Transcript 藻谷浩介氏講演会資料
1 里山資本主義と 伊勢原の活性化 2015年2月27日 株式会社 日本総合研究所 調査部 主席研究員 株式会社 日本政策投資銀行 地域企画部 特任顧問 も た に 藻谷浩介 [email protected] 伊勢原市で起きてきたこと (国勢調査結果を、国立社会保障・人口問題研究所が補正した値) 市内在住者(外国人含む):2000年→10年 +1.5千人 人口は微増していた 100年で現役世代が6割減!になるペースの、ゆっくりした減少 0-14歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2000年 15.0千人→2010年 13.8千人 △1.2千人 △8% 15-64歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2000年 72.6千人→2010年 67.4千人 △5.2千人 △7% 65歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2000年 11.9千人→2010年 19.9千人 +7.9千人 +67% ↑その中の75歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2000年 4.7千人→2010年 7.1千人 +3.4千人 +72% 19 伊勢原市で今起きていること (人口流出入を見込んだ、国立社会保障・人口問題研究所の予測) 市内在住者(外国人含む):2010年→20年 △1.6千人 横ばいに近い微減 100年後には現役世代がゼロ!になるペースの、急速な減少 0-14歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2010年 13.8千人→2020年 11.7千人 △2.1千人 △15% 15-64歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2010年 67.4千人→2020年 61.0千人 △6.4千人 △9% 65歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2010年 19.9千人→2020年 26.8千人 +6.9千人 +35% ↑その中の75歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2010年 8.1千人→2020年 13.7千人 +5.6千人 +69% 20 東京都で今起きていること (人口流出入を見込んだ、国立社会保障・人口問題研究所の予測) 都内在住者(外国人含む):2010年→20年 +15.6万人 2000→2010年の +110万人から、大幅なペースダウン 250年続けば現役世代がゼロ!になるペースの、不意打ちのような減少 0-14歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2010年 149万人→2020年 142万人 △6.5万人 △4% 15-64歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2010年 899万人→2020年 865万人 △34.1万人 △4% 65歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2010年 268万人→2020年 324万人 +56.2万人 +21% ↑その中の75歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2010年 123万人→2020年 171万人 +47.8万人 +39% 21 中華人民共和国で今起きていること 22 (戸籍のない人口を計算に入れた、国際連合人口部の予測) 中国在住者(外国人含む):2010年→20年 +73百万人 17年間で日本が一個増えるというペースの増加 2000→2010年の +135百万人から、突然の増加終了へ 0-14歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2010年 2.5億人→2020年 2.6億人 +15百万人 +6% 15-64歳人口の増減: ↓絶対数 ↓増減 2010年 10.0億人→2020年 10.0億人 +4百万人 +0% 65歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2010年 1.1億人→2020年 1.7億人 +54百万人 +48% ↑その中の75歳以上の人口: ↓絶対数 ↓増減 2010年 0.4億人→2020年 0.5億人 +10百万人 +24% 高齢者が増え現役は減る伊勢原 23 高齢者が増え現役は減る東京都 24 数字には居住外国人を含む 高齢者が増え現役は減る中国 数字には居住外国人を含む 25 安定を実現した長野県下條村 26 数字には居住外国人を含む 現役世代の減少と高齢者の増加 