「公共」文化施設の評価を活かした運営による地域活性化の試み ~小

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Transcript 「公共」文化施設の評価を活かした運営による地域活性化の試み ~小

「公共」文化施設の戦略設計への住民参画とその社会的インパクト
~
総合政策学部4年
高島祐美子
8月2日2003年
小出郷文化会館を軸に~
今日のプレゼンの流れ
研究テーマ
問題意識
なぜ評価必要か
過去の評価の
問題点
どのように評価できるか
今後の研究
文化施設運営・活性化のための投資
国の投入額
自治体の投入額
:9億円
:1028億円
平均稼働率
53.3%
公共文化施設の問題点
運営側
市民側
・公共意識の欠如
・トップダウンの政策
・財政縮小による悪循環
・適切な評価と運営への反映の
欠如
・社会に対する市民意識の欠如
・公共財への関心の低下
悪循環とは・・
自治体財政縮小
運営費縮小
利用者減
運営・プログラム
の質の低下
小出郷文化会館とは?
小出郷地域の
社会的、経済的、文化的活性化
アウトリーチ
運営委員会
稼働率99%
(平均53.3%)
地域課題
小出郷:新潟県北魚沼郡2町4村の広域過疎地域。
(人口4万700人)文化会館は2町4村広域組織に
よって運営。地元の大工を館長として選出。
小出郷文化会館の地域への波及効果
経済
観光とのタイアップによる地域への経済波及効果
社会
平成16年に控える町村合併の社会的リスク 減
文化
文化に触れる機会の増大
教育
部活動がなくなってきている小中学校の部活動
の役割。総合学習の時間においてアーティスト派
遣
福祉
自由に動けない高齢者や仕事で忙しい人に対し
て身近な場でのコンサートを催す。教育制度を作
る。
研究テーマ
ハーバーマスの「公共圏」
市民が誰でも入れる
自立的・合理的議論の場
「公共」文化施設の社会的インパクト高めるための「住民
参画」の仕掛けは何か
社会的インパクト
1.文化に触れる機会を増やす
2.教育的波及効果をもたらす
3.地域の社会的問題解決につなげる
4.経済的波及効果をもたらす
5.市民の「公」への意識を高める
公共文化施設:他公共財との比較
必需
ex)下水道・保健衛生
ex)生活保護
共
(
公同
益消
)費
性
個
(
私人
益消
)費
性
ex)キャリアアップのための
社会人教育
ex)公共文化施設
・不特定多数に便益
必需の有無は提供・需要側が選択
・行政関与の論拠明示
・最低限の行政関与
・受益者負担
選択
京都府資料参考
公共文化施設:他財との比較
労働集約的産業(文化・芸術)=混合財
1.必然的に赤字
2.外部性
・文化的アイデンティティの維持
・経済波及効果
・観客の理解力が高まることによる、将来世代が受け取る便益
・コミュニケーションの促進
W.J.ボウモル=W.G.ボウエン
『舞台芸術:芸術と経済のジレンマ』1966年 より
公共文化施設
なぜ評価が必要か
1.アカウンタビリティ
選択的であるが故になぜ行政関与が必要なのか
納税者への説明責任がある
2.外部性
経済効率性だけでは図りきれない外部効果がある
評価において必要な視点
1.最低限の行政関与のもと、いかに民間力を活かせるか
2.「顧客」(住民)がどれだけ満足したか
過去の評価の問題
目的
国
県
市町村
支援
運営
支援財団 支援
企業
運営
有識者
支援
評価機関
運営
住民
過去の評価の問題:国、県、市町村
目的
支援
具体的目的
問題
支援対象 ・一部有識者による
閉ざされた評価
の選定
(インタビューより)
国
県
市町村
運営
予算額
維持の
有無
・他公共事業と同様に評価(図1)
・「政策へ活かす」意識なく形骸化
(資料1)
・目的達成度を「入場率」で図る場合
が多い
・短期的な評価で予算削減
過去の評価の問題
目的
国
県
市町村
支援
運営
支援財団 支援
企業
運営
有識者
支援
評価機関
運営
住民
過去の評価の問題:財団、企業、非営利組織
財団
企業
非営利
組織
目的
具体的目的
支援
支援対象
の選定
運営
予算獲得
のため
組織内外
への
情報開示
問題
一部有識者に丸投げ
利用者への情報公開不足
評価意識の欠如(図2)
過去の評価の問題
目的
国
県
市町村
支援
運営
支援財団 支援
企業
運営
有識者
支援
評価機関
運営
住民
過去の評価の問題:有識者、評価機関、住民
目的
具体的目的
評価
行政から
企業まで
データを
提供
有識者
評価機関
住民
問題
評価が目的化し
政策に活かされない
主体的な評価意欲がない
外部評価制度の形骸化
問題発見 構成員が少なく、活動期間少ない
運営
提言
施策の実施プロセスや
実施後の結果には関心が払われて
いない
過去の評価の問題:有識者、評価機関、住民
評価供給側
閉ざされた評価
形骸化
入場者数で図る達成度
実施プロセスの軽視
評価需給側
悪
循
環
評価結果への関心の低さ
限られた有効な評価結果
の制約
今後の評価 :一般論
