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太陽系外地球型惑星の
発見に向けたロードマップ
成田 憲保
目次: 地球型惑星の発見に向けて
1.
これまでに何がわかったか?
2.
今何をやろうとしているのか?
3.
将来何がどこまでわかるのか?
1.これまでに何がわかったか?

~1995年 惑星探索の暗黒時代

~2002年 惑星発見ラッシュの時代

~2006年 ホットジュピター高精度観測の時代
~1995年: 暗黒時代
「太陽系以外に惑星はあるのだろうか?」
<主な探索例>

バーナード星 (van de Kamp 1969)

カナダ 視線速度観測チーム (Campbell et al. 1988,
Walker et al. 1992)
どれも後に他の観測によって否定された
~2002年: 開拓時代
系外惑星の発見年 (系外惑星カタログより)
(1989年の1個はbrown dwarf)
Breakthrough: 51 Peg. bの発見 (1995)
Queloz (左) Mayor (右)
51 Peg. の視線速度変化
コラム:

Absorption Cell法




視線速度の決定法
恒星の光を気体の箱に通す方法
装置簡単・安価、解析複雑
吸収線の多い星(FGK型星)に適している
Simultaneous Reference法



同時にファイバーで参照光を撮る方法
装置大規模・高価、解析簡単
吸収線があればOK(M型星でも測定可能)
視線速度法の成功: ホットジュピターの発見

スイス・フランス SR法による視線速度観測
(Mayor & Queloz 1995, Nature, 378, 355)

アメリカ I2 Cell法による視線速度観測
(Marcy et al. 1997, AJ, 481, 926)

公転周期 4.2日、 最小質量 0.47 MJ

最初のホットジュピターの発見
ホットジュピター: 太陽系にはない惑星
太陽系
51 Peg.
地球軌道
Marcy et al.
次々と新しい惑星が発見された
系外惑星の発見年 (系外惑星カタログより)
(1989年の1個はbrown dwarf)
観測のバイアスと限界
重くて近くにある
惑星が見つかりやすい
系外惑星の 軌道長半径 - 最小質量 分布
(系外惑星カタログより)
開拓時代の成果

およそ100個の系外惑星の発見

太陽系とは全く違う世界がある

しかし個々の惑星の性質はまだよくわからない
~2006年: 量から質の時代へ
Hubble Space Telescope
(口径2.4m、紫外・可視・近赤外)
Spitzer Space Telescope
(口径85cm、近赤外~遠赤外)
Breakthrough (1): トランジット惑星の発見
恒星の明るさが
ちょっとだけ暗くなる
2006年11月9日 「ひので」撮影
水星のトランジット
Charbonneau et al. (2000)
Breakthrough (2): 宇宙望遠鏡の活躍
Brown et al. (2001)
Hubbleによる可視光観測
0.1%以下の精度達成
Richardson et al. (2006)
Spitzerによる中間赤外線観測
惑星の熱放射の検出
Breakthrough (3): RV測定の高精度化
RV決定精度 ~1m/s以下の時代へ

Keck 10m telescope/ HIRES

La Silla 3.6m telescope/ HARPS
Lovis et al (2006)
3つの海王星型惑星の視線速度曲線 →
高精度観測の成果

ホットジュピターの諸性質を明らかにした

ただし、トランジット惑星のみ

大きさ、質量、密度(視線速度、測光)


大気成分、雲の存在
(宇宙望遠鏡によるTransmission Spectroscopy)
昼と夜の温度差
(宇宙望遠鏡による熱放射の観測)
これまでにわかったこと

太陽系以外にも惑星はある

多様な惑星系がある

トランジット惑星は貴重

現状の機器でホットジュピターには手が届く

まだ地球型には足りないが、方法論はわかった
2.今何をやろうとしているのか?

何を目指すか


観測時間や効率との相談


明らかにしたいサイエンスは何か
どういう戦略が一番の近道か
足りないものは何か

今後作るべき(作られる予定の)観測機器は何か
明らかにしたいサイエンス
ハビタブルゾーンにある地球型惑星はあるのか?
<答えに必要な情報>

ハビタブルゾーンの位置(液体の水はあるのか)

惑星の軌道長半径、質量(、大きさ、密度)
→ トランジット + 視線速度が必ず必要
→ この2つを高精度で観測できることが鍵となる
コラム:
ハビタブルゾーン
恒星のまわりで液体の水が存在する位置
恒星の質量と年齢によって変わる
トランジット vs 視線速度

どちらで探してどちらで確認するか?


