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「ホームレス問題の経済学」
学習院大学経済学部
鈴木 亘
講義の目的
• 現在、日本が直面している格差問題、貧困問
題のひとつの象徴である「ホームレス問題」に
関して、理解を深める。
• ホームレス問題は何故起こるのか、問題の解
決のためにはどのようなことが必要なのか、
経済学的観点から考察する。
• 経済学は、問題解決志向的学問。ホームレス
問題を通して、経済学という学問の特徴・性質
を知る。
写真は何れもインターネット
新聞JanJanから転載
ホームレスのイメージ
• 皆さんは、ホームレスを見たことがありますか。
どのようなイメージをお持ちですか。
• 怠け者、乞食
• くさい、汚い
• 危ない、怖い(犯罪に関係している)
• アルコール中毒、精神疾患を抱えている
• 何を考えているか分からない関係が無い人々
• 空き缶などのゴミ回収をしている
• 日雇い建設労働者
ホームレスとはどのような人々か
• 厚生労働省「ホームレスの実態に関する全
国調査(概数調査)結果」(平成22年3月現
在)
ホームレスの分布状況
• 厚労省全国ホームレス調査(2007年)によれ
ば、全国のホームレス総数は18,564人(2003
年の調査に比べて6,732人、率にして26.6%
の減少)。2010年の概数調査ではさらに減少
し、13,124人。ただし、ホームレスの定義が欧
米と日本では異なることに注意。路上生活者
が減少しているに過ぎない。
• 統計が不備であるが、1995、6年ごろから、都
市部を中心に急増したと見られる。全国的に
は1998年ごろから急増。
• 特に、東京、横浜・川崎、大阪、名古屋などの
都市部に集中。都市では、日常的風景に。
2007年厚労省実態調査から
• 平均年齢57.5歳とほとんどは中高年である(ただし、
若者も最近増えている)。
• 性別は95.2%が男性
%
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
19
歳
20 以下
~
25 24歳
~
30 29歳
~
35 34歳
~
40 39歳
~
45 44歳
~
50 49歳
~
55 54歳
~
60 59歳
~
65 64歳
~
70 69歳
~
75 74歳
~
80 79歳
歳
以
上
0.0
2003年調査%
2007年調査%
野宿生活者の生活場所(公園が減少しつつある)
公園
道路
河川敷
駅舎
その他
2007年調査%
36.1
15.0
32.7
7.1
9.1
2003年調査%
48.9
12.6
17.5
7.5
13.5
上
満
未
満
未
以
年
10
10
年
~
5年
満
未
5年
~
3年
満
未
満
未
3年
~
1年
1年
~
6ヶ
月
満
未
6ヶ
月
~
3ヶ
月
満
未
3ヶ
月
~
1ヶ
月
1ヶ
月
路上の生活期間(長期化する傾向に)
%
30
25
20
15
2003年調査%
2007年調査%
10
5
0
路上生活直前の職業(日雇いが多いが、
最近はそれ以外も増加しつつある)
専門・技術的従事者
管理的職業従事者
事務従事者
販売従事者
サービス従事者
保安職業従事者
農林漁業作業者
運輸、通信従事者
採掘作業者
生産工程・製造作業者
印刷・製本作業者
建設技能従事者(大工、配管工など)
建設作業従事者(土木工、現場片づけなど)
労務・運搬作業従事者
清掃作業・廃品回収
その他
2007年調査%
2.0
1.7
1.2
4.9
10.3
2.6
0.7
4.8
0.1
13.0
1.4
18.5
30.6
4.0
2.5
1.6
2003年調査%
1.0
0.9
1.1
4.3
8.9
2.7
0.6
3.7
0.0
10.5
0.9
20.3
34.9
3.1
2.9
4.3
路上生活直前の雇用形態(日雇や非正規から、
正規、常用雇用も増加しつつある)
経営者・会社役員
自営・家族従業者
常勤職員・従業員(正社員)
臨時・パート・アルバイト
日雇
その他
2007年調査%
2.2
7.1
43.5
19.7
26.3
1.2
2003年調査%
2.2
4
39.8
13.9
36.1
4.1
路上生活に至った理由(仕事関係が大勢を占める)
倒産・失業
仕事が減った・出なくなった
病気・けが・高齢で仕事ができなくなった
労働環境が劣悪なため、仕事を辞めた
人間関係がうまくいかなくて、仕事を辞めた
上記以外の理由で収入が減った、又は、低い
借金の支払が出来ない・取立により家を出た
アパート等の家賃が払えなくなった
契約期間満了やその他会社の都合で宿舎を出た
ホテル代、ドヤ代が払えなくなった
差し押さえや他の事情で、家やアパートから立ち
退きさせられ
病院や施設などから出た後行き先がなくなった
家庭内のいざこざや、その他家庭内の事情
飲酒、ギャンブル
その他
理由無し
2007年調査%
17.6
19.1
13.3
3.1
9.5
1.7
4.4
8.1
1.6
3.1
0.9
1.8
5.4
4.1
5.2
1.0
路上生活直前の住居形態(ドヤや飯場などから、通常の
賃貸住宅が最近は目立つ)
持ち家(一戸建て、マンションなど)
民間賃貸住宅(アパート・マンション)
公共賃貸住宅(公団賃貸住宅・公営住宅等)
勤め先の住宅や寮
親族・知人宅
住込み先
飯場・作業者宿舎(飯場など現場に仮設された宿
舎)
簡易宿泊所(ドヤ)
ビジネス・カプセルホテル・サウナ・映画館
病院
更正施設等の福祉施設
自立支援センターやシェルター
その他
2007年調査%
8.1
38.3
3.6
17.3
4.1
3.3
2003年調査%
8.1
37.5
3.2
13.8
3.1
3.5
13.7
13.9
8
1.8
0.2
0.3
0.4
