児の手・指裂傷
2歳女児。傘の金
具で手掌裂傷。
アルギン酸塩被覆材と
フィルム材を貼付。
ハイドロコロイド貼付
翌日
45日後
指尖部損傷
消毒,創洗浄は不要。創が汚染されている
場合は,局所麻酔をして洗浄,ブラッシン
グ。
アルギン酸塩被覆材を貼付してフィルム材
で密封。
患肢挙上
抗生剤は通常不要。
電動カンナによる指尖部損傷
受傷時の状態
翌日の状態
11日目
28日目
42日目
プラスモイストで指尖部ドレッシング
母指指尖部損傷
2日後
16日後
9日後
35日後
初診時
25日後
6日後
31日後
爪甲剥離
初診時
直ちにアルギン酸
で被覆
被覆材を貼付
7日目
14日目
爪下血腫
局所麻酔下に爪半月部の爪甲に18G針で
穴を開け,鋏で穴を拡げる。
3-0ナイロン糸3~5本を爪下の近位方向
に挿入。
ナイロン糸を絆創膏固定。
プラスモイストで被覆し血液を吸収。
前腕部全層皮膚欠損
30代女性。
作業中の事故で前腕遠位尺側に
8×5センチの全層皮膚欠損受傷。
初診時はアルギン酸塩被覆材貼付。
その後はプラスモイスト貼付。
5日後
27日後
49日後
70日後
83日後
104日後
初診時
140日後
下腿の広範囲皮膚壊死
80代女性。
10日前に左下腿外側を打撲し血腫形成。
皮膚の損傷なし。
3日前から皮膚が暗紫色となり,昨日から
皮膚壊死に。
初診時,直ちに壊死皮膚を切除し,「穴あ
きポリ袋+紙おむつ」で被覆。
通院は1週間に一度。
デブリードマン後
5日後
19日後
35日後
64日後
89日後
103日後
手術終了時
19日後
22日後
25日後
27日後
34日後
41日後
62日後
90日後
この頃退院
111日後
146日後
プレートが露出している
ドレナージが効いている
感染しない
プレートが露出していると安全
動物咬傷
牙が入った傷?
NO
YES
脂肪に達する?
皮膚欠損あり?
NO
NO
YES
YES
局麻後にデブリ,
アルギン酸塩貼付
プラスモイストで被覆
ナイロン糸ドレナージ
プラスモイスト被覆
NO
翌日炎症なし?
YES
3-0ナイロン糸5本
2ヵ月後
犬咬傷による手背の広範囲皮膚欠損
受傷時
3日後
患部を安静にせずよく使うよう指導
田植えをしたい
11日後
17日後
24日後
42日後でほぼ治癒。
関節拘縮なし。
熱傷の局所治療
水疱あり?
NO
ワセリン塗布ラップで被覆
翌日除去,洗浄
YES
水疱膜除去
プラスモイストで被覆
NO
水疱あり?
YES
水疱膜除去
一日一度交換。
創面,創周囲の皮膚を
充分に洗浄
ラップのみでの熱傷治療
季節は寒冷?
