Transcript 12/30講義資料
日本と東アジア貿易専題研究(一) 日本對東亞貿易專題研究(一) 1 今日学ぶこと 教科書:伊藤元重(2005)『ゼミナール国際経済入門』 日本経済新聞社。 第5章 国際貿易の基本構造 Ⅱ. 貿易の基礎理論 Ⅲ. 産業内貿易の理論 テクニカル・コラム 第6章 変貌する通商システム Ⅴ. 規模の経済性の下での貿易 2 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●雁行形態の産業発展 ⇒赤松要による研究 ⇒産業の発展はそれまでに輸入されていた商 品が次第に国産に変わっていき(輸入代替)、 ⇒さらには、輸出されていくパターンをとる。 ⇒このパターンはいろんな産業で次々と起こっ ていく。 ⇒この産業発展を絵に描くと、雁の群れが飛ん でいるように見える。 3 4 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●プロダクト・サイクル ⇒Vernonは、多くの製品にはサイクル(Product Cycle)があると主張した。 ⇒そのサイクルの過程で生産形態や貿易形態 も大きく異なると主張した。 ⇒例えば、 5 プロダクト・サイクル ●第一段階 新製品の開発 (1) アメリカが電機皿洗い機を開発、生産し始める。 ●第二段階 成熟化 (2)電機皿洗い機の標準化が始まる。 (3) 規模の経済性を生かした低コスト生産の競争と海 外輸出が始まる。 (4) 貿易によって生産技術の移転も始まり、日本や ヨーロッパでも生産が始まる。 ●第三段階 完全標準化 (5)電機皿洗い機の生産技術が完全に標準化され、ア メリカは日本やヨーロッパから輸入を始める。 6 プロダクト・サイクル 国内生産 国内需要 第一段階 開発 第二段階 成熟化 第三段階 標準化 7 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●プロダクト・サイクル(第一段階) ⇒第一段階にある製品(標準化されていない製 品)は、消費者のニーズ(需要)や輸送費の問 題を考察することが重要である。 ⇒立地選択(需要決定型) ①したがって、工場は先進国の大都市などの 消費地の近くに立地する。 ②標準化されていない製品の生産拠点は、需 要によって決定される。 8 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●プロダクト・サイクル(第二段階) ⇒第二段階にある製品(標準化された製品)は、消費 者のニーズや輸送費の問題よりも、 ⇒製品を大量生産し、規模の経済性を生かした低コス ト生産がより重要となる。 ⇒立地選択(コスト決定型) ①したがって、郊外の一箇所の大規模工場で生産さ れる。 ②製品仕様や部品の標準化が進めば、より生産費用 の低い海外の生産拠点に移動する。 9 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●プロダクト・サイクルと貿易 ⇒プロダクト・サイクルの第二段階の標準化された製 品の貿易は、伝統的な貿易理論(リカード理論やHO理論)によってうまく説明できる。 ⇒この理論は、生産費用の低い生産拠点で生産され るという意味で、コスト決定型の貿易理論である。 ⇒VTR、DVD、薄型テレビなどが標準化されるにつれ て、生産拠点がアジアに移転している。 ⇒しかし、この理論は、標準化されていない製品の貿 易をうまく説明できない。 10 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●プロダクト・サイクルと貿易 ⇒プロダクト・サイクルの第一段階の標準化さ れていない製品は、先ほども議論したように 消費地の近くで生産される。 ⇒標準化されていない時点では、消費者のニー ズ(需要)を把握する必要があるからである。 ⇒したがって、標準化されていない製品の貿易 は、需要決定型の理論が必要となる。 11 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●リンダー(Linder)の貿易理論 ⇒この理論は、需要決定型の貿易理論である。 ⇒リンダーは、所得水準などの需要条件によっ て貿易が生じると考えた。 ⇒工業品の貿易は、先進国、中進国、後進国 のうち、 ⇒所得格差の小さい先進国同士、または、先進 国と中進国の間で活発に行われることを示し た。 12 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●リンダー(Linder)の貿易理論 ⇒仮定1. 所得水準の異なる先進国(A国)、中進国(B 国)、後進国(C国)がある。 ⇒仮定2. 繊維、化学製品、鉄鋼、自動車、電子製品 がある。 ⇒仮定3. ①C国は繊維、化学製品に対する需要があ り、生産している。 ②B国は、化学製品、鉄鋼、自動車に対する需要があ り、生産している。 ③A国は、鉄鋼、自動車、電子製品に対する需要があ り、生産している。 13 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●リンダー(Linder)の貿易理論 ⇒A国 鉄鋼、自動車、電子製品 B国 化学製品、鉄鋼、自動車 C国 繊維、化学製品 ⇒A国とB国は、C国よりも所得水準が高いので、 工業製品への需要がある。 ⇒A国とB国はいずれも鉄鋼と自動車を生産し ており、これらへの需要があるので、これらが 貿易される。 14 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●リンダー(Linder)の貿易理論 ⇒A国 鉄鋼、自動車、電子製品 B国 化学製品、鉄鋼、自動車 C国 繊維、化学製品 ⇒B国は、C国よりも所得水準が高い。 ⇒B国とC国はいずれも化学製品への需要があ るので、これらが貿易される。 15 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●リンダー(Linder)の貿易理論 ⇒A国 鉄鋼、自動車、電子製品 B国 化学製品、鉄鋼、自動車 C国 繊維、化学製品 ⇒C国で生産されている繊維や化学製品への 需要はA国ではない。 ⇒A国で生産されている鉄鋼、自動車、電子製 品への需要はC国ではない。 ⇒A国とB国とでは貿易が行われない。 16 Ⅲ. 産業内貿易の理論 ●リンダー(Linder)の貿易理論 ⇒A国 鉄鋼、自動車、電子製品 B国 化学製品、鉄鋼、自動車 C国 繊維、化学製品 ⇒結論1. 所得水準の似通ったA国とB国、B国 とC国の間で貿易が活発に行われる。 ⇒結論2. 所得格差の大きいA国とC国の間で は貿易は行われない。 17 基礎知識 ●需要曲線の見方 価格 200 150 需要曲線 需要量 50 100 18 基礎知識 ●需要曲線のもう一つの見方 価格 200 150 需要曲線 需要量 50 100 19 基礎知識 ●消費者余剰 ⇒ある消費者がある製品を見て、「1500円なら 買いたい」と思ったとしよう。 ⇒店主に値段を聞いて、1000円だったとしよう。 ⇒消費者は当然この製品を購入するであろう。 ⇒なぜですか? 20 基礎知識 ●消費者余剰 ⇒消費者がある製品を見て、「1500円なら買い たい」と思ったが、 ⇒価格が1000円だったので、 ⇒消費者は500円分の余剰を得たことになりま す。 ⇒このように購入費用を超える消費者の財に対 する評価を消費者余剰といいます。 21 基礎知識 ●需要曲線の見方 価格 P*=300 P=150 需要曲線 50個の購入費用 =150円×50個=7,500円 50個の需要から得られた効用 =□0PAD+△PAP* =7,500+3,750=11,250円 A 消費者余剰=効用ー購入費用 =11,250円ー7,500円 =3,750円 需要量 0 D=50 22 基礎知識 ●消費者余剰はいくら? 価格 P*=500 P=200 10個の購入費用 = 需要曲線 50個の需要から得られた効用 A =□0PAD+△PAP* = 消費者余剰=効用ー購入費用 = 需要量 0 D=10 23 基礎知識 ●供給曲線の見方 A P=150 販売収入=150円×200個 =30,000円 200個生産するための可変費用 =△0ASの面積 =(200×150)/2=15,000円 生産者余剰=販売収入ー可変費用 =30,000ー15,000 =15,000円 0 S=200 24 基礎知識 ●生産者余剰はいくらですか? 販売収入= A P=100 0 200個生産するための可変費用 =△0ASの面積 = 生産者余剰=販売収入ー可変費用 = S=300 25 基礎知識 ●消費者余剰と生産者余剰はいくらですか? 価格 A=300 P=100 供給曲線 E 需要曲線 0 B=200 26 テクニカルコラム⑪ ●貿易利益はいくらですか? 価格 A=300 供給曲線 E P=100 P*=80 G 貿易下の自国企業の供給曲線 F 世界の供給曲線 需要曲線 0 C=100 D=300 27 テクニカルコラム⑬、⑮ ●交易条件 輸入財 A 需要量 予算制約線 交易条件 =輸出財価格/輸入財価格 0 B 輸出財 需要量 28 テクニカルコラム⑬、⑮ ●交易条件 輸入財 A 需要量 予算制約線 交易条件 =輸出財価格/輸入財価格 E 100 0 B 150 200 輸出財 需要量 29