第4章 利益センター

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第4章 利益センター
責任センターの業績が利益で測定されるとき、そのセンターを利
益センターとよぶ。
1 一般的考察
利益センターの普及
利益センターの有利性
利益センターの課題
2 利益センターとしての事業単位
事業単位の権限上の制約
他の事業単位からの制約
本部からの制約
3 其の他の利益センター
4 収益性の測定
5 要約
1 一般的考察
機能別組織(職能)は、主要な製造・販売の機能が別々の組織単位で
実施される。この組織が製造・販売を一括する単位に変ることを事業
部化と呼ぶ。
・利益センターを下位に委譲する条件:収益と費用のトレードオフな関係の
決定権を下位に委譲する条件
1)マネジャーがその決定に関する情報にアクセスできる。
2)マネジャーの行なうトレードオフ決定の有効性を測定する方法が
ある。
・ 利益センターの普及
第2次大戦後である。1994年では、フォーチュン1000社で回答した、638社
が採用(93%)。この状況はどこに国でも同じである。
・利益センターの有利性
1)決定の質が改善される。
2) 業務決定のスピードが高められる。
3) 本部マネジメントは日々の課題から開放されて広い課題に集中できる。
4) マネジャーは小数の本部制約で、自分達のイマジネーションと起案を行な
う自由をもつ。
5) 利益センターは通常の独立会社に近いので、マネジャーは訓練をそこで受
ける。
6) 利益意識を植え付ける場となる。
7) 利益センターは、トップに個別の単位の収益性の情報を伝達できる。
8) アウトプットが容易に測定できるので、利益センターは、競争的な業績への
圧力になる。
・利益センターの課題
利益センターの創出は多くの課題を提示する。
1)分権的な意思決定はトップのコントロールロスを生み出す。
2)本部マネジャーは、平均的な利益センターマネジャーより有能あるいは情報通であ
れな、事業単位の決定の質は低下する。
3)複数事業単位での調整問題(振替価格、共通費配賦、収益の帰属)があると、摩
擦が起こる。
4)機能別単位間であれば、協力していた関係が、競争関係になり、生産決定などで、
むしろコスト高や資源消費を浪費する可能性がある。
5)事業部化は追加のスタッフを必要とするかもしれない。
6)事業部長の仕事に適する機能部門レベルでのマネジャーはいない可能性がある。
7)事業部長の罷免率が高いときに、マネジャーは、長期を犠牲にして、短期の問題
のみに注視する可能性がある。
8)事業部利益を最適化することが、自動的に全社の利益を最適する保証はない。
2 利益センターとしての事業単位
・事業単位の権限に関する制約
本部の制約と事業単位の自律性とは、トレードオフである。この両者のバランスに事
業部制の有効性は依存する。
自律性は、事業部長の影響力の大きさであり、資源配分への影響力である。
その結果は、ボトムラインへの実質的な影響力の大きさで表される。
・他の事業単位からの制約
事業単位間の関係で3つの決定問題がある。1つは製品決定、2つめはマー
ケティング決定、3つめは購買契約と調達問題。
多くの場合にこの3つの決定を1つの製品ラインについて、1つの事業部で行
なうケースは少ない。
企業としての統合戦略のため、シナジーのため、規模の利益のため。
・本部マネジメントからの制約
3つのタイプに制約は分かれる。1つは戦略的な考慮からの制約、2つめは統
一性からの制約、3つめは、集中の経済性から。例えば、投資決定。
これらの制約のうち、大きな問題は、本部サービスを利用するような制約であ
る。経費からみて、高い。品質が比較すると悪い。サービスのタイミングが遅いな
どがある。
3 他の利益センター
・機能別組織
事業部の中にある機能別組織である、生産・マーケティング・サービスなどの組織を利益セ
ンターにすることがある。その組織デザインをとる原則は、その単位組織長は、ボト
ムラインへ一定の影響力があるかということ。
・マーケティング組織
この組織も利益センターになるケースがある。この場合には、製造組織から購入する
製品には、標準原価が利用され、その価格で振替られる。利益センターになる
ケースは、地理的に本部のコントロールが効かない海外のMK組織である。
・製造組織
一般に製造組織はコストセンタ-であるが、場合によっては、利益センターとする
ケースがある。
しかし、ボリューム・ミックスや価格について決定権がないことから、限定的で
ある。このためにこれを純利益センターと理解される。
・サービスと支援単位組織
利用に応じてチャージをできる組織は、利益センターとすることができる。しかしこ
の場合に提供をうける側に、拒否する機会が必要になる。
・其の他組織
支店とか支社のような切り離されたマーケティング組織も利益センターになる可
能性がある。
4 収益性の測定
マナジメントパフォーマンスとエコノミックパフォーマンスとがある。
1)マネジメントパフォーマンスは、経営者の仕事を評価するために行な
うもので、その頻度は多い。
2)経済的パフォーマンスは、組織を評価するものであり、多面的で財務
以外のデータも利用して、重要な決定の結果、組織のパフォーマンス
を明らかんする。
・収益性の尺度の種類
利益センターのマネジャーの業績の測定は、すべてのコストを控除した利益で測定される。5
つの異なる利益尺度がある。1つは、貢献利益、2つめは直接利益、3つめは管理可能利
益、4つめは所得税控除前の利益、5つめは純利益。
収益
売上原価
変動費
貢献利益
利益センター固定費
直接利益
管理可能本社費
管理可能利益
其の他本社費
税引き前利益
所得税
利益
利益センター損益計算書
1000
600
180
220
90
130
10
120
20
100
40
60
・収益
収益のタイミング問題
共通収益の帰属問題
異なる事業部のセールズにより、自分達の事業部の製品が売れる
ケース
解決:収益の一部を配分する。収益を配分しないが、手数料などで還
元する。
・経営上の配慮
収益性の尺度については、多くの課題があるが、とりわけ、
管理者がその尺度に関連して、影響力を行使しえるかが判断の分か
れ道である。しかし、影響の程度を判断すると判断が必要なケース
が多いだろう。