脳卒中急性期装具療法の検討

Download Report

Transcript 脳卒中急性期装具療法の検討

脳卒中急性期装具療法の検討
葛西循環器脳神経外科病院
リハビリテーション室1)
同脳神経外科2)
早川義肢製作所3)
三岡相至1) 桐田泰蔵1) 阿波根朝光2)
松岡利光3) 吉田康成2)
はじめに
脳卒中急性期の装具の処方は早いほうがよいとされ
ているが、その時期及び選択については各施設により
ばらつきがあり、装具が作製に要する期間も一般には
1週から3週間を要するとされている。当院では脳卒中
発症後平均約3.13日(脳出血及び脳梗塞患者でくも膜
下出血は除く)より理学療法を開始し、急性期から積
極的に装具療法を行い、早期の歩行獲得・早期退院
を容易にしている。当院における装具療法の現状と作
製時期・期間について若干の考察を加えて報告する。
対象
平成14年1月1日~12月31日までのくも膜下出血を除
く脳出血・脳梗塞を発症した患者で、装具作製した47人
年齢 平均62.94歳(35歳~94歳)
性別 男性23人
脳出血 18人
女性24人
脳梗塞 29人
麻痺側 右21人 左26人
装具の内訳
 金属支柱付長下肢装
具
:ハイブリッド
タイプ 14件
靴べら式短下肢装具(以下SHBとする)18件
プラスチック製短下肢装具 33件
Semi SHB 6件
オクラホマ継ぎ手付短下肢装具 3件
タマラック継ぎ手付短下肢装具(補助なし) 2件
プラスチック製短下肢装具OMC型 4件
理学療法開始時期及び期間等
理学療法開始 平均第3.13病日(第0病日~第27病日)
退院までの期間 平均51.06日(22日~140日)
転帰 退院23人 転院24人
転院先 リハビリテーション病院
療養型病院
装具採型から完成の期間 平均4.64日(4日~12日)
装具作製から転・退院までの流れ
発症から採型までの期間:平均21.49日(4日~51日)
採型から完成までの期間:平均4.64日(1日~12日)
発症から完成までの期間:平均26.13日(7日から62日)
完成から転院・退院までの期間:平均24.49日(最大93日)
急性期装具療法の当院の
基本的日程
発症
第14病日~21病日装具採型
第14病日~28病日装具完成
適宜変更
基本的日程に沿って装具療法
を実施できた症例
(14病日から28病日までに装具を完成した症例)
47例中31例
内2例で装具の再調整
装具再調整の2例
58歳 男性 脳出血 左片麻痺
理学療法開始第1病日
装具採型第14病日 装具完成第18病日
発症後36日目にハイブリッドタイプ長下肢装具からSHBへ調整
発症後37日目に転院
77歳 女性 脳梗塞 左片麻痺
理学療法開始第0病日
装具採型第14病日
装具完成第14病日
発症後25日目にOMC型から装具なしへ変更
発症後26日目に退院
装具の特徴
大腿カフ:大腿コルセット式(モールドタイプ)
ネオプレーン(エアタッチ)使用
膝継手:3way 継手使用
SHB:コルゲーション使用
装具の厚さ:4mm以上で作製
長下肢装具の紹介
患者への使用
装具作製の工程

1日目 採型・陰性モデル作製
陽性モデル作製

2日目 モデル修正・フォーミング

3日目 トリミング(・支柱取り付け)
ベルクロバンド取り付け

4日目 完成
考察①
脳卒中急性期の装具療法の目的は、早期からの歩行訓練によ
る歩行の獲得であるが、全身状態低下の予防、患者・家族の意
欲の向上などにもつながる。発症後2週間以内は再発・増悪の危
険性が高いため作製には注意を要するが、2週目以降に麻痺が
存続すると考えられる症例で、装具が必要と考えられる場合には
可及的速やかに装具を作成する必要があると考えられる。麻痺
があるにも拘らず装具を使用しない状態での歩行は、転倒等の
恐れも常につきまとい危険である。また本人の下肢にその時点
で適合した装具を早期に使用し、状態に合わせて段階的に調整
を加えることで、患者の回復に合わせた装具の使用が可能とな
り、作り直しによる患者負担も発生しないと考えられる。
考察②
今回基本的日程に沿って装具作製できた症例31件中、
変更を要した症例は2例で、発症後37日目のハイブリッドタ
イプ長下肢装具からSHBへの変更例と、発症後26日目の
OMC型から装具なしへの変更例であった。このことより発
症後2週目を目安に装具療法の是非を検討し、その作製
を遅滞なく開始することは十分可能であり、妥当性がある
のではないかと考える。
結語
脳卒中発症後2週を経過し、装具の使用の必要があると考え
られる症例においては早急に装具を作製するほうがよいと考
えられる。現時点では我々は発症約2週目の装具採型、約3週
目の完成が妥当であると考え目標としている。しかし装具再調
整の可能性も考慮しハイブリッドタイプ長下肢装具を用いてい
る。
現在の医療法において在院日数の短縮は急務であるが、安
全な自宅への復帰と並立するためにも早期装具療法が重要
であると考える。