伝染病対策の歴史と概要(ペスト)
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獣医伝染病学
Veterinary Epizootiology
病原体(pathogen): 疾病を起こすウイルス、リケッチア、細菌、真菌、原虫、
寄生虫
感染症(infectious disease): 病原体の存在や活動によって起こる病気
日和見感染(opportunistic infection): 健康な動物では感染症を起こ
さないような病原体が原因で発症する感染症。MRSA感染症、 緑膿菌感染症、
レジオネラ肺炎、カンジダ症、クリプトコッカス感染症、ヘルペス感染症、トキソ
プラズマ症、クリプトスポリジウム症、・・・
伝染病(communicable disease): 短期間で広がりやすい感染症
疫病(pests): 社会基盤に打撃を与えるほどの被害を及ぼした伝染病。
ペスト、スペイン風邪、・・・
流行(epidemic): ある地域において、ある疾病が通常考えられる以上に発
生すること。
地方流行(endemic): 一地域に継続的に流行すること。
汎流行(pandemic): 多国間にまたがって広範囲に流行すること。
散発性(sporadic): 時間的、空間的に発生頻度が低い。
日本獣医史学会
獣医学資料の収集・保管・展示の重要性について
学術会議議長であった越智勇一先生の名言として「全て
の学問はその歴史の上に建つ」がある。
我々の学んでいる獣医学(古くは馬医術)は長い歴史の中で、多くの先人の経
験や科学の積み重ねの成果の上に成り立っている学問である。日本の獣医職名
(馬医師)は大宝律令(701)には記載され、さらに実施された治療内容は平仲国
が中国より帰朝(804)後から記録「仲国百問答」がはっきりするなど古い歴史があ
りながら、現代に至るまでの古文書(獣医学書・絵など)は僅かに国立図書館、一
部の大学図書館、個人所有であり我々が調査に行っても見せて貰うことすら出来
ない、記録にはあるが滅失した古文書もある。
多くの獣医職(馬医・伯楽あるいは軍獣医官など)が長い年月を掛けて創意、工
夫、改良して作り上げた治療用具にいたっては地方の民俗博物館、郷土博物館、
JRA「馬の博物館」、個人収集品として僅かづつほとんど全国に・・・・
MyDoblog 獣医学・獣医術の歴史データーベース
動物の感染症と微生物に関する主な事跡 (動物の感染症、近代出版)
BC2300頃: バビロンのエシュナ法典に狂犬病の記載
BC1190頃: トロイ戦争終期に腺ペストの流行で多数の兵士が死亡
BC1100頃: メソポタミアの法律に狂犬病と関連して飼い主の義務が記載
AD791: フランク王国カール大帝(在位:768年~814年)の軍隊が馬の流行病で撤退
801: カール大帝統治下で牛疫大発生
1710~15: ヨーロッパで牛疫の大流行
1744: 牛疫罹患牛の鼻汁や涙を予め健康牛に接種する予防法
1776: 口蹄疫の計画感染による免疫
1796: 種痘法の発見(Jenner)
1833: オハイオ州で豚コレラ流行
1835: フランス軍馬の5%強が鼻疽に感染
1858: 人畜共通感染症zoonosisの提唱(Virchow)
助手とともにウサギで
1863: 炭疽の病因解明と再現:炭疽菌の発見(Davaine)
実験するパスツール
1876: 「Kochの三条件」発表
1880: 家禽コレラの弱毒株ワクチン(Pasteur)
1881: 炭疽の加熱死菌ワクチン(Pasteur)
1885: 狂犬病ワクチン(Pasteur)
1638: 西日本における牛疫の大流行(十三朝紀聞)
長い人類史の中で、病原体が発見されてか
1664: 馬の腺疫の記録(足利義持の口述筆記)
ら未だ150年余りしか経っていない。それまでの
1736: 日本各地で狂犬病流行(狂犬病咬傷治法)
伝染病との闘いにおいて培われてきた英知を汲
1847: 鶏痘の記載(遊相医話)
み取ることが大切である。
1889: 破傷風菌の培養(北里柴三郎)
疫学の始まりはジョン・スノーのコレラ研究にあると言われる。コレラのイギリス
侵入(1831年10月)当時、コレラは空気感染すると考えられており恐れられていた。
しかしスノーは同じ流行地域でも患者が出る家は飛び飛びである等の知見を得て
空気感染説に疑問を持ち、「汚染された水を飲むとコレラになる」という「経口感染
仮説」を立て、疫学的調査と防疫活動を行った。
ブロード・ストリート事件
1848年、コレラ患
者が多量発生した
地区にて患者発生
状況の調査を行い、
ある井戸が汚染源
と推測、あてはまら
ない事例について
調査を行い、「汚染
された井戸水を飲
んでいる人は罹る」
と結論した。行政が
これに従い問題の
井戸を閉鎖したた
め、流行の蔓延を
防ぐ事が出来た。
疫学 (Epidemiology)
疫学とは生物集団における病気の流行状態を研究する学問である。
すなわち、ある一時点/一期間での、ある一集団において、ある特定の
病気が流行した場合、その流行の原因を調べ、その原因を除去すること