0.8
11.8
1.9
0.7
0.6
―
1.9
現在の仕事による収入月額(ホームレスの就労率は
実は7割程度と高い。また、現金収入も平均4万程度と高い。
%
40.0
35.0
30.0
25.0
2003年調査%
2007年調査%
20.0
15.0
10.0
そ
の
他
上
万
円
以
満
未
20
円
20
万
~
15
10
~
15
万
円
未
未
円
10
万
5~
満
満
満
円
未
満
5万
3~
3万
円
未
満
未
1~
1万
円
未
円
00
~
50
00
50
10
00
~
10
00
円
未
満
満
5.0
0.0
今後どのような生活を望むか(最近、やや減ったとはいえ
就労希望率は高いし、就職活動も行なっている)
きちんと就職して働きたい
アルミ缶回収など都市雑業的な仕事
行政から支援を受けながらの軽い仕事
就職できないので福祉を利用して生活したい
入院したい
今のままでいい(路上(野宿)生活)
わからない
その他
求職活動をしている
今は求職活動をしていないが、今後求職活動をす
る予定である
求職活動をしていないし、今後も求職活動する予
定はない
2007年調査%
37.0
9.1
10.9
11.4
1.0
18.3
5.6
6.7
2003年調査%
49.7
6.7
8.6
7.5
0.7
13.1
4.7
8.9
2007年調査%
19.6
2003年調査%
32.0
20.6
26.1
59.8
42.0
• ホームレスは意外に働きもの。就労意欲があ
る(ただし、最近高齢化で減退しつつある)。
• しかも、就労収入はかなりある。「乞食ではな
い」という点は、世界的に見ても珍しい。
• 若者や中年ではなく、その多くが中・高齢者の
男性である。
• 発生の経緯は、正規⇒非正規⇒日雇と段階的
な落層が中心。
• ただし、最近は、そのようなパターンに当ては
まらない人々も増加。高齢化、長期化も著しい。
ホームレスの分布状況
•鈴木亘「小地域情報を用いたホームレス居住分布に
関する実証分析」, 2004年10月, 『季刊・住宅土地経
済』No.54,pp. 30-37
•鈴木亘「GISを用いたホームレスの生活圏分析と都
市政策」,2003年4月,山崎福寿・浅田義久編「都市再
生の経済分析」 )
•Suzuki,W. “What Determines the Spatial
Distribution of Homeless People in Japan?”, 2008
年10月, Applied Economics Letters Vol.15, No.13,
pp. 1023-1026
• 都市の中の分布(大阪市)
定住者(公園、河川敷中心)
非定住者(日雇労働市場を中心に
分布、駅舎周辺にも分布)
被説明変数
説明変数
公園河川敷面積比率
ハローワークから半径500m圏内
ハローワークから半径1km圏内
高齢者職業紹介所から500m圏内
高齢者職業紹介所から1km圏内
西成労働福祉センターから500m圏内
西成労働福祉センターから1km圏内
保健所・
保健センターから500m圏内
定住ホームレス
非定住ホームレス
SAR
SAR
SAR
SAR
モデル7
モデル8
モデル9
モデル10
0.0094**
(0.0011)
0.0839
(0.0501)
―
0.0092**
(0.0011)
―
0.0109**
(0.0032)
0.3198*
(0.1401)
―
0.0097**
(0.0032)
―
0.0747
(0.0427)
―
0.6562**
(0.1436)
0.8603**
(0.0889)
0.1388**
(0.0509)
0.0775*
(0.0349)
―
0.1233**
(0.0328)
0.7133**
(0.1435)
0.8581**
(0.0885)
―
0.41**
(0.1198)
―
5.338**
(0.402)
2.4593**
(0.2483)
0.6829**
(0.1426)
0.3338**
(0.0968)
―
0.4895**
(0.0928)
5.6398**
(0.403)
2.4155**
(0.2477)
―
被説明変数
説明変数
保健所・保健センターから1km圏内
福祉事務所から500m圏内
福祉事務所から1km圏内
区役所から500m圏内
区役所から1km圏内
定住ホームレス
非定住ホームレス
SAR
SAR
SAR
SAR
モデル7
モデル8
モデル9
モデル10
―
0.0427
(0.0487)
―
―
0.0274
(0.1367)
―
-0.0971
(0.0644)
―
-0.0012
(0.0524)
―
-0.0935
(0.0587)
―
-0.8185**
(0.1807)
―
0.3119*
(0.1466)
―
-0.0805
(0.1646)
―
Rho
-0.1333
(0.1111)
-0.1788
(0.1262)
-0.0841
(0.1342)
-0.0321
(0.0586)
0.0272
(0.0168)
-0.002719
0.0849
(0.0451)
-0.2071
(0.1112)
-0.2279
(0.126)
-0.0729
(0.1333)
-0.1105
(0.0582)
-0.0046
(0.0217)
-0.002981
0.6902*
(0.311)
0.3978
(0.3537)
-0.2146
(0.3757)
0.5071**
(0.1641)
-0.0112
(0.0482)
-0.001554
0.1077
(0.1258)
0.4734
(0.3119)
0.2337
(0.3547)
-0.1617
(0.3744)
0.3144
(0.1635)
-0.0853
(0.0625)
-8.19E-04
S.E.
