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2013年11月22日
2013年度 業務改善コンテスト
材料科学科・学生実験科目における
学生目線の改善活動とその教育効果
教職員が一体となって取り組みました!
宮沢靖幸*,塚本康博**,喜友名浩史**,山田豊*
*工学部材料科学科
**教育支援センター技術支援課(材料科学科)
金属材料工学科,材料科学科,金属材料工学専攻を卒業・修了し,社会で活躍
している全ての卒業生に感謝します.
参考文献
1)宮沢ら,東海大学金属材料工学科における専門実験科目の授業改善活動,日本金属学会,65巻,pp.811-814(2001)
2)宮沢ら,東海大学JABEE「材料プログラム」に向けて,日本金属学会講演概要,Vol.131, pp.116-116(2002)
3)宮沢ら,東海大学工学部材料科学科の技術者教育への取り組み,日本金属学会講演概要,Vol.136, pp.225-225(2005)
4)喜友名ら,東海大学JABEE「材料プログラム」への取り組み(1) ,日本金属学会講演概要,Vol.137, pp.374-374(2005)
5)宮沢ら,東海大学JABEE「材料プログラム」への取り組み(2) ,日本金属学会講演概要,Vol.137, pp.374-374(2005)
6)宮沢ら,材料科学科・学生実験科目における学生目線の改善活動とその教育効果,東海大学教育研究所 研究紀要,第21号投稿中,(2013)
工学部 材料科学科
1
発表概要
2
現在の学生を指導し,観察すると以下に示す様な幾つかの特徴的な学生気質が確認される.
(1)学生間の「やる気」や「勉強への取り組み姿勢」の極端な差.
(2)壁にぶつかり,勝負に負けるとすぐに諦める.
特に「すぐに諦める」学生気質は,従来から確認されている特徴の一つであるが,近年,簡
単に諦める学生数が増加している.この「すぐに諦める」学生気質への対応は極めて困難で
ある.一方,学生実験は,古くから理工系専門分野の諸現象や基礎を体験しながら学ぶ重
要科目である.そこで,本研究では,前述した学生の特徴(1),(2)を考慮し,学科基幹科目
である学生実験科目の教職員一体改善活動とその教育効果について検討した.
問題点と考えられる原因を整理し,教職員一体で改善活動を実施した.具体的には,「報
告書作成指導の充実」と「実験機材の更新と技術職員による新たな機材の創作と製作」であ
る.原因の整理には学生からの聞き取りや授業アンケート集計結果を活用した.また,改善
活動の効果は,授業アンケートや卒業アンケートにあたってのアンケート集計結果により評
価し,考察を加えた.
工学部 材料科学科
序論1,材料科学科カリキュラム
工学部の使命は,社会貢献できる技術者を世の中へ送り出す事である.
「カリキュラムの改善」,「授業運営方法の改善」,「教職員協力による学生実験運営方法の
改善」などに取り組み続けている.
