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電子情報通信学会
宇宙・航行エレクトロニクス研究会
July 29, 2005
準天頂衛星
サブメータ級補強機能の性能評価
坂井 丈泰、福島 荘之介、新井 直樹、 伊藤 憲
電子航法研究所
July 2005 Sakai, ENRI
Introduction
SLIDE 1
• 我が国は、2008年頃の衛星打上げを目指して準天頂衛星シ
ステム(QZSS)を計画中。
• 8の字軌道で高仰角から測位・放送サービスを提供。測位ミッ
ションについては、基本的にGPSの補完あるいは補強を行う。
– 補完=GPS同様の信号を追加
– 補強=ディファレンシャル補正情報(+インテグリティ情
報)
• 各省庁・研究機関が研究開発を分担。電子航法研究所は、サ
ブメータ級補強情報サービスの開発を担当。
• 現在、サブメータ級補強信号の内容について、SBAS(静止衛
星によるGPS補強システム)をベースとして検討中。プロトタイ
プを作成し、性能評価を試みた。
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SLIDE 2
準天頂衛星の軌道(1)
傾斜地球同期軌道(IGSO)
=8の字軌道
地球
静止軌道(GEO)
高度35,786km
SBAS
低軌道衛星(LEO)
NNSS(極軌道)
中軌道衛星(MEO)
GPS, GLONASS, Galileo
Latitude, deg
楕円軌道
60
0
-60
90
180
Longitude, deg
• 東経140度を中心に配置した
場合の地上軌跡の例
• 離心率0、軌道傾斜角55度
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SLIDE 3
準天頂衛星の軌道(2)
e=0
e=0.2
e=0.4
e=0.6
Latitude, deg
60
長楕円軌道
0
8の字軌道
-60
-180
-90
0
Longitude, deg
90
180
• 離心率を変えて、円→楕円軌道とした例。
• 軌道傾斜角55度、遠地点は北半球側。北半球ではゆっくり移動する。
• e=0.1~0.2程度が有望。
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SLIDE 4
アベイラビリティの向上
1
0.95
1
0.90
45
45
40
0.999
40
35
35
平均
衛星数
5.3
30
25
125
0.9995
Latitude, N
50
Latitude, N
50
130
135
140
145
Longitude, E
GPS衛星(24機)のみ
150
平均
衛星数
9.3
30
25
125
130
135
140
145
150
Longitude, E
GPS+MTSAT 2機+準天頂3機
アベイラビリティ計算例(マスク20度、要求精度=水平10m)
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サブメータ級補強信号
SLIDE 5
• 我が国全域を対象としたディファレンシャル補正情報(広域デ
ィファレンシャルGPS=WADGPS)。
• GPS L1周波数で放送。同一のアンテナで受信できる。
• 補強対象:GPS、準天頂衛星、(ガリレオ)。目標精度=1m。
• ベクトル補正方式:衛星軌道、クロック、電離層伝搬遅延をそ
れぞれ別々に補正する。
• インテグリティ情報あり:信頼性の高い位置情報を提供。
• すでに実用化されているSBAS(静止衛星による補強システ
ム)をベースとして開発。
• 主要な課題:電離層伝搬遅延補正、インテグリティ情報
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広域ディファレンシャル補正方式
SLIDE 6
衛星クロック誤差
電離層遅延(~100m)
• ユーザ位置の関数
• 垂直構造は薄膜で近似
など
電離層
• ユーザ位置の関数ではない
• すべてのユーザに対して
同じ寄与
• SA ONなら速い変動
衛星軌道情報の誤差
• ユーザ位置の関数ではない
• 寄与の程度はユーザ位置による
(視線方向成分が問題)
• 変動の周期は数10分以上
対流圏遅延(~20m)
対流圏
• ユーザ位置(特に高度)の関数
• モデルによる補正が有効
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補強メッセージ検討
SLIDE 7
• 目的:日本全域に対して有効な広域補強情報をリアルタイム
にユーザに伝送し得るメッセージ構成であること。
• 制約:データレートは 250bps 以内。
• すでに実用化されているSBAS(静止衛星による補強システ
ム)メッセージをベースとする。
– 静止衛星依存部分は準天頂衛星向けに変更する。
– 電離層・対流圏伝搬遅延については、高精度化が可能な拡張メッセー
ジを検討する。
– 実現可能な測位精度について予備検討が必要(量子化単位は
12.5cmでよいか?)。
• 今回の課題:実際にSBASベースの補強メッセージで所要の
性能が達成できるか、プロトタイプにより評価する。
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補正情報の具体的内容(SBAS)
SLIDE 8
• 衛星クロック補正:エフェメリスから得た衛星クロックに対する
補正量。
• 衛星軌道補正:エフェメリスから得た衛星のECEF直交座標値
に対する補正量。Δx、Δy、Δzの3成分。
• 電離層遅延補正:経緯度で5度毎に設定された格子点(IGP)
における垂直遅延量として放送。
– ユーザ側ではあらかじめ決められた内挿法(双一次線形補間)
により必要な位置(IPP)における遅延量を得る。
– 垂直構造は薄膜で近似。衛星の仰角により垂直→傾斜変換。
• 対流圏遅延補正:モデルにより遅延量を計算する。
– 衛星の仰角により垂直→傾斜変換する。
– 拡張メッセージについては今回は考慮しない。
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SLIDE 9
補正情報の生成手順