N
0.543988
1901
0.541303
1901
1.52263
1901
1.51987
1901
0.9699
0.9428
[0.3321]
[0.3458]
注)()内は標準誤差、Moran's Iの[]内はTwo-Sided p-valueである。
*及び** はそれぞれ5%、1%基準で有意であることを示す。
0.6692
[0.5034]
0.4541
[0.6497]
コンビニエンスストア数
病院・診療所数
スーパーマーケット数
レストラン数
定数項
Moran's I Statistic
• 職業へのアクセスがきわめて重要。
• 食料環境、健康との関連性も高い。
• したがって、都市中心の商業地・住宅地と重
なることになる。
• ホームレス居住で住宅価格、家賃下落。
• 鈴木(2004)によれば、ホームレスが10人増
加すると3%程度地価が下がるという関係と
なっている。
• 周辺住民との摩擦が必然的となる。
経済学からみたホームレス発生
の原因
• 各種調査では、失業や失職、倒産などの就労
要因が原因。
• 日本では、就労のみが強調。就労したいのに
就労できない状態にいることが原因。
• しかし、あまりに簡単に野宿生活に落ちる
人々の存在。また、失業率との連動の低さ。
• 平均4万円の現金収入でホームレス生活。
• 低家賃賃貸市場の機能不全も原因(市場の
失敗)⇒就労対策だけが支援策ではない。
• ホームレスの人々や予備軍である低所得者
に対する賃貸住宅市場に「情報の非対称性」
による市場の失敗があり、十分な供給できず。
• ①家賃滞納の可能性
• ②社会生活能力、近隣住民の反応
• ②借地借家法
• ③保証人、敷金、礼金、賃貸拒否
• ⇒住宅弱者といえる。高齢者、障害者同様、
住宅弱者対策として政策的対応が正当化さ
れる。家賃補助、公営住宅割当、住宅扶助単
給、公的保証(地域生活移行支援)。ハウジン
グファースト論の根拠。
住宅の質
I1
A
通常の住宅
U1
I2
U2
E
U3
I3
B
C
F
広義のホームレス
G
I3
I2
D
I1
他の財
ホームレス対策の経済学的根拠
•
•
•
•
•
セーフティーネット不備論の不備
外部性 ・・・①結核などの伝染病
②公園や駅、道路などの公共空間占有
③一般市民が悲しい気分になる
④周辺環境の悪化と地価・賃貸料の低下(10
人で3%、鈴木2004)
• ⑤医療扶助の利用増(無保険状態の放置は非
常に高くつく)
• 外部性の対処として、ペナルティーか公費によ
る支援策の選択。
• 情報の非対称性・・・生活保護へのモラルハザー
ドと、低家賃住宅市場の問題
• 当てはまらない人ももちろん居るが、生活保護に
対するモラルハザードがある。生活保護にいずれ
かかるから、労働調整して貯蓄、生産形成しない、
自立をしないという行動。特に、現在地保護が認
められたことにより、ホームレスの生活保護は非
常にかかりやすくなった。
• 低家賃住宅市場では、情報の非対称性に起因す
る市場の失敗(敷金、礼金、保証人) 、借地借家
法、家賃滞納、近隣住民の迷惑⇒「住宅弱者」 へ
の介入の正当性
• 非価値財
• ひとたびホームレスになってしまえば、様々な
不可逆性(様々な行政サービスを得るために
は住所設定必要、路上生活は犯罪に巻き込
まれやすい)
消費者として合理的な判断が難しい人々の存
在。
• 対策としては、①公共空間の占有に刑罰・罰
金、②公費をかけた支援策の2択。前者は、
ホームレスの場合機能せず、結局高く付くた
めに、②が政策的対応となる。
ホームレスの就労問題
~ホームレス脱却の難しさ~
• 鈴木亘.「ホームレスの労働と健康、自立支援
の課題」, 単著, 日本労働研究雑誌((独)労働
政策研究・研修機構)2007年6月号, pp.6174
データ(墨田区ホームレス実態調査)
(1)調査方法
• (1)第一次調査
• ①調査地域 墨田区全域
• ②調査対象 墨田区内に起居する全ホームレス
• ③調査期間 平成16年10月~11月
•
•
•
•
(2)第二次調査(本調査)
①調査地域 墨田区全域
②調査対象 第一次調査で把握されたホームレス
③調査期間 平成16年12月
• ・墨田区委託調査。
• ・調査の実施は、NPOふるさとの会、研究者、
緊急地域雇用創出特別対策推進事業費 を
用いた元ホームレス調査員。
• NPOふるさとの会はアウトリーチや炊き出し
を通じてこの地区のホームレスとのコミュニ
ケーションを持つ。元ホームレス調査員の動
員によりさらに信頼性が確保。
• 質問をプラカードにして恣意性を統御。
表Ⅰ-1 地区分類表
地区分類名
A(白鬚橋)地区
B(隅田公園)地区
地区の区間
綾瀬橋―白鬚橋―
銅像堀公園
銅像堀公園―隅田
公園
地区略称
白鬚橋地区
隅田公園地区
地区の具体的説明
隅田川沿岸の綾瀬橋から白鬚橋を経由して
銅像堀公園の北側まで
隅田川沿岸の銅像堀公園から隅田公園ま
で
C(両国橋)地区
東武鉄橋―両国橋
両国橋地区
隅田川沿岸の東武鉄橋から両国橋まで
D(荒川)地区
荒川河川敷全域
荒川地区
荒川沿岸全域
E(その他)地区
隅田川・荒川河川
域以外
その他地区
上記以外の公園等
表Ⅰ-2 第一次調査:墨田区内のホームレスを把握する調査
地区
人
A(白鬚橋)地区
356
B(隅田公園)地区
181
C(両国橋)地区
201
D(荒川)地区
69
E(その他)地区
28
合計
835
表Ⅰ-3 第二次調査:墨田区のホームレス生活実態調査
地区
対象者数
回収数
回収率
A(白鬚橋)地区
356
150
42.1%
B(隅田公園)地区
