Transcript 最終講義改訂
最終講義
2009.3.14
武蔵工業大学
数学部門
有本彰雄
• 数学のおもしろさ
– 零点に関係するいくつかの問題の紹介
無関係なところにある出会い
serendipity
どこかで繋がっている
– 経営工学科
統計工学研究室 昭和49年ー平成10年
– 電子情報工学科
情報数学研究室 平成11年ー平成18年
– 数学部門 平成18年ー平成21年
• 今の研究
– モーメント問題
N-extremalなメジャーと零点
に関する研究
– 有限予測の問題
– 非線形微分方程式
• 近況(国際会議参加)と今後
数学のおもしろさ
• 深く考えることに醍醐味
–serendipity:何かを探している時、探し
ているものとは別の価値あるものが見
つかる(ふとした偶然をきっかけに、幸
運をつかむ事。)
–I was looking for something
• 例として零点にまつわる問題を紹介
零点つながりの問題
• Akhiezerの問題 (古典モーメント問題)
=>有本の定理
• 野原先生とシュレディンガー方程式
• ミレニアム問題
– リーマン予想(仮説)
• 伊藤先生との共著論文
• 定常確率過程の予測問題
Akhiezer の問題
(古典モーメント問題)
定理の条件①②③
3条件では不十分のため、
③を見直して十分にする
ことが行われている。
→ クリスチャンバーグ
(コペンハーゲン.dk)
にメールで連絡
きっかけ
(Christian Berg とメールのやり取り)
• メール(1995,April)
– Dear Akio Arimoto,
Thank you for the email with question about
Akhiezer. Some years ago I was puzzled by the
same question ・・・
• Akhiezer定理の反例
– Paul Koosis from McGill who finally constructed a
counterexample, C.R.Acad,Science Paaris 311
(1990),503-506.
1
log w x dx
2
Kreinへの手紙
クリスチャンバークがクラインに送った手紙
(ソ連ウクライナの数学の権威)
1993年
6月 NCSA、Mosaic 1.0 をリリース。
WWW閲覧ソフト、 Mosaic
(→後のNetscapeへ)が
インターネットに嵐を起こす。
1995年
MS-Windows 95が発売され、 WWWやEmailが本格
的に家庭で使われるようになった。Microsoft社、
Internet Explorer 1.0 をリリース。コードは
Mosaic をベースにしている。
メールで海外の研究者と直接情報交換できる!
最先端の情報が手に入る
複素平面
ガウス平面
メジャーサポート点
⇒解析関数の零点
野原先生との共同研究
• ルーシエの定理:解析関数(多項式)の零点
の個数(高木貞治 解析概論 岩波)
– シュレディンガー微分方程式のソリトン解の問題
シュレディンガー微分方程式の摂動が
小さい⇒安定なソリトンの存在保証
ソリトン 安定な孤立波
ミレニアム懸賞問題
• 数学上の未解決問題
• クレイ数学研究所100万ドルの懸賞金を約束
リーマンゼータ関数について
虚部が小さい方から約15億個までの零点
(複素零点) はすべてリーマン予想(一直
線上にある)を満たすことがコンピュータで
計算されているが数学の証明はまだ・・・
与えられた限界以下の素数の個数について
(ベルリン学士院月報、1859年11月,
pp.671-680)
リーマンゼータ関数の零点
素数の分布に直結
素数が無限個 RSA暗号がいくらでも
作れる
伊藤先生と共著論文
• Arimoto,Akio; Ito, Takashi,
Singularly Positive Definite Sequences and
Parametrization of Extreme Points. Linear
Algebra Appl. 239, 127-149(1996).
これは、モーメント問題の解をあつかう
伊藤先生との共著論文:定理
• a)多項式 PM 1 x の零点 ak は
実数軸上(一直線上)にある
• b)
PM 1 x
M
EMa
メジャーはの重み
x ak
M 1 PM ak
k
• c)
s0 , s1,..., s2M 2
をモーメントとする
メジャーは一意 (determinate)
モーメントの定義
•
sk はメジャー のモーメントと定義する
– 平均(s1)、分散(s2)はモーメントの一種
sk x p x dx x d , k 0,1,2...
k
•
•
k
p x 確率密度
確率測度
チェビシェフ (ロシアの数学者)
が考えた
モーメントとメジャーの関係
• モーメント
確率分布(メジャー)
sk , k 0,1,2,3 p x , x
• 実験データは
正規分布?