モニタ局における測定データを収集
• 2周波の観測データ
• 時刻あわせ
• 整合性チェック
前処理など
対流圏遅延補正
• モデルで補正する
電離層遅延補正
• 2周波データにより補正
クロック/軌道誤差を分離
電離層遅延補正データを作成
補正情報の品質チェック
ユーザに向けて放送
• データの整合性チェック
• 実際に補正情報を適用し
てみる
• 標準フォーマットで放送
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SLIDE 10
クロック/軌道誤差分離
• 対流圏遅延・電離層遅延を除いた測距誤差は、衛星クロック
誤差と軌道情報の誤差の線形結合。
• クロックと軌道誤差の性質の違いを利用して、これらを分離:
– 衛星クロック誤差:すべてのユーザに一様な誤差となる。
– 軌道誤差:ユーザ位置によって影響が異なる。それぞれのユー
ザにとっての視線方向成分が誤差として現れる。
衛星位置の誤差
ユーザ2にとっ
ての軌道誤差
エフェメリスによる位置
ユーザ1にとっ
ての軌道誤差
ユーザ1
真の位置
ユーザ2
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クロック/軌道誤差分離
SLIDE 11
• マルチパス誤差などを避けるため、比較的長い時定数を持た
せてカルマンフィルタで処理する。
• 多数のモニタ局が幾何学的にまんべんなく分布しているほう
が分離しやすい:
– ただし、ディファレンシャル補正を行うことが目的なので、必ずし
も完全に分離する必要はない。
– モニタ局はサービスエリア内でなるべく広い面積をカバーするよ
うに配置するとよい。
• 精密軌道暦がリアルタイムに取得できる場合は、それを利用
してもよい。
– 衛星クロック誤差については別途推定したほうがよい。
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SLIDE 12
電離層伝搬遅延補正
• 今回のプロトタイプでは、MSAS/WAASが採用している
プレーナフィット(planar fit)方式を利用:
– 平面モデル:IGP周辺の電離層垂直
遅延量が経緯度の一次関数になる
ものとして、IGP位置における遅延量
を求める。
– 周波数間バイアス:電離層
遅延量の測定で問題となる
周波数間バイアス(IFB)は、 電離層遅延量
リアルタイムに推定・除去。
IGP
Rmax
• 推定処理は1分毎に実行
(IFB推定は10分毎)
IGPにおける垂直遅延量の推定値
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プロトタイプの実行条件
SLIDE 13
• PC上で動作するプロトタイプシステムを作成した。
• 準天頂システムの5モニタ局、あるいはMSASと同じ6モニタ局
で、電離層活動の違いにより3つの時期について計算を実行。
– 時期I
静穏
– 時期II 磁気嵐
– 時期III 強い磁気嵐
2004年6月22~24日
2004年7月22~24日
2004年11月8~10日
• 利用するのは二周波の擬似距離のみ。搬送波位相は使わな
い。データソースは国土地理院GEONET(30秒サンプル)。
• 量子化はすべて 12.5cm 単位(SBASと同じ)。
• 電離層伝搬遅延補正:IGPは5度毎に配置(SBASと同じ)
• 対流圏伝搬遅延補正:SBASのモデルによる。
• 完全なSBASメッセージを毎秒生成、ファイルに記録。
– NovAtelフォーマット($FRMAレコード)を流用
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補強メッセージのサンプル
SLIDE 14
$FRMA,272,86403.130,134,80811EA4,250,53081FFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFD
FFDFFDFFFBBBBBBBBBBBBAC1CD280*7C
$FRMA,272,86404.130,134,80811EA4,250,9A0C1FFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFD
FFDFFDFFFBBBBBBBBBBBBB7E76F80*0F
$FRMA,272,86405.130,134,80811EA4,250,C661FFDFFDFFDFFDFFDFFFBBBBB880000000
0000000000000000000036CD8A40*70
$FRMA,272,86406.130,134,80811EA4,250,5306FFBFFFF8000000000000000000000000000
000000000000000002B963FC0*0D
$FRMA,272,86407.130,134,80811EA4,250,9A091FFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFD
FFDFFDFFFBBBBBBBBBBBB806D3340*77
$FRMA,272,86408.130,134,80811EA4,250,C60D1FFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFD
FFDFFDFFFBBBBBBBBBBBB924AAE40*08
$FRMA,272,86409.130,134,80811EA4,250,5361FFDFFDFFDFFDFFDFFFBBBBB890000000
00000000000000000000021FE640*73
時刻
$FRMA,272,86410.130,134,80811EA4,250,9A61FFDFFDFFDFFDFFDFFFBBBBB8A0000000
メッセージタイプID
0000000000000000000039994D00*05
CRC
衛星PRN番号
(左6ビット)
$FRMA,272,86411.130,134,80811EA4,250,C60A1FFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFD
(WAAS-PORと同