181
118
65.2%
C(両国橋)地区
201
97
48.3%
D(荒川)地区
69
46
66.7%
E(その他)地区
28
9
32.1%
835
420
50.3%
合計
データ説明
表 4 就労の有無
サンプル数
仕事あり
仕事なし
全体
362
57
419
割合(%)
86.4
13.6
100
表 5 職種(複数回答)
廃品回収
建設日雇
公的就労
運輸日雇
サンドイッチマン
チケットならび
屋台
その他雑業
その他
サンプル数
152
125
97
20
0
0
6
19
13
割合(複数回答)
43.6
35.8
27.8
5.7
0
0
1.7
5.4
3.7
注)その他雑業とは、家電修理,車整理,交代勤務,引っ越し,片づけ,宿直な
ど。その他は、ホ テル 清掃,近所手伝い,缶詰販売,衣類販売,印刷,小屋ばらし
手伝い,倉庫フォー クリフトなど。
表 6 1 ヶ月あたりの収入
千円未満
千円~5千円未満
5千円~1万円未満
1~2万円未満
2~3万円未満
3~5万円未満
5~10万円未満
10~15万円未満
15~20万円
20万円以上
全体
サンプル数
2
20
22
103
93
62
35
11
3
7
358
割合(%)
サンプル数
5
55
82
63
32
19
66
322
割合(%)
0.6
5.6
6.2
28.8
26
17.3
9.8
3.1
0.8
2
100
表 7 1 ヶ月あたりの労働日数
0日(就労なしとして処理)
1 , 2日
3 , 4日
5~9日
10~14日
15~19日
20日以上(具体的日数あり)
全体
1.6
17.0
25.7
19.5
9.9
5.9
20.4
100
-2
-4
-6
lwage
0
2
賃金率(1日あたり収入)と労働日数の関係(対数)
0
1
2
ljobday m
3
4
表 13 就労の有無と主観健康度
仕事あり
いつも良い ときどき悪い 悪いことが多 いつも悪い
い
こともある
サンプル数
27
26
115
164
割合(%)
仕事なし
割合(%)
全体
割合(%)
100
100
100
100
100
413
32
31
34
127
189
サンプル数
56
13.5
10.3
18.2
23.5
10.9
13.2
86.5
3
6
8
14
25
サンプル数
358
26
89.7
81.8
76.5
89.2
86.8
合計
その他
100
表 16 賃金率と主観健康度
いつも良い ときどき悪い 悪いことが多 いつも悪い
い
こともある
サンプル数
24
22
102
138
賃金(万円)
標準偏差
0.784
0.59
0.778
0.55
0.664
0.603
0.53
0.68
合計
その他
25
0.772
0.53
315
0.760
0.57
(5)職種の介在
表9
職種と賃金率
サンプル数 賃金率(
万円) 標準偏差
最大値
最小値
廃品回収
131(84)
0.44(0.23)
0.53
0.01
2.86
建設日雇
112(76)
1.00(1.04)
0.50
0.07
2.86
公的就労
91(51)
1.00(1.04)
0.54
0.04
3.33
運輸日雇
20
0.74
0.43
0.12
1.43
6
0.51
0.30
0.17
0.86
15
0.92
0.50
0.11
1.43
8
1.09
0.81
0.20
2.86
屋台
その他雑業
その他
注)職種は複数回答なので、多くのサンプルが兼業をしている。廃品回収、建
設日雇、公的就労の括弧内はその職種のみを単体で行っている人々につい
ての数値。
表 10
職種と労働日数
サンプル数
日数
廃品回収
131(84)
15.6(18.9)
10.4
1.5
30.0
建設日雇
112(76)
7.0(6.7)
6.2
1.5
30.0
公的就労
91(51)
5.1(3.6)
5.9
1.5
27.0
運輸日雇
屋台
その他雑業
その他
標準偏差 最大値
最小値
20
8.1
6.3
1.5
27.0
6
11.1
9.7
3.5
30.0
17
15.9
11.0
3.5
30.0
8
14.2
10.7
3.5
27.0
注)職種は複数回答なので、多くのサンプルが兼業をしている。廃品回
収、建設日雇、公的就労の括弧内はその職種のみを単体で行っている
人々についての数値。
まとめ
①ホームレスの賃金率と労働日数には負の関
係がある。⇒バックワードベンド+生活費・生
命維持費のターゲットがあるのではないか。
②賃金と健康間の悪循環も明確(健康の悪化
⇔賃金率低下、賃金率低下(→)労働日数→
健康の悪化、就労選択には健康は関係なし)
③職種選択の介在の可能性
消費
U1
U2
A
B 貯蓄ゼロ水準
C
生存限界水準
D
O
労働日数
①高賃金率のバックワードベンドならば、生活保護同
様の貧困の罠の可能性(生活保護へのモラルハ
ザードを含む)→罠の障壁除去により自立促進が
できる(移行支援事業、敷金支給、生活費貸付、生
活支援の継続、保険料・税の免除)
• 生活維持費ターゲットの低賃金率の人々は、最低
賃金を割り、過酷な長時間労働。廃品回収を条件
とした食料援助、一般的な食糧援助の可能性。
②健康と就労間の悪循環を断つ方法として、労働市
場への介入(就労創出、賃金補助、最低賃金)は
非効率、医療・健康への支援は効率的。
ホームレスの健康
~健康面からの脱却の難しさ~
• 鈴木亘「仮設一時避難所検診データを利用した
ホームレスの健康状態の分析」,2006年2月,『医療
と社会』Vol.15 No.3,pp.53-74