ポアソン分布?
モーメント問題
Moment Problem
零点とは
• n次多項式にはn個の零点がある
ガウスの代数学基本定理
ax bx ... cx d 0
整関数(多項式の n )にしたもの
n
n1
零点は無限個あるが集積できないとびとびに
ある
零点が決める場所がメジヤーの離散分布を
定める
N extremal の定義
• メジャー
が N extremal である
• (1)メジャー が決めるモーメントは
indeterminate である
• (2)多項式は L2 で dense である
Indeterminateとは
sk , k 0,1,2,3... x
sk : k次モーメ ント
determinate
が一意に決まらない indeterminate
メジャー が一意に決まる
メジャー
L における2乗誤差
2
2乗誤差 f a0 a1x a2 x ... an x
2
f x a
0
a1x a2 x ... an x
2
n
n
2
d
2
最小にする a0 , a1, a2 ,... をもとめよ
2
f
L
どんな
についても、多項式を選んで
2 乗誤差 f a0 a1x a2 x ... an x
2
f x a
0
a1x a2 x ... an x
2
n
n
d
2
n として誤差をゼロにできるなら、多項式は
L2 で dense という
2
L
2
dense
• a0 , a1 , a2 ,... をうまく選んで
最小2乗誤差が 0 とできるとき多項式は
L denseという
2
N extremal の定義
• メジャー
が N extremal である
• (1)メジャー が決めるモーメントは
indeterminate である
• (2)多項式は L2 で dense である
必要十分条件
• メジャー
• 多項式が
が indeterminate
L でdense でない
2
dx x i dx
2
メジャー
多項式が
多項式が
は
N extremal
L でdense でない
2
L
2
でdense である
dx x i dx x 1 dx
2
2
N -extremal とは何だろう
Pi x i p p P
P
多項式全体
N extremal
Pi
is co-dimension one in
L2
q x x i p x c
p, q
多項式
c
定数
N-extremal もう一つの解釈
•
のモーメントが determinate
多項式が L2 dense
• 逆命題は言えないが最大限での対応関係を
探すこと
答えがN-extremal なメジャー
というアイディア
Arimotoの定理(未完成)
BH
メジャー ,
必要十分
B が N-extremal
(1)(2)(3)
Akiezer の書物の(3)を正確に
する
Arimotoの定理(未完成)
• 不完全なAkhiezerの定理の条件(3)の修正
Akhiezer’s(3)
Arimoto’s(3)
A
B
B
F
A B
F
2
F 解析関数Fの
F B
零点集合(一直線上にある)
不思議なつながり
Borichev ,Sodin ウクライナ カーコフ大学
de Brange
リーマン予想の証明を
インターネットに公開
ビ―ベルバッハ予想を証明
実は・・・
• 多項式が
L2 で dense
という概念は確率論の予測問題
Past( n 0 ) and Future ( n 0 )
時系列の時刻
n
X n z n
定常系列
2
L
X
n と T の isometry
1 2 inm
d ein , eim L2 T ,
X n , X m P n m e
2 0
自己相関関数
X , Y P
1
EXY f , g L2 T ,
2
2
f g d
0
相関関係、共分散
2007/3/16
スペクトル分布(メジャー)
38
in
Xn e
z
n
時刻nのランダム値
zn
a0 X0 a1 X1 ... an X n a0 a1z ... an z
予測量(株価の予測) 多項式
n
isometry
a0 X0 a1 X1 ... an Xn a0 a1z ... an z
n
Y f z
E Y a0 X 0 a1 X1 ... an X n
2
2
f z a
0
0
n 2
a1z ... an z d
過去と未来 Past and Future
d w x dx d s
w x
F z a1z a2 z 2 a3 z3
P z b1z 1 b2 z 2 b3 z 3
z 1
0
2007/3/16
スペクトル密度関数
,
Future 未来
,
past 過去
現在値
41
Henry Helson and Donald Sarason,
“Past and future", Math. Scand.,
21 (1967), 5–16,
過去と未来
確率変数の空間 と 関数空間の美しい関係
The first prediction problem
• Szegö-Kolmogorov-Wiener
1
inf I F d exp log w x dx
2
2
inf X 0 a1 X 1 a2 X 2 ... an X n
2
inf
a1 ,a2 , ,a n
1 a1z a2 z ... an z
2
2
n 2
d ei
0
z ei
2007/3/16
43
• 過去のデータだけを用いて
予測誤差がゼロ
2
L
dense の必要十分条件
• 多項式が
(Kolmogoroff –Szego の定理)
1
inf I F d exp log w x dx
2
2
1
log w x dx
2
弱定常過程における有限予測の
近似について
• スペクトルメジャー w x h e
h( z) Hardyクラスの解析関数
ix
ak X tk
X s s 0 を
k 1
n
•
2
,
T tk 0
で近似すること (時間の対称性、
時間の流れを逆転しても同じ)
1
log w x dx
2
w x h e
ix
2
Hardy class の整関数(全平面で解析的)
は零点をもたない
ゼロになる度合予測が完全か不完全か
をきめる
弱定常過程における有限予測の近似について
日本数学会1986 千葉大学
伊藤清 の前で発表
Arimoto, Akio, Approximation of the
Finite Prediction for a Weakly
Stationary Process. Annalus of
Probability. 16, No.1, 355-360 (1988).
