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素粒子実験領域,実験核物理領域合同シンポジウム LHC First Collisionに向けた実験準備 イントロダクション 2008年3月23日 近藤敬比古(KEK) 1 LHC計画の目的 ・ 標準モデルによれば、粒子の質量の起源で あるヒッグス場が存在し、ヒッグス粒子が最 低1種類存在するはずであるが、まだ発見さ れていない。 ・ ヒッグス粒子は、LHCエネルギー領域に存 在すると予言され、LHC運転開始後2,3年 で殆ど確実に発見される。 5s 標準ヒッグス粒子の発見可能性(約2年の運転) ・ LHCのエネルギー領域で、標準モデルを越 える超対称性粒子などの新しい粒子が発見 される可能性が高い。中性の最軽量の超対 称性粒子は暗黒物質の有力候補でもある。 1 TeV領域でSUSY粒子の存在すれば1016GeV 付近の3つの力の大統一が可能になる。 2 LHC計画 LHC加速器 ・陽子・陽子衝突エネルギー:14 TeV ・鉛イオン衝突エネルギー: 5.5 TeV/A ・周長27kmの地下トンネル内に設置される。 ・8.33テスラの超伝導双極電磁石1,232台など。 ・総重量35,000トン, LHe130トン, LN2 10,000トン。 ・総建設費(実験込み):約5,000億円。 ・建設期間:1996~2008年。 国際協力 ・CERN加盟国に日・米・露・カナダ・インドなどが協力。 ・日本は計138.5億円の加速器建設協力を行っている。 ・KEKは衝突点の超伝導4極電磁石を開発製造した。 周長27kmのLHCトンネルと4つの実験装置。 実験装置 ・アトラスとCMS(pp衝突でHiggs・SUSYなどの探索) ・アリス(ALICE,重イオン物理) ・LHCb(B物理) →→→アリス実験については志垣氏の講演 2007.4.26 : 全超伝導電磁石約1700台が設置。 2007.11.7 : 超伝導電磁石の接続が完了。 3 LHC加速器 1700台を越える超伝導電磁石は、全て地 上で冷却励磁検査され、週25台のペース で設置された。接続のため40,000ヶ所以上 の真空溶接作業が延々と続いた。 2008年3月22日のLHCの8セクターの温度。 空色が液体ヘリウム温度。赤色が常温。運転 時は全て空色になる。 4 日本によるLHC加速器建設協力 1995年6月に与謝野文部大臣(写真左)が CERN理事会に出席し、日本のLHC加速器 建設協力を非加盟国の中で最も早く発表し た。右はC. リュエリン=スミスCERN所長(当 時)。 ビーム衝突点で陽子ビームを絞りこむ超伝導 4極マグネット(計8セット)は、日本(KEK)と 米国Fermilabが独立に設計・製造した。 5 LHC加速器の現状 ・ 全周の8分の1のセクター(ダイポール約150台分)の電力試験を1-2月に 行い、5.3TeV相当の磁場まで励磁に成功した。幾つかのマグネットでクエ ンチが発生した。 ・ トレーニングクエンチによる7TeV相当磁場の到達には時間がかかる → option-1:2ヶ月待って7 TeVを目指すか? option-2:早急な5TeV程度での衝突を目指すか?←選択 ・ 6月末にLHCへのビーム入射を始め、8月末に 5TeV+5TeV=10TeV の衝 突をめざす。 ・ 2009年冬に7TeVまで上げる。14TeV衝突は2009年春に延期される。 ・ 2008年4月末にビームの最終予定を決定する。 →→→ Frank Zimmermann (CERN) の講演 6 L=1034cm-2s-1での頻度 陽子衝突頻度: 1 GHz W boson: 1 kHz Top pair : 10 Hz S/N ~10-12 14TeV陽子陽子衝突での生成断面積 b quark: ~10 MHz 500GeV SUSY: 0.5 Hz 200GeV H→4 leptons: 0.0002 Hz 粒子の質量 LHC実験の特徴(運命): ・ 発生イベント数が膨大である。 ・ バックグランドが極端に多い。 ・ 放射線レベルが非常に高い。 7 pp実験の放射線レベルの概算 dNch 6 dh 同じ放射線レベル r(cm) h (rapidity) h ln(tan ) 2 P P 衝突点 Minimum bias event から発生する 荷電粒子の rapidity分布は中心付近 でフラットな分布を示す。 衝突点を向いている検出器要素を通過する荷電粒子の数は、r(ビーム軸からの距離)のみによる。 N ppdNch N ppdNch dNch 109 2 N pp particles cm s 2 2 2 dS 2r d sin 2r dh r 10 MHz cm2 @ r 10 cm 10 14 particles/year/cm2 @ r 10 cm 8 LHC実験では放射線レベルが非常に高い !! L=1034 cm-2s-1での1年分の 放射線レベル 液体アルゴンカロリメター60kRad, 1.5x1013neq/cm2 ピクセル検出器 3.4MRad, 6x1014neq/cm2 前方カロリメター 230MRad, 1016neq/cm2 シリコン半導体検出器 1.5MRad, 3x1013neq/cm2 ATLASの中央部断面図 → 全ての検出器・電子回路に相応の放射線耐性が要求される。 