• 鈴木亘「医療扶助の適正化と改革のあり方に関す
る一試論」,単著, 2006年12月,『季刊shelter-less』
No.30,pp.125-137
D
C
B
A
B
C
D
要医療
要精検・指導
要観察・要所見健康
異常なし
要観察・要所見健康
要精検・指導
要医療
(1) 最高血圧(mmHg)
~79
80~89
90~139
140~159
160~179
180~
(2) 最低血圧(mmHg)
~39
40~49
50~89
90~99
100~109
110~
(3) GOT(IU/l)
~40
41~100
101~200
201~
(4) GPT(IU/l)
~40
41~100
101~200
201~
(5) γ-GTP(IU/l)
~40
41~100
101~150
151~
140~
(6) 血糖(mg/dl)
(7) 総たんぱく(g/dl)
~5.4
~49
50~59
60~109
110~119
120~139
5.5~5.9
6.0~6.4
6.5~8.5
8.6~8.9
9.0~
(8) A/G比
~0.9
(9) 総コレステロール(mg/dl)
~99
(10) トリグリセリド(mg/dl)
(11) HDLコレステロール(mg/dl)
1.0~2.0
2.1~
100~119
120~219
220~239
240~279
280~
~29
30~149
150~199
200~499
500~
30~90
91~100
101~
~29
(12) BMI
~14.9
15.0~18.4
18.5~24.9
25.0~32.9
33.0~
(13) 尿酸(mg/dl)
~2.5
2.6~2.9
3.0~7.0
7.1~7.9
8.0~
(14) クレアチニン(mg/dl)
~0.7
(15) 赤血球数(男、万/mm3)
~349
350~399
400~599
600~649
650~
8.0~9.9
10.0~12.9
13.0~18.5
18.6~19.9
20.0~
(16) ヘモグロビン(男、g/dl)
(17) ヘマトクリット(男、%)
~7.9
~36.9
注)クレアチニン、尿酸、A/G比を除き、黒田・逢坂ほか(2004)より作成。
0.8~1.3
37.0~54.0
1.4~
54.1~
• 大阪城一時仮設避難所入所ホームレスの検
診データの分析
• 慢性疾患を抱えるものの割合が8割以上
• 糖尿、高血圧、高脂血など、心臓関係の疾
患や脳関係の疾患に繋がるリスク群が多い。
また、肝機能障害も多い。
• 野宿期間が長くなるほど基本的に悪化。はじ
めの1年で急激に悪化する。
• 野宿期間における逆転現象。
要 精 検 ・ 指 導 以 上
(1) 最高血圧
(2) 最低血圧
(3) GOT
(4) GPT
(5) γ-GTP
(6) 血糖
(7) 総たんぱく
(8) A/G比
(9) 総コレステロール
(10) トリグリセリド
(11) HDLコレステロール
(12) BMI
(13) 尿酸
(14) クレアチニン
(15) 赤血球数
(16) ヘモグロビン
(17) ヘマトクリット
仮設一時避難所
0.262
(0.441)
0.191
(0.394)
0.052
(0.223)
0.023
(0.151)
0.133
(0.341)
0.295
(0.457)
0.012
(0.107)
0.029
(0.168)
0.162
(0.369)
0.289
(0.455)
0.040
(0.198)
0.011
(0.104)
0.092
(0.291)
0.491
(0.501)
0.012
(0.107)
0.006
(0.076)
0.058
(0.234)
組合
0.050
(0.219)
0.061
(0.239)
0.005
(0.067)
0.012
(0.110)
0.082
(0.275)
0.102
(0.302)
0.001
(0.038)
0.062
(0.241)
0.162
(0.369)
0.150
(0.357)
0.018
(0.133)
0.003
(0.055)
0.054
(0.227)
0.091
(0.287)
0.002
(0.041)
0.001
(0.037)
0.012
(0.110)
要 医 療
差
仮設一時避難所
+ ***
0.082
(0.275)
+ ***
0.077
(0.267)
+ ***
0.017
(0.131)
+
0.012
(0.107)
+ **
0.092
(0.291)
+ ***
0.173
(0.380)
+ ***
0.000
(0.000)
- *
+ ***
組合
0.007
(0.081)
0.014
(0.115)
0.000
(0.011)
0.001
(0.030)
0.035
(0.185)
0.048
(0.213)
0.000
(0.014)
差
+ ***
0.046
(0.211)
0.046
(0.211)
0.023
(0.151)
0.012
(0.111)
+ *
0.000
(0.000)
0.000
(0.011)
-
+ ***
+ ***
+ ***
+ ***
+ ***
-
+ ***
+ **
+ *
+ **
+ ***
+ **
+
+ ***
注)***は1%基準、**は5%基準、*は10%基準で差が有意であることを示す。( )内は標準偏差。
(1) 最高血圧
(2) 最低血圧
(3) GOT
(4) GPT
(5) γ-GTP
(6) 血糖
(7) 総たんぱく
要 精 検 ・ 指 導 以 上 の 割 合
1年未満
