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家庭医と家族志向のケア
奈義ファミリークリニック
松下 明
家庭医を特徴付ける3本の柱
1)患者中心の医療
2)家族志向のケア←
3)地域包括医療
家庭医の特徴とは?
生物・心理・社会モデル G.Engel
地球⇔国⇔地域⇔家族⇔個人⇔臓器⇔細胞⇔原子
( 経 験 ・ 行 動
専門医の対象→→→
←←←家庭医の対象
家族志向のケアって何ですか?
1)Family-Oriented Careのこと
2)家庭医が「家庭」医である理由
3)もっとも身近な社会単位を相手に
4)個人だけの診療から家族への診療へ
5)生物・心理・社会モデルの展開
頻繁に受診する田中さん一家
1)2週間前嫁の正子さん(41)
糖尿病定期受診でHbA1c8台へ悪化
2)1週間前義母の良子さん(80)腰痛悪化
3)3日前に子供の萌さん(15)喘息悪化
4)そして本日夫の清二さん(50)不眠
いったい田中さん一家に何が起きているのか?
→解き明かすカギが家族志向のケアにある
家族志向のケア(家族図)

田中さん一家の家族図
57
脳梗塞
68
46
交通事故
香川県
50
100
脳梗塞
痴呆症
15 自宅から1時間離れた
80
変形性腰椎
症・高血圧
高校へ進学
41
糖尿病
気管支喘息
家族志向のケアの歴史(1)
1)1969年米国で家庭医が専門医となる
2)その後どの程度「家族」に意識をはらっ
て診療すべきかは議論され続けた
3)1980年に家庭医教師の学会(STFM)
で「家族と関わる」分科学会が開催
家族志向のケアの歴史(2)
3)1990年にニューヨーク州ロチェスター
大学のグループ (家庭医・家族療法家)
が、Family-Oriented Primary Care出版
4)家族療法で用いられる、家族を理解す
る手法(家族システム理論)をいかに
日常診療に生かすかを示した。
5)米国・カナダの家庭医療学レジデント
教育において、必ず家族志向のケア
関する項目が含まれている。
家族志向のプライマリ・ケア翻訳
平成18年6月出版!
→
家族志向のケア 教育モジュール
1)家族図→患者背景の理解
2)家族ライフサイクル→想像力向上
3)家族システム理論の基本・応用
4)家族志向のケアの4原則の理解
5)家族面談のレベル分類と面談技法
家族志向のケア(家族図)

田中さん一家の家族図
57
脳梗塞
68
46
交通事故
香川県
50
100
脳梗塞
認知症
15 自宅から1時間離れた
80
変形性腰椎
症・高血圧
高校へ進学
41
糖尿病
気管支喘息
家族ライフサイクルとは
巣立ち期(子世代)
発達課題
・家族から自分自身を独立
させる
・職業において自己を確立
させる
家族ライフサイクルとは
結婚期
発達課題
・お互いに対して責任を
持つような関係を築く
・新たな配偶者が加わる
ため、家庭内の関係を
再構築する
家族ライフサイクルとは
小さな子供のいる時期
発達課題
・家族内に子供のための空間
を作る
・子育てや経済的課題・家事
の分担などに取り組む
家族ライフサイクルとは
思春期の子供が
いる時期
発達課題
・親子関係を思春期の
子供が出たり入ったり
しやすいものにする
・中年夫婦の関係や
仕事の問題に目を向
ける
家族ライフサイクルとは
巣立ち期
(親世代)
発達課題
・夫婦関係を子供の
いない関係に捉え直す
・両親や祖父母の障害
や死と向き合う
家族ライフサイクルとは
老年期
発達課題
・身体機能が低下する中で、
自らと夫婦の機能を維持す
る。
・高齢者の知恵と経験を生か
す余地をシステムに残す。
家族システム理論(基本)の理解(1)
家族システム理論(基本)の理解(2)
家族システム理論(基本)の理解(3)
家族の木(日常の診療をこんな風にイメージ)
患者の背景にいる家族の
存在を模式図化したもの
家族志向のケア4つの原則①
1)生物・心理・社会的なプロセスの中で
患者を理解する:
地球⇔国⇔地域⇔家族⇔個人⇔臓器⇔細胞⇔原子
(経験・行動)
専門医の対象→→→
←←←家庭医の対象
家族志向のケア4つの原則②
2)家族という枠組みの中で患者の医療に
焦点を当てる:
(1)家族は患者の健康に関する考えや行動を決定付ける:
(例)ヘルスエキスパートの存在
(2)家族ライフサイクルの移行期にはストレスが身体症状
としてあらわれる: (例)子供が巣立つ時期の母親→更年期障害
(3)身体症状は家族の機能を保つために存在することがあ
る: (例)子供が喘息発作→夫婦喧嘩を止めさせる
(4)家族は患者にとって貴重な「資源」であり、治療において
強力なサポートとなりうる: (例)糖尿病の食事や内服管理で
家族の協力は絶大な効果を示す。
家族志向のケア4つの原則③④
3)患者、家族、医師が治療のパートナーを築く
4)医師も治療システムの一部に組み込まれている:
客観的な立場と思っていても実際には患者・家族の関係
に巻き込まれているものである
二者関係は幻想であり
本当は三角関係となる。
家族志向のケアの5段階
レベル1:医師中心の生物医学的モデル
レベル2:相互に情報の交換を行う
→解釈モデルの引き出しが出来る 初期研修医
レベル3:感情面への対応を行う
→共感的に対応できる
後期研修医
レベル4:基本的なカウンセリングを行う
→家族カンファレンスを行い、家族内パターンに
変化をもたらす
レベル5:精神・家族療法
後期研修医→家庭医
家族カンファレンスをいつ行う?
A群 常に行なうべき
1)入院時
いかないとき
2)ターミナルケア
3)重篤な病気の診断時
4)妊婦健診・乳幼児健診
B群 考慮すべき
1)慢性疾患の治療がうまく
2)医療機関の受診が多いとき
3)身体化症状
4)うつ状態・不安状態・アルコー
ル問題など (心理社会的問題)
家族カンファレンスの進め方①
1)カンファレンス前の準備
(1) どのように家族メンバーに集まってもらうか、
患者本人と相談。
(2) 家族図・家族ライフサイクルを用いて仮説を
立てる
→田中さん一家なら超高齢者の介護問題と
思春期の子供を抱えた家族のストレスで
家族内バランスがうまくいっていない?
家族志向のケア(家族図)