により流行そのものを制御(終熄、予防)するための学問である。
疫学の方法
1. 記述疫学: 原因と結果に関する特性を調べたり、原因の仮説を立てる。
因果関係の妥当性
2. 分析疫学: 記述疫学で立てた仮説が正しいかどうかを解析する研究。
結果対照研究
要因対照研究
前向き要因対照研究(コホート研究、cohort study)
後向き要因対照研究
3. 介入研究: 観察集団に対して、原因だと考えられる物を人為的に加減して、
結果の発生率を調べる研究。
疫学の指標
率(rate)と比(ratio)
率: 分母と分子の間にオーバーラップしている部分がある
比: 分母と分子の間にオーバーラップしている部分がない
死産率 =
死産数
死産数
(出産数 = 出生数 + 死産数)
死産比 =
出産数
出生数
罹患率(morbidity rate) 、発生率( incidence rate )
所定疾患について、一定期間内に
どれだけの患者が発生したか
観察期間中の新たな罹患人数
1人1人の観察期間の総和
有病率(prevalence rate): ある一時点で疾病者がどれだけいるか
平均罹病期間がほぼ一定ならば、
有病率 = 罹患率 × 平均罹病期間
死亡率(mortality rate): 一定期間に死亡者がどれだけいるか
致命率(fatality rate): 罹患者中の死亡した割合
相対頻度(relative frequency): 所定集団における種々の疾病総数に占める
当該疾病の割合。
1. 記述疫学
疾病の頻度と分布(疫学的特性)を調べることにより、原因と結果に
関する特性(発生要因)を検討し、疾病原因の仮説を設定する。
原因と結果に関する特性のみが分かればよいので、原因が不明であっても対処策を練ら
れる。個人の調査だけで行うことが出来て最も簡便な研究手法。
記述疫学だけでは単なる仮説に過ぎず、信頼性が極めて低い
因果関係の妥当性: Surgeon General(米国公衆衛生局長諮問委員会)の5基準
関連の一致性(consistency ): 違う国、違う時代でも同じ事が起こるか(人、場
所、時間の関連に普遍性があるか)
関連の強固性(strength ) : 効果が定量的か(量-反応関係が成立するか)
関連の特異性(specificity ) : 原因のある所に結果があり、結果のある所に原
因があるか
関連の時間性(temporality ): 原因→結果の順になっているか
関連の整合性(coherence ): 既知の知識体系と矛盾しないか
危険因子(risk factor): 必ずしも因果関係を必要とはしないが,有病割合や死
亡率の増加と統計的な関連を有する要因。たとえば心臓疾患に対する危険因子
2. 分析疫学
記述疫学で設定した仮説が正しいかを分析する
結果対照研究(case control study): 罹病者と非罹病者について、リスク
ファクターへの暴露の有無を調べる。
暴露あり
暴露なし
罹病
健康(対照)
過去の事実についての調査(後ろ向き研究)は、経費が掛からない。
要因対照研究(factor control study): 暴露群と非曝露群を一定期間観
察し、それぞれの中で何個体が罹患したかを調べる研究。
罹病
健康
暴露群
非暴露群(対照)
将来の事実についての調査(前向き研究)は、経費が掛かる。
過去の事実についての調査(後ろ向き研究)は、把握が困難な場合が多い。
交絡因子
疫学研究(症例・対照研究など)を行うとき、調べようとする危険因子以外で、疾
病の出現頻度に影響を与えるもの。
交絡因子の種類(ヒトの例)
分
類
宿主要因
内
容
遺伝、年齢、性、既往疾患、生理的条件、性格、精神的ストレス
出生地・居住地(工業地域、交通量)、住居(換気・冷暖房・下
環境要因
水設備)、食生活(栄養素、嗜好、食品汚染)、嗜好品(飲酒、
(社会経済文化的)
コーヒー、喫煙)、職業(労働環境)
環境要因
(自然)
地理(飲料水、水質、大気汚染)、物理(騒音、振動)、化学
(天然毒、化学薬品、農薬)
病因要因
細菌、病原体、発ガン物質
相対危険度(Relative risk)、リスク比(risk ratio)
曝露により危険度が何倍高まったかの指標。
暴露時点からの追跡調査
により発症の有無を確認す
ることが必要となる。
他方、患者集団と健康集
団の暴露経験の有無を調べ
ることは短期間で可能。
A
曝露群の危険度
R =
A+B
=
非曝露群の危険度
C
C+D
オッズ比(Odds ratio)
疾病と暴露の比較
疾病あり
暴露あり
疾病なし
計
相対危険度の近似値
A
A
B
A+B
C
暴露なし
C
D
C+D
計
A+C
B+D
T
R =
B
D
寄与危険度(Attributable ratio)
Pe(R-1)
曝露により罹患者がどれだ
集団寄与危険度割合=
× 100
け増えたかの指標(→曝露
1+Pe(R-1)
当該患者の何%がリスクファクターの暴露に がなければどれだけ罹患
起因しているかを示す。
者が減るか: 絶対リスクの
R-1
減少)
暴露群寄与危険度割合=
× 100
R
暴露された患者の何%がリスクファクターに
起因しているかを示す。