トランジットで探して視線速度で確認するのが合理的
必要なトランジット観測計画

十分な測光精度 (~0.05%→宇宙空間なら可能)

十分な観測期間 (数年以上→専用望遠鏡)

適切な観測領域、広い視野
(なるべく多くの地上で追観測しやすいターゲット)
3つのトランジット観測計画とその戦略
COROT
Kepler
TESS
打ち上げ(予定)
2006年12月
2009年
2009年
観測視野
ターゲット
2.82 deg2(銀河中心)
7 < mV < 15
~1.2 * 105 個
102 deg2(オリオン腕)
9 < mV < 15
~1.3 * 105 個
3 * 104 deg2 (全天)
7 < mV < 12
~ 106 個
検出目標
近傍の明るい星
super-Earth
数個
mV ~ 12 のG型星
Earth-like planet
~50個
mV ~10 の M型星
Earth-like planet
-
観測期間
2.5 年
4年
-
コスト
~260億円
~600億円
-
COROT
地球の数倍の大きさの惑星まで
検出可能

フランスが中心となって打ち
上げたヨーロッパの衛星

30cmの鏡

極周回軌道で150日間ずつ
同じ領域を観測し続ける
夏
冬
Kepler

NASAが計画している衛星

1.4mの鏡

太陽中心軌道で4年間同じ
領域を観測し続ける
水星の大きさの惑星まで検出可能
50個程度の地球サイズの惑星発見を期待
トランジット観測からわかること
トランジットを検出することで

公転周期 P

見かけの大きさ Rp/Rs
さらに主星のスペクトル型から

主星の質量 Ms

主星の半径 Rs
が決まる → 軌道長半径 a (と大きさ Rs)がわかる
トランジット観測の困難: False Positive
False Positiveの例

恒星活動

食連星系(一方が暗いM型星など)

観測機器のノイズ
これまでのトランジットサーベイの経験から、検出されたトランジッ
ト的現象の80~90%はFalse Positiveであることがわかっている
→ 観測すればすぐ地球型惑星が見つかるわけではない
惑星検出を確認する: 2つの方法


地球による太陽の視線速度変化を検出する

これを1年間モニターする

長期間にわたって安定した観測機器が必要
トランジット中のRossiter効果を検出する

トランジットの継続時間は12時間程度

30mクラスの大型望遠鏡が必要

G型より軽い恒星では難しい
(どちらも10cm/sレベルの決定精度が必要)
フォローアップの実現可能性
観測期間による限界

緑:Keplerで12等の恒星の
まわりで検出できる惑星の
領域

赤丸:ハビタブルな地球型
惑星のある領域

実線:現在の観測機器で
フォローアップできる下限

点線:30m級の望遠鏡で
フォローアップできる下限
測光精度による限界
Gaudi & Winn (2007)
フォローアップ計画:
今後の課題
現段階でできるのは質量の上限をつけること

HARPS-NorthがKeplerのフォローアップ観測機
器として検討中

30mクラス望遠鏡にSR法の観測機器を取り付け
るというアイデアがある
惑星質量を決定できるのはこれらの望遠鏡が稼動した後
地球型惑星発見までの必要事項
トランジット観測宇宙望遠鏡の打ち上げ
1.

トランジット現象候補の検出

False Positiveを取り除く

候補天体の決定
フォローアップできる視線速度観測装置の開発
2.

現状では質量の上限値(地球型である証拠)まで

30mクラス望遠鏡 + SR法の観測機器の開発

視線速度測定(長期モニター or Rossiter効果)
JWSTの与える影響

NASAが計画しているハッ
ブル望遠鏡の後継機

赤外線望遠鏡

6.5mの鏡

2013年6月打ち上げ予定

L2点で5年~の観測
JWSTで予想される成果
H2O、CO、SiOなどが検出可能
Tinetti et al. (2007)
Richardson et al. (2007)
赤外で予想されるCOとH2Oによる追加吸収
ホットジュピターでシリケイトの雲を検出
地球型惑星探査研究の近未来
トランジット観測宇宙望遠鏡の打ち上げ(2009年~)
1.

Keplerなど
惑星質量の上限の設定(2011年~)
2.

Keckなど
候補天体の大気組成探査(2013年~)
3.

JWSTなど
惑星質量の決定(2015年~)
4.

HARPS-North、TMTなど
これらの研究でわかること
惑星の存在確率


恒星のスペクトル型との相関があるのかどうか
惑星の軌道と質量の分布


ハビタブルゾーンに地球型惑星はあるのかどうか
惑星の赤外領域の(差分)スペクトル


H2O、COなどの分子があるのかどうか
3.将来何がどこまでわかるのか?

何を目指すか

生命の痕跡は見つかるかどうか

どうやって見つけるか

必要な観測機器は何か
情報を持つ光


生命由来の物質の吸収線

水だけでは証拠としては弱い

オゾン、酸素、クロロフィルがよく挙げられる
(恒星を除いた)反射光 > 透過光 > 熱輻射
惑星からの反射光
Kiang et al. (2007)
恒星のスペクトル型ごとのハビタブルゾーンの惑星が受ける光(反射光の形状)
(M型星まわりの地球型惑星ではクロロフィルの差分吸収が見えやすい)
反射光は直接見れない

可視・近赤外では恒星の光の方が106倍以上強い

恒星の光を取り除く技術が必要

ナリング干渉計(国立天文台などで研究開発中)
地球型惑星探査研究の将来


何を目指すか

生命の痕跡を見つける

可能性の高いのは光合成生物
どうやって見つけるか


反射光
必要な観測機器は何か

恒星の光を消す干渉型の可視・赤外分光器
地球型惑星探査研究の将来
1.
ハビタブルな地球型惑星候補の決定(~2020年)
2.
干渉型分光器の開発
3.
バイオマーカー探し