知っておきたいがんの話

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知っておきたいがんの話
大分県福祉保健部
健康対策課 藤内 修二
大分県における癌の頻度(男性) 平成20年
0
100
200
300
400
肺
81
結腸
213
87
242
111
105
胆嚢・胆管
罹患数
は推計
316
罹患数
150
150
膵臓
前立腺
615
273
112
肝臓
白血病
572
275
直腸
700
111
胃
悪性リンパ腫
600
497
食道
膀胱
500
死亡数
125
44
62
149
89
72
127
509
死亡数は人口動態統計に基づく実数
罹患数は地域がん登録(7県)のIM比から推計
大分県における癌の頻度(女性) 平成20年
0
50
100
150
200
肺
食道
207
450
500
286
罹患数
は推計
111
49
肝臓
159
190
117
103
129
129
胆嚢・胆管
膵臓
23
罹患数
死亡数
42
53
65
51
乳房
112
446
115
子宮
卵巣
400
357
137
直腸
白血病
350
259
168
結腸
悪性リンパ腫
300
14
9
胃
膀胱
250
39
63
67
267
死亡数は人口動態統計に基づく実数
罹患数は地域がん登録(7県)のIM比から推計
大分県における年齢別がん死亡者数(平成20年)
450
400
350
男性
300
女性
250
200
150
100
50
0
生涯にがんにかかる割合と5年生存率
全がん
肺
食道
胃
大腸
肝臓
胆のう・胆管
膵臓
乳房
子宮
男性
53%
9%
2%
11%
8%
4%
2%
2%
女性
41%
4%
0.4%
6%
6%
2%
2%
2%
6%
3%
5年生存率
54%
23%
27%
62%
71%
20%
20%
7%
85%
74%
(国立がん研究センターがん対策情報センターの資料より作成)
肺がん
罹患率、死亡率は男性のほうが女性より高く、女性の
3~4倍にのぼります。がんで亡くなった人数を部位
別に多い順に並べると、肺がんは男性で第1位、女性
で第2位です。肺がんの原因は「たばこ」が一番大き
なものですが,肺がんの種類によっては,喫煙に関わ
りなく発生します。
生涯罹患率
男性 9%
女性 4%
5年生存率
23%
男
女
食道がん
罹患率、死亡率は、ともに40歳代後半から増加しは
じめ、特に男性は女性に比べて急激に増加します。
罹患率、死亡率ともに男性のほうが高く、女性の5倍
以上です。熱い物を食べたり,アルコール度数の高
いアルコール類の飲酒が発生リスクを増やします。
生涯罹患率
男性 2%
女性 0.4%
5年生存率
27%
男
女
胃がん
罹患率と死亡率は男性のほうが女性より高く、年齢
別にみると40歳未満では男女差は小さく、40歳以
降にその差が開きます。日本の胃がん死亡率の年
次推移は、1960年代から男女とも大幅な減少傾向
にあり,冷蔵庫の普及により,塩漬けの魚などを食
べなくなったことが要因と考えられています。
生涯罹患率
男性 11%
女性 6%
5年生存率
62%
男
女
大腸がん
罹患率は、50歳代くらいから増加しはじめ、高齢に
なるほど高くなります。大腸がんの罹患率、死亡率
はともに男性のほうが女性の約2倍と高く なってい
ます。食事の欧米化’(食物繊維の不足,脂肪の多
食)に伴い,男女とも1990年代前半までは増加し、
その後は横ばい傾向です。
生涯罹患率
男性 8%
女性 6%
5年生存率
71%
男
女
肝臓がん
男性では40歳代後半から増加しはじめ、70歳
代に横ばいとなり、女性では50歳代後半から
増加しはじめます。C型肝炎やB型肝炎ウイル
スの感染が原因で,罹患率、死亡率は男性の
方が高く、女性の約2倍となっています。喫煙
や飲酒が拍車をかけていると思われます。
生涯罹患率
男性 4%
