LHC-ATLAS実験開始に向けた ミュー粒子トリガーシステム統合試運転

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Transcript LHC-ATLAS実験開始に向けた ミュー粒子トリガーシステム統合試運転

LHC-ATLAS実験開始に向けた
ミュー粒子トリガーシステムの統合試運転
名古屋大学理学研究科
高エネルギー物理学(N)研究室
奥村恭幸
2008/2/7
修士論文発表会
奥村恭幸
LHC-ATLAS実験とミュー粒子
P
P
25m
√s=14TeV
T =25ns
44m
LHC-ATLAS実験 (2008年夏開始)
25ナノ秒毎の14TeVの衝突を観測しヒグス粒子を探
査
課題
低運動量のQCDによる大量のノイズ事象 (SHiggs/N 10-10)
解決策
高い横運動量ミュー粒子による事象選別
ビーム軸方向に指向性を持つQCDノイズ事象と差別化
ミュー粒子トリガーシステムがヒグス粒子探索の鍵を握る!
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
トリガーシステム
三段階のオンライン事象選別システム
処理時間
選別事象数
1.0秒
1事象/20万事象
•全衝突事象を処理する
•高速処理
•処理時間
•選別事象数
Level1 Trigger
2.5マイクロ秒
1事象/400事象
Level2 Trigger
20万事象
デジタル電子回路
計算機上
•一度メモリに書き込んだのち計算機上で処理
(ソフトウェアトリガー)
Event Fileter
•全事象, 全領域のデータから最終的に選び出す.
1事象
Disk に保存
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
ミュー粒子トリガーシステム
F (strip)
R (wire)
Thin Gap Chamber (TGC)
•ガス (CO2 +n-pentane) •ガス増幅率 106
•制限比例領域 (2.9kV) •位置分解能 ~1cm
ヒットチャンネル情報から(Z, R,F)の三次元で通過位置を検出
三次元的にミュー粒子飛跡を再構成
磁場中での曲率から運動量を概算
Magnet Field
Z
7層のヒットコインシデンス情報のみで飛跡を再構成し運動量を算出
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
ミュー粒子トリガー電気回路系
パイプライン型トリガーシステムの概念図
トリガー回路系
1
2
3
・・・
N
25ns/1Step
25 ns周期の衝突
•動作クロック
周期25ナノ秒 (衝突に同期)
•トリガー回路
全プロセスを25nsを単位に細分化
•読み出しバッファ
N clk後にデータを出力するFIFOメモリ
読み出しバッファ(FIFO メモリ)
1
TGC 32万チャンネル
2
3
PS Board 1296枚
・・・
N
Hpt 192枚
Sector Logic 72枚
100m
両領域の同時運転 Final Setup 領域
Temporal Setup 領域
敷設作業をすすめてシステムの動作を実現
両サイド同時・Full Setupを用いた試運転
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
本研究の目的と手法
実験開始までにミュー粒子トリガーシステムを正常動作させること
トリガーシステムの正常動作
• 正確なデータ収集
• 正確な事象選別
高速計算
同期運転
論理回路の正常動作
テストパルス・宇宙線ミュー粒子を用いたトリガー系動作試験
• トリガー発行時間の高速性・安定性
– トリガー信号の発行時間を実際のセットアップを用いた測定
• 全トリガー回路の動作検証
– 上流から順にトリガーチェーンに対して検証を行う.