暴露による
超過発生
R-1
R
自然状態での発生
R: 相対危険度
1-Pe
1
Pe
1
Pe: 暴露者の割合
非暴露群
暴露群
3. 介入研究
介入研究(intervention study): 観察集団に対して、原因だと考えられる物を人
為的に加減して、結果の発生率を調べる研究。
例: 新らしい薬やワクチンの開発において、試験管内実験、動物実験が終了し、
人体への適用の段階で改めて薬効、副作用を調べる必要があるが、ボランティア
の了解を得た上で実施することになる。倫理問題が絡む。
治験の流れ
第Ⅰ相試験: 動物実験で安全性と有効性が確認されている薬物を健常者に対
して投与し、ヒトでの安全性を確認する(抗癌剤のように健常人に有害性が明ら
かであれば、例外的に患者を対象とする)。
前期第Ⅱ相試験: 対象疾患を有する患者に対して投与し、安全性と薬物動態を
確認する
後期第Ⅱ相試験: 至適投与量を確認する
第Ⅲ相試験: 一定期間にわたり薬物を投与し、その安全性や有効性について対
照薬と比較検討する
第Ⅳ相試験: 薬物が市場に出た後に、その薬物についての稀な副作用や他薬
との併用による影響などを調査する
4. その他
理論疫学(Theoretical Epidemiology): 感染症伝播モデルから発しており、
Reed-Frost型モデル,Kermack-McKendrickモデルなど,いろいろなものが
ある。日本で理論疫学を研究している人は少ない。
血清疫学(Seroepidemiology): 狭義では,病原体に対する血清中の特異
的な抗体のレベルを測定することによって,その疾患への個人個人の罹患の程
度を調べたり,集団レベルでの抗体価の分布を調べることによって,集団レベル
での流行状況を推定したりする研究を指していう。インフルエンザ亜型の流行周
期に関する研究は有名。
広義では,集団を対象に採血を行い,血清の分析によって集団の健康状態に関
する指標を得たり,リスク因子の推定をしたり,それらの関連を見たり,集団間で
指標値を比較することでリスク評価をしたりする研究分野を含んでいう。
分子疫学(Molecular Epidemiology): 広義の遺伝疫学に含まれる。分子
レベルでリスクファクターと疾病の因果関係を探る研究分野。ヒトゲノムプロジェ
クト完了が近づくにつれてゲノム疫学へ発展。新しい方法論が必要(開発されつ
つあるがまだ不十分。個人情報保護とのコンフリクトという問題もある)。遺伝子
がわかったからといって形質発現がわかるとは限らない点も問題。
USDA APHIS: Animal Health Monitoring & Surveillance
What is surveillance?
For the purpose of the National Animal Health Surveillance System, animal
health surveillance is defined as the ongoing systematic collection, collation,
analysis, and interpretation of data and dissemination of information to those who
need to know so that action can be taken. The purposes of surveillance are rapid
detection of introduced diseases and emerging issues, monitoring and providing
actionable information for endemic diseases, and measuring regional prevalence
of trade-significant diseases.
サーベイランスとは?
国の動物衛生サーベイランス・システムの目的において、動物衛生
サーベイランスとは、データの継続的かつ系統的収集、照合、解析お
よび解釈、ならびに、その情報を行動を起こすために知る必要がある
人々に普及することである。サーベイランスの目的は、疾病の侵入と
緊急事態の発生の早期発見、モニタリングと流行病についての実効
性のある情報提供、ならびに、取引き上重要な疾病の地域的罹患率
の測定にある。
データの継続的かつ系統的収集
照合、解析および解釈
対策の立案と実行
情報の普及
APHIS VS: National Animal Health Monitoring System
National Animal Health Monitoring System
The National Animal Health Monitoring System (NAHMS) Program Unit conducts
national studies on the health and health management of United States domestic
livestock and poultry populations.