工学部 材料科学科
3
4
序論2,これまでの標準的な学生実験予定表
実験題目
転位の観察
形状記憶合金
高温超伝導材料
拡散
セラミックス材料のX線回折分析
半導体実験
バイメタルと熱膨張
凝固時の固液界面形態
アルミニウム-シリコン合金の組織改良
鋼の焼入れ性
実験指導
<前任>
<及川>
所属
研究室
10/3
10/10
10/17
10/24
11/7
11/14
11/21
11/28
12/5
12/12
ガ
イ
ダ
ン
ス
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
J
A
B
C
D
E
F
G
H
I
I
J
A
B
C
D
E
F
G
H
H
I
J
A
B
C
D
E
F
G
G
H
I
J
A
B
C
D
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F
F
G
H
I
J
A
B
C
D
E
E
F
G
H
I
J
A
B
C
D
D
E
F
G
H
I
J
A
B
C
C
D
E
F
G
H
I
J
A
B
西
<ブンダリッヒ>
<下廣>
<蓑田>
<石井>
山田
宮澤
松下
<岩瀬>
<中野>
<吉田>
<竹本>
<森下>
西
12/19
1/9
B
C
D
E
予
F
備
G
日
H
I
J
A
20年近く前の学生実験は,実験機材も古く,授業終了時刻が過ぎても実験が成功するまで
何回もやり直し,報告書は実験終了後1週間以内に提出し,評価を受けていた。当時,一学
期で10テーマの実験を実施していた。
工学部 材料科学科
序論3,これまでの標準的な学生実験実施方法
5
予習 教科書や参考文献を利用し、分からないことをはっきりさせておく。
実験準備
白衣あるいは作業着、靴、名札、教科書、実験ノート、関数電卓、グラフ(A4
正方 1mm 升目、片対数、両対数)用紙、A4 レポート用紙およびテンプレート、
雲形定規等を準備すること。
「4.実験実施のスケジュール」と「5.2.準備(実験
が始まる前に必ず行っておくこと)
」を参照
実験 「5.1.出席について」と「5.3.実験中」を参照
後片付け 「5.4.整理整頓」を参照
出席印受領 「5.1.出席について」を参照
レポート作成 「6.報告書(レポート)作成」を参照
レポート提出
1 週間後、所定の時刻に所定の場所に提出すること。
レポート内容のチェックを受け、レポートの判定結果を確認すること。
指定された日時に各実験担当者の所に直接出向き、判定結果を聞くこと。
レポート内容のチェックを受ける際、口頭試問を行うので注意すること。
レポートの再提出
合格の場合
不合格の場合
所定の時刻に各実験担当者に直接提出すること。
指定された日時までに実験に関連した内容を復習すること。
原則として 1 週間以内にレポート内容の手直しを行うこと。
報告書が受理されるまでの最短
期間は実験終了後1週間であり,
不備が多い学生は受理まで3回
以上のやり取りが行われる。
このやり取りが学生の実力(学
力ではない)を向上させるために
必要である事は,工学系で教育
を受けた者には容易に理解でき
る事実であり,学生実験科目で最
も重要な点である。
レポート合格印受領
10 テーマ(実験題目)全てが終了し、10 テーマのレポート合格印を受領した後、
「出欠お
よびレポート提出表」を事務室へ提出すること。
工学部 材料科学科
ところが,報告書作成や実験指
導者とのやり取りを容易に諦めて
しまう学生が急増している。
序論4,問題点の整理 と 改善活動の目標
6
(1)学生間の「やる気」や「勉強への取り組み姿勢」の極端な差.
やる気を感じられない学生.自己形成科目(Ⅴ区分科目,42単位)を専門以外で修得.
授業へ出席しない.連絡を取る事ができない.
(2)壁にぶつかり,勝負に負けるとすぐに諦める.
指導(説教?)すると大学に登校しなくなる.
試験で低い点数を取ると単位取得を諦める.
一方,専門科目と連動した学生実験科目で材料科学分野を深く勉強し,シラバスに示した達
成度に到達する事によって学生の実力が著しく向上する事は周知である.また,この著しい
実力向上が最終学年で履修する卒業研究へ繋がっており,重要な科目である.
そこで,材料科学科では,前述した学生の特徴(1),(2)を考慮し,学科基幹科目である学
生実験科目の改善活動に取り組んでいる.
本研究では,教職員が協力し,取り組んだ学生実験科目の学生目線の改善活動を紹介し,
その教育効果に考察を加える事を目的とした.
工学部 材料科学科
これまで継続的に実施してきた改善活動1
7
1. TA(教育補助学生)の効果的な活用
専任教員 非常勤教員 TA(教育補助学生) で分担
TA(教育補助学生)が実験テーマの半数を担当する状態が適性と考えている.
TAは,担当教員から充分な指導を受け,実験を担当している.
2. 授業アンケートの有効活用
春学期に開講した授業科目の授業アンケート集計結果を秋学期開講時に学生へ効果的
にフィードバックする事で
「学生実験科目は報告書作成に時間を要し,単位修得までに多くの努力が必要である
が,理工系の学生にとって重要な報告書を期限内にまとめる習慣が身につく基幹科目で
ある」事を理解させる改善活動も実施した.
