高宮建一郎 地球; 人の住む惑星ができるまで

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Transcript 高宮建一郎 地球; 人の住む惑星ができるまで

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地球;
人の住む惑星ができるまで
拠点リーダー: 高橋栄一
理工学研究科 地球惑星科学専攻
丸山茂徳、廣瀬敬、圦本尚義、平田岳史、河村雄行、
井田茂、長井嗣信、藤本正樹、金嶋聡、本蔵義守
フロンティア創造共同研究センター(総理工研究科・環境専攻) :
吉田尚弘
渋谷一彦
物質科学専攻:
江口正
広域理学講座:
中嶋悟
生命理工学研究科 生物プロセス専攻:
有坂文雄
生体システム専攻:
太田啓之、幸島司郎、高宮建一郎
理工学研究科
化学専攻:
学術分野の革新性:
地球惑星科学の枠を超え、
生命・環境科学と学際融合して人類の根源的な問いに挑戦
拠点形成の目標:
「人の住みうる惑星がいかにして誕生したか」を解明
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リーダー、サブリーダーの主要な研究実績
高橋: 世界最高水準の高圧実験ラボを東工大に確立
Nature 4編を含む約90編の国際誌論文(主10論文Citation Index 計
1600)
特別推進研究「ホットスポットの起源」代表
国際共同研究「ハワイ火山海底調査」代表
2000-2004
1998-2002
丸山: 地球史46億年を記録した12万個の岩石試料を調査収集
Nature 2編を含む約110編の国際誌論文および10冊の著書
重点領域研究「全地球史解読」計画研究代表 1996-2000
吉田: アイソトポマー分析法を考案し地球物質循環を定量化
Nature 5編を含む約100編の国際誌論文および5冊の著書
戦略基礎・発展研究「アイソトポマーによる環境物質の起源推定」代表 1997-2007
井田: 太陽系形成理論完成に貢献し、系外惑星の理論へ一般化
Nature Article 1編を含む約50編の国際誌論文および3冊の著書
NHK特集「地球大進化」「宇宙・未知への大紀行」の監修および出演
主要メンバー4人の過去5年間の競争的資金獲得総額: 12.2億円
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本拠点の卓越性-1: 「カーネギー研究所をしのぐ
世界最高水準の化学分析・高温高圧実験ラボ」
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ICPMS装置
真空紫外レーザー試料導入装置
SIMS装置
超高感度プラズマ質量分析計
酸素度同位体
異常を持つ
星間ダスト
精度年代測定用プラズマ質量分析計
大型マルチアンビル装置
TITech ChronoLab ICP-MS Facility
ダイヤモンドアンビル装置
130万気圧 3000Kにおける
SPRING-8放射光
本拠点の卓越性-2 「Smithsonian Institute をしのぐ岩石試料」
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本拠点の卓越性-3:
地
惑
学
科
設
立
若い伸び盛りの組織、活発な大学院生、
環境科学との融合教育の実績
地
惑
専
攻
完
成
地惑学科・専攻と総合理工学
研究科の協力関係
地惑学科・専攻設立
以来10年間の国際誌
論文数、博士在籍数、
大学院生・PDによる
国際誌論文数の推移
地惑学科から
毎年平均20%
の卒業生が
環境科学関連
の大学院に進学
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革新的学術分野といえる根拠
研究テーマの革新性:
「人の住める惑星形成過程の解明」
人類のもつ根源的疑問でありながらこれまで未開拓
疑問に答えうる実力を持つ世界最高水準の研究者群を結集
研究組織の革新性: 学際融合
従来の地球惑星科学の枠を超え、生命・環境科学
と学際融合した4つのグループから成る有機的組織
教育組織の革新性:3研究科をまたぐ博士コース
惑星環境と生命の複雑な相互作用と依存関係を解明す
る「生命惑星環境学」を担う研究者を育成
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研究課題-1:人の住める惑星形成過程の解明
マグマオーシャンから水惑星へ
理論グループ
再現グループ
ジャイアントインパクト直後の地球再現
金属核・シリケイトマントル・大気海洋
元素分配実験 130GPa, 4000K
27-25億年の地球大変動
再現グループ
ジャイアントインパクトによる月形成
Ida et al (1997) Nature
地球内部ダイナミクスと
表層環境との相互作用
20ー40 GPa, 1000-3000K
再現グループ
解読・解析グループ
Maruyama (1998)
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研究課題-2:
現代型生命を可能とした地球環境進化
酸素濃度を軸とした地球史(イメージ図)
現生シアノバクテリアの生態解
析から原始生命化石を同定し、
光合成にいたる細胞進化を解
明する 解読グループ
岩石中の流体包有物を
アイソトポマー分析し、
古大気・海洋の酸素濃度を
推定する 解析グループ
30億年前の保存
状態最良な化石
最古の真核生
物?
