セラミックスの結合様式

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Transcript セラミックスの結合様式

セラミックス
第4回目
5月 13日(水)
担当教員:永山 勝久
4.イオン結合と共有結合
セラミックスの結合様式
[定義]
(1)イオン結合・・・ 陰イオンと陽イオン間での静電気力(ク-ロン力),すなわち
正と負の電荷が電気的引力によって生じる結合様式
(2)共有結合 ・・・ 隣接原子が互いに電子を出し合って安定スピン結合
状態 (↑↓) を形成し、それを共有することによって生じる
結合様式[:配位結合(隣接原子間での最外核電子の
交換結合・・・半導体Siの結合様式]
イオン結合性結晶・・・酸化物系セラミックス
共有結合性結晶 ・・・非酸化物系セラミックス
(半金属-非金属:Si3N4、SiC、BN 金属-非金属:AlN、TiC、TiB2など)
共有結合力>イオン結合力
∴共有結合性結晶は焼結性が困難(粒同士の反応性に欠ける)で、通焼結性向上を
目的として焼結助剤を添加したり、あるいは高圧力下での焼結法(ホットプレス,HIP法
など)が行われている
共有結合 (最も強固な化学結
合) ◎ 共有結合 ・・・ 1つの原子が所有する孤立電子 (不対電子) と,周囲の隣接原子
[定義]
(半導体,
非酸化物系
セラミックスの
結合様式)
が有する孤立電子との間で,スピンの向きを逆にして安定な電子
対を形成することによって生じる化学結合形成
隣接原子間で
Si
= N
S ス
ピ 磁気
= S ン 双極子
N
Si
電子
・窒化物
・ホウ化物
・炭化物
Si
Si
Si
Si
Si
安定な電子対(+,-のスピン
の結合)
Si
Si
Si
Si4+ : 4価
周囲に4個のSi原子
Si
Si
図2 Si結晶の共有結合
反平行スピン = (安定な電子対)
異極結合
安定
=
←電子雲どうしの結合
(a)
(b)
電子を共有する
安定結合 = 「共有結合」
電子雲どうし
同極結合 不安定(反発)
の反発
図3 反平行(a),平行(b)スピン間における2原子間の電子密度分布
平行スピン = (不安定電子対)
材料の性質を規定する 化学結合
[ 物性を規定する基礎的因子 ]
① 金属結合
化学結合
② イオン結合
セラミックスの結合様式
(4つの形式) ③ 共有結合
④ ファンデル・ワールス結合 ( 気体 分子間結合 )
表1 化学結合の種類と主な特徴
融点
電気伝導性
透明度
水溶性
イオン結合
高い
比較的良い
透明
可溶
共有結合
高い
悪い
普通は透明
難溶
金属結合
比較的高い
極めて良い
不透明
普通は不溶
分子結合
低い
悪い
透明
―
金属光沢
◎化学結合=材料の性質(物性)を支配
材料
(1)金属
現象論的特徴
①金属光沢を示す,②電気,熱の良導体
③塑性加工が可能(展延性に富む)
(2)無機
①絶縁性に富む,②断熱性が大
(セラミックス)
③塑性加工が困難(脆性)
(3)高分子
①絶縁性,断熱性が大
(繊維,プラスチック)
②加工が容易
[金属結合]
[イオン結合,共有結合]
[共有結合,分子間結合]
(1) 金属結合
<・・・金属の特徴の起源>
[定義] ; 原子の最外殻の価電子が原子核 ( 陽子=正電荷 ) の拘束を
離れ [ ・・・『金属原子の自由電子放出に伴う陽イオン化』 ],
自由電子 として,結晶全体の金属陽イオン ( 原子 ) に共有され
て,これを媒介として原子どうしを結合する化学結合様式
① 自由電子・・・熱や電気の伝導媒体
金属は熱や電気の良導体
=
『金属の特徴』
② 自由電子・・・光により励起 [ 光 (=電磁波) エネルギーにより遷移 ]
自由電子に依存
金属特有の光沢 ( 金属光沢 )
金属結晶
の概念図
③ 自由電子・・・金属陽イオン間における結合に自由度を寄与
<結合の手が無数存在するために破壊は生じにくい>
+ + + +
+ + + +
+ + + +
金属陽イオン
金属の塑性変形 ( 展延特性 )
自由電子
(単一元素)
(2) 無機材料 [半金属(B,Si,C・・・),酸化物,窒化物,ホウ化物,塩化物]
の結合形式
“セラミックス”
2つの
結合形式
[ 定義 ]
◎ 「イオン結合」 → 陽(+)イオンと陰(-)イオン間の電気的引力に起因
(静電引力 = クーロン力)
代表例):NaCl = Na+-Clする化学結合様式
◎ 「共有結合」
11Na:1s22s22p63s1 e※
[Ne]
17Cl:1s22s22p63s1 3p5
[Ar]
○ イオン間に働く力
1) 陽イオン-陰イオン ; 引力
◎3つのクーロン力・・・ 2) 陽イオン-陽イオン ; 斥力 ( 反発力 )
3) 陰イオン-陰イオン ; 斥力 ( 反発力 )
同種イオン間
イオン性結晶 ・・・ 全体として引力が斥力よりも大きくなる
( 図1,図2参照 )
; +,-イオン間のクーロン引力
結晶を構成
( 静電引力 ) により,結晶を形成する
( 引力=斥力 )
イオン間距離が極端に近くな
ると,両原子 (両イオン) が
有する電子と原子核の陽電
荷間におけるクーロン引力が
増大し,ポテンシャルエネル
ギーは急激に増大する
ポテンシャルエネルギー kcal/mol
(核外電子全て)
引力≧斥力
100
NaCl結晶のイオン間距離
Clの電子
親和力
最適距離
0
2
4
-100
-e2/r
6
8
10 12
∞
( イオン間距離 )
結合力=引力
弱い
e2
クーロン引力: F  
r2
e : 電荷
r : イオン間距離
ポテンシャルエネルギー r
:  F