Zbl 641.60049
iax h
a dist e
,H
h
定理(有本)
ある a 0
で
a 0
長さ a 0 の過去をもちいた有限予測は
無限予測に一致
n
X s , s 0 を ak X tk , T tk 0 k 1
をもちいて推定した有限予測の誤差の評価
定理(有本)
T s ˆ 2
T s
h t dt
1 T 0
hˆ t : h t のフーリ エ変換
T decreasing in T
1
2
研究活動
• ウクライナ
– アキーゼルの故郷
– 著名な数学者を多数輩出した土地
• Krein
• Akiezer
• Lyapunov(微分方程式)
• Scorohod(確率とヒルベルト空間)
• 2008年6月野原先生と訪問
International Scientific Conference
"DIFFERENTIAL EQUATIONS,
THEORY OF FUNCTIONS
AND THEIR APPLICATIONS"
June 16 to 21, 2008, in Melitopol, Ukraine.
招待講演
演題:Non-exsitence theorem except in-pase and
out-of-phase solutions in the coupled van der Pol
Equation system, B.T.Nohara and A.Arimoto
キエフの駅
目的地: メリトポール
ウクライナ
不思議な出会い
(ウクライナで修業中日本人バレリーナとの出会い)
メリトポールの街
メリトポールの街
メリトポールの街
International Scientific Conference
"DIFFERENTIAL EQUATIONS,
THEORY OF FUNCTIONS
AND THEIR APPLICATIONS"
dedicated to
70th birthday of academician of NAS of
Ukraine A.M.SAMOILENKO
Tavriyskiy State Agrotechnological University
from J une 16 to 21, 2008,
Melitopol, Ukraine.
1961年9月12日から18日
キエフ市のウクライナ科学アカデミーで
「非線形振動に関する国際シンポジウム」
が開催された。
特別講演はボゴリーボフ
このシンポジウムに当時の非線形振動に関心を持つ
世界各国のほとんどの学者が集まったそうである。
日本からの参加者は
林 千尋(京大)
占部 実(広大)
吉沢太郎(日大)
前沢成一郎(山梨大)
金田潔(京大)
であった。
野原先生
Non-existence theorem except in-phase out-of-phase
solutions in the coupled van der Pol equation, International
conference at Melitipol,Ukraine, June 16-21,2008
ウクライナの数学者たち
Igor Cokolenko,Institute Mathematik HAH Ukraine, in Kiev
女性数学者
ぼくはどこへ行けばいいんですか?
ありがとう
過去未来 時間の流れ
予測の問題
さかのぼり
何年かして再び卒業生がここにあつあまり
今日何を得て何を失ったかを確認しに・・・
We are Time Travelers
時間が普通の人と逆に進んだなら・・・
The Curious Case of Benjamin Button
年齢が若くなっていく
肉体は若くなる、精神が年老いていく
ありがとうまた会おうね
“Life wasn’t all that complicated.
If you want you might say
I was looking for something.”
ベンジャミンの日記の一節より
人生はそんなに複雑な
ものじゃない
自分が探しているもの
を追い求めればいい
Last
Lecture
by Akio Arimoto
March 14th 2009