第11章 タンパク質

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Transcript 第11章 タンパク質

アミノ酸
H
NH2-C-COOH
アミノ基
R
カルボキシル基
● アミノ酸: アミノ基をもったカルボン酸
加水分解
タンパク質
非常に多数
アミノ酸
脱水縮合
(約 20 種)
● 生物の多様性: 単純な要素の組み合による
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主なアミノ酸の構造
酸性基が2個ある
塩基性基が2個ある
(体内で合成されないもの、次ページ)
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必須アミノ酸
● 体内で合成できない(必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン)
⇒ 合成酵素がない
● 必須アミノ酸の不足 ⇒ 必要なタンパク質を作れない
⇒ 他のアミノ酸は脂肪になる
● 良質のタンパク質 = 必須アミノ酸が多い
通常のタンパク質なら :
必要量: 50g/日
70g/日
● 動物性タンパク質: 必須アミノ酸が多くバランスもよい
● トウモロコシ: トリプトファンがない
● 小麦(タンパク含有率= 10% ) : トリプトファン、リシンなし
● 米( 7% ) : 全ての必須アミノ酸を含有
● 大豆( 40% ) : 動物性タンパク質に近い組成 ⇒ 畑の肉
●必須アミノ酸: 動物性タンパクに少ないものは植物性タンパクに多く、
植物性タンパクに少ないものは動物性タンパクに多い
●動物性食品 +植物性食品 ⇒ 不足アミノ酸を補い合う
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タンパク質の消化
(加水分解)
● タンパク質
⇒ オリゴペプチド + アミノ酸
⇒ 腸で吸収
● タンパク質のままで吸収されるものもある
⇒ 食品アレルギー
● タンパク質を多量に食べても筋肉は増えない
⇒ 貯蔵機能がない ⇒ 脂肪で肥満
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旨味物質
● 味覚、臭覚: 物質の到達を知覚; 化学感覚
(● 視覚、聴覚、触覚、温度: エネルギ-を知覚; 物理感覚)
● タンパク質は大きくて味覚器に入れない ⇒ 味がない
⇒ 肉の味 = 含まれている小さな分子(アミノ酸、旨味物質)の味
● 基本味: [甘味、塩から味、酸味、苦味]+旨味
● 3大旨味物質: 日本人が発見
● グルタミン酸ナトリウム: 野菜、昆布に多い
● イノシン酸: 鰹節に多い
● グアニル酸: 椎茸に多い
● グルタミン酸 + (イノシン酸、 グアニル酸) ⇒ 相乗作用
● 動物性と植物性の食材を組合わせる ⇒ 旨味物質が作用を強
め合う(おいしい) + 栄養バランスがよい(健康によい)
● 醤油: 3大旨味物質と各種アミノ酸を含む ⇒ 汎用調味料
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味が示すもの
● 旨味: 基本味(味蕾が対応)の一つ; 「UMAMI」 は世界の共通語
● 辛味、渋味、えぐ味: 口の皮膚感覚
● 甘味: 糖類(エネルギ-源)の存在
● 塩味: 金属イオン(ミネラル分)の味
● 旨味: タンパク質; 体の構成要素
● 苦味: 有害物質(アルカロイドなど)の存在
● 酸味: H+ の味; 腐敗や果物などの未熟さを示す
● 人間も動物も先天的には、甘味、塩味、旨味を好み、
苦味、酸味を嫌う
● 味と消化: おいしい味は消化液の分泌を増やす
● 胃への直接注入では増えない
● 味と香り:
風邪で鼻が詰ると食物がまずい
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タンパク質の分類
●蛋白質: 蛋=鶏卵、蛋白=卵白
(プロテイン: 最も重要なもの(ギリシャ語))
●ポリペプチド(ペプチド): タンパク質より小さい:
インシュリンなど
●構造タンパク質: 体の構造をつくる
●コラ-ゲン(繊維性;全タンパク質の約30% ):
筋肉、皮膚
●ケラチン: 毛髪、爪、羊毛
●機能タンパク質: 酵素など
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アミノ酸からのタンパク質の生成
アミノ酸
重合(水分子が取れて結合)
タンパク質
ペプチド結合(アミド結合の一種)
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タンパク質の一次構造
● アミノ酸の種類と結合順序(一次構造)
● 鎌状赤血球症:
ヘモグロビン287個のアミノ酸成分が1つだけ違う ⇒
悪性貧血
(マラリアに強い ⇒ 貧血よりもマラリアの方が脅威
⇒ 生存に有利)
● 生物進化の過程も示す:
構成アミノ酸の変異: 700 万年に1回
例: ヘモグロビンのα鎖(アミノ酸数141個)
●ヒトとゴリラでは 1個異なる
●ヒトとウマでは 18 個異なる
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タンパク質の高次構造
● タンパク質は、所定の形のとき、その機能を示す
●アミノ酸の並び方(1次構造)から一番安定な形が決まる
● タンパク質の高次構造 (二~四次構造): 立体的な構造
● α- ラセン構造: 球状: 水溶性で壊れやすい:
機能タンパク質(酵素、ヘモグロビン等)
● β- シート構造: 繊維状: 水に溶けにくい:
構造タンパク質(ケラチン、コラーゲン等)
● 分子鎖が集まって、タンパク質としての機能を果たす場合:
ヘモグロビンなど
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タンパク質の二次構造
水素結合
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ミオグロビン
αーラセン
構造の例
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タンパク質の高次構造を保つ結合
イオン結合
共有結合
強い結合
水素結合
弱い結合
疎水結合