3. 指導教員制との連動と履修指導の工夫
目的意識を持った継続的な履修指導の実施が必要!
セメスター制とリベラルアーツ型教育の大きな弊害と考えており,全学に及ぶ大きな改革
の反省を行わない大学の姿勢が弊害を拡大していると考えている。
弊害低減法,お勧めの時間割 + 指導教員による目的意識を持って継続的履修指導
指導教員 = 学科基幹科目(ゼミナール科目など)の指導教員
指導教員制を学科基幹科目と連動させ,学生指導をさらに強化している。その結果,毎
学期,該当するセメスターに在籍するほとんどの学生が学生実験科目を履修している。
工学部 材料科学科
これまで継続的に実施してきた改善活動2,推奨時間割
材料科学科2年生春学期(3セメスター)のお勧め時間割
時
この連携によって学生指導
をさらに強化する.
火
水
木
金
1
材料化学
材料化学
2
英語リーディング
&
ライティング 2
英語リーディング
&
ライティング 2
材料科学ゼミナール1担当 3
教員が3セメスター指導教
員となる.
月
材料物性工学
材料科学計算
4
材料科学ゼミ
ナール 1
5
セラミックス工
学
材料科学実験 1
材料科学実験 1
高温加工学
金属学
高温材料科学
土
スーパーマテリア
ルズ
工科の微分方
程式 1
無機材料工学
6
は必修科目です!
と合わせて 最大24単位の修得を目指そう!
工学部 材料科学科
8
学生実験科目における問題点の整理と改善提案
9
(1)実験時にはその内容を充分に理解しているが,理解した内容を報告書にまとめる事が
出来ず,時間が無駄に経過し,報告書の完成を諦める場合がある事も明らかになってきた。
本学科では,一週目に実験を実施し,二週目に報告書作成方法などを指導する授業スタイ
ルを導入した。実験テーマ数は減少するが,綿密な報告書作成指導が可能となり,学生に
は好評であった。
(2)実験機材が古く,授業時間を超過する様な長時間に渡る実験があり,実験の内容が理
解しづらい。
実験機材の更新
JABEEによる外部審査時にも問題点として指摘され,改善が勧告さた
一方,単純な機材の更新だけでは効率的な実験実施や学生の理解度向上には結びつかな
い事も周知である。そこで,技術支援課・材料科学科担当の技術職員と相談を重ね,購入し
た機材をより効果的に運用するための様々な工夫に着手した。
工学部 材料科学科
学生実験科目における実験テーマ数と授業運営方法
授業
回数
実験テーマ数
10 テーマ
6 テーマ
8 テーマ
9 テーマ
2007 年度まで
2008~2011 年度
2012 年度
2013 年度
1
ガイダンス
ガイダンス
ガイダンス
ガイダンス
2
実験 1
実験 1
実験 1
実験 1
3
実験 2
報告書作成指導日 1
実験 2
実験 2
4
実験 3
実験 2
報告書作成指導日
報告書作成指導日
5
実験 4
報告書作成指導日 2
実験 3
実験 3
6
実験 5
実験 3
実験 4
実験 4
7
実験 6
報告書作成指導日 3
報告書作成指導日
報告書作成指導日
8
実験 7
実験 4
実験 5
実験 5
9
実験 8
報告書作成指導日 4
実験 6
実験 6
10
実験 9
実験 5
報告書作成指導日
実験 7
11
実験 10
報告書作成指導日 5
実験 7
報告書作成指導日
12
報告書指導日
実験 6
実験 8
報告書作成指導日
13
実験予備日
報告書作成指導日 6
報告書作成指導日
実験 8
14
実験予備日
報告書指導日
報告書指導日
実験 9
実験予備日
実験予備日
報告書作成指導日
15
工学部 材料科学科
10
マークシート式授業アンケート設問4
「与えられた課題に取り組む時間が十分にあったか」に
対する回答集計結果
工学部 材料科学科
11
学生実験科目における問題点の整理と改善提案
12
(1)実験時にはその内容を充分に理解しているが,理解した内容を報告書にまとめる事が
