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21pTG-2
日本物理学会 2007秋季大会@北海道大学 21pTG-2
T 型量子細線レーザーでのキャリア密度増加にともなう
光学利得の増大と抑制効果
吉田正裕A,C,岡野真人A,C,井原章之A,C,秋山英文A,C,
懐平B,C,小川哲生B,C,Loren N. Pfeiffer D,Ken W. West D
A
東大物性研,B 阪大理,C CREST・JST,D Alcatel-Lucent, Bell Labs.
Outline: 1. 背景と目的
2. T型量子細線レーザー試料構造
3. 利得スペクトル測定
4. 実験結果‥‥光学利得のキャリア密度依存性
5. 考察‥‥理論計算との比較
6. まとめ
研究背景と目的
半導体量子細線レーザー
自由キャリア理論に基づく、バンド端状態密度先鋭化による
レーザー性能向上の予測
低閾値、高微分利得、特性温度の向上 ... M. Asada他(1985), Y. Arakawa他(1982)
一次元における強いクーロン相互作用
励起子効果の増大、状態密度発散の抑制 ... T. Ogawa他(1991).
クーロン相互作用を取り込んだ多体理論計算による利得スペクトル
しきい値近傍での利得増強効果
高密度での利得ピーク抑圧効果
... 懐平 他 (21pTG-1)
本研究では、
高品質なノンドープT型量子細線レーザーを用いて、光励起に
よる利得吸収スペクトル測定を行い、
量子細線における光学利得のキャリア密度依存性の解明
クーロン効果を取り込んだ理論計算とのスペクトル比較
を行った。
T型量子細線レーザー試料構造
光導波路構造
T型量子細線構造
500mm
T wire
arm well
[110]
[001]
% : Al content (x) in AlxGa1-xAs
stem well
へき開再成長法
[110]
[001]
GaAs
substrate
(001) MBE
Growth
In situ
Cleave
(110) MBE
Growth
L. N. Pfeiffer et al., APL 56, 1679 (1990).
MBEへき開再成長法により作製
T型導波路に3周期T型量子細線
T細線 14 x 6 nm2, ノンドープ
光閉じ込め係数 G:
G = 1.3 x 10-3
Cavity : Cavity長 = 500μm
as cleaved (反射率=0.3)
ストライプ状光励起による導波路放出光測定
PL
Excitation:
cw TiS laser, 1.661eV
チョッパー: duty比2 %
Emission Intensity
自然放出光
(PL)
導波路放出光
F-Pフリンジ
res. 0.1meV
ストライプ励起
強度均一性: < 10%
導波路放出光
Arm well に
平行な偏光成分
を検出
G・Gpk
a int
gmod
利得吸収スペクトル
Emission Intensity
Chemical
potential (m)
フリンジ解析
gmod = G·G - a int
gmod : Modal gain
G : Material gain
a int : Internal loss
G
Waveguide
Emission
: Optical
confinement factor
Cassidy法を用いて、
Fabry-Perotフリンジ解析
D. T. Cassidy JAP, 56 3096 (1984).
利得吸収スペクトル(3-prd T細線)
Modal Gain
G・G (10 cm-1/div.)
励起光強度の増加に伴い、
励起子吸収ピーク(1.580eV)
の強度減少 → 消失
利得ピーク(1.574eV)の出現
→ 利得の成長
ピーク値の増加
幅の増加
G・Gpk
更なる強励起 (Pex.>20mW)では、
利得ピーク値が飽和
高エネルギー側に急峻な
利得ピーク (L2)の出現
(→ 近接量子井戸での利得)
ピーク利得の励起強度依存性
利得出現:
3 wire laser
G = 1.3 x 10-3
Eex = 1.661 eV
透明励起強度 ~3 mWで
利得が発生し、励起強度
に対して急激に増加。
利得抑圧:
励起強度の増加に伴い、
ピーク利得は最大値を
とり、以降、減少傾向。
高温でピーク利得の最
大値が低下。
PL強度の励起強度依存性から、
励起光強度 → キャリア密度 n1D に変換。
ピーク利得のキャリア密度依存性
Gpk
G = 1.3 x 10-3
光学利得の理論計算との比較
理論計算
Screened Hartree-Fock (static screening) ... (incl. Coulomb)
Free-particle model
... (no Coulomb)
理論
実験
T = 30K
60K
100K
300K
Gpk
Free-particle
GaAs
14x6nm 矩形細線
infinite barrier
me=0.0665 m0
mh=0.105 m0
((110)QW)
= 0.8 meV (broadening)
SHF
-3
G = 1.3 x 10
光学利得の理論計算との比較
理論計算
Screened Hartree-Fock (static screening) ... (incl. Coulomb)
Free-particle model
... (no Coulomb)
理論
実験
T = 30K
60K
100K
300K
多体理論計算との類似点
• 透明キャリア密度
~ 3 x 10 5 cm-1
• ピーク利得値
多体理論と同程度。
Gpk
Free-particle
• 高密度での利得減少
多体理論と同じ傾向を示す。
SHF
相違点
x106
透明領域近傍での微分利得
利得最大となるキャリア密度
実験と比して、理論計算が
相対的に高温
キャリア温度見積もり
Pex=11.3 mW
n1D~9x105 cm-1
KMS 関係式fittingによる
キャリア温度(Te)の見積もり
測定温度:4 K
m
Te ~ 60 ± 6 K で、利得ス
ペクトルが比較的良く一致。
Carrier heating !?
準熱平衡系
g A1 exp m/ kBTePL
利得
m : quasi-chemical potential
Te : quasi-equilibrium carrier temperature
KMS 関係式
H. Haug and S. Schmitt-Rink
Prog. Quant. Electr. 9, 3 (1984).
キャリア温度の密度依存性
KMS 関係式fittingから見積もったキャリア温度(Te)
まとめと今後の課題
T型量子細線レーザーの利得吸収スペクトル測定を行い、光学
利得の励起光強度(キャリア密度)依存性について調べた。
1. 光学利得は小さな透明励起強度(~3mW)から立ち上がり始め、そ
のときの透明キャリア密度は 3x105 cm-1と見積もられた。この値は
多体理論計算からの値とほぼ一致した。
2. ピーク利得のキャリア密度依存性において、多体理論で見積もら
れるのと同程度のピーク利得値が得られた。
3. 励起強度の増加に伴い、ピーク利得は最大値をとり、さらに増加さ
せると減少へと転じていく。この利得の減少は、クーロン相互作用
を取り入れた多体理論から示唆される高密度側でのピーク利得の
“抑圧効果”を観測しているものと考えられる。
今後の課題 :
光学利得特性におけるキャリア温度の影響
‥‥ 励起光エネルギー依存性測定
ピーク利得のキャリア密度依存性
Gpk
Screened-HF
Free-particle
T = 30K
60K
100K
300K
ピーク利得の化学ポテンシャル依存性
高密度領域:
mchem ↑ ⇒ Gpk ↓
n1D 増加に伴う、
Gpk の抑制
(励起子エネルギー位置から測った利得-吸収クロスオーバー位置)
PL励起強度依存性からのキャリア密度見積もり
3 x105 cm-1
PL強度 ∝ キャリア密度として、
各励起強度でのn1D算出
M. Yoshita et al., PRB 74, 165332 (2006).
利得吸収/発光スペクトルの比較
実験
理論計算
相違点:
低エネルギー側
裾広がり
BGRの大きさ