YES
一日一度の交換
NO
一日数回の交換
創周囲の皮膚を
十分に洗浄し,
汗疹・膿痂疹の発生を予防
大学病院で植皮が必要と診断
4日後
16日後
3日目。洗っても痛くない。
7日目
22日目
36日目
47日目
まだ角化していない上皮
34日目
角化が完了した上皮
40日目
手熱傷のドレッシング
プラスモイストに母指が通る穴をあけて,半
分に折る。
低温熱傷の治療
受傷直後(初診時)には変化がなく,1週間
目頃,突然皮膚が壊死することが多い。
初期から湿潤治療をしても,皮膚壊死は防
げない。
壊死が起きたら直ちに壊死組織を切除
その後は湿潤治療で自然に上皮化させる
初診時
プラスモイストで
被覆
16日後
デブリードマン
直後
デブリードマン
4日後
デブリードマン
20日後
デブリードマン
34日後
デブリードマン
48日後
デブリードマン
56日後
熱傷,外傷に使っていけない軟膏
ゲーベンクリーム(基剤がクリーム)
オルセノン軟膏(基剤がクリーム)
ユーパスタ(基材が高浸透圧,消毒薬)
カデックス軟膏(基材が高浸透圧,消毒薬)
アクトシン軟膏(基材が高浸透圧多糖体)
ブロメライン軟膏(同 上)
イソジンゲル(消毒薬)
オロナインH軟膏(クリーム+消毒薬)
消毒+軟膏ガーゼ
痛みを与える
経口摂取困難
安静を強制
関節拘縮
補液
傷を深くする
リハビリ
ケロイド
植皮手術
プラスモイスト,ラップ
痛みがない
普通に飲食
傷を速く治す
普通に運動
ケロイド
発生なし
補液不要
運動障害
なし
植皮手術不要
人体実験:ゲーベン連日塗布
7日後
5日後
3日後
9日後
術後創の離開・感染
縫合糸を抜去して十分に開放する。
創部と創周囲の皮膚はシャワーで洗
う。
滲出液・膿汁が多い場合は紙オムツ
を直に貼付,少なくなってきたら「穴あ
きポリ袋+紙おむつ」で被覆。
非吸収性の筋膜縫合糸は術後3週を
経過したら抜去可能。
術後縫合創離開の治療
初診時(術後14
日目)。前日に
全抜糸している。
筋膜縫合糸を
抜糸した。
入浴後,「穴あ
きポリ袋+紙お
むつ」で被覆。
術後15日目。退
院となり週2回の
外来通院へ。
術後36日目
術後42日目
術後70日目
術後84日目
中心部を除い
て上皮化した。
術後118日目
陥入爪の治療
爪の湾曲と爪周囲炎の発症は無関係
深爪したから爪周囲炎が起きた
爪が伸びきってしまえば感染も痛みも
治まる
爪ヤスリとテーピングで根治可能。
テーピング終了時の状態
接触性皮膚炎の治療例
70代男性
4ヶ月前から両側下腿
の湿疹で皮膚科医院
通院。軟膏治療を受け
ているが治らない。
白色ワセリンを塗布したプ
ラスモイストで被覆。数分
で痒みが止まった。
初診時
2日後
7日後
痒い
掻いてしまう
掻くと
皮膚が傷つく
傷が治れば痒みは止まる?
手荒れ,主婦手湿疹の治療
① 小さじ半分の白色ワセリンを手に取
り,指,手掌,手背に時間をかけて
揉み込む。
② 乾いたペーパータオルなどでべたつ
きをふき取る(車のワックスがけの要
領)。
③ 一日に数回,手のワックスがけ
女児の手荒れの例
初診時
13日後
初診時
13日後
尿素クリームは乾燥肌に最悪
クリーム
界面活性剤
細胞膜を破壊
する薬剤!
傷を深くする
尿 素
角質のケラチンと
水素結合
ケラチンの構造が変化
正常な角質(皮膚)を破壊!
尿素クリームは
ヒビ・アカギレ,乾燥肌を悪化させる
正常皮膚
角化層損傷皮膚
尿素クリームは肌荒れを悪化させる
尿素クリーム:
20時間後
ワセリン:
20時間後
膿痂疹(とびひ)の治療
患部をシャワーでよく洗い,膿瘍を潰す。
プラスモイストを貼付し,一日に一回交換
する。
抗生剤内服
 消毒,抗菌剤入り軟膏は意味がない
 亜鉛華軟膏に治療効果なし
水イボの治療
スピール膏を水疱の大きさに切って貼り,
さらに絆創膏で固定。
スピール膏は一日一回張り替える。
3日目頃,スピール膏と一緒に水疱が取れ
る。
その後はデュオアクティブ,プラスモイスト
を貼付して上皮化を待つ。
石岡第一病院の褥瘡治療フローチャート
褥瘡あり
発赤のみ?
