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多層型銅酸化物高温超伝導体の物理と機能
基礎工学研究科・物質創成専攻・未来物質領域 北岡良雄
1911年の超伝導の発見以来、様々な超伝導物質が発見され、現在最も高
い超伝導転移温度Tc は銅酸化物高温超伝導体のHgBa2Ca2Cu3Oy (Hg-1223)に
おける134Kである。しかしながら、この記録は1993年以来、多大な努力に
もかかわらず破られていない。 銅酸化物高温超伝導体は一般にCuO2面の
枚数(n)を増やすことによってTcは上昇する。しかしながらHg-1223のよう
にn=3でTcが最高となり、それ以上枚数を増やしても逆にTcは減少する(図
1)。n≧3の銅酸化物高温超伝導体は酸素の配位数が5配位と4配位の2
種類のCuO2面で構成される。それぞれのサイトでのKnight shiftから内側
の4配位CuO2面(IP)よりも外側の5配位CuO2面(OP)の方が多くのキャ
リアーを含んでおり、その差が1.全キャリアー量を増やした時、2.
CuO2面の枚数nを増加させた時に大きくなることが明らかになった。この差
が小さいHg-1223等では高いTcが得られ、逆に差が大きいCu-1234ではOPと
IPで異なる超伝導転移温度を示すといった層間で分離した振舞いが見られ
る。つまり、高いTcのためにはOPとIPのキャリアー濃度を等価にすること
が重要だと考えられる(図2)。本研究によって多層型高温超伝導体のサ
ブナノスケールでの電子状態および超伝導状態が明らかにとなり、最高性
能をもつ次世代高温超伝導材料の合成指針が明らかとなった(図3) 。
多層型高温超伝導体では常にIPよりOPに多くのホールがドープ
されており、その差は全ドープ量、またはCuO2面の枚数が多い系
ほど顕著になることが分かった
ホール濃度の不均一が生み出す特異な現象
二つの超伝導転移温度 (Cu1234、Cu1245)
Cu1234をアニールすることでTc2の消失
反強磁性層と超伝導層の交互積層共存 (Hg1245、Tl1245)
図1
Sudip Chakravarty et al,
NATURE, VOL 428, 4 MARCH (2004) 53.
図3
図2
Piers Coleman,
NATURE, VOL 428, 4 MARCH (2004) 26.