ダウンロード

Download Report

Transcript ダウンロード

統計データからみた
最終処分場のコスト状況
(独)国立環境研究所
循環型社会・廃棄物研究センター
研究員 遠藤和人
管理型最終処分場
一般公開用ポスターより引用
遠藤和人([email protected])
2
2007/06/22
最終処分場に関わる基準と技術と時間
ここだけが収入
約5~10年以上必要
プレ期間
計 画
約10~15年が多い(性能指針)
操業期間
廃止の条件は
浸出液,ガス,地
温が基準を連続し
て2年間満たすこ
と
約30年以上が一般的
ポスト期間
閉 鎖
埋 立
住民合意
浸出水処理
建 設
住民説明
浸出水処理
廃 止
安定化(促進)
埋立終了
跡地利用はこの期間可能
土壌環境基準
法規制
技術
構造基準
維持管理基準
跡地利用・安全・安心 跡地利用と安定化を
合理的な設計
考慮した埋立管理
廃止基準
安定化促進工,
覆土工
跡地形質変更
覆土,ガス抜き
(対策)工
廃棄物処理法の適用はここまでが延長
遮水工の機能は廃止以降も健全であることが前提条件
遠藤和人([email protected])
3
2007/06/22
廃止基準を本当に満足することができるのか?
– 陸上処分場では,通常一日に
100~1000立米程度の浸出水が出る
– 年間の維持費が数千万から一億円必要
埋立終了(閉鎖)
した後,どうする?
操業期間中は
ブツと金が同じ
方向へ動く
遠藤和人([email protected])
やるか?
資金を作って,閉鎖後の運
営に備えなければならない
4
2007/06/22
廃止基準を満たすまで
会社の経営ががんばれるのか?
– 産業廃棄物の民間業者の中には
マスコミに取り扱わ
れる数少ない業者
– 閉鎖後に逃げ出す業者もいる
– 維持管理積立金制度ができた(ガイドラインではあるが)
– 現在稼働中,もしくは廃止出来ない処分場は全国に
4,000ヶ所程度(ミニも併せたら数万か?)ある。
• これら民間企業や第3セクターが破綻したら?
• 当然ながら,税金の投入というストーリーに・・・
– 環境リスクという観点から考えると経営破綻の影響
が最も大きい
• では、どのようにして破綻を減らすことができるのか?
• ところで、どの程度の経費がかかっているのか?
• 破綻して不適正処分場になると経費はいくらなのか?
遠藤和人([email protected])
5
2007/06/22
産廃不適正処分場事案の緊急調査
•
環境省による平成17年6月調査結果
– 1万m3以上(推定値含む)の事案を対象に調査
10万m3以上の処分場は26施設であるが
その残存量は全体の60%を占める
処理費1万円/m3だとトータルで1532億円
の処理費用が必要
産業廃棄物処分場の設置状況は
2,655施設(H15.4.1現在)
→約10%が不適正処分場
遠藤和人([email protected])
6
2007/06/22
不適正処分場の修復事業の内容
事業経費(億
円)
単価(万円
/m3)
サイト名
事
業
期
間
埋立地の種類、
規模
(不法投棄量)
主な廃棄物
不法・不適正の概要、汚染
概要
支障除去法
(除去目標)
三重県桑
名市
15
~
19
産廃・安定型
0.38 ha
(約3万m3)
汚泥、燃え
がら、廃油、
がれき類
許可以外の廃棄物、1,2DEC, DCM等による地下
水、表流水汚染
原位置封じ込め:
鉛直しゃ水壁、汚染水の
揚水浄化、(管理型処分
場)
14.8
(4.8)
一廃・管理型
(約11万m3)
一般廃棄物
表面しゃ水シートの破損、
地下水汚染
しゃ水工のやり直し(改修
に伴い、埋立物の撤去)
55
(5.0)
産廃・管理型
5 ha
約110万m3
(100万m3)
汚泥、燃え
がら、シュレッ
ダーダスト
埋立量許可違反、漏水、
Br, 有機汚濁、悪臭
原位置封じ込め・安定
化:鉛直しゃ水壁、保有
水の揚水浄化、水位低
下・水洗・通気
汚泥、燃え
がら、RDF,
堆肥様物
許可違反、不法投棄、
DCM,TCE,Bz,DOXs 判定
基準を大幅超過、地下水汚
染
緊急対策と恒久対策:
CP・しゃ水壁・水処理と
全量撤去(セメント化)、モニタ
リング
特措法適用
千葉県
八千代市
福井県
敦賀市
16
~
26
(試算)
100-140
(0.8-1.3)
特措法適用
青森県田 15
産廃・一部管理
子町
型 11 ha
~
約88万m3
岩手県二 24
戸市 特措法適用
宮城県村
田町
18
~
28
産廃・安定型
8.8 ha, 約103万
m3
(67万m3)
遠藤和人([email protected])
建設廃棄物、 埋立量許可違反、周辺生
木くず、廃プ 活環境汚染(硫化水素)、
ラ
浸透水基準違反
7
原位置汚染物拡散防止
(パッシブ ):多機能性覆
土・PRB →鉛直しゃ水
封じ込め
655
(7.4)
(試算)
20→100
(0.2-0.3)
→(1-1.5)
2007/06/22
発覚している不法投棄(全国)
年度
件数
投棄量(トン)
1996
719
218,999
1997
855
408,295
1998
1,197
424,300
1999
1,049
433,293
2000
1,027
403,274
2001
1,150
241,676
2002
934
318,181
発覚した年度であるので,その年度に不法投棄が行われたわけではない。
お恥ずかしながら茨城は,2002年度の件数が159件で,
全体の17%を占めている。投棄量は全体の7%なので,
1件当たりの規模は小さいが・・・
2002年度データで考えると10,000円/トンの処理として31億円必要である。
遠藤和人([email protected])
8
2007/06/22
適正な管理の確保
• 適正な管理を遂行するためには,どの程度の費用
が必要なのだろうか?
