Transcript 例題とその解答
例題1:シナジーの評価
ソフトウェア開発会社B社
ゲームメーカーP社の買収を検討している。
B社とP社(直近の会計年度)
(億円、%)
売上高
税引後営業利益 NOPLAT
投下資産利益率 ROIC
継続成長率
g
B社
P社
20
1
15
0.5
12%
10%
3%
3%
(出所)Aswath Damodaran, ‘Equity Instruments and Markets’
1
シナジー効果のインプット
資本コスト(WACC)は両方とも9%
買収後、既存の投下資産の利益率は12%
新規の投下資産からの利益率は15%に上昇
継続成長率は3%のまま
この買収のシナジーを評価しなさい。
(出所)Aswath Damodaran, ‘Equity Instruments and Markets’
2
企業価値(シナジーなし)
(億円、%)
税引後営業利益
投下資産利益率
成長率
当期営業利益
資本コスト
企業価値
NOPLAT
ROIC
g
NOPLAT
WACC
EV
B社
1.00
12%
3%
1.03
9%
P社
0.50
10%
3%
0.515
9%
企業価値(シナジーなし)
(出所)Aswath Damodaran, ‘Equity Instruments and Markets’
3
企業価値(シナジーあり)
(億円、%)
前期NOPLAT
ROIC
IC
g
当期NOPLAT
WACC
新規ROIC
B社
1.00
12%
P社
0.50
10%
3%
1.03
9%
3%
0.515
9%
B+P
EV
シナジー
4
(例題1の解答)
(億円、%)
税引後営業利益
投下資産利益率
成長率
当期営業利益
資本コスト
企業価値
B社
NOPLAT
ROIC
g
NOPLAT
WACC
EV
企業価値(シナジーなし)
1
12%
3%
1.03
9%
12.875
P社
0.5
10%
3%
0.515
9%
6.008
18.883
(出所)Aswath Damodaran, ‘Equity Instruments and Markets’ lecture notes
5
(例題1の解答)
(億円、%)
前期NOPLAT
ROIC
IC
g
当期NOPLAT
WACC
新規ROIC
B社
1.00
12%
8.33
3%
1.03
9%
12%
P社
0.50
10%
5.00
3%
0.515
9%
10%
B+P
1.60
12%
13.33
3%
1.648
9%
15%
EV
12.875
6.008
21.973
シナジー
21.973-18.883=3.09
6
例題2:マルチプル法
A社は通信機器とケーブルの2種類のビジネ
スに関わっている。
マーケットアプローチによってバリュエーショ
ンを行うために次の情報を収集した。
通信機器セグメント
売上
営業損失
EV/売上比(セクター平均)
$10億
$8000万
1.2
7
例題2:マルチプル法(2)
同業他社の多くは通信機器セグメントで損失を計
上。
ケーブル・セグメント
EBITA
EV/EBITA倍率(セクター平均)
$1億5000万
8
A社の負債は$10億、キャッシュ$6億。
発行済み株式総数が1億株のとき、一株あた
りの株式価値を求めなさい。
8
例題2:マルチプル法(3)
A社はより小さな通信機器企業であるB社の株式の
60%を保有することが分かった。
B社
売上
$2億5000万
EBITA
$1000万
B社の負債は$1億、キャッシュ$1.5億。
この数字はA社の財務諸表に完全に連結されてい
る。
この追加情報を織り込んだときのA社の一株あたり
の株式価値を求めなさい。
9
(例題2の解答)
A社 (単位:百万ドル)
通信機器 Va1=売上×1.2倍=1200
ケーブル Va2=EBITA×8倍=1200
Va=Va1+Va2=2400
Ea=VaーDa+Ca=2400ー1000+600=2000
株式価値 2000÷100百万株= 20ドル
B社 (単位:百万ドル)
通信機器 Vb=売上×1.2倍=300
Eb=VbーDb+Cb=300ー100+150=350
10
(例題2の解答)
A社(単体) (単位:百万ドル)
通信機器 Vs1=(1000ー250)×1.2倍=900
ケーブル Va2=EBITA×8倍=1200
Vs=Vs1+Va2=2100
Es=VsーDs+Cs=2100ー900+450=1650
B社持分を合算 (単位:百万ドル)
Eb×0.6=210
Ea=Es+210=1860
株式価値 1860÷100百万株= 18.6ドル
11
例題3:自動車部品メーカーX社
あるアナリストによる今後4年間の予測は次
の通り(単位は億円)。
NOPLAT
FCF
1年目