20.8%
1年以上2年未満
12.5%
2年以上3年未満
30.0%
3年以上4年未満
18.9%
4年以上5年未満
34.8%
5年以上6年未満
36.0%
6年以上10年未満
28.6%
10年以上
27.3%
8.3%
12.5%
20.0%
10.8%
34.8%
20.0%
19.0%
27.3%
18.2%
0.0%
0.0%
2.9%
5.0%
12.5%
0.0%
0.0%
13.6%
0.0%
0.0%
2.9%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
36.4%
6.3%
15.0%
11.4%
10.0%
16.7%
0.0%
4.8%
18.2%
6.3%
35.0%
34.3%
40.0%
37.5%
30.0%
19.0%
0.0%
0.0%
0.0%
2.9%
0.0%
4.2%
0.0%
0.0%
要 医 療 の 割 合
1年未満
1年以上2年未満
2年以上3年未満
3年以上4年未満
4年以上5年未満
5年以上6年未満
6年以上10年未満
10年以上
4.2%
0.0%
10.0%
5.4%
17.4%
12.0%
4.8%
9.1%
4.2%
0.0%
5.0%
8.1%
13.0%
12.0%
4.8%
9.1%
9.1%
0.0%
0.0%
2.9%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
4.5%
0.0%
0.0%
2.9%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
27.3%
6.3%
10.0%
5.7%
10.0%
8.3%
0.0%
4.8%
18.2%
6.3%
5.0%
14.3%
35.0%
16.7%
25.0%
14.3%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
(mmHg)
147.0
140.9
147.3
142.9
153.8
145.9
146.9
146.9
(mmHg)
88.0
88.3
87.7
87.7
93.0
88.8
88.7
90.3
(IU/l)
56.5
26.9
24.7
30.9
31.5
37.5
26.8
25.4
(IU/l)
44.4
23.5
17.5
26.3
20.4
26.4
21.3
24.0
(IU/l)
182.2
71.8
70.8
47.2
55.1
116.3
32.6
48.3
(mg/dl)
126.8
103.3
111.8
116.8
136.4
107.5
117.5
125.2
(g/dl)
7.1
7.6
7.7
7.6
7.7
7.7
7.6
7.5
(8) A/G比
4.5%
0.0%
5.0%
2.9%
0.0%
8.3%
0.0%
0.0%
(9) 総コレステロール
13.6%
25.0%
15.0%
17.1%
30.0%
12.5%
10.0%
9.5%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
20.0%
4.2%
5.0%
9.5%
平 均 値
1年未満
1年以上2年未満
2年以上3年未満
3年以上4年未満
4年以上5年未満
5年以上6年未満
6年以上10年未満
10年以上
1.6
1.5
1.5
1.6
1.5
1.4
1.5
1.4
(mg/dl)
188.1
202.9
191.9
197.2
228.9
187.5
189.7
195.0
(10) トリグリセリド
要 精 検 ・ 指 導 以 上 の 割 合
1年未満
27.3%
1年以上2年未満
37.5%
2年以上3年未満
25.0%
3年以上4年未満
31.4%
4年以上5年未満
45.0%
5年以上6年未満
20.8%
6年以上10年未満
25.0%
10年以上
19.0%
要 医 療 の 割 合
1年未満
1年以上2年未満
2年以上3年未満
3年以上4年未満
4年以上5年未満
5年以上6年未満
6年以上10年未満
10年以上
(11) HDLコレステロール
4.5%
0.0%
5.0%
2.9%
5.0%
8.3%
5.0%
0.0%
(12) BMI
0.0%
12.5%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
8.7%
(13) 尿酸
0.0%
12.5%
15.0%
8.6%
5.0%
16.7%
15.0%
9.5%
(14) クレアチニン
54.5%
31.3%
55.0%
48.6%
45.0%
50.0%
65.0%
47.6%
(15) 赤血球数
0.0%
6.3%
10.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
15.0%
2.9%
5.0%
8.3%
0.0%
4.8%
(16) ヘモグロビン
0.0%
0.0%
5.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
4.8%
(17) ヘマトクリット
4.5%
6.3%
15.0%
2.9%
5.0%
12.5%
5.0%
4.8%
0.0%
0.0%
5.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
平 均 値
1年未満
1年以上2年未満
2年以上3年未満
3年以上4年未満
4年以上5年未満
5年以上6年未満
6年以上10年未満
10年以上
(mg/dl)
