Transcript 3-8 泉水朝宏
棒高跳の踏切準備局面における 動作の変容 指導教官 伊藤 信之 06A8002 泉水 朝宏 <はじめに> 陸上競技の跳躍競技の中で唯一、助走中からポール と呼ばれる道具を用いて跳躍することから、跳躍競 技の中でも特殊な競技である。 棒高跳以外の跳躍競技 棒高跳 助走速度を、踏切で鉛直 速度に変換する 鉛直速度よりも、水平速度を 獲得することで、ポールに弾 性エネルギーを蓄える 跳躍運動自体が距離や 高さを獲得する直接的 手段 水平方向の運動エネルギーを、 ポールを介することで位置エ ネルギーへ変換 どの跳躍競技においても、助走速度の重要性が明らかに されている。 ポールの利用能力を高めるためには、高い助走速度が極 めて重要な要因の一つであるとされる。 踏切準備局面は、助走で獲得した水平速度 を維持したまま踏切へ移行するために重要 な局面 踏切準備局面の研究は、走幅跳や三段跳などが多い。 踏切準備局面の動作の変容を明らかにする 棒高跳では助走速度、踏切時の動作、ポール自体のエネル ギーに焦点を当てたものが多い。 効果的な踏切準備動作を検討する 方法 <VTR撮影および分析方法> <被験者> 棒高跳のトレーニングを専門的に行い、大学陸上競技部 に所属している男子棒高跳競技者8名 助走路進行方向の右側方に設置したデジタルビデオカメラ2台を用いてパ ンニング撮影 踏切4歩間の各歩における平均値の差の検定(対応あり) 得られた映像から踏切4~1歩前の区間において身体23点をデジタイズ 上位群、下位群に群分けを行い平均値の差の検定(対応なし) し、較正点4点を用いて実座標に算出した。 有意水準5%以下 記録( m) 5. 20 5. 10 5. 00 4. 90 4. 80 4. 70 4. 60 4. 50 4. 40 4. 30 4. 20 7. 60 r=0.734 7. 80 8. 00 8. 20 8. 40 助走速度( m/s) 8. 60 8. 80 5. 20 5. 10 5. 00 4. 90 4. 80 4. 70 4. 60 4. 50 4. 40 r=0.809 4. 30 4. 20 7. 70 7. 90 8. 10 8. 30 8. 50 8. 70 8. 90 9. 10 助走速度( m/s) 5. 20 5. 10 5. 00 4. 90 4. 80 4. 70 4. 60 4. 50 4. 40 r=0.764 4. 30 4. 20 7. 70 7. 90 8. 10 8. 30 8. 50 8. 70 8. 90 9. 10 助走速度( m/s) 5. 20 5. 10 5. 00 4. 90 4. 80 4. 70 4. 60 4. 50 4. 40 r=0.737 4. 30 4. 20 7. 80 8. 00 8. 20 8. 40 8. 60 8. 80 9. 00 9. 20 助走速度( m/s) テレツ(2004)は、踏切2歩前から突っ込み動作 を開始するとしている 記録( m) 記録( m) 記録( m) <結果と考察> 踏切前4歩間の比較 踏切4~1歩間における各助走速度と正の相関関係が あった(木次谷ら2001)。 ポールの操作と同調して、速度に変化が出たと考 えられる 踏切4および3歩前 右 左 力L トルク JF/JAF 右 左 力L トルク JF/JAF 右 左 力L トルク JF/JAF 右 左 力L トルク JF/JAF 右 左 力L トルク JF/JAF 足関節を用いたキック動作により次の区間 に余裕を持たせている 4歩前 3歩前 60 踏切4歩前 踏切3歩前 背屈平均角速度(deg/s) -393.96 ± 85.76 -440.28 ± 86.32 底屈平均角速度(deg/s) 842.82 ± 89.38 861.18 ± 116.04 身体重心高上昇変位が大きい 踏切4歩前 踏切3歩前 上昇変位(m) 0.027 ± 0.006 0.037 ± 0.010 下降変位(m) -0.018 ± 0.006 -0.020 ± 0.008 足関節背屈および底屈角変位(deg) 足関節平均角速度が大きい 50 40 30 20 10 0 -10 -20 -30 -40 4歩前 3歩前 2歩前 1歩前 踏切2歩前 右 左 力L トルク JF/JAF 走幅跳の踏切準備動作と似ている 底屈変位(deg) -14.78 ± 3.53 36.54 ± 3.66 膝関節角変位が小さい 屈曲変位(deg) 進展変位(deg) -2.29 ± 1.70 9.17 ± 5.60 60 ストライド(m) 足関節背屈および底屈角変位(deg) 背屈変位(deg) 右 左 力L トルク JF/J 2.10 ストライドの減少が始まる 足関節背屈および底屈変位が小さい 右 左 力L トルク JF/JAF 2.00 50 1.90 40 30 1.80 20 1.70 10 1.60 0 1.50 -10 1.40 -20 1.30 -30 -40 4歩前 3歩前 4歩前 3歩前 2歩前 1歩前 2歩前 1歩前 踏切1歩前 右 左 力L トルク JF/JAF 脚全体角速度698.0±50.2m/s、離地時大腿角 ** ** 速度314.0±70.6m/sが大きい 接地時 0.83±0.05m ** 身体重心高が最も低い 170.0 160.0 離地時 0.83±0.05m 足関節角度が小さい 支持期膝関節角度(deg) 最小時 0.81±0.05m * 右 左 力L トルク JF/JAF 踏切4歩前 踏切3歩前 踏切2歩前 踏切1歩前 150.0 140.0 130.0 走幅跳に似た身体重心を下げ、脚全体でスイング動作を 接地時89.9±4.6deg 行うことで速度を維持し、素早く踏切に移行している 最小時72.1±2.8deg 120.0 110.0 離地時110.8±6.3deg 100.0 接地時 最小時 離地時 踏切2歩前から速度を維持しながら、身体重心高を 低下させることで踏切角を水平に近づけようとして いる可能性 走幅跳の踏切準備動作と同様の動作をすることで、 効率の良い踏切に結び付けていると考えられる 効率的な走幅跳の踏切準備動作と似ている ご清聴ありがとうございました。 詳しくはポスターセッションにてお待ちし ております。