29 6 5 歳 以 上 人 口 の 増 減 率 ( 2 0 1 0 → 4 0 年 ) 175% 150% 生産年齢人口の減少と 高齢者の増加(今後30年間) 全国の市町村の比較 125% 国立社会保障人口問題研究所 2013年予測 100% 高 齢 者 が 急 増 75% 50% 25% 0% 現役世代が減少 -25% -50% -40% -30% -20% -10% 15-64歳人口の増減率(2010→40年) 0% 現役世代の減少と高齢者の増加 30 6 5 歳 以 上 人 口 の 増 減 率 ( 2 0 1 0 → 4 0 年 ) 175% 150% 生産年齢人口の減少と 高齢者の増加(今後30年間) 全国の市町村の比較 125% 100% 大井 愛川 75% 50% 松 三 田 浦 二 宮 0% 山北 真鶴 -25% 箱 根 湯 河 原 -50% 青葉 宮 前 緑 川崎(市) 神奈川 幸 東京特別区 戸塚 葉 茅ヶ崎 山 鎌 逗 倉 平保 塚土 大 南 子 磯 寒ヶ 旭 川谷 -30% 鶴見 藤沢 中 小田原 -40% 港 北 麻生 西 泉 横 須 賀 高津 横 浜 金 瀬 沢 谷 栄 港南 磯子 清川 中 多 原 摩 伊 座勢 大 厚 相 海 間原 和 木 模 老 原 名 国立社会保障人口問題研究所 2013年予測 25% 都築 秋田県 大潟村 -20% 川崎(区) 長野県 下條村 現役世代が減少 -10% 15-64歳人口の増減率(2010→40年) 0% 高 齢 者 が 急 増 同じグラフで世界を比較すると… 4.0 6 5 歳 以 上 人 口 の 増 加 倍 数 ( 2 0 1 0 → 4 0 年 5.7 シンガポ ール 生産年 齢 人口減 少 3.5 3.0 31 生産年 齢 人口増 加 イラン メキシコ 韓国 ブ T ベ トナ ム ラ ジ 日本 h 1975-2005 ル サウジ アラビア マレーシア インドネシア バング ラデシュ フィリピン 香港 a 中国 i 日本 日本 ト 1965-1995 日本 1960-1990 ル 台湾 l 日本 1970-2000 コ 日本 旧ソ連中央 アジア5ヶ国 1980-2010 1985-2015 パキス タン インド a 2.5 nD カリ ブ諸国 日本 1990-2020 エ ジプト 全世界 ニュー イスラエ ル Fde カナ ダ イスラエ ル ジーランド +パレステ ィナ スペ インi n オーストラリア 日本 1995-2025 米国 オランダ nm 2.0 イ アルゼンチン オース l a ベ ルギ ー タ トリア フランス Source: World Population Prospects: 日本 2000-2030 リ ar スイス 伊勢原市 英国 ア The 2012 Revision, United Nations nk 日本 2005-2035 スウ ェーデン 1.5 フィン d ドイツ ランド 今の日本 ロシア デン 2010-2040 マーク 生産年齢 人口増減と老年人口 増減 F ウ クライナ 1.0 e 2010→2040年の人口の変化 -40% 箱根町 タイ -20% 下條村 d 0% 20% 40% 60% e 15-64歳人口の増減率(2010→40年) r 80% 人口減少で急増した空き家 32 空き家の圧倒的多数は 地方ではなく大都市圏に存在 33 東京都にある家100軒のうち9軒 は、買い手・借り手がない空き家 34 買い手・借り手がない空き家は 圧倒的に大都市圏に集中 35 36 37 38 39 出産適齢期の女性が働 いていない都道府県の方 が 子供が少ない傾向にある 止められないこと・できること 41 × 止められないこと → 今の住民が毎年1歳ずつ歳を取っていくこと → (多くの)若者が地域外に就職して出て行くこと △ 変えられること → これまでは一度出て行ったきり帰ってこなかった 若者たちを、今後は工夫次第で呼び戻せる → 子育て世代の支援で、出生率を高くできる 「里山資本主義」こそ ○ むしろ前向きにできること これらを進めるための → 子育てしながら働く若い世代を呼び込める → 無病息災で天寿を全うする高齢者を増やせる カギとなる発想 → 来訪・滞在・短期定住する外来者を増やせる “里山資本主義”とは何か? 42 「マネー資本主義」の欠陥を補うサブシステム (保険) 資源+お金+善意を循環させ、社会を未来に続ける ! 里山や離島に眠る、金銭換算すると無価値の資源 ①耕作放棄地、②立木、③半端モノ農産品、④退職者、⑤野獣… ! でもそれを資本として活かすと、水/食料/燃料 +αを自給+物々交換できる (←農山漁村では常識ですが…) ① 食糧+エネルギーの自給率向上で、外に出て行くお金が減る ② 物々交換で絆が強まる ③ 自給+絆で、天災に強い地域となる ! 