164.0
185.6
203.9
179.0
240.2
183.4
140.1
170.5
(mg/dl)
61.5
61.1
61.4
61.3
61.4
58.2
63.3
62.7
22.5
24.5
23.1
22.3
23.1
21.5
21.6
23.4
(mg/dl)
5.3
6.2
5.4
5.4
5.6
5.9
5.1
5.5
(mg/dl)
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.7
(万/mm3)
429.7
443.8
450.8
447.5
473.0
455.0
438.1
456.3
(g/dl)
13.9
14.6
14.1
14.1
14.8
14.4
13.9
14.4
(%)
40.9
43.0
43.0
41.8
43.6
42.7
41.4
42.9
• 「体の具合がわるい」と回答したホームレスの有訴
率は、47.4%に上っているが、実際に通院をしてい
る者はそのうち(有訴者)の19.7%
• ホームレス達が既に健康保険証を保持しておらず、
全額自己負担をする余裕もないこと、あるいは通常
の医療機関に通院することが心理的にも困難であ
ること等が背景
• 「無料低額診療所」があるが、外傷や急性疾患の治
療が主であり、高齢者が大半を占めるホームレス達
にとってより深刻な問題である慢性疾患の治療には
事実上対応できていない
• 多くのホームレス達は自覚症状がありながら
治療を放置しているというのが現状であり、
最終的に疾患が重篤化した段階で、「救急搬
送」という形で入院を行うこととなる。
• 救急搬送による入院は、急迫保護として生活
保護の医療扶助単独給付(以下、医療単給)
が認められるため、ホームレス達のいわば
「最後の切り札」
• 医療扶助の生活保護費総額に対する割合は
51.8%で生活扶助費
ホームレスへの行政的支援の課題
• 鈴木亘・阪東美智子「ホームレスの側からみ
た自立支援事業の課題」,2006年12月,『季
刊・住宅土地経済』No.63,pp.15-23
• 2002年自立支援法成立。
• それ以降の施策の中心は自立支援事業、つ
まり「就労支援」。
• 自立支援センター:全国で22ヶ所、定員2060
人の規模で運営されている
• 自立支援事業のほかに、公園対策や日雇対
策から派生している緊急一時宿泊(シェル
ター)事業:全国10ヶ所において定員2220人
• 巡回相談等の総合相談推進事業や、職業相
談・職業紹介、職業能力の開発等
写真は、JanJan及び、渡辺まさし氏の
HPから転載
• 自立支援センターの入所期間は原則2ヶ月 (延長
2ヶ月)
• 生活相談、住宅相談、就労相談、技能講習、法律
相談が提供。就労相談はハローワーク出向。
• ベッドのある相部屋、入浴、娯楽室、洗濯機(乾燥
機)、エアコンなどが整備
• 食事提供、日用品や理髪等も提供。
• 支給金:日曜品費、求職交通費、外食費、就労支度
金が提供、面接衣類の貸出
• 入所中は、飲酒や金銭の貸借、ギャンブル、ケンカ・
口論、無断外出・外泊などが禁止
• 門限も設定
• 2003~2006年度の退所者22,721人のうち就労に
よって退所した人数は5282人であり、就労退所率
は23.2%。
23%
38%
就労による退所
生活保護による退所
期限到来・無断退所
39%
出典:厚労省資料
• 通常型において2003~2006年度に退所者
した3,523人のうち就労によって退所した人
数は428人であり、就労退所率は12.1%
12%
23%
就労による退所
生活保護による退所
23%
42%
自立支援センターへの入
所
期限到来・無断退所
出典:厚労省資料
東京都の自立支援事業
第1ステップ
(緊急一時保護とアセスメント)
第2ステップ
(自立支援プログラム)
緊急一時保護センター
自立支援センター
・心身の健康回復
・能力に応じた処遇方針
の決定
(原則1ヶ月入所)
就労自立を支援
(原則2ヶ月入所)
全体計画700人程度
(5箇所)
13年度
14年度
15年度
16年度
1箇所
1箇所
1箇所
2箇所
全体計画400人程度
(5箇所)
12年度 2箇所
13年度 2箇所
15年度 1箇所
第3ステップ
(地域生活のサポート)
社会生活へ
の復帰
就労自立
(都営住宅)
グループホーム
生活・就労指導
就労自立
(アパート等)
16年度 1箇所
半福祉・半就労
(宿泊所等)
生活保護
(居宅、施設、入院)
≪多分野にわたる総合的対策の推進(目的)≫
公共施設の適正管理
保健・医療の充実
就労機会の拡大
住宅の確保
• 墨田寮、渋谷寮、北寮、中央寮、杉並寮の5
施設が存在(合計で342名)
• 各寮は東京都区部を5ブロックに分け、その
中で5年ごとに違う区に施設を移動してゆく
• 管理は特別区人事・厚生事務組合が行い、
運営は委託を受けた社会福祉法人。
• 入所期間は原則2ヶ月 (延長2ヶ月)
• 生活相談、住宅相談、就労相談、技能講習、
法律相談が提供。就労相談はハローワーク
出向。
• ベッドのある相部屋、入浴、娯楽室、洗濯機
(乾燥機)、エアコンなどが整備
• 食事提供、日用品や理髪等も提供。
• 支給金:日曜品費、求職交通費、外食費、就
労支度金が提供、面接衣類の貸出
• 入所中は、飲酒や金銭の貸借、ギャンブル、
ケンカ・口論、無断外出・外泊などが禁止
• 門限も設定
• 持ち込める荷物はダンボール1箱から2箱分
程度に制限
• ペット、動物を飼うことも禁止、家族も離散
緊急一時保護センター・自立支援セン
ターを利用したにも関わらず再路上化