国の動物衛生モニタリング・システム(NAHMS)
NAHMS計画班は、米国の家畜および家禽集団の健康と衛生管理
に関する国家的研究を実施している。
家禽向上国家計画(National Poultry Improvement Plan)
Materials and methods on surveillance, monitoring and assessment
WHO recommended surveillance standards, Second edition
CDC: Manual for the Surveillance of Vaccine-Preventable Diseases
Guidelines for measuring key monitoring and evaluation indicators
Surveillance monitoring definition
Animal disease Surveillance and Survey System
UK: Surveillance and monitoring
調査監視、発生動向調査、広域調査(surveillance)
疾病対策の企画、実施、評価に必要なデータを系統的に収集・分析し、その結果を
対策の改善に役立てるための調査。集団内の広域調査によって疾病の発生を見張
ること(survey)。 (例)家畜伝染病予防法に基づく監視体制(受動的)、能動的な例
としては、
高病原性鳥インフルエンザに関する全国一斉サーベイランスの実施について
1 目的
本年6月、茨城県下の採卵鶏飼養農場において、感染した鶏に明確な臨床症状をもたらさ
ない弱毒タイプのH5N2亜型のA型インフルエンザウイルスが初めて確認された。このため、
国内の他の地域においても、この種のウイルスが存在する可能性は否定できないことから、
本ウイルスの浸潤状況を把握し、もって的確な防疫対策に資するものとする。
2 方法
(1)検査戸数:対象地域、農場規模、無作為抽出による対象農家の選定、・・・
(2)採材羽数:1農場10羽以上
(3)検査方法: 血清抗体検査(ゲル内沈降反応)、その他必要な検査(死亡羽数の増加等
の異常が確認された場合には、ウイルス検査等も実施)
3 期間、結果の報告及び公表
サーベイランスの期間は9月16日までとし、結果については毎週1回、都道府県からの報告
を受け、公表。ただし、血清抗体検査において陽性が確認された場合には、検査結果の精
査、ウイルス検査等を実施し、血清亜型が確認された段階で公表。
4 防疫対応
高病原性鳥インフルエンザ抗体が確認された段階で、家禽疾病小委員会の意見を聴き、
防疫指針に即した措置を実施。
継続監視、定期検査(monitoring)
環境の異常や集団の健康状態の変動を調べる目的で継続的な定期検査を行い分
析すること(monitor)。 (例)原発施設周辺地域の放射能測定、薬剤耐性調査事業
我が国の家畜衛生分野における 薬剤耐性モニタリング体制
JVARM(Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System)
Ⅰ. 目的
食用動物由来細菌における薬剤耐性、 動物用抗菌剤の有効性、 動物用抗菌剤の使用
量を調べることにより、 薬剤耐性に関するリスク分析の基礎資料を提供し、動物用抗菌剤
の“慎重使用”に反映させる。
Ⅱ. 調査の概要
(1) 抗菌剤使用量:有効成分・系統別の製造量、輸入量、動物種別使用量、・・・
(2) 野外流行株の薬剤耐性:病性鑑定材料から分離したサルモネラ、大腸菌、 ・・・
(3) 食品媒介性病原細菌・指標細菌の薬剤耐性:健康動物由来のカンピロバクター、・・・
Ⅲ. 薬剤耐性調査内容
Ⅳ. 実施体制と役割分担
野外流行株は家畜保健衛生所が分離・同定し、動物医薬品検査所はMICを測定して遺
伝学的性状の解析、薬剤耐性機構の解明等を実施する。・・・
Ⅴ. 品質保証システム
MIC精度管理参照株を対照として精度管理を行う。・・・
Ⅵ. 成績の公表
成績及び解析結果は、関連学会、学術誌に発表し、生産局畜産部衛生課発行の“家畜衛
生週報”、ならびに、動物医薬品検査所のホームページに公表する。
スクリーニング、ふるい分け(screening)
集団から特定の疾病を有する可能性が高い個体を選び出すための安価で簡便な
検査法を用いた検査。篩い(screen)
牛海綿状脳症(BSE)スクリーニング検査の検査結果について
症状を呈する
牛 ※1
搬入日
平成13年度10月18日
~3月31日
陰性
1,851