無価値の資源を資本として活かすと、工夫次第で外からも っとお金を稼げ、そのお金を地域内で回せる ④ 6次産業がしみじみと外貨を稼ぐ ⑤ 地消地産(=地元民と 観 光客が、地元産を消費すること)で、その外貨が地域内で回る ⑥ 地元産自然エネルギーを都会に売る ⑦ 若者の雇用が増える マネー資本主義と里山資本主義 43 動機 目標 戦略 マネー資本主義 里山資本主義 自分が、いま、一番になる 社会が滅びずに続いていく お金儲けの一番を目指して 代わりのない中継者になる 際限なく稼ぎ、貯め込む = 稼いでは回しバトンをつなぐ 粗暴バージョン: 素朴バージョン: 他者/他集団から奪い取る 何でも自給自足する 知能バージョン: 成熟バージョン: 未来/次世代から搾取する ←簿外資産を浪費して蓄財する 循環・再生が可能な範囲で ほどほどに稼ぎ、使う (地下資源、水、土壌、大気、子供、絆 ...) ← 使ったものは元に返す ← インフラと清浄な環境を残す ←借金や汚染物質を後世に残す 手法 等価交換 / 金融投資 自由競争 / リスクの個人化 物々交換・贈与 / 実物投資 協働 / リスクの社会化 里山資本主義・エネルギーの大逆転 44 × 20世紀: 建物は鉄筋コンクリか新建材プレハブ ○ 21世紀: 集成材を使った木造近代建築の時代 → 燃えない、丈夫で長持ちで地震に強い、集成材建築が新登場 → 欧州では7階建てや9階建ての木造高層建築も増加中 → 地元産集成材を使えば、山の木が再び宝に化ける → 集成材の副産物である木屑やチップを燃やすと、灯油より 何割も安いコスト(場合により半額)で暖房や発電ができる ! ただし問題は、日本の施主がほとんど木造建築の 技術革新に気づいておらず、集成材が使われず、 木屑も発生しないので、発電もできないこと。 林業先進国 (中欧の)オーストリア 46 日本より豊かな中欧の小国: 首都圏も関西圏も ! 人口は中国5県程度、一人当たり所得は1.5倍 自然に比べて人口が多すぎるので → 天然資源もないアルプスの山国だが、日本より豊か →逆立ちしてもオーストリアにはなれない 日本に対しても貿易黒字(スワロフスキーのガラス工芸が有名) ! 過去10年ほどで林業大国になった しかし、山間過疎地なら 人口が少なく木も水も多いので オーストリアも超えられる。 → → → → 年間で自然に再生される森林資源の70%を利用 木は集成材に加工し、低層・中層建築は木造が当たり前に 年間に1兆円弱の木材資源を輸出し、外貨を稼ぐ 林業は収入の高い職業として若者に人気 ! 自然エネルギー大国 過疎だからこそできる! → 木屑を使った木質ペレットの利用が普及、価格も石油の半分 → エネルギーの3割弱が自然エネルギーで自給されている → ペレットストーブやペレットボイラーを製作する企業も成長 里山資本主義・産業の大逆転 47 × 20世紀: 「ハイテク工業」で経済成長・雇用増 ○ 21世紀: 「6次産業」で循環・再生の拡大 1次(栽培/漁獲)×2次(加工)×3次(ブランド化)=6次産業 → ハイテク産業地域の苦境:商品陳腐化加速・低収益・雇用減 → 地元の農水産品に根ざしたブランド品や集客交流は好調 → 国際競争に強いのはスイスや仏伊など6次産業の強い国 → 世界中から一番安くて大量に作られたものを買ってくる のではなく、地元産の質を上げてもっともっと使う生活へ 観光客に他所産の食材・食品を出していないか? 地元民は、地元産を買っているか? 何も考えずにお金を都会や海外に戻していないか? 地域外に出て行くお金を減らそう 伊勢原市民1人当たりの 50 年間のモノ消費は120万円程度 地元産のブランドを向上し 売上 もっと「外貨」を獲得! → その1%=1.2万円 地元産品消費を増やせば 賃上げ! 地域か 地域か 地域の自 地域内 地域の 都会に預け+12億円が地元経済に回ることになる 地産地 儲けら資金 ら資金 然エネル 向けは コスト ず地域内に 業者に 消物々 兼業奨励! → 給与+福利厚生400万円/人の 調達! 調達! ギー活用! 安く! 発注! 再投資! 交換を 地域通貨支給! 雇用を300人分増やせる 促進! 内部 配当 金利 光熱 地代 設備 原材 給料 留保 費 家賃 費 料費 伊勢原市民1人当たりの 年間のエネルギー支出を30万円とすると → その1%=3千円だけ省エネを進めれば 地域外に出て 受け取った人が 地域内の誰かの +3億円が地元経済に回ることになる 行ってしまう 地域内でまた使う 貯金に回る → 給与+福利厚生400万円/人の 地域内では循環せずに 多くは結局、地域内で 地域内で循環し、雇用と 雇用を75人分増やせる は使われないまま 若者人口を増やす! 都会や海外を活性化させる 51 「里山資本主義」的地域活性化を ① 安さでは勝負せず高品質の商品で外貨獲得: 当地独自の生活文化に支えられた、ハイセンス・少量 ・高単価の「地域ブランド商品」「生活文化観光」で 外から稼ぐ(=「いま」「ここ」にしかないものを売る) 。 ② お金と遊休資産をもっと地域内でぐるぐる回す: 地域内産の食材、建材、人材の質を上げて地元で使い 倒し 、未就労女性や障碍者を雇用し、時短で「時給」 を高め、兼業を奨励し、空き不動産は安く賃貸する。 ③ 省エネ+自然エネ利用でエネルギー代を削減: 建物の改築・断熱改修を進めて大幅な省エネを実現。 建材にはなるべく地元産材を使い、木屑を燃料利用。