• 廃止までには,どの程度の資金が必要だろうか?
• 建設費は一般的にどの程度か?
– 施設規模によって大きく異なる
– 処分場自体と水処理施設
• 維持管理にどれだけのコストが必要か?
– 埋立終了から廃止までの期間が不明瞭
– 法改正に伴う施設の変更
遠藤和人([email protected])
9
2007/06/22
処分場自体と水処理施設の建設費
• 平成11~15年度の一般廃棄物処分場に関するデータ。
89箇所を対象。
• 建設費の比較方法
– 地域別の平均値比較
– 処分場の面積当たりでの建設コスト
– 処分場の容積当たりでの建設コスト
• 維持管理費の評価方法
– 一般廃棄物処分場の維持管理費の幅を利用
– 埋立廃棄物1m3当たりの維持管理費を算出
– 受け入れ廃棄物の料金とライフサイクルコストを比較
遠藤和人([email protected])
10
2007/06/22
一般廃棄物処分場の初期投資額の平均値
最低 10,000円/m3
最高 140,000円/m3
遠藤和人([email protected])
11
最低 2,000円/m3
最高 190,000円/m3
2007/06/22
処分場建設費(面積比)
200000
水処理施設
150000
5 度デー タ
1 1年
平成 1~
処分場数 :89カ所
100000
100 0, 00
土木工事平均
63 9, 18 水処理平均
50 0, 00
0
1 0, 00
100 0, 00
10 0, 00
61 1, 28
50000
0
1 0, 00 0, 00
埋立廃棄物単位面積当 た りの
水処理施設建設 コス ト ○
: 円
( / m 2)
150 0, 00
土木工事
平均面積
15 3, 24m
埋立廃棄物単位面積当 た りの
土木工事 コス ト ●
: (円/ m 2)
2
200 0, 00
( 2)
一般廃棄物処分場の面積 m
遠藤和人([email protected])
12
2007/06/22
処分場建設費(容積比)
水処理施設
3
平成 1~
1 1年
5 度デー タ
処分場数 :89カ所
工
事
20 0, 00
13 7, 98
土木工事平均
0
1 0, 00
60000
水処理平均
10 0, 00
100 0, 00
40000
20000
14 3, 46
0
1 0, 00 0, 00
埋立廃棄物単位容量当 た りの
水処理施設建設 コス ト ○
: 円
( / m 3)
40 0, 00
土
木
土木工事
平均容量
95 8, 93m
60 0, 00
80000
設
理施
水処
埋立廃棄物単位容量当 た りの
土木工事 コス ト ●
: (円/ m 3)
80 0, 00
一般廃棄物処分場の容量 m
( 3)
遠藤和人([email protected])
13
2007/06/22
産業廃棄物処分場との比較
土木工事費の単価は産廃処分場も一般廃棄物処分場も同じである。
しかしながら,水処理施設の建設費は,一般廃棄物処分場の方が高く,
産業廃棄物処分場は約1/4となっている。
遠藤和人([email protected])
14
2007/06/22
維持管理事例 (1)
Case study A:1事業者1処分場の例
①計画→②建設→③埋立→④埋立終了→⑤廃止
収入――――>
無収入――――>(維持管理)
*この場合は、①~⑤にて事業が終了する。
(事業者は、次の処分場を操業しない)
収入が見込まれる期間に、無収入期間の維持管理費を稼ぎ、
蓄えておく必要があり、蓄えが尽きたところで維持管理が継続できなくなる。
⇒ このケースでは、最終処分場維持管理積立制度や
最終処分場災害防止準備金制度の活用となる
⇒現在、これらの積立金等の査定が困難である
⇒現在、最終処分場には保険制度も適用できない(査定不可)
遠藤和人([email protected])
15
2007/06/22
維持管理事例 (2)
Case study B:1事業者複数処分場経営の例
(第1処分場) ①計画→②建設→③埋立→④埋立終了→⑤廃止
収入――――>
無収入――――>(維持管理)
(第2処分場) ①計画→②建設→③埋立→④埋立終了→⑤廃止
収入――――>
収入無――――>(維持管理)
・・・・繰り返す。
この場合は、第1処分場が無収入期に入る前に、第2処分場を立ち上げる。
この収入の一部を第1処分場の維持管理費に廻していく。
これを繰り返し自転車操業となるが、廃止期間における維持管理費を確保し、
経営を安定させるための限られた方法の一つである。
ただ,いつかは破綻する可能性がある。
一般廃棄物処分場はなぜ破綻しないのか?
