盛岡近郊における ニホンツキノワグマの食性 Food habits of the Asiatic

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Transcript 盛岡近郊における ニホンツキノワグマの食性 Food habits of the Asiatic

岩手大学ツキノワグマ研究会
活動報告
-盛岡市近郊におけるニホンツキノワグマの食性-
背景(1)
 クマについて
日本の代表的な大型哺乳類
人身・農作物被害が発生
 食性(=食べ物)を知ること
クマの生息状況を知るための
基礎的資料(小山・長縄,1994)
背景(2)
 秋季のクマの食性
堅果類が重要(橋
本・高槻,1997ほか)
ブナ堅果の豊凶と
クマの出没は関係
(Oka et al,2004)
→別に発表あり
写真:「樹に咲く花①」
山と渓谷社より
目的
従来行われている研究と比べ
調査地内を高密度に歩き
一定地域の詳細な食性を把握
調査地概要(1)
奥
▲八幡平
北
 盛岡市猪去付近
の山林約1,000ha
岩手山▲
羽
上
▲乳頭山
●
地
脈
調査地
5km
↓
雫石盆地
▲和賀岳
盛岡市中心部
盆
山
から約10km
盛
岡 三方が盆地
調査地概要(2)
奥
▲八幡平
岩手山▲
羽
北
盆
地
脈
▲和賀岳
●
調査地
調査地
5km
奥羽山脈から連続
↓
雫石盆地
の山林約1,000ha
上
▲乳頭山
山
 盛岡市猪去付近
する山塊の東端
盛
岡
調査地のクマ生息状況(1)
 県の移動放獣個体*「さんさ」の行動
圏が含まれている(青井,2005)
*農作物を食害し、
捕獲されたクマに
電波発信機をつけ
山に放した個体
調査地のクマ生息状況(2)
 その他数頭のクマ
が目視により確認
 周辺農用地で夏季
を中心に農作物の
食害が発生
調査地内で発見
「さんさ」の冬眠穴↓
クマ糞採集方法(1)
 クマ糞採集のため踏査を実施
クマ糞:内容物により見た目が大
きく異なる
←ブナ新葉
ミズナラ→
クマ糞採集方法(2)
 踏査日数・頻度
47日(05.5.7~8.8
9.12~12.11)
1~2回/週
 踏査規模
1~3班
/日 (1~3人で1班)
クマ糞採集方法(3)
 踏査経路
糞発見の可能性が
高い場所を集中的に
踏査
経路は不特定
糞分析方法
 クマは消化能力が低い
糞は食べ物の原型をとどめている
糞は食性を調べる試料として妥当
ミズキ
写真:「樹に咲く花②」
山と渓谷社より
水洗した
クマ糞
結果
 ブナの豊凶などにより秋季のクマ
の食性は年次変化がみられる
通年の調査のうち、今回は秋季
(9/12~12/11)の結果のみを発表
結果
秋季の採食物毎の利用度(%)
採集糞数 34個 (通年で151個)
果
実
類
31
49
8
12
ミズキ
サルナシ
ヤマボウシ
ブナ・クリ
堅果類
結果
 ブナ豊作年にもかかわらず、ブナは
最も利用されていたわけではない
 ミズキなどの果実類を中心に利用
31
8
ミズキ
サルナシ
49
ブナ豊作年において
ヤマボウシ
ブナ<果実類
ブナ・クリ
12
考察
 ブナの豊作が大きく影響を与えていな
い他地域の事例
丹沢山地(長縄・小山,1994)
ブナが純林を形成しない
豊作時でもブナはあまり利用されない
考察
 ブナの豊作が大きく影響を与えていな
い他地域の事例
北米(Powell and Seaman,1990)
日本よりも果実類の量や種類が多く
堅果類が少ない
ブルーベリーの豊凶の影響を受ける
考察
 豊作年の堅果類がクマの食性に大
きく影響を与えていない地域の特徴
地域内に堅果類がほとんどない
堅果類以外の採食種が多い
まとめ
豊作年のブナが最も利用されていた
わけではなかった
上記の結果を示す地域では
ブナがないかほかの重要な食物がある
一方
本調査地には多くの結実したブナがある
まとめ
ブナ利用可能な年・場所で
ブナ<果実類
↓
大変特徴的なこと
今後の課題(1)
 調査地内のブナがそこに生息するク
マに十分な堅果を与えられたのか
調査地内のクマの生息数や
ブナ堅果の量を調べる必要
今後の課題(2)
 果実類が多く利用されていた
 調査地内の果実類(ミズキなど)は
豊作だった
果実類>ブナならば
果実類をより多く利用??
調査地内の果実類の量を調べる必要も
おわりに
比較的狭い範囲で調査を行う成果
従来の調査結果とは異なる結果も
しかし今回の結果は
ブナ豊作年1年分のみ
長期的なクマの研究が必要