日本の評価制度
事務事業評価
予算を出すか出さないかの
是非を決める査定
一律に入場者や経費の
増減で判断
欧米型の評価制度
戦略計画方式
何を目指し、誰のための
文化施設なのか館独自の
使命を示す
具体的な目標に対する達成度で
評価
「顧客」としての住民をいかに満足させるか
今後の評価: 文献とケーススタディより
1.2つの視点の必要性
欧米型の評価制度
戦略計画方式
何を目指し、誰のための
文化施設なのか館独自の
使命を示す
「所有者」としての住民
具体的な目標に対する達成度で
評価
「顧客」としての住民
2.コミュニケーションツールとしての「評価」の必要性
3.住民によるセオリー評価の必要性
研究方法 <ケーススタディ>
所有者
ステークホルダー (自主事業)
公
設
公
営
能登演劇堂
小出郷
文化会館
所有者
(自己責任)
顧客
金沢市民
芸術村
移行
公
設
民
営
しいの実
シアター
いまだて
芸術館
小出郷文化会館の評価と運営
大住、P.93参考
館長
権限
監視
運営委員会
住民参画
<選好・ニーズの提示>
<プログラムの実施状況を監視>
評価 フィード
<長期的運営方針の策定>
バック
文協
事務局
予算・職員
アンケート
顧客としての意見
情報
評価・補助金
町村行政
代表の選出
顧客
住民
所有者
情報
調査・公表
文部科学省
情報
評価・講座
芸術情報プラザ
トヨタ
ケース1.金沢市民芸術村(島根県:96年)
【概要】
・旧工場倉庫群を改修整備して1996年に開設
・財団法人金沢市公共ホール運営財団によって運営
・全国で始めて市民に全面的管理を任せる
【評価されている点】
・住民に管理を委ねている
・低料金・年中無休・24時間利用
・利用者の90%が地域内住民
ケース2.能登演劇堂(石川県:95年)
【概要】
・高齢化27.4%、人口8千人の過疎地域
・観光産業も落ち込んでいるがこの施設が全国から集客
・地方では数少ない演劇専用公共文化施設
・地域の中心的産業体としての発展を目指す
【評価されている点】
・町外者も利用率高
・町内の小学校での演劇ワーク
ショップ
ケース3.しいの実シアター(島根県:95年)
【概要】
・日本初の公設民営文化施設
・人口7千人の八雲市に1995年開館
・劇団が実質的に管理運営
・過疎解消という政策目標が掲げられている
・地域外の劇団の積極的な働きかけによって実現した事例
【評価されている点】
・地域への波及効果
→周辺住宅分譲地が5区画から
60区画成立
→10年前に比べて島根県で唯一
人口が増加している村
ケース4.いまだて芸術館(福井県:91年)
【概要】
・公設民営文化施設
・人口1万4千人の今立町に1991年開館
・企画プロデューサーは全員住民
14人の企画プロデューサーと150人の住民スタッフ
・企画・運営・技術全て住民が責任を持ち展開
【評価されている点】
・95%利用率
・毎週の運営住民会議が
生活感覚を得る情報交換の場に。
・住民100人に一人は
企画プロデューサーとして活動
5つのケースに対する評価
1次評価
チェック項目
1.幅広い住民が参加しているか
2.情報開示を前提とした住民の判断がなされているか
3.十分なノウハウの提供がなされているか
4.評価や審議の結果とプロセスが住民/メディアに公表
されているか
(大住、2002 参考)
5つのケースに対する評価
2次評価
いかに地域の問題・特
性を吸い上げたか
地域特性
い
か
地域ニーズ
ミッション
に
目
標
立達
具体的目標
て成
らま
れで
インプット
た明
か確
アウトプット
いかにミッションや目
な
道
的にフィードバックした
アウトカム
筋
か
が
インパクト
いかに自分達の
強み・弱みを分析したか
施設特性
いかに目標を設定した
か
自己資本の確立
効率性
妥当性
有効性
地域課題をいかに解決したか
来期以降のスケジュール
5つのケースの評価体系、運営の調査
夏休み
秋学期
小出郷文化会館
の評価体系
能登演劇堂
金沢市民芸術村
しいの実シアター
いまだて芸術館
小出郷文化会館への提案
卒論
図1
文化行政を評価する仕組みの有無
2%
4%
2%
34%
総合計画の一環として行っている
評価は特に行っていない
その他
無回答
文化行政に関して独自で評価して
いる
58%
Arts Policy & Management No.13 2001.08 P.11より
図2
財団による評価・情報公開
評価をしている
評価をしていない
情報公開をしている
情報公開をしていない
準備中/検討中
地域創造平成14年度調査内容より作成
資料1
9県の評価シートより・・・
「文化環境の充実を目指すために積極的に施策を展開し、
強化していかなければいけない」
→何をどのように改善していくか不透明
「県民満足度の状況もまあまあ満足であるという意識が読み取れる
ことから概ね適切だと考える」
→県民満足度を図った経緯が不透明
「成果:目標とした入場率60%に平成12年度達した」
→成果達成度を入場率で図るケースが多い