プロジェクト評価

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Transcript プロジェクト評価

政策評価
三井清
07/09/26
1
【授業の概要と目標】
• 本講義は公共プロジェクトの評価手法である
費用・便益分析の理論と実践に関して概観す
ることを目的としている。
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<成績評価の方法・基準>
テスト(60%)
レポート(40%)
<参考文献>
Boardman, Anthony E. et al., Cost-Benefit
Analysis, 2nd Edition, Prentice Hall, 2000,
岸本光永監訳『費用・便益分析』ピアソン・エ
デュケーション, 2004
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3
【授業の内容と進行計画】
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
費用・便益分析(CBA)への入門(参考書(1)の第1章と第6章)[9/26]
CBAのミクロ経済学的基礎(第3章)
:消費者余剰と補償変分・等価変分[10/3]
CBAの考え方の基礎:補償原理とマスグレイブ主義[10/10]
休講(開院記念日) [10/17]
CBAの考え方の基礎
:プロジェクト採否基準とプロジェクトの役割と限界 [10/24]
プライマリー・マーケットにおけるCBA(第4章)[10/31]
セカンダリー・マーケットにおけるCBA(第5章)[11/7]
不確実性の処理(第7章):期待値、感度分析、情報の価値[11/14]
社会的割引率(第10章)[11/21]
顕示選好法1(第13章):市場類似法、トラベルコスト法など[11/28]
顕示選好法2(第13章):ヘドニック価格法と過大評価定理[12/5]
顕示選好法3(第13章):仮想評価法CVM[12/12]
費用便益分析のマニュアル・事例の紹介と検討1[1/9]
費用便益分析のマニュアル・事例の紹介と検討2[1/16]
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1. CBAへの入門
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1.1 費用便益分析の目的と適用対象
1.2 費用便益分析の種類と有用性
1.3 社会的便益と社会的費用
1.4 将来の便益と費用の割引
1.5 CBA に対する需要
1.6 CBA の基本的な手順
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1.1 費用便益分析の目的と適用対象
<基本的な目的>
社会的意思決定(効率的な資源配分達成)の支援
<適用対象>
(1) 事業(project)
(2) プログラム(programs)=事業の集まり
(3) 政策(policy)=プログラムの集まり
(4) 規制(regulations)
<公共プロジェクトの例>
ダム建設、空港整備、道路整備、下水道整備、
公園整備、都市開発、予防接種事業など
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1.2 費用便益分析の種類と有用性
<種類と目的>
事前(ex ante)評価=事業実施前の評価
中間(in medias res、再)評価=事業継続中の評価
事後(ex post)評価=事業終了後の評価
(問題 1-1)以下の表にある 3 種類の評価について、有用性の大きい場合は○、ある程度期待で
きる場合は△、ほとんど期待できない場合は×を記入しなさい。また、その理由を説
明しなさい。
有効性
種類
事業の採否
類似事業の採否
事前評価
○
△
△
中間評価
×
○
△
事後評価
×
×
○
事前的観点からの中間評価
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事業の見直し
事後的観点からの中間評価
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1.3 社会的便益と社会的費用
<消費者余剰と生産者余剰>
N =個人数(人口)
CSi =個人 i の消費者余剰(consumer’s surplus)の増分
CS =(集計的)消費者余剰の増分
CS  CS1    CSN
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(1-1)
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R j =企業 j の収入(revenue)
VC j =企業 j の可変費用(variable cost)
事後的観点からの「中間評価」
 j =企業 j の利潤(profit)
FC j =企業 j の固定費用(fixed cost) 回収できない費用
埋没費用(sunk cost)
PS j =企業 j の生産者余剰(producer’s surplus)
事前的観点からの「中間評価」
PS j = R j - VC j
=  j + FC j [←  j  R j  (VC j  FC j ) ]
