Transcript アイアンサイドを
バリアフリーのための心理学10 (2) 車椅子 望月昭 [email protected] HP: 望月昭のホームページ ブログ:対人援助学のすすめ 1 前回の復習 • 「社会参加」とは? • 「できる」= 正の強化で維持される行動が成立 • 「他立的自律」:障害の有無に関わらず、 これが一般的(?) • 「他立」=援助つき行動=人間の行動 (の大部分) • 「援助」のありかたは要検討 2 コメント・ピックアップ • 精神的な疾患・障害を持っている人に対する「バ リアフリー」対策は考慮されないのか? • バリアフリーというと、障害者の「自立的自律」を イメージしてしまう。それは障害者に求めすぎ。 「ひとりで生きるように」ではなく、「自由でいられ るように」、だから他立的自律でバリアフリー • バリアフリーは物理的問題かと思っていた。 • ノーマリゼーションの思想をはっきり実現するの は難しい。何でも受け入れる体勢は容易ではな い。しかし、近くの運送会社で右腕をなくしたト ラック運転手を事務所で作業できるようにしてい るのをみたとき、こういうのは良いなと感じた。 3 ・乙武洋匡さんの「五体不満足」の中で、「むやみに助けをさし のべないでほしいといったようなことを述べていた。自分ででき ることは自分で、ということを障害者の方は考えているし、同情 されていると思うのと辛いのだと思う。 ・自立的自律、・・、すべて社会参加は可能である。問題は、社 会が受け容れる体制が取れているかが問題。やる気も四種で 変わってくるだろう。自律であれば向上し他律であれば低下す るのでは? ・援助があってもいいから本人に自由を確保されれば自由な社 会生活を送れるが、いつも援助があるわけではないし、援助し 続けるのは大変。それでも「自律」をささえてあげたいと思えば、 援助することで自由を手に入れることは可能。ただプライバ シーの問題などで、援助がある中で、本当の自由を手に入れ ることができるか? 4 「できる」を成立させるための支援 5 バリアフリー概念の問題 ●多数派と異なる反応形態を持つ個人が、 1)多数派と同じ資源へのアクセスを 求めることと想定するのは正しい か? 2)単にアクセスできればよいのか? 6 車椅子といえば 1 「リアル」 井上雄彦 7 車椅子といえば 2 鬼警部アイアンサイド(1969~1975) • http://www.scn-net.ne.jp/~rasen/ironside_copy 湘南ケーブルネット「螺旋」から 8 アイアンサイド 1台目 バリアフリ-のオフィスに介護人を従 えて登場したアイアンサイド。 (略) 介護一切を任されたマークは、元不 良の黒人青年で、アイアンサイドの介 護をしながら高等教育を受け、更生中 という設定。・・・・ マークはアイアンサイドの命ずるま ま、アイアンサイドを、いつ、いかなる 場所へも速やかに移動させることを決 して厭わない。 9 アイアンサイド 2台目 • ・・3シーズン目か4シーズン目だか 定かでは無いが、アイアンサイドの車 椅子は電動化され、マークはアイアン サイドの車椅子を押す仕事からは解 放されたが、側を離れることは無く、電 動の昇降用リフトが装備されたバンの 運転も相変わらず行っていた。 10 アイアンサイド 3台目 3台目に至って、アイアンサイドは、自分 の手で車椅子をこぎだし、単なる車椅子に 乗った警部として登場することになる。車椅 子を押すことが無くなったマークは介助者か ら刑事へと変身していった。 ・・・・・・ステータス・シンボルとも言えそう な先端技術の固まりとも言える電動車椅子 に頼るより、自分の力で車椅子を漕ぐことが 何より格好良いことに気がついたのが一番 11 の理由では無いか思われる。 アイアンサイド 介助者付きの車椅子は、いかにも 重要人物らしくてカッコイイ。 • 電動車椅子は最新テクノロジーを 購入できる財力を感じさせてカッコイ イ。 • 自分の車椅子なのだから、自分で こぐのが一番カッコイイ。 ・ 12 車椅子といえば 車椅子マラソン http://www.youtube.com/watch?v=tKkf59m 42Ds&feature=fvw 13 2つの研究事例 • 1)スロープは正しく設定されているか? ( 基礎実験心理学の応用) ・ 2)車椅子ユーザに対する対応の諸相 14 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/krsc/hs/hs/publication/files/ningen_3/3_037-46.pdf 立命館大学人間科学研究第3巻 15 16 車椅子利用者の飲食店利用における 心理的バリアに関する調査 -人的援助関係から生まれる疎外感について- 高野啓司(2001) NEDO 報告書資料から ●ファストフッド・レストランにおける接客場面 ●車椅子利用者にどのように対応するか? 17 いきさつと目的 • 脳性麻痺のある車椅子ユーザから、健常 者と共にレストランを利用した場合、「障害 のある車椅子ユーザには声をかけない」と いった意見があった。 店員の対応における心理的バリア(疎外 感)に関する実態調査を行い、その解消に 必要と思われる援助(機器)対策を考察す る。 18 方法(1): 高野啓司 (2001) 車椅子ユーザと健常者のペアが、後者が車椅子を押し ながらファーストフードレストランに来店。 来店から会計までの一連の行動の中で、 1)店員の視線、 2)声かけなどの接客行動 VTRで記録し分析 19 方法(2) 「車椅子ユーザ+介助者」(車椅子を健常者 が利用している場合と、重度の脳性麻痺 を持つ成人の場合あり)と「非車椅子ユー ザ+非車椅子ユーザ」(両名とも男性の場 合と男女の場合あり)の組み合わせで、計 33試行のレストラン利用状況で検討した。 20 結果 高野啓司 (2001) ●(車椅子ユーザからクレームのあった)来店時の声かけ、につ いては、特に、車椅子ユーザを無視するといった傾向はみられ なかった。 ●食品注文時、「以上でよろしいですか」の店員の視線は、16試 行中、車椅子ユーザに向けられたことは一回もなかった。 ●支払い時に、「お会計はごいっしょですか」という発声頻度は、 車椅子-非車椅子のペアの場合では18%(3/16)という低率で あった(車椅子ユーザが実際に脳性麻痺を持つ個人の場合、1 回も尋ねられることはなかった)。 21 高野啓司 (2001) これらの結果は、 ●店員は車椅子ユーザを無視しているわけではないが、 車椅子-非車椅子のペアの場合、車椅子ユーザを消 費の主体として捉えにくい。 ●車椅子ユーザが最初に注文するといった消費行動の イニシャティブをとっている場合においても、非車椅子 の同伴者はあくまで車椅子ユーザの消費行動の「援助 者」として存在し、両名が対等な存在であるような接客 対応がとられにくい傾向を示している。 22 どこに問題(課題)があるのか? • お店の店員さんに非はあるのか? • 「話かける」(言語行動)は、どんなふうに 一般的に成り立つのか? • 自然な随伴性に任せていては解決がつ かないのなら、どんな解決策があるだろ うか。 23 車椅子という「記号」 http://azoz.org/archives/200408311259.php 24