生後30ヶ月齢以 その他の
上の牛
牛
陽性
0
陰性
215,529
陽性
19
陰性
陽
性
306, 40
152
計
陰性
陽
性
523, 59
532
総計
523,
591
罹患率 ( incidence )
有病率 ( prevalence )
Morbidity
罹患率 (Incidence rate):一定期間における単位人口当たり,特定疾患をもつ
患者の比率
死亡率 (Mortality rate):一定期間における単位人口当たり,特定疾患で死亡
する比率
致命率 (Fatality rate):ある疾患に罹ったもののうち、その病気で死亡する者の
割合
リスク解析
獣医疫学会
陸生動物衛生規約(2007)
日本疫学会
諸外国における鳥インフルエンザの現状と対策
国際獣疫事務局(OIE)名誉顧問 小澤義博
茨城県の鳥インフルエンザ発生について
─感染経路究明チーム中間報告より─
動物衛生研究所 志村亀夫
獣医疫学のすすめ
元 動物衛生研究所九州支所 小河 孝 氏
風土病(endemic disease): ある集団や地域において,ある疾病が一定の有病割
合で存在すること
日和見病原体(opportunistic pathogen): 宿主の抵抗が他の疾病や薬剤で低
下した場合のみ疾病を起こさせる微生物
行動的病因(behavioral pathogen): 疾病や身体的機能低下のリスクを増大させ
る個人的な習慣やライフスタイル
家畜疾病の中で最も経済的被害が大きい家畜伝染病について、病原体の自然界における生
態、動物への侵入様式、体内での増殖、細胞あるいは組織に与える障害等を理解し、病原体
の取扱いや診断法、予防、蔓延防止の対策を習得することを目的とする。各論として、家畜法
定伝染病と小動物の代表的な伝染病について、その特徴を学習目標理解し、正確に診断し
対応するための知識を習得する。
家畜の届出伝染病およびその他の重要な伝染病について、動物種ごとに病原体の特徴、疫
学、臨床症状や組織病変の特徴、病原学的および血清学的診断法等を学び、家畜伝染病を
正確に診断し予防・治療を行うための知識を習得する。
E. Jenner(1749~1823)
イギリスの医師 種痘法を考案(1798)
産業革命進行中に人々を苦しめていた天然痘を予防
牛の乳搾りをする人に牛痘が感染し天然痘によく似た水痘
ができる。
彼の故郷では“この病気に1度かかると2度はかからないし,
天然痘にもかかりにくい”という言い伝えがあった。
ジェンナーはこれを確認するために,8才の少年で人体実
験を行い、人類初のワクチンを開発した。
約200年後の1980年に天然痘はこの世から根絶された。
◆種痘に対する一般市民の激しい反対◆
人間の体に獣の物質を注入することは、けがらわしい」
正常な自然の進行を干渉するもので、神の摂理に反してい
る
ペニシリンの発見
アレクサンダー・フレミング(イギリスの医者)
第一次大戦(1914年)で戦傷兵の治療 主な仕事は傷の洗浄と消毒
戦傷兵が罹患する恐ろしい感染症と直面した経験により、戦後、感染症治療を改善する薬剤の探索
リゾチームの発見(1919年)
リゾチームは動物の唾液や卵白などに含まれている殺菌作用を持つ酵素であるが、これは細菌を塗抹し
たペトリ皿に、フレミングがクシャミをし、数日後、クシャミの粘液が落ちた場所の細菌のコロニーが破壊さ
れているのを発見した。
ペニシリンの発見(1929年)
ブドウ球菌を培養中にカビの胞子がペトリ皿に落ち、カビの周囲のブドウ球菌が溶解しているのに気づい
た。
このことにヒントを得て、彼はアオカビを液体培地に培養し、その培養液をろ過したろ液に、この抗菌物質
が含まれていることをin vitroの実験で確認し、アオカビの属名であるPenicilliumにちなんで、'ペニシリン'と
名付けた(1929年)。
動物実験によりin vivoでの抗菌作用を1940年に発表。
第二次大戦で多くの戦傷兵が助かる。
1945年 ノーベル医学生理学賞受賞
ストレプトマイシンの発見
結核は産業革命のすすむ都市において労働環境の悪化、生活条件の悪さから労働者や市民に流行。
日本でも終戦直後まで死の病気と恐れられていた。
ワックスマン(アメリカの科学者)が結核菌(ペニシリンの効かない病原体)に対する抗生物質を発見
日露戦争でロシアが敗れ、ワックスマンはアメリカへ。
大学で4年間農学を学び、特に土壌中の微生物に関心を持つ。
土壌中の放線菌から抗生物質発見。
1946年 ストレプトマイシンの結核菌に対する臨床効果を発表
1952年 ノーベル医学生理学賞受賞