女性 2%
5年生存率
20%
男
女
胆嚢・胆道がん
罹患率、死亡率は、ともに50歳代から増加します。
罹患率は、男女とも1975年から1980年代後半ま
で増加傾向でしたが、最近は男性は横ばい、女性
は減少傾向になっています。胆嚢がんの死亡率は
女性の方が高く、男性の約1.2倍、胆道がんでは
男性の方が高く、女性の約1.7倍です。
生涯罹患率
男性 1.6%
女性 1.9%
5年生存率
20%
男
女
膵臓がん
罹患率は、60歳くらいから増加して、高齢になる
ほど高くなります。死亡率は、男女とも戦後から
1980年代後半まで増加し、1990年代以降は横
ばいまたは漸増傾向にあります。死亡率は、男
性のほうが高く、女性の1.7倍です。
飲酒や脂肪の多食により発生しやすくなります。
生涯罹患率
男性 2%
女性 2%
5年生存率
7%
男
女
乳がん
30歳代から増加しはじめ、40歳代後半から50歳
代前半にピークを迎え、その後は次第に減少しま
す。罹患率、死亡率ともに一貫して増加しており、
出生年代別では、最近生まれた人ほど罹患率、死
亡率が高い傾向があります。脂肪の多食,出産数
が少ないことが発生の要因と言われています。
生涯罹患率
女性 6%
5年生存率
85%
子宮頸がん
子宮頸がんでは20歳代後半から30歳代後
半まで増加した後横ばいになり、70歳代後
半から再び増加します。近年、罹患率、死亡
率とも若年層で増えています。
ヒトパピローマウイルスの感染が原因である
ことがわかり,思春期のワクチン接種により
予防が期待されるようになりました。
生涯罹患率
女性 1.2%
5年生存率
74%
子宮体がん
40歳代後半から増加し、50歳代から60歳
代にピークを迎え、その後減少します。子
宮体がんは年齢に関係なく増加傾向にあり
ます。 脂肪の多食が原因の一つと考えら
れています。
生涯罹患率
女性 0.9%
5年生存率
74%
卵巣がん
罹患率は40歳代から増加し、50歳代前半で
ピークを迎えてほぼ横ばいになります。
罹患率は、1975年以降緩やかな増加傾向
にあります。
生涯罹患率
女性 1.1%
5年生存率
50%
前立腺がん
罹患率は、60歳代後半から増加します。罹患率
は、1975年以降増加していますが、その理由の
1つは、PSAによる診断方法の普及により,早期
の前立腺がんが見つかるようになったためです。
死亡率は、1950年代後半から1990年代後半ま
で増加し、その後横ばい状態です。
生涯罹患率
男性 6%
5年生存率
68%
膀胱がん
罹患率は、男女とも60歳代から増加し、40歳未満
の若年では低い。また、男性の方が女性より罹患
率が高く、女性の約4倍です。
膀胱がん発生の要因として喫煙が挙げられ,男性
の喫煙者は非喫煙者の5倍なりやすい。
生涯罹患率
男性 2%
女性 0.5%
5年生存率
78%
男
女
悪性リンパ腫
罹患率は、60歳代から増加し、男性の増加が顕著で、女性の約1.5倍です。
悪性リンパ腫のうち,ホジキンリンパ腫の死亡率は70歳代から増加し、男
性での増加が顕著です。死亡率は男性のほうが女性より高いです。
非ホジキンリンパ腫の死亡数は、ホジキンリンパ腫の数十倍にのぼります。
年齢別にみた死亡率は60歳代後半から増加しはじめ、高齢になるほど高く
なります。死亡率は男性のほうが高く、女性の約2倍です。
生涯罹患率
男性 1.4%
女性 1.2%
5年生存率
48%
男
女
白血病
罹患率は男性のほうが高く、女性の約1.6倍です。白血病全体の罹患率は
近年横ばい、死亡率は男女ともに1980年代まで増加傾向にありましたが、
近年は,骨髄移植など治療成績の改善により,減少傾向にあります。
白血病は、14歳以下の小児の罹患が多いことが特徴です。
白血病の中で、骨髄性白血病は死亡率が高く、リンパ性白血病と比較する
と、男性で約2.5倍、女性で約1.7倍です。
生涯罹患率
男性 0.8%
女性 0.6%