No
Yes
フィルム材貼付
黒色壊死と高度の発赤あり?
No
一日一回の観察
除圧・マットレス
OpWT
Yes
傷センターに連絡
創感染とは何か?
なぜ傷は化膿するのか?
この褥瘡は化膿している?
化膿している
Infection
化膿していない
Colonization
創感染の診断
疼痛・発赤あり
創感染の極期
治療が必要
発赤はあるが疼
痛なし
創感染は治癒しつ
つある
疼痛・発赤なし
傷があるだけ
感染創ではない
(Colonization)
創面と黄色ブドウ球菌
創面への黄色ブドウ球菌定
着は自然現象
創面からMRSAが検出され
るのは病的状態ではない
なぜ細菌が創面にいるのか
皮膚
細菌のコロニー
傷ができる
皮膚常在菌
皮膚上の細菌
皮膚常在菌
表皮ブドウ球菌など
皮膚が唯一の生活の場
通過菌
黄色ブドウ球菌など
皮膚は本来の生活の場でない
皮膚常在菌と通過菌の違い
栄養源
皮脂があると
生存に
至適なpH
酸素を
必要とするか
皮膚常在菌
通過菌
(Propionibacterium属など)
(黄色ブドウ球菌など)
皮脂のみ
皮脂は
利用できない
増殖が速くなる
増殖が
ストップする
弱酸性
中性
嫌気性菌
好気性菌
皮脂腺
皮 脂
Propionibacterium属
パルミチン酸,ステアリン酸などを産生
(pH=5.0~5.5)
他の皮膚常在菌
・栄養源として利用
・増殖促進因子
黄色ブドウ球菌
・利用できない
・増殖阻止因子
皮膚と細菌
 皮膚常在菌は皮膚に最高度
に適応した生物である
 皮膚常在菌以外の細菌は
皮膚で増殖できない
皮膚に傷ができる
浸出液(=pH7.4)
好気性
創面は
弱酸性⇒中性
皮脂がない
創面は
常在菌の生存に適さない環境
黄色ブドウ球菌に適した環境
創面(肉芽)にMRSA
単独コロニーができる
場所も栄養もMRSA
が独占している
病原菌などが
傷に入り込めない
MRSAは
危険な細菌なのか?
MRSAは分裂が遅い
2個に分裂するのに要する時間
黄色ブドウ球菌 : 40分
MRSA
:120分
多剤耐性MRSA :210分
時間
黄ブ菌
多剤耐性
MRSA
0
1
1
4時間後
64
2
8時間後
4,096
4
12時間後
262,144
8
16時間後
16,777,216
16
抗生剤分解
酵素を獲得
耐性菌になる
新たな遺伝子が
必要
遺伝子複写に
時間がかかる
ゲノムサイズが
大きくなる
分裂が遅くなる
地球は細菌に満ちている
南極地下300メートルの氷中で増殖する細
菌がいる。
人間の致死量の2000倍の放射線でも死な
ない細菌がいる。
硫酸,鉄,銅,アルミニウム,パラチオン,
有機水銀,除草剤,青酸ソーダ,DDT,有
機農薬を分解する細菌もいる。
どんな環境にも適応して生存できる。
細菌に生きられない環境はない
地下5,000mの岩石中で生活する菌
380℃,600気圧の硫化水素中で生きる菌
濃硫酸,青酸カリ,PCB,ダイオキシンを
分解して栄養源とする菌もいる
無菌の創面は存在しない
創面は無菌にできない
創が
感染している
(=Infection)
≠
創面に
細菌はいても
炎症なし
(=Colonization)
★ Infection →患者に有害な状態
★ Colonization →患者に無害な状態
Infectionは治療対象
Colonizationは治療対象でない
⇒培養しない,放置する
Infection
Colonization
創面のMRSAを消すには?