田中さん一家の家族図
57
脳梗塞
68
46
交通事故
香川県
50
100
脳梗塞
痴呆症
15 自宅から1時間離れた
80
変形性腰椎
症・高血圧
高校へ進学
41
糖尿病
気管支喘息
家族カンファレンスの進め方②
2)家族カンファレンスの実際
(1)ジョイニング(あいさつと波長合わせの時間)
(2)ゴールの設定(医療者・患者・家族)
(3)問題点についての話し合い(それぞれの意見を
引き出しつつ交通整理)→悪者を作らないコツは?
(4)プラン作り(患者・家族は何ができる?医療者は?
社会資源は?)
(5)質問を促す
家族カンファレンスの進め方③
3)カンファレンス後の作業
(1) 面談票の記入(出席者・問題点・プラン)
(2) 家族図の見直しと変更点・追加点の記入
問題点:
(1)とめさん(100才)の介護と萌さん(15才)の進学で
正子さん(41才)・良子さん(80才)に余裕がない
(2)清司さん(51才)も仕事が忙しくどう介護を手伝ってよ
いか分からない
プラン:
(1)清司さんは休日だけでも介護を手伝う
(2)ケアマネージャーと主治医で連絡を取り、とめさんの
デイサービス・ショートステイの利用をすすめる
家族カンファレンスのロールプレイ
1)実際の症例を脚色したシナリオを作成
2)医師役、患者役、家族役の設定をする
3)評価者は以下の点について主に評価
(1) 面談開始前の家族図作成とライフサイクルの理解
(2) 面談開始直後のジョイニング(波長あわせと挨拶)
(3) それぞれの意見を引き出しつつ交通整理
(4) 押し付けでなく家族や本人の中からプラン引き出す
(5) 適正な医療資源についてのアドバイス
本日の症例を紹介しましょう
平井りえ子さん44歳は、脳梗塞の御主人とお好み焼き
屋さんを営んでいました。娘さんは昨年大学へ。
肝硬変
脳梗塞
脳出血
50
44
東京
高血圧
19
タバコ
大学1年
お好み焼き
30本
屋
奈義町
家族指向のケアの実際
(奈義ファミリークリニック)
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全患者に家族図を!
家族面談 歓迎
往診・訪問診療
3-4世代同居家族 (診
療単位としての家族)
個々の患者さんの外
来における家族志向
のアプローチ
電子カルテを平成16年より導入
電子カルテ:家族図→家族カルテ管理
家族志向のケア:家族の木