するケースが2割も存在している。
緊急一時保護センターの元入所者
緊急一時保護センターへの入所希望者
自立支援センターの元入所者
自立支援センターへの入所希望者
自立支援センターへの入所希望者(非利用者のみ)
生活保護経験者(医療扶助単給を含む)
平均
16.4%
19.0%
11.8%
14.9%
14.0%
15.6%
自立支援事業利用に対する簡単
な経済モデル。
賃金
率
W2
W1
65歳
年齢
入所期
間(
T 1)
就労期間(
T 2)
保護期間
• 2期間人的資本モデル
• 入所と非入所の総価値を比較、NPVが高いほど
入所確率が増す。
• 費用としては、アパートや宿泊所に移った後の家
賃、借金の返済などの直接費用、自立支援セン
ター入所時に失う資産(諸荷物、テント、テントを
置いていた場所の価値等)や、やはり入所時に失
う犬などの動物や同居家族ホームレス期間中の
自由な生活時間、生活習慣(アルコール、ギャン
ブル等)の効用価値
w1T2 
 w2  (1   ) w1 T2
 
NPV  
 C   w1T1 

1 r
1 r 

 
NPV   w1T1 
T2
1 r
( w2  w1 )  C
• ①現在の賃金率が高いほど入所確率が低くなる(月
収入、賃金率、食事回数)
• ②将来の賃金率が高いほど入所確率が高くなる(最
長職正社員、資格保有)
• ③就労確率が高いほど入所確率が高くなる(健康、
年齢)
• ④就労期間が長くなるほど(年齢が若いほど)入所
確率が高くなる(年齢)、
• ⑤費用が高くなるほど入所確率が低くなる(アルコー
ル、テント、借金)
• 鈴木・阪東(2006) では、①現在の賃金率が
入所希望率に対して負に有意、②若い層の
ダミー変数(40代ダミー)が正で有意であり、
記述統計の結果とも合わせて、概ね上記のモ
デルが妥当。
• 合理的に、自立支援事業に乗らない人々が
いる。所得が高い人、高齢の人が多い理由に
は合理性がある。自立支援事業の限界があ
る。
• また、自立支援センター元入所者のホームレ
スの就労に関する資質は、入所経験のない
ホームレスと比較して必ずしも低くはなく、特
に入所希望者と比較すると明らかに高い。
• 自立支援事業ではカバーできない対象者に
対しては、それ以外の方策を模索する必要
性
• 2004年から東京では、ホームレス移行生活
支援事業(新宿中央公園、戸山公園、代々
木公園、隅田公園、上野公園)3年間で
1,541人が地域の借上げアパートに移行
• 自立とみなされる月収13万円以上を得ている
入居者は、約2割に過ぎず 。既に生活保護の
受給率は各区とも2~4割に上っている。
• 自立支援事業も、生活保護による退所率が4
割。
• 「東京ホームレス就職支援事業」
• 巡回相談事業とあわせた就労支援等
• 現状では、ホームレス対策の決め手は、「生
活保護頼り」である。
生活保護化のうごき
• 大阪就労福祉居住問題調査研究会「大阪市西成区
の高齢生活保護受給者の現状」http://www.osakasfk.com/pdf/nishi_leaf0623.pdf
• 大阪就労福祉居住問題調査研究会「2006-2007 も
う一つの全国ホームレス調査」http://www.osakasfk.com/homeless/index.html
民間中間施設の重要性と多様性
• 生活保護にかかった後の公的施設の硬直性
と機能不全
• 更正施設(施設数20ヶ所、定員2,097名のう
ち700名程度がホームレス)、救護施設(施設
数183ヶ所、定員16,824人のうち、ホームレ
ス受入数は764名)、宿所提供施設(施設数
12ヶ所、定員951人のうち、ホームレス受入
数39人)
• しかし圧倒的な割合は、民間の中間施設に存
在している。
• 第二種社会福祉事業に基づく無料低額宿泊所
(施設数224ヶ所、定員7765人)
• 簡易宿泊所から共同住宅に転換したサポー
ティブハウス(施設数10~15ヶ所、定員1200
~1500人)
• NPOや個人支援者の借上げ住宅・支援者個
人宅
• 入院先あるいは社会的入院先としての病院。
H18のホームレスの生活保護適用件数30,298
件のうち、入院は38%に当たる11,467件。
• 一般住宅における居宅保護は8%、無料低額
宿泊所が24%であるから、残りの3割程度で
ある1万件程度は、それ以外 は、「福祉マン
ション」 、「ドヤ保護」など。
• 未登録で元ホームレスの生活保護受給者を
受け入れている施設、小規模の共同住宅
• 登録宿泊所の中にも劣悪な施設は存在する。
• こうした行政指導や支援者の目の届かない施
設にも多くの人々がいるという問題がある。
• →「低所得者向け住宅政策と貧困ビジネス」
脱野宿者の状況
現況の生活類型(細分類)と地域分類との関係(%)
<660名中637ケースが対象>
48
全体
四大都市
6
45
5 12
3 3 01
12
23
12
32
1
0
政令指定都市等
50
7
6 21
13
17
2
中核市・地方都市
49
9
6
10
19
1
0%
全福祉
就労・年金
20%
生保・年金
半就労・半福祉
40%
60%
年金
就労
4
80%
100%
生保・年金・就労
その他
•
•
•
•
不安定な住居、最低水準以下が2割。
孤独な生活
悪い健康状態
中間施設のサポート無しには、就労継続も難
しい
• 小括・・・野宿数は減少。しかし、中間施設に
入所している数が多くなっている。居宅保護
は少ないし、安定している生活とは言いにくい。
対策の最大の効果は、就労支援ではなく、生
活保護。