傷を治す
正常皮膚に戻る
皮脂あり
pH 5.5
MRSAは
増殖できない
皮膚常在菌は
増殖できる。
Colonizationは放置
細菌がいるから傷が
治らない・・・でない。
創面の細菌は人間に
害を及ぼしていない。
消毒しても無菌になら
ない。菌種が変わるだ
け。
MRSAのみ消そうとすると!
MRSA
Candida
その他の菌
抗
生
剤
投
与
,
創
消
毒
緑膿菌
セラチア
創面や肉芽のMRSA
MRSAがいるから傷が治らない
傷が治らないからMRSAがいる。
傷を治せないから医者だからMRSA
が消せない。
傷に細菌がいれば化膿するのか?
裂肛患者に敗血症は発生しているか?
口腔内熱傷で化膿した患者はいるか?
細菌が創面にいるのに
感染していない!
創感染はなぜ起きる?
細菌単独で創感染は起こせるか
→10万個/組織1gの細菌数が必要
→現実にはほとんどない
創内に感染源があると・・・
→200個/1gの細菌で感染する
→現実の感染はほとんどこれ
起 炎 菌
+
感 染 源* =
創 感 染
*血腫,溜まったリンパ液,壊死組織,縫合糸,異物
良い子
+
悪い連中
と付き合う
=
グレた
創感染を防ぐには・・・?
創面から感染源
を除去する。
細菌はいても構
わない。
デブリードマン
&
ドレナージ
消毒しても感染源は除去されない
→消毒に感染予防効果はない
血腫があれば,
傷がなくても感染が起こる
下腿を打撲
多少腫れているが
傷がないので放置
10日後に突然,
発熱と下腿の痛みが!
傷がなくても化膿した!
血腫があると感染する理由
循環から孤立し,栄養に富んでいる。
抗生剤は血腫内に届かない。
免疫細胞も血腫内に入れない
細菌にとって血腫は
栄養豊富なシェルター!
細菌はどこから入ったのか?
下腿に傷がないのに
血腫に感染した
傷を消毒しても
滅菌物で覆っても
防げない感染がある
感染起炎菌は
どこから入った?
侵入経路は
血行性では?
血行性にも細菌が侵入するなら
消毒と無菌操作では裂創,挫創,熱傷,術
後創の創感染は防げない。
術中の細菌侵入を阻止しても術後創感染
は防げない。
術後創感染予防とは細菌の培地(血腫な
ど)を作らないこと。
消毒と無菌操作による感染予防には限界
がある。
消毒薬とは何か?
消毒薬は
蛋白質を破壊
して殺菌する
細菌の蛋白質と
人体の蛋白質を
区別しているわけ
でない
人体細胞と細菌
どちらが強い?
人体細胞と細菌の構造の違い
細胞質
核
細胞膜
細胞壁
莢膜
人体細胞
細 菌
消毒で人体細胞は死に
細菌は生き残る
(例:Burkholderia cepacia )
傷を消毒すればするほど,
傷は深くなり,化膿する。
絆創膏で皮膚破壊⇒消毒
正常皮膚:60倍
絆創膏を30回張って剥がす
5日間イソジン消毒
コントロール:正常皮膚
消毒薬は無害でも安全でもない
クロルヘキシジン(ヒビテン® ,ヘキ
ザック®)でアナフィラキシーショックか
ら呼吸停止が起きている。
家庭消毒用クロルヘキシジン(マキロ
ン® )の誤飲で死亡事故が起きている。
死亡率が高い。
ポビドンヨード(イソジン®)は接触性皮
膚炎を起こす率が高い。
皮膚常在菌
皮脂が唯一のエネルギー源
皮脂は他の細菌にとっては増殖抑制因子
弱酸性環境で活発に増殖
皮膚にもっとも適応した生物
常在菌が皮膚
を埋め尽くす
他の細菌が皮膚
から侵入できない
人間と常在菌は共生体
住処と食料を提供
人
間
病原菌の侵入を防ぐ
皮
膚
常
在
菌
共生関係
人間は皮膚常在菌に最適の環境とエネル
ギー源(皮脂)を提供する。
皮膚常在菌は病原菌の侵入を防ぐ。
皮膚常在菌は人間の皮膚に最高度に適
応し,皮膚でなければ生きられない。
皮膚常在菌が消えると皮膚から病原菌が
侵入する。
皮膚と細菌
皮膚とは
 多種類の常在菌が共存する生態系
 生態系が保たれていれば病原菌は
侵入できない
皮膚(手)にいるのは病原菌だけ
ではない。
通過菌
皮膚常在菌
(病原を持つものもある)
(日和見感染以外病原性なし)
毛孔
通過菌
水で洗浄(物理的除菌)
表皮ブドウ球菌
常在菌は元に
戻り,通過菌の
み除去できる
通過菌
消毒(化学的除菌)
表皮ブドウ球菌
消毒薬で皮膚
が障害される
皮膚が正常でな
いため,皮膚常
在菌叢が生息で
きない
通過菌(病原
菌)が進入
できるように
なる
洗いすぎて手が荒れると?