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
(1)トリガー信号発行時間
100m
PP
ASIC
Trigger 1
Trigger 2
Trigger 3
SLB
Hpt
SL
Readout
ATLAS実験ホール
(地下100m)
Central
Trigger
Processor
電気回路室
(地下80m)
• 正確なデータ収集のための発行時間に対する要求
– 高速性 (バッファ容量からくる上限 100CLK(2.5マイクロ秒)以内)
– 安定性 (正確なデータ収集のために 25ns以下のふらつき)
2008/2/7
修士論文発表会
奥村恭幸
トリガー信号発行時間 高速性の検証
テストパルスを用いたトリガー信号発行時間の測定
バッファサイズからの要求:: 全経路での発行時間 100 CLK 以内
100m
Test Pulse
PP
ASIC
ATLAS実験ホール
(地下100m)
Trigger 1
Trigger 2
Trigger 3
SLB
Hpt
SL
Readout
69 CLK
発行時間
Central
Trigger
Processor
電気回路室
(地下80m)
92CLK (2.3 ms)
ATLAS実験の基準(100CLK)を満たす
高速システムであることを実証
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
トリガー信号発行時間 安定性の検証
宇宙線ヒットによるトリガー信号を用いて評価
正確なデータ取得のための要求:: トリガー信号の不定性 << 1CLK周期(25ns)
PP
ASIC
ATLAS実験ホール
(地下100m)
Trigger 1
Trigger 2
Trigger 3
SLB
Hpt
SL
Readout
Central
Trigger
Processor
電気回路室
(地下80m)
安定したタイミングでのトリガー信号生成を実証
正確なデータ収集が可能!
(2)飛跡再構成論理回路の検証
PP
ASIC
Trigger 1
Trigger 2
Trigger 3
SLB
Hpt
SL
Readout
ATLAS実験ホール
(地下100m)
1.
Station1
2
2.
3.
Central
Trigger
Processor
電気回路室
(地下80m)
4.
•運動量
•検出位置
3
1.
2.
3.
4.
飛跡通過を判定する論理 SLB
通過位置を算出する論理 SLB
飛跡を判定する論理  パラメータ (位置/曲率) Hpt
運動量を算出 SL
飛跡通過判定の論理回路検証
ヒットパターンと飛跡通過判定の相関を確認
期待されるヒットパターン
input
•隣り合う層にヒットが存在すること
•二層のヒットの検出位置が近く
(差分1以下)であること
調査項目
ヒット数
レイヤー間チャンネル差分
•ヒット数 (ヒット数は2以上)
•チャンネル差分 (チャンネル差分は1以内)
output
結果
•全416 IC中415 ICが正常に動作.
•1 ICの不具合を発見.
宇宙線ヒットに対して正常に動作.
発見した不調SLB ICは交換
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
ヒット数
飛跡の通過位置を算出する論理回路の検証
飛跡通過選別された検出位置と飛跡通過位置の相関を確
input
output
認.
input
期待される動作
•検出位置に対応した飛跡通過位置
Trigger 2
Trigger 3
SLB
Hpt
SL
飛跡通過位置(出力)
output
調査項目
•飛跡選別された2ヒットと,
飛跡通過位置出力の相関
(SLB ICの入力と出力の相関)
Trigger 1
結果
•全416 ICが正常に動作
検出位置(入力)
全ての飛跡通過位置算出論理回路の正常動作を確認
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
飛跡を判定する論理回路の検証
トリガーチェーンの入力情報と出力情報の相関を確認
input
output
Trigger 3
SLB
Hpt
SL
出力情報
Trigger 2
出力情報
Trigger 1
差分情報
検出位置情報
100m
入力情報
結果
•トリガーチェーンシステムとして正常
に動作をしていることを確認
•光ファイバーの接続の不具合を発見
入力情報
出力情報
調査項目
•飛跡検出位置
•曲率情報(差分情報)
の入力との相関
入力情報
全領域においてトリガーチェーンを有効に動作させることができる
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸
まとめ
LHC-ATLAS実験2008年夏に開始
– ミュー粒子を用いてのヒグス粒子探索
– 実験開始前のミュー粒子トリガーシステムの理解, 正常動作環境の確立
テストパルス・宇宙線を用いたトリガーシステムの動作検証を考案・実
践
– トリガー信号発行時間の測定
• 高速性(92CLK), 安定性(ふらつき 0.2%)
– 飛跡再構成回路の正常動作の検証
• トリガーチェーンシステムとしての正常動作を実証.
• 幾つかの不調箇所を発見.
– ICの故障(1IC /416 IC) /光ファイバーのコネクションミス
トリガーシステムのデータ収集・事象選別回路の正常動作を実証
ミュー粒子トリガーシステムが実験開始時から正常に動作
2008/2/7
修士論文発表会 奥村恭幸