石英
35億年前の海水
SIMS、ICPMS、ラマン、FTIRによる
微化石の同位体・微量元素・年代測定
いかなる光合成回路がいつから活性化?
解読グループ + 解析グループ
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研究課題-3:生命居住可能惑星の形成理論
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太陽系形成標準理論
系外惑星の発見
1995年
系外惑星形成理論
系外地球の予測
衛星望遠鏡 2015
年?
系外惑星大気観測
地球大気酸素
濃度進化曲線
生命惑星進化を予測
太陽系以外の惑星大気スペクトル観測から
その惑星での生命進化段階を予測する
学際融合型COE博士コースの創設
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生命理工学部
総合理工学研究科
生命理工学研究科
環境理工学
創造専攻
生物プロセス専攻
生体システム専攻
フロンティア創造
共同研究センター
COE地球惑星生命環境博士コース
新たな講義
標準教科書作成
地球惑星科学専攻
化学専攻 広域理学講座 物質科学専攻
理工学研究科
国際会議派遣
海外への留学支援
院生支援RA経費
世界最高水準の研究拠点確立
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5年間の目標と達成度評価
1)ジャイアントインパクトから25億年までの初期地球史を
高圧実験・内部ダイナミクスから確立
2)人を含む現代型生命の出現を可能とした地球環境を
大気酸素濃度を軸として解明
3)太陽系外惑星の形成理論を完成し、生命居住可能な
惑星の形成条件を解明
4)三研究科をまたぐ学際融合博士コースを定着
5)地球史研究センターを国際共同研究拠点として確立
主なレビュアー(案):海部宣男(国立天文台長)、大島泰郎(東工大名誉教授)
D.P. McKenzie (ケンブリッジ大教授)、R.Clayton(シカゴ大名誉教授)
以下は質疑応答用
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事業経費の概要(平成17年度を例として)
その他
国際共同経費
COE教員
COE支援職員
事業費
大学院生支援経費
国際共同研究経費(教員
国際共同研究経費(外国人)
国際共同研究経費(院生)
COE教員
COE特別研究員
COE支援職員(技術系)
COE支援職員(事務系)
大学院生支援経費(RA)
大学院生支援経費(TA)
事業費(消耗品、シンポジウム等)
その他
500
500
800
2400
2500
1500
1500
2000
800
1900
500
合計 (単位;万円)
14900
COE特別研究員
100件を越す国際共同研究の実績から
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ケンブリッジ大学(高橋栄一 D.McKenzie S.Gibson):1993-現在 数回の相互訪問、日英双方でシンポジウム
開催、東工大においてケンブリッジ大の院生(2名)長期滞在、 共同研究論文:4編
ハワイ大学、米国地質調査所、スミソニアン博物館(高橋栄一 M.O.Garcia, G.Moore R.Fiske): 1998-現在
東工大短期滞在 日米双方でシンポジウム開催5回、ハワイ海底火山共同調査4回、共同研究論文:7編
レスター大学(丸山茂徳、 B.R.Windley) 2000-現在 東工大に客員教授1年、相互訪問数回、地球生命史に関
する国際シンポジウム共同開催、 地球テクトニクスに関する専門書の共同執筆
ハワイ大学(吉田尚弘、B. Popp)1996-現在、数回の相互訪問、吉田が主催し日米欧で国際アイソトポマー会
議開催、東工大に博士課程学生が滞在し測定を行う。共同研究論文4編
カリフォルニア大学 (井田 茂 D. N. C. Lin) 1994年-現在 毎年1カ月訪問し、共同研究。その後、井田研博
士取得者がカリフォルニア大学でPD。共同研究成果:論文7編
トルコ・ボアジチ大学 (本蔵義守 A.M. Isikara) 1981 - 現在 共同研究、 留学生4名受け入れ(うち1名は、
東工大で博士学位取得)、 院生数名を数週間派遣
共同研究成果: 論文21編
カーネギー地球物理学研究所 (廣瀬 敬 Yingwei Fei)1996年より17ヶ月滞在。SPRING-8共同実験。共同研
究成果: 論文6編
ハワイ大学 (圦本尚義 K. Keil) 相互訪問数回,ポスドクの交換,双方でセミナー開催、NASAからの研究費
の共同研究者。ハワイSIMSラボ立ち上げ協力。論文6編。