(両イオン間の
距離が遠い)
-200
Naのイオン化
ポテンシャル
0
e2

r
図1 Na+とCl-との クーロン引力によるポテンシャルエネルギー
斥力 (同種イオン間のポテンシャルエネルギー)
・最も安定な位置
= イオン間距離
陽イオン,陰イオンの電子雲が重なり合う
r
(:イオン間距離)
合成ポテンシャルエネルギーの
極小値
陽イオン,陰イオンが離れている
引力
=
ポテンシャルエネルギー
引力と斥力の
合成
ポテンシャル
エネルギー
・斥力+引力の最小値= “イオン間距離”
陽イオン,陰イオンがひっついている
図2 イオン間距離と 引力 , 斥力 の関係
(引力と斥力の平衡関係)
・・・引力と斥力の最適距離
(安定)
イオン結合の特徴(:熱伝導機構)
(高熱伝導性セラミックスと非熱伝導性セラミックス)
◎イオン結合性結晶 (セラミックス) の熱伝導機構
自由電子が
熱の伝導体
熱伝導媒体 ・・・ 『フォノン(phonon)』
○結晶中で規則配列する原子を “格子” と考え,格子位置での
原子の振動エネルギーを 「フォノン」 と定義
( フォノン ・・・ “格子の振動” をエネルギーを持った 粒子 と仮定)
=
cf. 金属材料
(振動子)
『量子』
熱伝導機構 ・・・ 「アインシュタイン・モデル(バネ・モデル)」
(図 参照)
① 物体を端面 (片側) 加熱
② 加熱面での原子振動の増大 (軽元素ほど大きい)
③ 隣接正負イオン間でのイオン結合を介して,格子振動が
伝播 (フォノンの伝播) ・・・“格子振動による伝播”
◎ 軽元素ほど格子振動は大きく、その伝播は容易
熱伝導率 ; Al2O3 (約20W/m・k,Al原子量 : 27 )
ZrO2 (約 4W/m・k,Zr原子量 : 91 )
5分の1
アインシュタイン・モデル
バネ
端面
バネ
(a)
(b)
加
熱
加
熱
軽元素 ・・・ 格子振動は大
熱伝導は容易
端面
重元素 ・・・ 格子振動は小
<熱伝導率 : 小>
図3 熱伝導のモデル (アインシュタイン・モデル) : 結晶の左端から右端への
加熱に伴う格子振動に伴う熱伝導現象の説明
(a) 軽元素 (振動大,高熱伝導性) , (b) 重元素 (振動小)
共有結合 (最も強固な化学結
合) ◎ 共有結合 ・・・ 1つの原子が所有する孤立電子 (不対電子) と,周囲の隣接原子
[定義]
(半導体,
非酸化物系
セラミックスの
結合様式)
が有する孤立電子との間で,スピンの向きを逆にして安定な電子
対を形成することによって生じる化学結合形成
隣接原子間で
Si
= N
S ス
ピ 磁気
= S ン 双極子
N
Si
電子
・窒化物
・ホウ化物
・炭化物
Si
Si
Si
Si
Si
安定な電子対(+,-のスピン
の結合)
Si
Si
Si
Si4+ : 4価
周囲に4個のSi原子
Si
Si
図2 Si結晶の共有結合
反平行スピン = (安定な電子対)
異極結合
安定
=
←電子雲どうしの結合
(a)
(b)
電子を共有する
安定結合 = 「共有結合」
電子雲どうし
同極結合 不安定(反発)
の反発
図3 反平行(a),平行(b)スピン間における2原子間の電子密度分布
平行スピン = (不安定電子対)