手を頻回に
消毒液で洗う
皮膚が荒れ,
正常でなくなる
中性で皮脂の
ない皮膚に変化
黄色ブドウ球菌
に最適の状態
手が黄ブ菌の
住処に!
菌がいるから
消毒除菌?
院内感染対策の本質は?
患者間の共有物(医師・看護師の手,
回診車,白衣など)を汚染しない。
手洗い前にワセリンでワックスがけで
手荒れを防ぐ。
汚れた部分に直接手を触れないよう
にするか,ディスポ手袋を嵌めて触れ
る。
弱酸性ビオレは安全でない
弱酸性でも
界面活性剤は
皮脂を洗い流す
皮膚常在菌が
生存できなくなる
皮膚が乾燥する
細菌感染が起こる
乾燥肌,アトピー性皮膚炎?
皮膚の過度の消毒・洗浄は
自分の皮膚の病原菌を増やし,
患者の感染を増やす
過ぎたるは猶及ばざるが如し
消毒,是か非か
器具や機械は消毒薬やオートク
レーブ,熱湯で滅菌する。
人体(皮膚や創面)は洗浄して細菌
を洗い流す。
人体に熱湯や消毒薬は使わない。
その消毒は不要だ!
腹膜透析(CAPD)チューブ刺入部の消毒
脳室ドレーン,胸腔ドレーン,腹腔ドレーン
刺入部の消毒
CVカテーテル刺入部の消毒
創外固定器のピン刺入部の消毒
欧米では,糖尿病のインスリン注射は
衣服の上から刺すのが常識!
執刀前の皮膚消毒は?
皮膚常在菌は皮脂がなく中性の環境(=
腹腔,胸腔,骨髄など)では増殖できない
通過菌にはこの環境で増殖できるものが
いる
執刀部位は執刀前に十分に
洗浄すれば通過菌を除去でき,
術後創感染予防になる
易感染性の場合は?
皮膚の構造は
易感染性患者も
健常人も同じ
皮膚常在菌に
守られているのも
健常人と同じ
易感染性だからこそ常在菌叢を乱して
はいけない。
皮膚や創部の消毒は自殺行為では?
術後創感染を防ぐには
真皮直下からの出血を電気メスでし
つこく止血しない。
血腫,死腔を作らないよう,適切なド
レナージと圧迫。
皮膚縫合前に創内を消毒しない。
術後の消毒をしない。
縫合前に創内を消毒しない!
筋膜縫合後に創内
(脂肪組織)を消毒
脂肪組織が
損傷される
創が離開する
消毒などにより
傷が深くなる
創面に細菌が
定着する
深部感染・骨髄炎が発生
三輪書店
光文社新書
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スライドファイルは
http://www.wound-treatment.jp/
ronbun-pdf/slide
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