2年目
100.00
115.00
25.00
28.75
3年目
132.25
33.06
4年目
152.09
38.02
(出所)Aswath Damodaran, ‘Equity Instruments and Markets’
12
X社のDCFバリュエーション
a. FCFについてのアナリストの成長率予測を
もとにROICの予測を求めなさい。
b. ROICは現状から継続的に一定とする。資
本コストは12%、5年目以降の継続(永久)
成長率は4%とする。4年後の継続価値はい
くらか。
c. X社の現預金が100億円、負債が150億円
であるときの株価を推定しなさい。発行済み
株式数は5千万株とする。
13
a. ROICの予測
a. FCFについてのアナリストの成長率予測を
もとにROICの予測を求めなさい。
g=ROIC×IR
∵ g=(ΔNOPLAT÷ΔIC)×(ΔIC÷NOPLAT)
∴ ROIC=g÷IR
ROIC=0.15÷0.75=0.2=20%
14
b. 継続価値の算定
b. ROICは現状から継続的に一定とする。資
本コストは12%、5年目以降の継続(永久)
成長率は4%とする。4年後の継続価値はい
くらか(単位は億円) 。
NOPLAT(1+g)
g
158.171
4%
FCF(1+g)
126.537
WACC
継続価値
12%
1,581.71
15
c-1. 事業価値
X社の1年目から4年目までの事業価値の
現在価値はいくらか。
(億円)
1年目 2年目 3年目 4年目
FCF
25.00 28.75 33.06 38.02
現在価値 22.32 22.92 23.53 24.16
16
c-2. 企業価値
X社の現預金が100億円であるときX社の企
業価値はいくらか(単位は億円)。
継続価値(現在価値)
1,005
事業価値(1年~4年)
93
現預金
企業価値
100
1,198
17
c-3. 株価
c. X社の負債が150億円であるときの株価を
推定しなさい。発行済み株式数は5千万株
とする。
負債(億円)
150
株主価値(億円)
1,048
発行済み株式数(万株)
5,000
株価(円)
2,096
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例題4:薬品会社Z社
Z製薬
発行済み株式数:1億株 株価:10.40ドル
負債なし。キャッシュもなし。
税引後営業利益(直近): 180 (百万ドル)
安定成長企業と市場で評価されている。
期待成長率:4%
資本コスト:10% (リスクフリーレート:5%, マー
ケットリスクプレミアム:4%, 税率:40%)
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例題4:薬品会社Z社(2)
a. 市場はZ社を正しく評価(値付け)していると
する。資本リターンはいくらと見なされてい
るか。
b. あなたはターンアラウンドCEOとして採用さ
れた。資本に対する債務の比率を20%まで
引きあげる(税引後の負債コストは4%とす
る)。このときの資本コストを計算しなさい。
20
例題4:薬品会社Z社(3)
c. 既存の資本リターンと新規の資本リターンを
2倍にできるとする。翌3年間は再投資比率
を維持する。4年目以降、高い資本リターン
を維持するものの成長率は4%に戻る。こ
の高い資本リターンとb.の債務比率が実現
されたときの企業価値を求めなさい。
21
(例題4-a.b.の解答)
a.
企業価値 100×10.40=1040 (百万ドル)
1040=180×1.04×(1-0.04÷ROIC)÷(0.1ー
0.04) → ROIC=0.06
b.
株式コスト 10%=5%+βu(4%) →βu=1.25
βe=βu(1+D/E(1ーT))=1.25(1+0.2/0.8(1ー
0.4)= 1.4375
新しい株式コスト 10%=5%+βe(4%)=10.75%
資本コスト 10.75%×0.8+4%×0.2=9.4%
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(例題4-cの解答)
ROIC 6%×2=12%
再投資比率(IR) 66.67% (4%/6%)
次の3年間の成長 ROIC×IR=12%×2/3=8%
4年目以降の再投資比率 4%/12%=1/3
EBIT(1-t)
再投資
FCF
1
2
3
(百万ドル)
388.8
259.2
129.6
419.9
279.9
140.0
453.5
302.3
151.2
471.6
157.2
314.4
継続価値
現在価値
企業価値
5822.7
118.5
116.9 4562.5
4797.9
23