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タンパク質の変性
●タンパク質の性質は、
●物理的要因 : 加熱、凍結、強い攪拌
●化学的要因: 酸、アルカリ、有機薬品、
重金属イオンなどの添加
で変化 ⇒ 変性
●変性: タンパク質の空間構造
=形(高次構造)が変わる
⇒ 性質が変わる
鎖が伸びて結合 ⇒ 凝固
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タンパク質の変性の例
● 熱変性
● ゆで卵や火傷
● ビフテキの焼き方:
① 強火で焼く (表面が変性 ⇒ 肉汁の漏れ防止)
②中火または弱火で焼く (中心部を熱変性)
● 酸による変性
● 締め鯖: 軟らかい鯖の切身 ⇒ 酢につける ⇒ 硬くなる
( ●酢締め: 塩をふっておくとよく締まる)
● ヨ-グルト: カゼイン(牛乳のタンパク質)を
乳酸(乳酸醗酵)で変性
● 腐敗(酸敗)した牛乳も凝固
● 塩類による変性
● 豆腐: 豆乳を硫酸カルシウム、塩化マグネシウムで凝固
● 変性したタンパク質: 味が変わる; 消化されやすい
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パーマの原理(S-S結合の組み換えによる変性)
シスチン
ケラチン
開裂
システイン
組合せの変化
⇒形の変化
ずれる
再結合
髪の毛の寝癖:
水分(汗)による水素結合の組換え ⇒ タンパク質の立体構造の変化
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酵素:生物がつくる触媒
● 1つの細胞: 約2千種もの化学反応
● 生体反応: 1つの反応に1つの酵素
● 必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン:
合成酵素がヒトにない
● 構成酵素: 先天的にある
● 誘導酵素: 刺激により生成 ⇒
抗生物質耐性病原菌、殺虫剤耐性害虫、
飲酒による薬物分解酵素
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酵素の機能
(1) 反応を大幅に速める
● 酵素がなければ、1回の食事の消化時間は50年
酵素 + 基質 ⇒ 酵素基質複合体 ⇒ 生成物 +酵素
活性化エネルギー(反応の障壁)を下げる
(2) 選択性が高い: 反応ごとに酵素がある
● 基質特異性: 特定のものとだけ反応
● 反応特異性: 特定の反応だけをする
(3) 酸、アルカリ、熱などで変性を受ける ⇒ 酵素活性を失う
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活性化エネルギー
酵素がない場合
反応の障壁
酵素がある場合
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酵素活性の pH 依存性
胃
に
あ
る
消
化
酵
素
普
通
の
消
化
酵
素
←酸性が強い
● なぜピロリ菌は強酸性の胃で生きられるのか
● ニンジンはビタミン C 酸化酵素をもつ
⇒ ニンジン入りのジュ-ス等ではビタミンCが分解
⇒ レモンや酢を加える ⇒ 酵素が不活性 ⇒ ビタミンCが減らない
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酵素活性の温度依存性
熱変性で失活
酵素の熱変性による失活 ⇒ 40℃以上の発熱の危険性
食品の保存性の向上
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タンパク質分解酵素
● タンパク質分解酵素は自己分解 ⇒ 活性を失う
● 胃壁はなぜ胃液で消化されないのか? ⇒ 消化性潰瘍
● 魚肉や畜肉の味の放置による変化
● 新しいほどおいしいか?
● 放置でタンパク質分解酵素が作用⇒ アミノ酸量が増える
● ATP から イノシン酸(旨味物質) が生成
● 死直後の牛肉は堅い ⇒ 冷蔵庫に保管 ⇒ 軟化し旨くなる。
● 毒素: タンパク質性の有毒物質(酵素); 強力
● ボツリヌス毒素: 1 mgで 1400 万人を殺せる(熱で無毒化)
● 毒物: 青酸カリ; 300 mg で1人を殺せる
● 蛇毒: 酵素;
毒蛇を丸ごと煮て食べたらどうなるか?
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酵素の働き
● 緑茶: 分解酵素を失活させたもの; 不発酵茶
● 紅茶: 酸化酵素を働かせたもの; 発酵茶
● ウーロン茶: 半発酵茶
チロシナーゼ(酸化酵素)
● チロシン(アミノ酸)
メラニン色素 (褐色)
● リンゴ、バナナ、ジャガイモ、レンコンの切り口の着色
● 着色防止:
① 加熱、塩水、酢 ← 酸化酵素の不活性化
② 水洗 ← 酸化酵素は水溶性
③ 切れる包丁を使う ← 酸化酵素は細胞内にある
● 日焼け、シミ、ソバカス: 美白剤; チロシナーゼ阻害剤
↑
自己防御作用
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食品工業での酵素の利用
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窒素の排泄
● 窒素: アミノ酸、タンパク質、核酸などの構成原子
⇒ 代謝
⇒ アンモニア(有毒)
● 窒素の排泄法
●水中生物: アンモニアのまま
●多くの陸上動物: 尿素(低毒性)として尿と共に
●鳥類: 尿酸塩(固体): 尿をしない⇒ 体重を軽くす
る
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狂牛病の病原体
正常型プリオン(糖タンパク質、ヒトにもある)
感染型プリオン
(立体構造が変化)
感染型プリオン(狂牛病の病原体)
(タンパク質分解酵素の作用を受けない。脳血液関門を通過する)
遺伝子がないのに増殖性と伝染性をもつ
⇒ 生物の定義の変更
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BSE発症のメカニズム
①異常プリオンが
脳に進入 ⇒
②プロテインXが正
常と異常のプリ
オンの仲立ちを
する ⇒
③正常プリオンが
異常プリオンに
変異⇒
④異常プリオンが
増えて脳がスポ
ンジ状になる
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