(1-2)
PS j =企業 j の生産者余剰の増分
M =企業数
PS =(集計的)生産者余剰の増分
PS  PS1   PSM
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(1-3)
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<社会的便益と社会的費用>
純歳出(net expenditure)
=「歳出(expenditure)」-「歳入(revenue)」
純歳出の機会費用(opportunity cost)
=「歳出の機会費用」-「歳入の機会費用」
便益 B (social benefit)= CS + PS
費用 C (social cost)=(政府の)純歳出(の機会費用)
純便益 NB (net social benefit)=便益 B -費用 C
あるプロジェクトが「効率性」の観点から採択されるためには、
純便益が正、すなわち
NB >0
(1-4)
という条件が成立しなければならない。
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<便益と費用の例>
ダム事業の便益
=① 発電(発電用水の供給)→ 発電された電力の価値
(広義の)利水
② 利水(水道用水、農業用水、工業用水)→ 増大した農産物の価値
③ 治水(洪水調節)→ 低下した洪水被害額
ダム事業の費用
=① ダムの建設費、② 維持管理費(堆砂対策費)
貯砂ダム
洪水バイパストンネル
(問題 1-2)道路整備に関してそのプロジェクトがもたらす便益の項目は?
(問題 1-3)ダム湖の湖畔に作られたレストランの収益は便益として考慮すべきか。
(問題 1-4)整備新幹線の建設によって並行在来線の収益が低下した場合、その収益の減
少分はどのように考慮すべきであろうか。
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(問題 1-5)港を掘り下げるという公共事業の便益を評価する方法を検討しよう。港を掘り下げ
ることにより、港に大きな船が接岸できるようになるので、リンゴの輸送にかかる費
用が軽減できるとする。なお、リンゴの量を x 、リンゴの価格を
p 、港を掘り下げる
前と後のリンゴの供給曲線をそれぞれ S1 、 S2 、リンゴの需要曲線を D とする。その
とき、公共事業前の均衡取引量 x1 と価格 p1 、公共事業後の均衡取引量 x2 と価格 p2 を
図示しなさい。そして、この公共事業から生じる CS 、 PS 、そして便益 B を、次
の図を用いて説明しなさい。
p
S1
S2
Ⅰ
Ⅳ
Ⅱ
Ⅴ
Ⅲ
Ⅰ Ⅵ
D
x
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CS Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ
p
PS  (Ⅳ+Ⅴ+Ⅵ)-(Ⅰ+Ⅳ)
=Ⅴ+Ⅵ-Ⅰ
B Ⅱ+Ⅲ+Ⅴ+Ⅵ
S1
S2
p1
Ⅰ
p2
Ⅳ
Ⅱ
Ⅴ
Ⅲ
Ⅰ Ⅵ
D
x1
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x2
x
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1.4 将来の便益と費用の割引
<名目利子率と実質利子率の関係>
t 期=t-1 年後から t 年後までの 1 年間
it =t期の名目利子率
Pt =t 期の期末の(=t 年後の)物価水準
mt =t 期のインフレ率
P  Pt 1
mt  t
Pt 1
このとき、t 期の実質利子率(real interest rate)
rt 
1  it
1
1  mt
(1-5)
rt は次のように定義できる。
(1-6)
また、 it と mt が小さいときは次の近似式が成立する。
rt ≒ it  mt
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(1-7)
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it =t期の名目利子率
Pt =t 期の期末の(=t 年後の)物価水準
P  Pt 1
P
mt  t
mt  t 1
Pt 1
Pt 1
(1-8)
このとき、t 期の実質利子率(real interest rate)
rt 
1  it
1
1  mt
Pt 1円
(1-9)
1  mt 
1個
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Pt
Pt 1
(1  it ) Pt 1円
t-1
Pt 1 円/個 =
rt は次のように定義できる。
t
=
Pt
円/個
(1  it ) Pt 1
個 = 1  rt 個
Pt
1  it
 1  rt
1  mt
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<割引現在価値(名目)>
i =(名目)利子率(interest rate)
n =プロジェクトの事業期間
Bt =t 年後に発生する(名目)便益
(B0 , B1 ,, Bn ) =便益の流列
B =便益((の流列)の割引現在価値))
Bn
B
B2
B  B0  1 



