気球搭載用のMAPMT(H8500)ヘッドアンプの基礎性能

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Transcript 気球搭載用のMAPMT(H8500)ヘッドアンプの基礎性能

気球搭載用のMAPMT(H8500)
ヘッドアンプの基礎性能
山形大学
郡司修一、岸本祐二、石垣保博、門叶冬樹、櫻井敬久
理化学研究所 三原建弘
大阪大学 林田清
ISAS/JAXA
斎藤芳隆、山上隆正
KEK 岸本俊二
クリアパルス株式会社
久保信
目次
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我々の実験の紹介
検出器の概要
開発を行った回路の説明
回路の基礎性能
我々が欲している検出器について
まとめ
1.はじめに
今までX線/硬X線天文学では、3つの情報を通して
天体の性質を調べてきた。
エネルギー、時間、イメージ + ?
偏光情報も物理的に非常に重要だが、優れた検出器がないため、
観測が非常に遅れている。X線領域では25年前に一度、硬X線
領域では今まで有為な観測が無い。
硬X線領域ではシンクロトロン放射等の非熱的な輻射が支配的で
フォトンの偏光度が高いと考えられる。
硬X線領域であれば、気球による観測が安価に実現できる。
硬X線の偏光観測で世界に先鞭を付けるため、2006年春に
本格的な気球実験を開始。それがPHENEXプロジェクト。
2.検出器の概要
H8500
64チャンネルMAPMTの
上に6x6x40mm3のプラス
チックシンチレーター36本と
28本のCsI(Tl)を設置。
コンプトン散乱の原理を用いて
偏光情報を取得。
セグメント化されているため、
散乱方向の決定精度が高い。
ユニットカウンター
36本のプラスチックシンチレーターと
それを囲む28本のCsI(Tl)
浜松フォトニクス社製H8500
64channel MAPMT
KEK BL14Aでの偏光実験(80keV照射)
入射ビームは85%程度偏光
入射硬X線が100%偏光の場合
Event counts for each CsI channel
7ch
回転
18ch
Nmax
CsI channel No.
Nmin
検出効率:21%
Nmax − Nmin
Nmax + Nmin 偏光解析能力:54%
気球搭載用検出器
一つのユニットカウンターを使って
過去に2回のテスト実験。
安定動作を確認
2006年度は、4台のユニットカウンターを
搭載。かに星雲の偏光検出がかろうじて
可能。2007年度は、
お金がつけば、9ユニットに拡張。
3.回路に要求される性能。
• コンパクトであること
気球実験では重量制限があり、小型のものが好ましい。
• 消費電力が小さいこと
上空にはコンセントが無い!電池を使う。
• 数百Hzのレートでデータが取得できればOK
天体からのフラックスはたかがしれている。
• ノイズが小さいこと
プラスチックシンチレーターでのエネルギーデポジットは数keV。
One photonの読み出しが必要
• トリガーがある程度柔軟であること
1本のプラスチックと1本のCsIがコインシデンスしたイベントが
欲しい。最低限「CsIがヒットすればトリガー」でよい。
4.今回開発されたヘッドアンプ
クリアパルス株式会社
久保さん
Viking Chip
による回路開発
80068の開発
JAXA 高橋先生、
東大 牧島先生、
神奈川大 田村先生
山形大学、理化学研究所、
大阪大学、
H8500用に改良 京都大学、金沢大学
重量:210g
体積5.2x5.2x11.5cm3
H8500にすっぽり収まる
消費電力:1.3W程度
64chの波高値を164μsecでデジタル処理
1)VA32_hdr14、TA32CG2を
2つつづ使用。
2)VAにはマルチプレクサが内蔵。
64チャンネル分の波高値を
サンプルホールドして、順次
AD変換する。
3)ディスクリレベルは、個々の
チャンネル毎に設定が一応
可能。
4)どのチャンネルをトリガーに
寄与させるかは、外部から
設定可能
5)内部トリガー以外に外部
からトリガーをかけること
も可能。
6)内部にカウンタを持っており、
イベントの時刻情報も
出力できる(1月に実装)。
7)ヒットパターンを読むことは現在
できないが、原理的には可能。
8)高速なADCを2つ使えば、
1イベント20μsecで読み出せる。
2006年度実験での我々の使用方法
4台のユニットカウンター
と80057BというVME
ボード1枚でDAQを行う。