5年生存率
32%
男
女
PET-CT検診について
• PETとは、Positron Emission Tomographyの略で、
ポジトロンCTとも呼ばれます。がん細胞は正常細胞
よりも活動性が高いため、栄養であるブドウ糖を多く
取り込む性質を利用して,がん細胞を描出します。
• PETは、がんの性質(悪性度)診断や転移・再発巣
の診断、治療効果判定に有用性が高い検査です。
• しかし,全てのがんに有効という訳ではなく,胃がん、
腎がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、肝細胞
がん、胆道がん、白血病等は苦手です。
• 1回の検査に10万円近くかかります。がんの診断が
ついている場合には,医療保険が使えるので,3割
負担ですみますが,健診の場合には全額負担です。
がんの治療の原則
• がんの治療は手術療法,放射線療法,化学療法
(抗がん剤)の治療を組み合わせます。
• 手術でがんを全て切除できた場合には,放射線療
法や化学療法を加えない場合もありますが,目に見
えないわずかながん細胞から再発することを防ぐた
めに,術後に放射線療法や化学療法を加えること
が多い。
• 手術の前に放射線療法や化学療法により,がんを
少しでも小さくしてから手術を行うこともあります。
• がんの診断がついた早期の段階から「緩和ケア」を
始めることが大切です。心の痛みも含め,早期から
疼痛のコントロールをすることが重要です。
化学療法が有効ながん
• 抗がん剤で完治する可能性のある疾患は、急性白
血病、悪性リンパ腫、精巣(睾丸)腫瘍、絨毛がん。
• 病気の進行を遅らせることができるがんとしては、
乳がん、卵巣がん、骨髄腫、小細胞肺がん、慢性骨
髄性白血病、低悪性度リンパ腫等があります。
• 投与したうちの何%かで効果があり,症状が和らぐ
というのが、前立腺がん、甲状腺がん、骨肉腫、頭
頸部がん、子宮がん、肺がん、大腸がん、胃がん、
胆道がん等です。
• 小児がん(白血病や悪性リンパ腫,神経芽細胞種,
腎芽腫など)は化学療法や放射線療法が有効なも
のが多く,5年生存率は73%と高くなっています。
ホルモン療法について
• がん細胞の発育にホルモンを必要とします。そのた
め、特定のホルモンを分泌している部分を手術で取
り除いたり、経口や注射によってそのホルモンと反
対の作用をするホルモンを投与して、がん細胞の発
育を阻止する治療法が行われます。
• 治療の対象となる主ながんは、乳がん、子宮体がん,
前立腺がん、甲状腺がん、腎がん等です。
• 最近では,ホルモン療法が効くタイプかどうかをが
ん細胞を調べて,治療方法を選択できるようになり
ました。
重粒子線治療について
• 重粒子線治療に用いられる陽子や炭素原子は通常
の放射線治療に用いられるX線やガンマー線に比
べて,がん病巣にその効果を集中させることが容易
で、がん病巣周囲の組織に強い副作用を引き起こ
すことなく、十分な線量を照射することができます。
• がんのまわりに放射線に弱い組織がある場合の治
療に、特に有効で、眼球内の悪性黒色腫、中枢神
経系の近くにできた腫瘍、一部の頭頸部がん、Ⅰ期
非小細胞肺がん、肝細胞がん、前立腺がん等に対
する有効性が明らかになっています。
• 医療保険が適用されないため,一連の治療に300万
円かかることが難点です。
新たな抗がん剤治療について
• 従来の抗がん剤は、がん細胞を殺す能力に重点が
置かれてきたため、がん細胞と正常細胞を区別する
力が乏しく、重大な副作用(白血球が減って,感染
に弱くなる,脱毛,消化器症状)が生じていました。
• 近年の分子生物学の急速な進歩により、がん細胞
だけが持つ特徴を分子レベルでとらえられるように
なりました。それを標的とした薬は分子標的治療薬
と呼ばれ、開発が進んでいます。白血病、乳がん、
肺がん等で、有効な治療手段となりつつあります。
• これらの分子標的治療薬は医療保険が使えますが,