出来ず,時間が無駄に経過し,報告書の完成を諦める場合がある事も明らかになってきた。
本学科では,一週目に実験を実施し,二週目に報告書作成方法などを指導する授業スタイ
ルを導入した。実験テーマ数は減少するが,綿密な報告書作成指導が可能となり,学生に
は好評であった。
(2)実験機材が古く,授業時間を超過する様な長時間に渡る実験があり,実験の内容が理
解しづらい。
実験機材の更新
JABEEによる外部審査時にも問題点として指摘され,改善が勧告さた
一方,単純な機材の更新だけでは効率的な実験実施や学生の理解度向上には結びつかな
い事も周知である。そこで,技術支援課・材料科学科担当の技術職員と相談を重ね,購入し
た機材をより効果的に運用するための様々な工夫に着手した。
工学部 材料科学科
実験機材の更新などに伴う改善活動事例1,研磨台
工学部 材料科学科
13
実験機材の更新などに伴う改善活動事例1,研磨台
工学部 材料科学科
14
実験機材の更新などに伴う改善活動事例1,研磨台
工学部 材料科学科
15
実験機材の更新などに伴う改善活動事例1,研磨台
工学部 材料科学科
16
実験機材の更新などに伴う改善活動事例2,密度測定
工学部 材料科学科
17
実験機材の更新などに伴う改善活動事例3,
工学部 材料科学科
18
実験機材の更新などに伴う改善活動事例4,
19
改善活動に技術職員が積極的に参加し,技術職員が「学生の出席管理」や「報告書提出管
理」などの運営業務をサポートできる様になると,技術職員から学生実験をより効果的に運
営するための改善が提案される様になった。以下に事例を示す。
(1)これまで研磨台周辺には手元を照らすライトは無かったが,提案により,手元照明用の
ライトを設置した。
(2)溶接実験中に保護用エプロンや防護面を装着して実験場へ移動する必要がある。その
移動経路に存在した段差が実験中の重大な事故の原因になると判断し,段差を解消した。
以上述べた様な技術職員の自発的な授業運営方法に関する改善活動は,本活動で得られ
た大きな成果の一つと言える。今後のさらなる発展が期待されている。
工学部 材料科学科
20
改善活動の効果
(1)授業の予習、復習、レポートや課題への取り組みなどにあてた週当たりの平均時間と回
答した学生の割合
授業科目名
回答割合(%)
5時間以上 3~5時間未満 1~3時間未満 1時間未満 なし
材料科学実験1
(2時間)
金属組織学
(8時間)
(2)卒業にあたってのアンケート調査
において,材料科学科職員の支援が
役に立ったと感じた卒業生の
割合の推移
工学部 材料科学科
55
29
8
3
2
14
13
44
23
7
まとめ
21
本活動では,材料科学科・学生実験科目における学生目線の改善活動とその教育効果に
ついて改善事例を報告し,その効果を検証した。その結果,以下の結論を得た。
(1)現在の学生の問題点は,『学生間の「やる気」や「勉強への取り組み姿勢」の極端な差』
と『壁にぶつかり,勝負に負けるとすぐに諦める』である事が判った。
(2)技術支援課・材料科学科担当の技術職員の協力により完成した様々な実験機材の活
用が,学生実験の効率化に結びつき,学生のモチベーション向上にも結びついたと考えられ
る。
(3)技術支援課・材料科学科担当の技術職員の自発的な授業改善活動により,学生実験
科目の授業改善がさらに進んだ。
(4)「簡単に諦める」要因の一つと考えた報告書作成について,テーマ数の減少とそれに伴
う指導時間の確保により,モチベーションの向上が見られた。ところが,学生の実力向上を
目的としたテーマ数増加がモチベーションの若干の低下に結びつく事が判った。今後の課題
である。
(5)教職員が一体になって取り組んでいる学生実験科目の改善活動によって学生の自習時
間が長時間化している傾向が見られた。「簡単に諦める」と言う問題点の解決への糸口が見
つかったと考えている。
工学部 材料科学科
22
ご清聴ありがとうございました.
工学部 材料科学科