それは税金で管理されているため。見かけ上、
無尽蔵にお金がある。
遠藤和人([email protected])
16
2007/06/22
一般廃棄物処分場と産業廃棄物処分場の維持管理費
産業廃棄物処分場の調査数は少ないが,
維持管理費は一般廃棄物処分場と同様の範囲に収まっている。
概して,200~800 円/m3・年の維持管理費が必要である。
遠藤和人([email protected])
17
2007/06/22
一般廃棄物最終処分場(陸上埋立)における単位埋立廃棄物容量当たりの
ライフサイクルコスト(LCC)の試算例
遠藤和人([email protected])
18
2007/06/22
50万m3の処分場に着目すると
埋立廃棄物単位容 処分場
量当たりの初期投資 全体で
埋立容量 額(土地代含む) の初期
投資の
合計額
水処理施
土木工事
設
万m3
50
円/m3
4,445
円/m3
2,894
遠藤和人([email protected])
百万円
3670
埋立廃棄物単位容量当たり
埋立開始から廃止までに必
のLCC(初期から維持管理
要な維持管理のみのコスト
までを含む)
維持管
理単価
埋立終了~廃止までの期間 埋立終了~廃止までの期間
(想定
(想定値)
(想定値)
値)
10年
円/m3・
年
30年
50年
10年
百万円
30年
50年
円/m3
200
2,500
4,500
6,500
12,339
16,339
20,339
400
5,000
9,000
13,000
17,339
25,339
33,339
800
10,000
18,000
26,000
27,339
43,339
59,339
19
2007/06/22
産業廃棄物(建設廃棄物)の
最終処分受け入れ料金(単位:円/m3)
遠藤和人([email protected])
20
2007/06/22
埋立廃棄物容量当たりのLCC試算(円/m 3)
LCC試算例と廃棄物受け入れ料金との比較
80000
1
10
100
水処理単価
200円/m3・年(10年)
600003・年(30年)
200円/m
400円/m3・年(10年)
400円/m3・年(30年)
400003
800円/m ・年(10年)
800円/m3・年(30年)
60000
40000
20000
0
1000
80000
20000
表から得られる受入廃棄物
の流通価格(平成15年調査値)
1
遠藤和人([email protected])
10
100
()内は維持管理期間であり、
埋立期間15年は含まない
0
1000
処分場容量(万m 3)
21
2007/06/22
破綻を防ぐために
• 安定化(廃止)を早める
– 埋め立てられた廃棄物の安定化促進工法
– 埋立工法を変更し、分解を早める
• 受け入れ廃棄物の質の向上
– 現状の廃掃法の安定型、管理型、遮断型という区分
を改正し、廃棄物の質に合わせた新規類型化を行う。
– 廃棄物はすべて中間処理を通してから、処分場へ入
れるという、廃棄物物流システムの改善を行う。
• 維持管理積立金制度の見直し
– 廃止までにどの程度の期間が必要か、という科学的
根拠を打ち出す。→欧米でも同様の研究があるが、
海外は焼却という中間処理がないので、日本は独自
でこの理論を構築する必要がある。
遠藤和人([email protected])
22
2007/06/22
破綻を防ぐために
• Capacity development
– 破綻が分かっているならば、自治体で許認可を出さなけ
ればよい。。。しかし、それを見極める人材がいない。
– 自治体の技術レベルは下がる(下げられる)傾向にある。
• これは、人事異動も含み、自治体の役割としてそのような傾向が
ある
– では、自治体の技術レベル向上は無理なのか。。。
• Third Party Organization (steering committee)
– 自治体(もしくは国)専門のコンサルが必要では?
•
•
•
•
各都道府県が設置する環境対策協議会などでは追いつかない
第三者機関の設立(自治体、国専門のコンサル)
第三者機関による技術レベル(公平性)の維持
自治体に替わって技術的審査を行う(お墨付きを与える)
遠藤和人([email protected])
23
2007/06/22