ストロー飛跡検出器 0.3MRad, 6x1012neq/cm2 Max. rate ~ 15 MHz →→→ 海野氏と佐々木氏による講演を参照 9 アトラス(ATLAS)測定器 ・ ・ ・ ・ 陽子・陽子衝突現象を測定し、ヒッグス粒子などを測定する。 高さ:25m、全長:44m、重量:7000トン 37ヶ国 約2100人。日本からはKEK・東京大・神戸大など15機関から約60名の研究者。 日本による測定器建設協力は建設費ベースで7%レベル。 日本による担当部分 端部ミュオントリガー システム 超伝導ソレノイド シリコン半導体 飛跡検出器 ミューオン飛跡検 出器用TDCチップ 10 ATLAS超伝導ソレノイド 超伝導ソレノイドは、KEKで設計され、東 芝にて製造された(写真)。2000年12月 に東芝にて8400Aの励磁テストに成功し た後、CERNに送られた。 2004年2月にCERNにて液体アルゴンカロリメ ターに組込まれた(写真)。励磁試験の後、 2005年11月に地下のアトラス実験装置に据え 付けられ、 2006年8月1日に最終位置での8kA の励磁に成功した。 11 ATLAS端部ミューオントリガーシステム (1) チェンバー KEKでTGCチェンバー1200台を製造(2000-2004) h ln(tan ) 2 宇宙線テスト(神戸大) セクター組立と回路据付 →→→ 石野氏による講演 地下実験場でのアトラス測定器へ 組み込み作業 (2006-2007) 12 ATLAS端部ミューオントリガーシステム (2) 電子回路 回路はシステム設計から製造・検査まで、 殆ど全ては日本によって行われた。 4種類のASICの設計・製造 チェンバー用 ASD回路ボード →→→ 佐々木氏による講演 種々の回路ボード 全部で32万チャンネル分 最終写真:信号ケーブルと回路ボード 13 ATLASシリコン半導体飛跡検出器 シリコンセンサーの位置合わせ 顕微鏡装置 (KEKで開発) 2112台モジュールはイギリ スで円筒状に組み上げら れた。自動マウントロボット はKEK製。 日本は980台(40%)のシリコン検出器モ ジュールの製造・検査をした。 →→→ 海野氏による講演 KEKの組立治具を用いて内 部検出器に組込成功 14 ATLAS ミューオン飛跡検出器用TDCチップ TDC: Time-to-Digital Conversion data clock delay delay delay SSC計画R&Dの中から生まれた CMOSメモリー→TDCのアイデア (大杉・新井による、特許) ATLAS用24chTDCは日本で発 案・設計・製造・検査された。 アトラスのみならず、H1・Phenix,・D0・K2Kなど のHE実験やロケットに搭載された観測機器に 使われた。 →→→ 佐々木氏による講演を参照 ATLAS MDTに取り付けられたチップ 15 LHCデータ解析のための計算機技術の進歩 ATLASからの生データ量は 2 MB/event 200 events/s107 s/year 4 PB/year となり、実験データを世界に分散した計算機資源 をグリッドでつなげて処理する。 Tier-3 desktop Tier-2 centers LCGによるLHC実験のデータ解析 Tier-1 centers CNAF PIC Lyon Alice GridKA RAL ATLAS CERN Tier-0 BNL FNAL CMS Nordic LHCb NIKHEF TRIUMF CERN →→→ 上田氏による講演 ICEPP シミュレーションツール Geant4 CERNと日本が中心になって1990年代 後半にLHC実験のために開発し成功 した。C++オブジェクト指向技術による。 医学や宇宙など他分野での利用も進 んでいる。 →→→ 浅井氏による講演 16 LHCアップグレード 2009 2011 2013 2015 2017 2019 →→→ Zimmermann氏と海野氏による講演 17 素粒子実験領域,実験核物理領域合同シンポジウム LHC First Collisionに向けた実験準備 • Introduction • LHC status and its future upgrade plan • ATLAS Muon System の準備状況 近藤敬比古 (KEK) Frank Zimmermann (CERN) 石野雅也 (東京大理 ICEPP) • ATLAS用エレクトロニクス/TDAQの開発 佐々木修 (KEK) • ATLAS Inner Detectorの準備状況およびアップグレード 海野義信 (KEK) • ATLASコンピューティングとグリッド • ALICE実験準備状況 • Geant4の現状と他分野への応用 上田郁夫 (東京大 ICEPP) 志垣賢太 (広島大理) 浅井 慎 (SLAC) 18