生命工学・生命倫理と法政策

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Transcript 生命工学・生命倫理と法政策

医事法2009
東京大学法学部 21番教室
樋口範雄・児玉安司
第1回2009年4月8日(水)16:50ー18:30
序論:医事法への視点
[email protected]
参照→http://ocw.u-tokyo.ac.jp/
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医事法
日本の法のあり方を問い直す2つの視点
1 諸外国からの視点(主としてアメリカ)
2 医師という専門家からみた視点
international and interdisciplinary という視点
→「医療と法を考える」
実は法のあり方を考える
目次:①経緯 ②医療と法
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東京大学学術創成プロジェクト
「生命工学・生命倫理と法政策」
2002年→2007年
医師と法律家が一緒に議論する試み
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研究チーム構成員
樋口範雄 東京大学 法 英米法
伊藤 眞 東京大学(現早稲田大学) 法 民事訴訟法
佐伯仁志 東京大学 法 刑法
両角吉晃 東京大学 法 イスラム法
中山信弘 東京大学(現早稲田大学) 法 知的財産権法
道垣内正人 東大(現弁護士・早大) 法 国際民事訴訟法
白石忠志 東京大学 法 競争法
大内尉義 東京大学 医 老年科教授 倫理委員会委員長
森茂郎 東京大学(現帝京大学) 病理学
蒲生忍 杏林大学 医 倫理委員会委員長
相澤英孝 早稲田大学(現一橋大) 法 知的財産権法
Veronica Taylor ワシントン大学 法 アジア法
海外アドバイザー
他にワーキンググループを作り、若手の法学・医学者が参加
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最初の2年間の活動
これまで2年間の活動
1)全体会議・研究会
16回
2)生命倫理ケーススタディ
ディスカッション
13回
3)「生命工学と法政策」研究会
2回
4)「アメリカの生命倫理と法」集中講義 13回
5)国内の他グループの活動への参加
14回
6)国際会議・セミナーへの派遣 5回5カ国のべ11人
7)海外から専門家を招聘しシンポジウム・ワーク
ショップ
8回
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生命倫理ケーススタディ
●法律家・医学者等の3名で、生命倫理と法に関する仮設例につ
きディスカッション
◆合計13回 3人以外に10名程度が参加し議論に加わる
◆3人の方には原稿を書いてもらい、ジュリストに連載
2003年4月から2004年5月までで13回完結
◆さらに各設問にnotes and questions を付加し、法科大学院用教材として
2 004年秋に有斐閣から刊行
●2つの例
①生命倫理ケース・スタディ Case1
「ハンチントン遺伝病の告知」:45歳の女性がハンチントン病であることが
わかる。子どもを含め家族や親族にいわないでくれと医師に頼む。医師はどう
すればよいか。
辻省次 東大医学部 ハンチントン病研究の第一人者
武藤香織 信州大学医学部 社会学者
樋口範雄 東大法学部
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医療と法の関わり
Ⅰ はじめに
医師と法律家の共通性 →←その間のギャップ
医療の法化現象
その理由 6点 手嶋豊『医事法入門』
Ⅱ 法のイメージ
【仮設例】75歳男性、大動脈瘤手術で死亡、病院はミスを認める
弁護士に相談「念のため警察に連絡しておいた方がいいでしょ
う」
【問】その結果、どうなるだろうか?
なぜ弁護士に相談したのだろうか?
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法のイメージ
【仮設例】から
1 医師の法・弁護士への不信
2 ガイドラインに依拠した場合
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医師と法律家の対話から
【問】不治の遺伝病→家族に話さないでという患者の願い
医師はどうすべきか?
CASE1の事例
医療の法化?
法律問題なのか?
参加した医師の法律家への不信
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法のイメージ
ケーススタディ生命倫理と法 16頁 Q1&2
○法のイメージ
①現場感覚の欠如
②抽象的・画一的・形式的・単純・二者択一的
③明確な結論
④法といえば刑事法
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医事法
医療に関わる法と法律家のあり方を問い直す
樋口範雄「医療と法を考える―救急車と正義」
(有斐閣・2007年)
同「続医療と法を考える―終末期医療ガイドラ
イン」(有斐閣・2008年)
手島豊「医事法入門」(有斐閣・第2版・
2008年)
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WHICH DIRECTION IS THIS BUS GOING?
RIGHT OR LEFT?
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バスの問題が示すもの
① バスの運転手ならすぐにわかるかも
現場感覚の重要性
② 見えるもの・見えないもの
ほんの少しの想像力
③ ルールの相対性
ルール自体の射程と限界
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救急車と正義
①119番トリアージ(triage) 救急搬送の件数の増加(200
6年の消防庁報告書によると、10年で1、6倍、件数で
は年間500万件超)
重症者を優先するシステム作りとそれへの反対
→重症者を軽症者と間違う事故の発生とその甚大な影響
②PA連携の可否
消防法2条9項「救急業務とは、(中略)医療機関その他
の場所へ緊急に搬送する必要があるものを、救急隊によっ
て、医療機関その他の場所に搬送すること(傷病者が医師
の管理下に置かれるまでの間において、緊急やむを得ない
ものとして、応急の手当を行うことを含む。)をいう」
救急隊の定義規定(消防法施行令)「救急隊は、救急自動車1
台及び救急隊員3人以上をもって編成しなければならない」
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安全第一の法と医療
「看護師による医療的ケアを実施している学
校において、看護師が校外学習に付き添いで
出かけた際に学校内の対応で緊急を要する事
故が起こった場合には、どのような責任問題
になるのでしょうか(養護学校教師)」
この質問の背景
医行為と医療的ケア
医行為についての医業独占
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医療的ケアの限定→患者の安全のため
このような法規制に伴う副作用
①独占にはそれに伴う利益が発生する。患者の安全を唱え
ながら、実は自らの利益を主張している場合がある。
②生徒を助ける気のない人には、そのためらいを正当化す
る口実を与える。「助けてあげたいけれど、法律で禁止
されているから仕方がない」。
③生徒を助ける気のある人には、それを躊躇させる。「助
けてあげたいのに、法律が許さないし、事故が起こった
ら責任をとらねばならない」。
④厚労省も、医療者以外の人による医療的ケアの実施を広
く認めて事故が生じた場合、厳しい批判にさらされるの
で、現状を維持したくなる。
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医療と法
リスクに対する考え方
わが国の法の特異性
Cf., Oliver Wendell Holmes, The Common Law
「わがアメリカ法の一般原則は、事故から
生じた損害は、それが降りかかったとこ
ろにとどまるべきだということである」
医学会・法学会の比較
①時間 場所 賞状 産学連携
②大半の報告は実証研究・症例の報告
③国際化 英文での要約 英語論文
★④誰が参加するか
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