大規模数値計算による原始銀河団領域に関する研究

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大規模数値計算による原始銀
河団領域に関する研究
諏訪多聞, 羽部朝男
(北海道大学)
吉川耕司
(東京大学)
概要
高赤方偏移(z=5)での原始銀河団領域の特
徴を調べるために1677万粒子を用いて宇宙
論的 N 体計算
 z=0 で銀河団となっている領域を過去に遡っ
て解析
 z=5 の原始銀河団領域のサイズ、ダークハ
ロー(1012Mo程度)の数密度を算出し、観測
と比較
 おおむね良い一致

Introduction

近年の観測技術の進歩によっ
て高赤方偏移(z=3-5)で原始
銀河団と思われる領域が観測
されている(e.g. Shimasaku
et al. 2003)
Shimasaku et al.(2003)
z=4.86 での Lyα emitters (LAEs) の観測
黒丸がLAEsを表している
直径25Mpc
LAEs約20個
原始銀河団?
Introduction(2)

これらの構造はΛCDM宇宙の予想とどの
ように対応するか?
これを調べるため宇宙論的な数値計算を
行い、原始銀河団の特徴を研究
 Shimasaku et al.(2003)の観測と比較

手法(宇宙論的N体数値計算)
Particle-Particle-Particle-Mesh(P3M)法
 ボックスの大きさ: 2143 Mpc3 (周期境界)
 粒子数: 2563 (~1677万)体
 一粒子の質量:2.15×1010MO
 Softening length: 80kpc
 北大計算機センターの onyx300 を用いて
並列計算 (16CPU)

宇宙論的パラメータ
ΛCDMモデル
 密度パラメータ: W0 = 0.3
 ハッブル定数: H0 = 70km/s/Mpc
 宇宙項: l0 = 0.7
 初期密度揺らぎの振幅: s8 = 1.0
 z=35からz=0までを計算

Mpc
z=0 におけるダー
クマターの分布
色はダークマター
の密度に対応
この中から質量の
大きな銀河団
(2×1014Mo以
上)を選び出す
Mpc
Mpc
z=0 におけるダー
クマターと銀河団
の分布
白い丸が銀河団
この計算では37個
存在
丸の半径は銀河
団の半径に等しい
Mpc
原始銀河団領域

Z=0 で銀河団に含まれているダークマター
粒子がz=5で分布している領域を原始銀河
団領域とする
Z=5
過去
重力収縮で銀河団形成
過去に遡って調べる
Z=0
現在
銀河団
原始銀河団
Mpc
z=5 における
ダークマターと
原始銀河団の
分布
z=0で銀河団
に含まれる
ダークマター粒
子を白い点とし
てプロットして
ある
Mpc
(comoving)
(原始)銀河団の例
z=0
~5Mpc
z=5
~40Mpc(comoving)
銀河ダークハローの分布
LAEsの観測と比較するため、原始銀河団領
域の中に銀河ダークハローがどのように分布
しているか調べる
 LAEsは質量の大きな銀河に対応すると考え
て、1012Mo以上をここでは銀河ダークハロー
と呼ぶ

1012Mo以上の
ダークハローを
抜き出して表示
したもの
原始銀河団の特徴
原始銀河団の領域の大きさは20~40Mpc
 原始銀河団内の銀河ダークハローの個数
は1~20程度


Shimasaku et al.(2003) の観測
サイズ:25Mpc
 LAEs の個数: 約20個

銀河ダークハローの分布(2)

分布を表す指標として

Halo overdensity: 1   halo
halo
 Bias parameter: b 
mass
n protocluster

nBG
を用いる
 37個の原始銀河団領域のそれぞれに対して、
halo overdensity, bias parameter を算
出
 Shimasaku et al.(2003)の観測と比較
観測結果



観測:Shimasaku et
al. (2003)
サイズ:~25Mpc
LAEs overdensity:
δLAE~2


観測領域全体の平均と
比べて
Bias parameter:
b~6 (for ΛCDM)
Halo overdensity of protoclusters:δhalo
Ntotal=37
観測値
δ~2
δhalo=0.3~10
個数
δhalo
Bias parameter of protoclusters: b
Ntotal=37
観測値
b~6
b=2~26
個数
b
観測と数値計算の比較



観測:Shimasaku et
al. (2003)
サイズ:~25Mpc
LAEs overdensity:
δLAE~2


観測領域全体の平均と
比べて
Bias parameter:
b~6 (for ΛCDM)




我々の数値計算
サイズ:20~40Mpc
Halo overdensity:
δhalo=0.3~10
バイアスパラメータ:
b=2~26
まとめ
原始銀河団の特徴を調べるために宇宙論
的数値シミュレーションを行った
 z=0で銀河団となっている領域がz=5で
どのような特徴を持つか調べた

原始銀河団の空間サイズ: 20~40Mpc
 銀河ハロー (M>1012Mo)のoverdensity:
0.3~10
 バイアスパラメータ: 2~25

まとめ(2)
z=5での LAEs が1012Moの銀河ダーク
ハローに対応するなら、Shimasaku et al.
が観測した領域はΛCDM宇宙における原
始銀河団に対応
 LAEs が 1012Mo程度のダークハローに対
応することを示唆