1  i (1  i) 2
(1  i) n
Ct =t 年後に発生する(名目)費用
(C0 , C1 ,, Cn ) =費用の流列
C =費用((の流列)の割引現在価値)
Cn
C
C2
C  C0  1 



1  i (1  i) 2
(1  i) n
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(1-10)
(1-11)
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NBt =t 年後に発生する(名目)純便益
( NB0 , NB1 ,, NBn ) =純便益の流列
NB =(名目)純便益((の流列)の割引現在価値)
NBn
NB
NB2
NB  NB0  1 



1  i (1  i) 2
(1  i) n
(1-12)
このとき、次の関係が成立する。
NBn
NB1
NB2




1  i (1  i) 2
(1  i) n
(Bn  Cn )
(B  C1 ) (B2  C2 )
 (B0  C0 )  1




1 i
(1  i) 2
(1  i) n
NB  NB0 
 B  C :(名目)純便益(の割引現在価値)
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(1-13)
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(問題 1-6)あるプロジェクトの費用と便益(の流列)が次の表で与えられている
とする。このとき、t 年後の純便益の値を記入しなさい。また、利子
率 i =0 のケースと、i =0.1 のケースについて、便益の割引現在価値
B と費用の割引現在価値 C をそれぞれ求めなさい。そして、それぞ
れのケースでこのプロジェクトを実施すべきかどうか検討しなさい。
t
Bt
Ct
NBt
0
1
2
0
220
121
210
110
0
-210
110
121
i 0
B  0  220 121 341
C  210 110  0  320
i  0.1
B  0  220  1212  300
1.1 1.1
C  210  110  0 2  310
1.1 1.1
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<名目純便益と実質純便益の同等性>
Bt
=t 年後に発生する実質便益
t
(1  m)
(b0 , b1 ,, bn ) =実質便益の流列
b =実質便益((の流列)の割引現在価値)
bn
b
b2
b  b0  1 



1  r (1  r) 2
(1  r) n
bt 
Ct
=t 年後に発生する実質費用
(1  m) t
(c0 , c1 ,, cn ) =実質費用の流列
c =実質費用((の流列)の割引現在価値)
cn
c
c2
c  c0  1 



1  r (1  r) 2
(1  r) n
ct 
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(1-14)
(1-15)
(1-16)
(1-17)
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B  C  (B0  C0 ) 
(Bn  Cn )
(B1  C1 ) (B2  C2 )




1 i
(1  i) 2
(1  i) n
(bn  cn )(1  m) n
(b1  c1 )(1  m) (b2  c2 )(1  m) 2
 (b0  c0 ) 

 
2
1 i
(1  i)
(1  i) n
 (b0  c0 ) 
(bn  cn )
(b1  c1 ) (b2  c2 )




1 r
(1  r) 2
(1  r) n
 b  c :実質純便益(の割引現在価値)
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1.5 CBAに対する需要
<アメリカ>
•
•
•
•
1981年=レーガン大統領がCBAの一般的使用を発令
規制影響分析RIA(Regulatory Impact Analysis)
1994年=クリントン大統領がCBAへの参画を確認
1995年=UMRA(Unfunded Mandates Reform Act of 1995)
年度の費用が1億ドルを超える可能性 ⇒ CBAを実施
2000年=TGGAA
(Treasury and General Government Appropriations Act)
1. 行政管理予算局にCBAに関する情報を提供する報告書の発行
2. CBAの測定方法を標準化する指導方針の提示
<カナダ>
•
「連邦・州フレーザー河川洪水管理協定」=事前CBA
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1.6 CBAの基本的な手順
:コキアラ・ハイウェーの例
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
07/09/26
一連の選択肢を明示する。
便益・費用を計算する当事者の決定
影響力を分類し測定の尺度を選定
事業の影響を数量的に予測
影響を貨幣価値に換算
割引現在価値の計算
各代替案の割引現在価値を計算
感度分析を実施
推奨案の作成
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1.1 費用便益分析の目的と適用対象
1.2 費用便益分析の種類と有用性
1.3 社会的便益と社会的費用
1.4 将来の便益と費用の割引
1.5 CBA に対する需要
1.6 CBA の基本的な手順
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