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データの分析
東京大学大学院
門田宏
実験手法による現象の理解
(1) 計測
(2) 分析
(3) 発見
(4) 解釈
(5) 応用
(調査、観察、観測、測定、、、、)
(統計、時系列解析、、)
(データマイニング、、、)
(モデリング、、、)
(予測、制御、、、)
静的な性質
実験→数値データ
k次統計モーメント
平均(一次のモーメント)
分散(二次のモーメント)

 (x  )
k
p( x)dx

k次統計モーメント
p(x):確率、μ:期待値
→統計的仮説検定を行ない、
母集団の推定 (統計的推定)
静的な性質 (時間的要素を考慮しない)
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
σ=1
2つの時系列データ
平均=0
4
3
2
1
静的には同じ性質
0
-1
-2
-3
-4
同じ?
→時間を考慮して数値データを考える必要。
動的な性質
動的な性質 (時系列解析)
相関 (時間的表現)
R( )  X (t ) X (t   ) 
時刻tにおける値x(t)とτだけ離れた時刻t+τの
値x(t+τ)がどれぐらい似ているのか?

P
(
f


e

スペクトル (周波数的表現)

i 2ft
データがどのような波の成分を持っているの
か?
(ウィーナーヒンチンの定理)
フーリエ変換
相関
スペクトル
逆フーリエ変換
R( )d
変動に見られる構造
状態0状態1
状態2状態3
各
要
素
の
占
め
る
割
合
複数の要素が相互作用すること
によって形成される場合
雪崩の自己組織化臨界現象
時間経過に伴う形成過程
→変動自体に何らかの構造を持つ。
変動はシステムのダイナミクスを反映する大切な量。
→時系列全体の構造の解明。
t
時系列解析
全体の構造を捉える
フラクタル
大きなスケールでも
小さなスケールでも
同じような構造が見える性質
↓
幾何学的にデータ全体の
構造を調べる。
カオス
Log PSD
フラクタル構造
 X (ht )  h H  X (t ) 
Log Frequency
周波数とパワースペクトル
(波の周期とその波の大きさの2乗)を
両対数表示すると直線になる。
データの一部を取り出し、
拡大すると元のデータと同じ性質を持つ。
P∝1/f α
α≒直線の傾き
P∝1/f α
例えばα=0.8、ラグτ=1秒の場合、
自己相関関数の値を10%以下に落
とすには 105 秒もの時間を必要とす
る。
αが0より大きい場合、自己相関が緩
やかに減衰し、非常に長期の時間相
関を持つ。
α=0のとき、ホワイトノイズと呼ばれ、
時系列は時間相関を持たない。
時間相関が強いほどαの値が大きく
なる。
αの値によって時系列の不規則さ、複
雑さを定量化できる。
Log PSD
長期記憶
Log Frequency
相関なし
長期相関
長期記憶解析
k
R( )  max  ( x j (i )  x j  )
1 k 
i 1
k
Hurst:ナイル川の水位の記録
 min  ( x j (i )  x j  )
1 k 
i 1
における長期記憶解析

