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日本と東アジア貿易専題研究(一) 日本對東亞貿易專題研究(一) 1 今日の内容 なぜ貿易をするのか? 第8章 グローバリゼーション下の円 1. ドル支配の終わり 2. 二分されるドル圏とユーロ圏 3. 円はダメな通貨なのか 講義資料のダウンロード http://www.geocities.jp/naonorikoyama/ 2 なぜ貿易をするのか? (1) Ricardoモデル 労働生産性格差 (2) Heckscher-Ohlin-Samuelson (HOS)モデル 相対要素賦存格差 (3) 新しい貿易理論 ①プロダクト サイクル モデル ②規模の経済モデル 3 なぜ貿易をするのか? (1) Ricardoモデル フランス ドイツ X財 1ドル 3ドル Y財 2ドル 4ドル (1) フランスとドイツは、二 つの財を生産している。 (2) 生産費用が高い国は、 価格も高い。 (3) フランスは、ドイツより いずれの財も安く生産 できる。 ⇒フランスは両方の財を 輸出しますか? 4 なぜ貿易をするのか? (1) Ricardoモデル フランス ドイツ X財 1ドル 3ドル Y財 2ドル 4ドル ●比較優位の理論 (1) フランスは、すべての 財の生産に絶対優位 を持っている(=生産 費用が安い)。 (2) どの国が何を輸出し、 何を輸入するかは、 比較優位で決まる。 (3) 比較優位とは、相対 的に安く生産できると いう意味。 5 なぜ貿易をするのか? (1) Ricardoモデル ●フランス (1) フランス人がX財を国内で生産、販売したら1ドル 儲かる。 (2) この1ドルでY財を国内でいくつ購入できますか? (3) フランス人がX財をドイツに輸出して販売したら、3 ドル儲かる。 (4) この3ドルでドイツからY財をいくつ輸入できます か? ⇒フランスは、X財を輸出し、Y財を輸入した方がたくさ んのY財を手に入れることができる。 ⇒これを交換の利益という。 6 なぜ貿易をするのか? (1) Ricardoモデル ●ドイツ人 (1) ドイツ人がY財を国内で生産、販売したら4ドル儲 かる。 (2) この4ドルでX財を国内でいくつ購入できますか? (3) ドイツ人がY財をフランスに輸出して販売したら、2 ドル儲かる。 (4) この2ドルでフランスからX財をいくつ輸入できます か? ⇒ドイツは、X財を輸入し、Y財を輸出した方がたくさん のX財を手に入れることができる。 ⇒これを交換の利益という。 7 なぜ貿易をするのか? (1) Ricardoモデル フランス ドイツ X財 1ドル 3ドル Y財 2ドル 4ドル ●貿易は比較優位で決ま る ●X財の生産費用で測っ たY財の比較生産費を調 べる。 ●Y財の比較生産費は、 ドイツはフランスより安い。 ⇒ドイツはY財に比較優 位を持ち、Y財を輸出する。 8 なぜ貿易をするのか? (2) H-O-Sモデル ●理論の背景 (1) Ricardoモデルは、技術格差によって貿易 を説明する。 (2) 技術格差の小さい、先進国同士の貿易を説 明できない。 ⇒H-O-Sモデルは、技術格差のない状況でも貿 易が生じることを説明した。 9 なぜ貿易をするのか? (2) H-O-Sモデル (1) 相対的に労働(資本)が豊富な国は、労働(資本)集 約財を輸出する。 (2) Rybczynski theorem(リプチンスキー定理) 財の相対価格が不変のとき、相対的に労働 賦存量が拡大すると、労働集約財の生産量が 拡大し、資本集約財の生産が縮小する。 (3) Stolper-Samuelson theorem(ストルパー=サミュ エルソン定理) 資本集約財である機械の価格が上昇すると、資本レ ンタルが上昇し、賃金率は下落する。 10 なぜ貿易をするのか? 新しい貿易理論 ①プロダクト サイクル モデル ●プロダクト サイクル理論の研究背景 (1) RicardoモデルやH-O-Sモデルでは、技術の時間 的変化を考察していない。 (2) アメリカでテレビが開発された。それが時間を経て、 日本やヨーロッパで生産、輸出されるようになった。 今では、中国が生産拠点となっている。 (3) (1)のモデルでは、(2)の状況を説明できない。 ⇒プロダクト サイクルモデルは、生産技術の移転とそ れに伴う商品の性質の変化によって貿易パターン が決まるという考え方。 11 なぜ貿易をするのか? 新しい貿易理論 ①プロダクト サイクル モデル ●第一段階 新製品の開発 (1) アメリカがテレビを開発、生産し始める。 ●第二段階 成熟化 (2) テレビの需要が海外に広まり、アメリカから輸出さ れ始める。 (3) 大量生産の必要性から、製品の標準化も始まる。 (4) 貿易によって生産技術の移転も始まり、日本や ヨーロッパでも生産が始まる。 ●第三段階 標準化 (5) テレビの生産技術が完全に標準化され、アメリカ は日本やヨーロッパから輸入を始める。 12 なぜ貿易をするのか? 新しい貿易理論 ①プロダクト サイクル モデル 国内生産 国内需要 第一段階 開発 第二段階 成熟化 第三段階 標準化 13 なぜ貿易をするのか? 新しい貿易理論 ②規模の経済性 ●理論研究の背景 (1) ドイツもフランスも互いに自動車を輸出し あっている。 (2) 類似した財を輸出しあっている状況(産業内 貿易または水平分業)をリカードモデルやHO-Sモデルではうまく説明できない。 (3) 産業内貿易の多くは、規模の経済性や製品 差別化で説明できる。 14 新しい貿易理論 ②規模の経済性 ●二つの重要な概念 (1) 産業レベルの規模の経済性 産業全体の生産量が拡大するにつれて、個 別企業の平均生産費用が低下すること。 例 アメリカのシリコンバレー (2) 製品差別化 同じ産業内の企業がデザインや色の異なる製品を生 産している状況。 例 自動車産業 15 新しい貿易理論 ②規模の経済性 ●産業レベルの規模の経済性 • アメリカのシリコンバレーには、知識集約的な半導 体産業が多く存在する。 • 産業集積は、技術などの新情報の伝達を容易に する。 • 半導体産業全体の生産量の拡大は、技術などの 情報移動を通じてここの企業の生産費用を低下さ せる効果を持つ。 ⇒同一生産技術を持つ国が貿易を始めると、生産規 模の大きい国が費用面での優位性を確保する(歴史 的偶然)。 ⇒輸出増加→産業規模拡大→平均費用の低下→輸 出拡大 16 新しい貿易理論 ②規模の経済性 ●製品の差別化 (1) ドイツ人がベンツを生産し、日本人がトヨタを生産 している。 (2) 同じ自動車だが、デザインや機能に違いがある。 これを製品の差別化という。 (3) 貿易をしない場合、それぞれの国民は一種類の 自動車しか利用できない。 (4) また、市場規模が国内だけなので、規模の経済性 が十分に働かない。 (5) 貿易をすれば、両国民は多様な財を享受でき、規 模の経済性によりより安く大量に生産できる。 17 第8章 グローバリゼーション下の円 ●外国為替市場 外国為替には、通貨の受け渡し(資金決済)の時期 によって、「直物為替」と「先物為替」の2つがある。 (1) 直物為替(Spot) 通貨売買を契約した日から2営業日後に受け渡しす る為替取引。 (2) 先物為替(Forward) 通貨売買を契約した日から2営業日以降(直物を超 える日)に受け渡しが行われる為替取引。 18 第8章 グローバリゼーション下の円 ●ジャパンプレミアムと為替スワップ市場 (1) 為替スワップ市場は、直物為替取引と先物為替取 引を同時に行う市場。 (2) 1997年以降、日本の銀行の信用力が低かったた め、外国の銀行からその他の国より高く金利が設定 された(ジャパンプレミアム)。 (3) 上乗せ金利を支払っても、日本の銀行は直接ドル 市場でドルを調達できなかった。このとき、為替スワッ プ取引によって円とドルを交換した。 19 為替スワップ取引によって円とドルを交換 ●日本の輸入企業が輸入品の代金決済のため、3ヶ 月先に円を100万ドルに交換したい。 ⇒信用力の低い邦銀は、直物取引でドルを調達できな かった。 ●為替スワップ市場 (1) 直物取引 邦銀は、外銀との間で100万ドルを売 り、円を買う取引を行う。 (2) 先物取引 3ヵ月後、邦銀はあらかじめ約束された レートで円を売り(円投)、外銀から100万ドルを買 い戻す。 20 為替スワップ取引によって円とドルを交換 ●日本の輸出企業が給料支払いのため、3ヶ 月先に100万ドルを円に交換したい。 ●為替スワップ市場 (1) 直物取引 邦銀は、外銀との間で100万ド ルを買い、円を売る取引を行う(円を担保に する)。 (2) 先物取引 3ヵ月後、邦銀はあらかじめ約束 されたレートで100万ドルを売り、外銀から1 円を買い戻す(円転)。 21 コール市場でマイナス金利 ●コール市場 邦銀と外銀の間での円の貸し借り。 ●2003年以降、外銀は邦銀からマイナス0.2%からマ イナス0.09%の金利幅で円を調達できた。 ●外銀は、邦銀にコール市場でマイナス0.03%で円を 貸し出した。 ⇒コール市場でマイナス金利。 ⇒外銀の円貸出利益(0.06) =円の貸出金利(ー0.03)ー円の調達金利(ー0.09) 22 内外価格差問題 ●内外価格差 同一の商品やサービスの価格に関する国内 価格と海外価格の差をいう。 ⇒国内価格が外国の価格よりも高すぎると豊 かな消費生活を送れない。 23 内外価格差問題 ●購買力平価 為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率 によって決定されるという考え方。 例. 日本のビッグマック290円、米国は3.54USD(2009 年2月) 290円=E×3.54USD E=290/3.54≒81.9円/ドル ●内外価格差=購買力平価/実際の為替レート ⇒実際の価格水準の格差(購買力平価)が実際の為替 レートを上回るとき、日本の価格は割高となっている。 24 内外価格差問題 ゴルフプレー代はなぜ高いのか? ●一般的に生産性の低い非貿易財の価格が 高くなる傾向がある。 例 かつての散髪代、公共料金など。 ●一般的には、所得水準が高い国ほど非貿易 財の価格が高くなる傾向がある。 ●なぜ? 25 内外価格差問題 ゴルフプレー代はなぜ高いのか? ●Balassa=Samuelson効果 (1) 各国の所得格差は、貿易財の生産性によっ て決まる。 (2) 貿易財の生産性の高い国は、所得水準が 高まる。 (3) 所得の成長につれて、その国の非貿易財 が貿易財よりも割高になる。 ⇒日本のゴルフ代が高い理由は、貿易財の生 産性が高いからである。 26