それでも,グリベックは1日分が12,000円もするなど,
医療費の負担が問題となって来ています。
各種がんの危険要因と防御要因
部位別がん
食道がん
胃がん
危険要因
喫煙・飲酒
防御要因
緑黄色野菜
高塩分摂取,ピロリ菌感染 緑黄色野菜、果物
結腸がん
高脂肪摂取
運動、食餌性繊維
膵臓がん
喫煙、多食
緑黄色野菜
胆嚢がん
高脂肪摂取、肥満
胆石予防
肝臓がん
喫煙、飲酒、ウイルス感染 ウイルス感染予防
肺がん
喫煙習慣
緑黄色野菜
乳がん
高脂肪摂取、肥満
運動
子宮体がん
高脂肪摂取、肥満
運動
子宮頸がん
喫煙、不特定性交
運動、緑黄色野菜
前立腺がん
高脂肪摂取
緑黄色野菜
がんにならないための12か条
1.バランスのとれた栄養をとる
2.毎日、変化のある食生活を
3.食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに
4.お酒はほどほどに
5.たばこは吸わないように
6.食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多く
7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさまして
8.焦げた部分はさける
9.かびの生えたものに注意
10.日光に当たりすぎない
11.適度にスポーツをする
12.体を清潔に
喫煙とがんの関係
• 喫煙は、さまざまながんの原因の中で、予防可能な
最大の原因です。日本の研究では、がんの死亡の
うち、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因だと考
えられています。特に肺がんは喫煙との関連が強く、
肺がんの死亡のうち、男性で70%、女性で20%は,
喫煙が原因だと考えられています。
• 喫煙で発ガンのリスクが高まるのは,肺がん,口腔
がん,咽頭がん,喉頭がん,食道がん,胃がん,肝
臓がん,すい臓がん,子宮頸がん,膀胱がんなど。
• 胃がん、肝臓がん、子宮頸がんは、それぞれピロリ
菌、肝炎ウイルス、パピローマウイルスという微生
物感染との関連がありますが、それらの感染の影
響を除いても喫煙と因果関係があると判定された。
禁煙外来の実際
• 通常,5回の通院で禁煙をめざします。
• 初回の診察で,胸部レントゲン,心電図等の検査
を行い,禁煙治療を行う上で問題となる狭心症等
の合併症がないかを調べます。
• 問題がなければ,ニコチンパッチが処方されます。
ニコチンパッチはニコチンの「禁断症状」を軽くして
くれます。ニコチン含有量30mgのパッチを4週間,
20mgを2週間,10mgを2週間使用。
• その後,経過観察を4週間行い,3か月で終了。
• 最近は飲み薬も開発され更に効果的に禁煙できる
禁煙成功率が8割近いという医療機関もある
禁煙外来の実際
• 費用は,医療保険が適用されるので,3割負担の
人であれば,5回で,1万5000円程度の負担です
(初回の検査費用を含む)。
3か月間のたばこ代の半分以下です
• 保険が適用される条件
ニコチン依存症であること
1日の喫煙本数×喫煙年数>200
直ちに禁煙することを希望(文書にて,同意)
• 薬局でも禁煙パッチが購入できるようになった
薬剤師による禁煙指導が受けられる
大分県では禁煙支援アドバイザーを養成!
分煙の推進
• 平成15年に施行された「健康増進法」により,不特
定多数の人が利用する施設の管理者は受動喫煙
を防止することが努力義務とされた
• 官公庁でも確実な分煙ができていないが,飲食店
の分煙はまだまだ・・
• 分煙環境を推進する一番の方法は「たばこの煙で
不愉快な思いをした」ことを苦情として挙げること
• 飲食店においては「禁煙席でお願いします」とはっき
りいうこと。もし,禁煙席がなかったら,さっさと帰る
こと。こうしたお客が増えれば,店は必ず,分煙を検
討することになる。