カリフォルニア州立大学バークレイ校 (藤本 正樹 T.D.Phan)訪問多数回、共同研究、セミナー、シンポジウム
の共同主催など。共同研究成果:Nature 2編をはじめとして多数の論文。
他大学21COEと比べてみると
北大-1: 生態地球圏システムの激変
北大-2: 新・自然史科学創成
東北大: 先端地球科学
東大: 多圏地球システム
金沢大: 環日本海域の環境
名大: 太陽・地球・生命圏相互
京大: 活地球圏の変動解明
神戸大: 惑星の起源と進化
岡山大(三朝): 固体地球科学の国際拠点
気象学 環境化学
地質学 地球物理学 地球化学
高圧実験 地球物理学 気象学
海洋学 気象学 地球物理学 地質学
気象学 環境化学 薬学 生命科学
気候学 太陽惑星科学 環境化学
気象学 地球物理学 地質学
天体物理学 惑星化学
地球化学 高圧実験
東工大COE構想: 地球:人の住む惑星が出来るまで (高橋栄一)
天体物理学 惑星化学 地球物理学 高圧実験 地球史 環境化学 生命科学
東工大COE拠点の革新性:
1) 世界最高水準の高圧実験・惑星化学・天体物理・地球史・環境化学の融合
2) 高圧実験と地球史試料を核として 46億年の地球進化を解明
3) 地球環境と生命のリンク(惑星環境の半分は生命が育てた)
4) 宇宙スケールで惑星・環境・生命を俯瞰する
地球環境分野COE、北大・名大・京大との比較
北大環境COE:
特長:地球環境の保全と改善に貢献することを目的、現在の環境からの劇的
変化要因の分析と未来予測。気象、海洋、土壌、オゾンがベース。
東工大: 46億年の時間スケール、固体地球とのリンク、地球進化という意識、
宇宙における生命惑星という視野。
名大地球環境COE:
特長:過去1000万年程度の地球システム・太陽活動の変動を高精度で復元、
現在の観測からエネルギー・水・物質循環の素過程・機構を解明し、両者の
対比から統合モデルを組んで、将来10~1000年間に起り得る変動を予測。
東工大:46億年の時間スケール、固体地球とのリンク、宇宙における生命惑
星という視野。
京大地球科学COE:
特長:アジア・オセアニアでのフィールドを中心に、人間活動の時間スケール
で変動し、人と自然の共生をはかる上で重要な空間領域「活地球圏」での変
動が主な研究対象。
東工大:46億年の時間スケール、宇宙における生命惑星という視野。
関連する国外の研究拠点
NASA(アストロバイオロジー研究所) 1999- 米国
NASAの惑星探査プログラムと関連した地球外生命(極限環境生命)の探査、生命の起源などに焦
点を当てた巨大組織。研究所というより米国の大学の研究室連合。地質学中心で天文学は含ま
ない。(ペンシルバニア州立大 大本教授 地球化学)
東工大は単一の拠点として地球の形成進化から生命を育んだ環境進化までを研究できる。アストロ
バイオロジー主催のシンポジウムに招待される本拠点関係者も多い。
NASA Terrestrial Planet Finder (TPF)
2001- 米国
太陽系外の惑星探査に絞ったNASAの研究プログラム。2015年には太陽系外の地球型星の発見
を目ざす天文観測衛星「TPF」の打ち上げを予定している。研究所組織は未完成。
NASAでは地球科学者と惑星/天文学者が分断されているのに対して、本拠点では酸素大気濃度
を軸として地球史を解読するという視点でコンパクトに融合している。
カーネギー研究所 (Geophysical Lab + DTM)
米国
高圧実験・地球化学・惑星形成理論で世界的拠点。100年の伝統を持つ。地球の物質科学が研究
の主眼。 高橋、廣瀬はともにカーネギー研のPD研究員を経験。 生命は別組織で連携がない。
本拠点は地球の形成進化に焦点を当て研究する。内部進化と表層環境のリンクを探る。
マックスプランク研究所 (Mainz + Jena)
ドイツ
宇宙化学・地球化学・環境化学で世界的拠点。大気組成のモニタリングが充実。ただし地球史の視
点からの研究は行われていない。MainzはHofmann所長の引退に伴い整理縮合される。
本拠点は、過去から現在までの生物地球化学をアイソトポマーレベルで解析できる。
昨年の申請(東工大地惑)との比較
1) 代表者が丸山から高橋に交代した結果、東工大地惑の
誇る固体地球物質科学の占める比重が増した。
2) 環境科学、生命科学関連の8人の研究者が新たに加
わるなどメンバーの半数以上を入れ替えた。
3) 地球科学・惑星科学・天文学・生命環境科学を融合した
革新的学術分野「生命惑星環境学」創設を目指す。
4) 理工学・生命理工学・総合理工学の三つの研究科にま
たがる学際融合型大学院博士コースを創設。
5) 国際共同研究拠点「地球史解析センター(仮称)」の設立
オゾン層は地球史のいつから存在するか?