Trigラインは、オープン
コレクタ使用のためOR可能
QuickTimeý Dz
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ÅB
1)いずれかのヘッドアンプがトリガーを
出すと、DPがそれを認識する。
2)DPは、4台のヘッドアンプにデータを
送るように要求。
3)各ヘッドアンプは、DPにデータを流す。
Headamp
Trig out
DP
Trig out
2μsec
サンプルホールドタイミング
順次AD変換し、
データ転送
1)現在、いずれかのヘッドアンプがトリガー信号を出すと
4台分のデータを取得。内部のFPGAのロジックを書き換えれば
トリガーを出したヘッドアンプの信号だけを取得できる。
2)どのヘッドアンプがトリガーをかけたかは、ヘッドアンプから
送られてくるデータの中に書き込まれている(1月実装予定)。
3)80057Bには4台分のFIFOが存在し、とりあえずデータは
FIFOに書かれ、その後CPUで取得される。
4)80057Bはクロックを持っており、自分がBUSYで信号を
取得できなかった時間を数えている。デッドタイム情報を
逐次取得できる。
5.基礎性能
プラスチックシンチで低エネルギーデポジットを捕らえる事が重要
60keVの硬X線がプラスチックでコンプトン散乱する場合、
エネルギーは6keV程度。さらにプラスチックシンチは光量が少ない。
5.9keV
プラスチック
シンチレーター
One photonのピーク
5.9keVの信号
MAPMT
81%
80068
VMEへ
Plasticに5.9keV照射
81%程度の確率で、5.9keVを捕らえるに成功している。
デッドタイムの測定結果
pulser
ランダムパルス
80068
USBメモリー
DP
CPU
NetNova
VME
現在1kHzでデッドタイムが17%程度。この程度で我々の用途では
問題ない。しかしより速いADCを2つ使えば、数kHzでも、
デッドタイムは数%になるであろう。
6.あんなこといいな!できたらいいな!
1)量子効率の向上
現在H8500の量子効率は20%程度。50%程度まで向上すると
エネルギースレッシュホールドがかなり下がる。
2)常温でも低ノイズ
プラスチックからの低エネルギーデポジットの信号が
ノイズに埋もれては困るので、低ノイズが必要。
3)クロストーク問題の解決
CsIは光量が大きい。一方プラスチックは光量が小さい。CsIの
チャンネルからプラスチックのチャンネルへの光のクロス
トークはシリアスな問題。現在FOPで対処。将来光学的なクロス
トークがほとんどないMAPMTがあれば助かる。
何も対策を行わなかった場合の光の漏れ込み
60keV
赤線 : クロストーク
CsI(Tl)
青線 : Plastic+5.9keV
One photon
との谷間(500ch)
plastic
MAPMTガラス面
光の漏れ込みにより、プラスチックシンチからの光が埋もれる
Tapered CsI(Tl)とFOPを導入
2mm厚のFOPでCsI(Tl)の
集光量は75%となるが
10分の1に漏れ込みが減る。
FOP
××
MAPMTガラス面
吸収体
光ファイバ
FOP断面図
MAPMTのガラス面に仕切を入れる試み(浜松フォトニクスに依頼)
スライス
黒色ガラスによる仕切。 ガラスが溶けず隙間有り
拡大
黒ガラス同士の
溶着に失敗
現在の所、成功していない。
資金も時間もないので諦めたというのが現状である。
7.まとめ
1)我々は新しい天文学を立ち上げるため、PHENEXという硬X線
偏光度検出器を開発し、2006年に気球実験を計画している。
それに合わせて、H8500用の読み出し回路を開発した。
2)体積5.2x5.2x11.5cm3、重量:210g,消費電力1.3Wという
コンパクトで低消費電力の回路開発に成功した。
3)現在64chの波高値を164μsecで読み出せる。高速ADCを2つ
使用すれば、20μsecまで短縮できる。
4) 個々のチャンネルのスレッシュホールドやトリガーマスクは
VMEのボードを通して、Flexibleに変えることができる。
5)プラスチックシンチでの5.9keVのエネルギーデポジットを
81%の確率で読み出すことができる。One photonも見える。
6)気球実験で要求される1kHz程度のレートに対して、デッド
タイムが17%程度であり、我々の用途では支障は特にない。
7)H8500の量子効率が向上し、光のクロストークが無くなれば、
さらに感度の高い検出器が実現できる。