1
(Rescaled range (R/S) analysis) S ( )  (  ( x j (i)  x j  ) 2 )1/ 2

i 1
Q( )  R ( ) / S ( )
Q( )   H
スペクトル解析 (Mandelbrot)
Detrended fractuation analysis
k
y (k )   ( x(i )  x )
i 1
1 N
F (n)  (  ( y (k )  yn (k )) 2 )1/ 2
N i 1
yn (k ) : local trend
などなど。
F ( n)  n H
運動にみられる長期相関 (例1)
歩行間隔 (Hausdorff et al., 1995)
リズム動作 (Yamada, 1995)
タイミング同期動作 (Chen et al., 1997)
姿勢動揺 (Collins and Deluca, 1993)
心拍変動 (Yamamoto and Hughson, 1994)
など
→(主に)連続的な動きに存在する変動の多くは
長期記憶を持つ。
加齢や病気、障害、(外部刺激に対する)とらえ方などに
よってこれらの時間構造は変化する。
ヒトの時間認知および
運動実行系における時間構造 (例2)
一定間隔で刺激が提示される場合
●刺激間隔が短く予測できる
→長期相関を持つ。
●刺激間隔が長く、予測できない
→時間相関を持たない。
(Gilden et al., 1995;
Shelhamer and Joiner, 2003)
ヒトの運動実行系および認知系(内部時計)にお
ける時間構造のモデル化 (Gilden et al., 1995)
標的到達動作課題における時間特性 (例3)
discrete動作における時間構造
間欠的標的到達動作課題
(Miyazaki et al., 2001)
動作初期のキネマティクス
→長期の時間相関が存在。
動作終着点
→時間相関が無くなる。
ヒトの運動遂行時における調整過程
マルチフラクタル (例4)
(異なるフラクタル次元が分布している集合)
心拍変動に対してマルチフラクタル解析
(Ivanov et al., 1999)
Healthy:マルチフラクタル、
Heart failure:モノフラクタル
解析が診断に使える可能性。
これまでに見つかっていない、現象や状態
の発見につながる可能性。
数値データの構造の解析2
力学的アプローチ
状態空間
状態をいくつかの変数で
記述する。
体
重
力学系
力学系は状態空間と状態
の変化を決める規則で決
められる。状態空間の中
での時間変化に伴う軌跡
で描かれる。
身長
カオス(決定論的な系が作り出す予測不可能
な振る舞い)
カオスの特徴
状態空間で表現した場合、限られた領域内に
収まる(アトラクタ)。
アトラクタから、時系列データの特徴をとらえる事ができ
る。
長期的な予測は不可能、短期的な予測は可能
→非線形予測
xn 1
1
0.8
1
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
50
100
150
200
ロジスティック写像
250
0.2
0.4
0.6
0.8
1
xn
動作分析Ⅰ(例1)
指の周期運動
x
x
t
x
リミットサイクルと呼ばれる
周期運動(Kay et al., 1991)
リミットサイクル:初期条件に依存せず、また外乱が
加えられても再び安定した振る舞いを示す。
動作分析Ⅱ (例2)
テニスのフォアハンドおよびバックハンドストロークの
繰り返し連続動作 (Yamamoto and Gohara, 2000)。
肩、腰の角度変化
回転のあるカントール集合として考えることができる。
F(フォア)
FBFと来た時の角度
B(バック)
BFFと来た時の角度
カントール集合:中央部の1/3を抜き取るという操作を繰り返すことによって得られる。
カオス制御(OGY法) (例3)
④’
② ③
④
OGY(Ott-Grebogi-Yorke)法
平衡点近傍での不安定軌道に制御信号を
印加する事により安定軌道に漸近させる
①
ウサギの不整脈の制御 (Garfinkel et al., 1992; 野崎
大地, 山本義春, カオス研究の最前線, 生理学とカオ
ス)
ウサギの不整脈の状態空間上での振る舞いを調べ、
振る舞いの予測を行なう。
不安定な状態の場合、電気刺激をして安定状態へ落
ち着かせる。
不整脈を規則的な拍動に制御することに成功。
非線形予測 (例4)
Sugihara and May(1990) 非線形予測の利用
新生児に見られる自発的運動 (ジェネラルムーブメント)
(多賀厳太郎, 脳と身体の動的デザイン)
カオス力学系のような振舞いをする。
発達に伴う予測指標の変化
複雑→単純→複雑
脳に障害がある場合
PVL→高い予測、脳梗塞→低い予測
GMの定量化、発達過程や脳障害のパターン変化を明らか
にできる。
まとめ
フラクタル、カオスなどの非線形力学系がもたらしたもの
物事を如何にとらえるか
自然、生命の構造を記述する理論の構築
時系列解析
●現象の発見
●新たな概念の導入、理論の構築
●状態の把握、診断、分類
●非線形予測、制御
参考
山本義春先生のホームページ
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~yamamoto/
利用可能なパッケージ(実際に使ったことはないので詳細については不明)
FFT
http://momonga.t.u-tokyo.ac.jp/~ooura/fftman/index.html
Fractal Analysis Programs
http://nsr.bioeng.washington.edu/Software/NSR_SW_fractal.html
http://reylab.bidmc.harvard.edu
http://nsr.bioeng.washington.edu/PLN
ソフト
http://www.aihara.co.jp/rdteam/sunday-chaostimes/index-j.html
参考文献
時系列解析入門 (宮野尚哉) サイエンス社
非線形時系列解析 (松葉育雄) 朝倉書店
カオス時系列解析の基礎と応用 (合原一幸 編) 産業図書
カオス (合原一幸 編著) サイエンス社
フラクタル幾何学 (Mandelblot) 日経サイエンス社
生命とは何か (金子邦彦) 東京大学出版会