硫黄同位体のMass Independent
Fractionation から
Farquhar et al.(2001)
10
20
30
億年前
SCAPS (Stacked CMOS Active Pixle Sensor)
~ イ オン ~
東工大圦本研が開発した2次元撮像素子と同位体顕微鏡
二次電子
積層ピ ク セル電極
シリ コ ン 素子
研究計画と期待される成果(再現)
(1)地球形成プロセス再現:
・ジャイアントインパクト直後のマグマオーシャンを実験的に再現
・地殻・マントル・核の間での元素分配を高圧実験から決定
・外核・内核間の軽元素分配を検証し、原始大気・海洋の組成を推定
・原始大気からの炭素・水素の除去過程モデル化
(2)地球内部進化プロセス再現:
・上部マントル/下部マントル境界面のダイナミクスと火成活動の関連
・マントルと海洋地殻組成における炭酸塩鉱物の安定性と循環過程
・惑星熱進化モデルに対応する内核の成長史とダイナモ数値計算
(3)地球内部進化と表層環境の相互作用モデル化:
・固体地球内部の物質大循環進化モデルの構築
・記録解読グループのデータに基づき、炭素除去機構モデルの構築
・地球史における炭素・水素の表層―地球内部大循環モデルの構築
研究計画と期待される成果(地球史解読)
(1)固体地球変動史の解読
・45~40億年前のジルコン結晶同位体分析(O,W-Hf)から、海洋の誕生時期を検証
・世界主要河川の川砂ジルコンの分析から地球史46億年の大陸成長曲線を決定
・マントル分化曲線を決定し、27,19,6億年前にあったと考えられる固体地球変動を解明
・非変質斜長石中の微粒磁鉄鉱の磁性分析に基づく太古代地球磁場の解析
(2)地球表層史の解読
・堆積物(40~5億年前)酸化還元状態の分析
・岩石試料から海嶺地域の熱水循環環境、古海水の総量・組成の復元
・10~5億年前の全凍結状態の地球表層環境を復元、生物界への影響を検証
(3)生命化石の解読
・酸素呼吸大型生命出現に至る『地球環境進化46億年』を徹底解読する。
・シアノバクテリア最古化石を探索し、酸素発生型光合成開始時期を特定する。
・現存のシアノバクテリア類の生体膜成分に着目した微化石分析手法開発
研究計画と期待される成果(環境解析)
(1)大気組成進化の定量的実証
・岩石試料から古大気・古海水を抽出し、CHNOS同位体分析
・岩石試料からの分子化石の抽出とアイソトポマー分析
・岩石試料中の古細菌細胞膜化石に含まれる遷移金属とC・Nの定量
・地層からのS・O同位体異常の抽出
(2)大気組成進化メカニズムの解明
・光化学反応によるS・O同位体異常の検証模擬実験
・光化学反応によるS・O同位体異常の理論計算予測
・光合成分子の光吸収・酸化還元特性の模擬実験
(3)大気・組成進化のモデル化と総合解析
・酸素発生型光合成の開始時期の特定
・酸素呼吸型生命の発生時期の特定
・地球温暖化ガスの気体分子種ごとの消長
・過去5億年に起こった無酸素イベント時期と規模を推定
研究計画と期待される成果(理論)
(1)系外惑星系の多様性の起源
惑星系の初期条件である原始惑星系円盤の質量の違いが系外惑星系の多様性の起源で
あるとの作業仮説のもと、異なる質量の円盤での惑星形成のシミュレーションを行なう。系
外惑星形成モデルは、太陽系形成理論を拡張する。円盤の質量分布については、現在発
展途上の電波望遠鏡観測によるデータを使う。
(2)系外地球型惑星の質量/軌道分布惑星系の予測
上記シミュレーションの結果を、観測されている系外木星型惑星のデータと比較検討し、系
外惑星形成モデルをキャリブレーションする。キャリブレーションされたモデルで系外地球型
惑星の質量/軌道分布の予測をする。現時点で観測可能な木星型惑星をキャリブレーショ
ンに使うことで、現時点では観測不可能な地球型惑星の予測が可能となる。
(3) 生命居住可能な惑星の条件の定量化
解読/再現/環境解析グループの成果をもとにして、生命(特に酸素呼吸をする大型陸上
生命)が進化可能な惑星環境の条件を洗い出し、それらと惑星の天体力学条件との関係を
明らかにする。惑星環境の条件としては、大気と海洋の維持、惑星磁場が発生し恒星風や
宇宙線を遮断するなどが、まずは考えられる。
(4) 総合
以上をもとにし、生命居住可能な惑星の存在確率の推定をする。また、2015年頃に計画さ
れている衛星望遠鏡(欧州のDarwin計画やNASAのTPF計画など)による系外地球型惑星
大気観測から、その生命の進化段階を 定量的に推定するための理論の基礎部分の構築
をする。