FFDFFDFFFBBBBBBBBBBBBA6BE8CC0*03
じ)
プリアンブル
メッセージ長
$FRMA,272,86412.130,134,80811EA4,250,530E1FFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFDFFD
FFDFFDFFFBBBBBBBBBBBBA99E5040*0A
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ユーザ受信機シミュレータ
SLIDE 15
• ユーザ受信機シミュレータも、PC上で動作する計算機プログ
ラム。
• ユーザ局における観測データを入力として、測位計算を実行:
– SBAS補強メッセージも入力された場合、これを適用する。
– 測位結果のほか、プロテクションレベルも計算。
– 補強メッセージは、NovAtelフォーマット($FRMAレコード)。
SBASとの区別はまったくない。
• 一周波の擬似距離のみを利用。搬送波位相は使わないが、
キャリアスムージングを適用。データソースは国土地理院
GEONET(30秒サンプル)。
• 航法ユーザを想定し、出力フィルタはなし。
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モニタ局およびユーザ局の配置
● モニタ局
● ユーザ局
SLIDE 16
● モニタ局
● ユーザ局
(南鳥島→父島に変更)
MSAS 6局
QZSS 5局
• MSASモニタ局の設置場所
• さらにハワイとオーストラリアに標定
局がある
• JAXAが設置するモニタ局の候補地
• 実際には、補強情報生成用にはさ
らにGEONETを利用できる
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ユーザ測位誤差(御前崎:水平)
SLIDE 17
RMS誤差
1.842m (S/A)
0.423m (QZSS)
0.423m (MSAS)
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ユーザ測位誤差(御前崎:垂直)
SLIDE 18
RMS誤差
2.958m (S/A)
0.833m (QZSS)
0.692m (MSAS)
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補正量のサンプル
SLIDE 19
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測位精度の比較
SLIDE 20
RMS値、単位 [m]
条件
男鹿
御前崎
高山
高知
水平 垂直 水平 垂直 水平 垂直 水平 垂直
時期I
(静穏)
単独
1.566 3.003 1.909 3.083 1.813 3.300 1.627 3.020
QZSS 5局 0.688 0.854 0.471 0.822 0.510 0.775 0.627 0.920
MSAS 6局 0.674 0.744 0.437 0.746 0.462 0.693 0.450 0.727
時期II
(磁気嵐)
単独
1.863 3.349 1.842 2.958 1.929 3.305 1.837 3.058
QZSS 5局 0.657 0.744 0.423 0.833 0.470 0.719 0.709 0.885
MSAS 6局 0.691 0.748 0.423 0.692 0.453 0.640 0.479 0.653
単独
3.151 4.867 3.585 5.624 3.125 5.342 3.171 5.143
時期III
QZSS 5局 2.958 2.561 1.641 2.046 1.756 2.119 1.552 2.455
(強い磁気嵐)
MSAS 6局 2.008 2.561 1.375 1.659 1.257 1.624 1.265 1.815
(一周波、30秒サンプル、キャリアスムージングあり)
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補正性能の傾向
SLIDE 21
• 強い磁気嵐が発生していない限り、QZSS 5局のモニタ局配置で、
水平・垂直とも測位誤差を1m以内に抑えられる。
– ユーザ側は一周波のコード擬似距離のみを使用。
– 量子化単位は 12.5cm で、SBASと同じまま。
– 水平0.4~0.7m、垂直0.6~0.9m程度の測位誤差(RMS値)。
– 強い磁気嵐のもとでは、補正情報に改善の余地がある。
• モニタ局の配置については、MSAS配置のほうが若干有利。
– QZSSに比べてコンパクトにモニタ局が配置されているため。
– ただし、サービスエリア端部での測位精度は要検証。
– QZSSは、GEONETを利用してモニタ局を追加できる。
• 実際には1秒サンプルの観測データが利用でき、キャリアスムー
ジングが有効に作用して測位精度は若干改善する。
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プロテクションレベル(水平)
SLIDE 22
プロテクションレベル
現実の測位誤差
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プロテクションレベル(垂直)
SLIDE 23
プロテクションレベル
現実の測位誤差
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Conclusion
SLIDE 24
• 準天頂衛星(測位ミッション)が放送するサブメータ級補強信号の
検討のため、プロトタイプシステムを作成してユーザ測位誤差を
評価した。
• SBAS方式補強メッセージにより、所要の測位精度は達成可能:
– ユーザ側は一周波のコード擬似距離のみを使用。
– 強い磁気嵐が発生していない限り、水平0.4~0.7m、垂直0.6~
0.9m程度の測位誤差(RMS値)。
– 強い磁気嵐のもとでは、補正情報に改善の余地がある。
• 今後の検討課題:
– 1秒サンプルによる評価(キャリアスムージングが有効に働く)
– モニタ局を追加(GEONETの利用を想定)
– 磁気嵐の際の補強性能改善